仮想域作戦 暴風来臨

Last-modified: 2025-02-08 (土) 16:20:07

10日後、オアシス技術局。
アントニーナふぅ……
アントニーナやっと終わった……仮想域作戦システムの稼働、想像以上に手間がかかりますね。
クロックもうフリーズしそう……
クロックきょうじゅとペルシカたち、バーバンク楽しんでるのかな……あーあ、こうなるって知ってたら一緒に行けばよかった……
クロック不夜城かぁ……超大型プラモデルショップとか、ゲームセンターとかもあるんだろうなぁ、ぐふふふ……
アントニーナこの手の話になると、急に元気になりますよね。
クロックでもさ、いまさらチャンスはないし……あ~も~!
アントニーナまずは休んできたらどうです。目が覚めたら、目の前に限定フィギュアが置いてあるかもしれませんよ。
 アントニーナはクロックに炭酸ジュースを投げてよこした。
クロックうっす。そっちもはやく休みなよ、じゃないとホントにフリーズすっぞ。
 遠のいてゆくクロックの背中を眺めながら、
アントニーナは椅子に寄りかかり、休憩を取ろうとした。
 目を閉じようとした瞬間、通信機が急に鳴り出す。
アントニーナ……何だ?
システムロッサムセクターよりオアシスへ緊急連絡!
繰り返す、ロッサムセクターよりオアシスへ緊急連絡!
アントニーナハンナ!?
 アントニーナは勢いよく椅子から立ち上がって、通信を受け取った。
アントニーナこちらアントニーナ、何があったんです?
ハンナアンナ!ロッサムが……ロッサムがウイルスに襲われてるの!
アントニーナ
アントニーナウイルス……まさか、「エントロピー」!?
ハンナそう、前にアンナたちが言ってた異常プログラム……一晩のうちに急にセクターに現れて、あちこち破壊し始めてる!
アントニーナそんなバカな……ロッサムの情況は!?
ハンナあいつら、サンドボックス障壁をすり抜けてる。あまりにも突然で、防御システムの起動が間に合わなかった。
ハンナ予想以上にまずい情況になってる、ロッサムはもう30%が奴らの手に……
アントニーナ感染情況は?
ハンナ知ってるでしょ、ロッサムのエージェントは戦闘モジュールを持たない。たくさんのエージェントが免疫プログラムを起動する前にやられてる……感染して意識不明になってる子が何人も。
アントニーナ(事態の悪化が速すぎる……)
アントニーナ情況はだいたい把握できました、すぐに教授と連絡します。
アントニーナこちらの増援が到着するまで、どうか持ちこたえて。
ハンナだめ。今のエントロピーの規模からして、ロッサムが陥落するのは時間の問題だよ……もし奴らがロッサムを超えてオアシスに向かったら、あなたたちにまで危険が及んじゃう。
アントニーナそこまでの規模だとは……そうなると、オアシスの戦闘力を割くわけにも……
ハンナでも、こっちにはまだ手段がある。オアシスから精鋭部隊を派遣してほしいの。それと十分なだけのオペランドも……
ハンナそうすれば……後で…(ザー)…を起動し…(ザー)…
アントニーナハンナ?ハンナ!?
アントニーナくそっ、通信チャンネルがジャミングされた!すぐにでも教授に連絡を取らないと……
通信音ピピッ。
{教授}もしもし、アントニーナ?
アントニーナ教授、残念ですが休暇はお終いです。
アントニーナハンナから連絡がありました。ロッサムセクターがエントロピーによる大規模な襲撃を受けています。オアシスからも支援部隊を派遣しなくては。
{教授}……わかった。
簡潔な説明を頼む、それとロッサムの情況を各部門に同期してくれ。
こちらもすぐに戻る。
アントニーナわかりました。エントロピーの侵攻速度は凄まじいです、ロッサムの30%がすでに陥落しています……
 ピピピッ!
 ふいに鳴った警報音が、アントニーナの声を遮った。
システムキュクロプスセクターよりオアシスへ緊急連絡!
システムヘリオスセクターより緊急連絡!
システムエニグマセクターより緊急連絡!
 ……
 小さな空間はあっという間に警報音に包まれた。
 突如オアシスに降臨した嵐が、マグラシア全体を呑み込もうとしていた。