| ラチェット | 一日……たった一日で足りるか? | ||
|---|---|---|---|
| ラチェット | あの糞ジジイめ、通信にすら出ないとは……本当にこの鉄クズが大事なのか……!? | ||
| ラチェットは苛立った様子で、倉庫の中を歩き回っている。 秋を蹴飛ばして憂さ晴らししたい衝動に駆られたが、すんでのところでそれを抑えた。 | |||
| ラチェット | こいつは今までの安物とは違う、傷がつけば売値に響く……あのルブランとかいう奴、どこまで信じられるんだ? | ||
| ラチェット | 俺が遠路はるばる日本に来たのは、こんなことのためじゃ…… | ||
| ラチェット | ……ん?誰だ!? | ||
| 倉庫の外から、かすかな音がした。 ラチェットはすぐさま警戒し、入り口の方へと向かってゆく。 だが彼が近づくより先に、小気味よい金属の音が扉から聞こえてきた。 | |||
| 次の瞬間、倉庫の扉が勢いよく押し開けられ、二人の人形が躍り出た。 | |||
| ラチェット | き、貴様ら……なぜここがわかった!? | ||
| ルブラン | ほぉ、本当にここだったか!その解錠技術、どこで学んだ?そういったことは、私の専門ではなかったか? | ||
| デュパン | 場数を踏んでいれば、おのずと身につくものさ。それと、犯罪行為を自慢するのはやめたまえ。 | ||
| ラチェット | お、俺を無視するんじゃない!! | ||
| デュパン | ……悪いが、純粋なる悪党に説明する義理はないのでね。 | ||
| デュパン | 秋を解放し、捜査に協力してもらおう。先ほど、ここの警察に通報させてもらった。すでにこの場へと駆けつけているはずだ。 | ||
| ラチェット | 馬鹿め、いい気になるなよ!! | ||
| 追い詰められ激昂したラチェットは、秋の近くまで後ずさり、彼を人質に取った。 | |||
| 秋 | …… | ||
| ラチェット | 貴様に見つかったからなんだ?警察がどうした?人質は俺の手にあるんだぞ!柳生の可愛い「孫」が惜しいなら…… | ||
| ラチェット | 全員そこをどきやがれ!!! | ||
| デュパン | ……ルブラン。貴様、秋に何をした? | ||
| ルブラン | おっと、今回ばかりは潔白だぞ!少しの間、強制的に眠ってもらっただけだ……休眠プログラムが失効すれば、通常のスリープモードへと移行する。 | ||
| ルブラン | プログラムはとっくに失効している。なんらかの刺激を与えれば、目覚めるはずなんだが……これは、ひょっとすると…… | ||
| ルブラン | ……いや、そんなはずは…… | ||
| 秋 | ……あふ……ったく、なんて夜だ…… | ||
| 秋 | むむっ!? | ||
| デュパン | 秋! | ||
| ルブラン | こいつ、まさか本当に寝てたのか……!? | ||
| 秋 | これは一体どういうことだ?待て、お前は……ラチェットか!? | ||
| ラチェット | 動くなッ!人質は人質らしくしてろ! | ||
| ラチェット | お前も結局は、制限付きの民生用人形に過ぎない……いかに腕が立ったところで、主人の命令がなけりゃ単なる飾りだ! | ||
| デュパン | よりにもよって、こんな時に目を覚ますとは……くッ……プログラムの制限から逃れる方法は…… | ||
| ルブラン | いや……まるで緊張感がないんだが。 | ||
| 秋 | お前…… | ||
| ラチェット | 俺に触るな!! | ||
| 秋 | あのな……お前、さっきからなにを威張り散らしているのだ。 | ||
| 現在の状況をすばやく判断し終えると、 普段はのんべんだらりとしている人形が、急に顔色を変えた。 | |||
| 秋 | ……俺をダシにして、爺さんを困らせる魂胆か?よくも思いついたものだ。 | ||
| ラチェット | 黙れ!黙れッ!!そこの人形ども、そこをどけッ!! | ||
| 秋 | 黙るのは貴様だ。 | ||
| ラチェットは秋を拘束したまま、その場から逃げようとした。 しかし、次の瞬間―― | |||
| 秋は急に腕に力を込めたかと思うと、瞬く間に拘束を逃れ、 やすやすと誘拐犯を地面へと押し倒した。 | |||
| 秋 | どこに逃げるつもりだ、この悪党が! | ||
| ラチェット | ぐはッ……がっ……そんな、馬鹿な……!? | ||
| 秋 | 理由はわからんが、俺は貴様の言う制限を感じたことなんぞ一度もない。 | ||
| 秋 | 俺が見逃す時は、単に見逃したいからに過ぎん。 | ||
| 秋 | 貴様は俺の雇い主を脅かし、我が友を妨げた。 ただで済むとは思うな!! |
