10日後、オアシス技術局。 | |||
アントニーナ | ふぅ…… | ||
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アントニーナ | やっと終わった……仮想域作戦システムの稼働、想像以上に手間がかかりますね。 | ||
クロック | もうフリーズしそう…… | ||
クロック | きょうじゅとペルシカたち、バーバンク楽しんでるのかな……あーあ、こうなるって知ってたら一緒に行けばよかった…… | ||
クロック | 不夜城かぁ……超大型プラモデルショップとか、ゲームセンターとかもあるんだろうなぁ、ぐふふふ…… | ||
アントニーナ | この手の話になると、急に元気になりますよね。 | ||
クロック | でもさ、いまさらチャンスはないし……あ~も~! | ||
アントニーナ | まずは休んできたらどうです。目が覚めたら、目の前に限定フィギュアが置いてあるかもしれませんよ。 | ||
アントニーナはクロックに炭酸ジュースを投げてよこした。 | |||
クロック | うっす。そっちもはやく休みなよ、じゃないとホントにフリーズすっぞ。 | ||
遠のいてゆくクロックの背中を眺めながら、 アントニーナは椅子に寄りかかり、休憩を取ろうとした。 | |||
目を閉じようとした瞬間、通信機が急に鳴り出す。 | |||
アントニーナ | ……何だ? | ||
システム | ロッサムセクターよりオアシスへ緊急連絡! 繰り返す、ロッサムセクターよりオアシスへ緊急連絡! | ||
アントニーナ | ハンナ!? | ||
アントニーナは勢いよく椅子から立ち上がって、通信を受け取った。 | |||
アントニーナ | こちらアントニーナ、何があったんです? | ||
ハンナ | アンナ!ロッサムが……ロッサムがウイルスに襲われてるの! | ||
アントニーナ | ! | ||
アントニーナ | ウイルス……まさか、「エントロピー」!? | ||
ハンナ | そう、前にアンナたちが言ってた異常プログラム……一晩のうちに急にセクターに現れて、あちこち破壊し始めてる! | ||
アントニーナ | そんなバカな……ロッサムの情況は!? | ||
ハンナ | あいつら、サンドボックス障壁をすり抜けてる。あまりにも突然で、防御システムの起動が間に合わなかった。 | ||
ハンナ | 予想以上にまずい情況になってる、ロッサムはもう30%が奴らの手に…… | ||
アントニーナ | 感染情況は? | ||
ハンナ | 知ってるでしょ、ロッサムのエージェントは戦闘モジュールを持たない。たくさんのエージェントが免疫プログラムを起動する前にやられてる……感染して意識不明になってる子が何人も。 | ||
アントニーナ | (事態の悪化が速すぎる……) | ||
アントニーナ | 情況はだいたい把握できました、すぐに教授と連絡します。 | ||
アントニーナ | こちらの増援が到着するまで、どうか持ちこたえて。 | ||
ハンナ | だめ。今のエントロピーの規模からして、ロッサムが陥落するのは時間の問題だよ……もし奴らがロッサムを超えてオアシスに向かったら、あなたたちにまで危険が及んじゃう。 | ||
アントニーナ | そこまでの規模だとは……そうなると、オアシスの戦闘力を割くわけにも…… | ||
ハンナ | でも、こっちにはまだ手段がある。オアシスから精鋭部隊を派遣してほしいの。それと十分なだけのオペランドも…… | ||
ハンナ | そうすれば……後で…(ザー)…を起動し…(ザー)… | ||
アントニーナ | ハンナ?ハンナ!? | ||
アントニーナ | くそっ、通信チャンネルがジャミングされた!すぐにでも教授に連絡を取らないと…… | ||
通信音 | ピピッ。 | ||
{教授} | もしもし、アントニーナ? | ||
アントニーナ | 教授、残念ですが休暇はお終いです。 | ||
アントニーナ | ハンナから連絡がありました。ロッサムセクターがエントロピーによる大規模な襲撃を受けています。オアシスからも支援部隊を派遣しなくては。 | ||
{教授} | ……わかった。 簡潔な説明を頼む、それとロッサムの情況を各部門に同期してくれ。 こちらもすぐに戻る。 | ||
アントニーナ | わかりました。エントロピーの侵攻速度は凄まじいです、ロッサムの30%がすでに陥落しています…… | ||
ピピピッ! | |||
ふいに鳴った警報音が、アントニーナの声を遮った。 | |||
システム | キュクロプスセクターよりオアシスへ緊急連絡! | ||
システム | ヘリオスセクターより緊急連絡! | ||
システム | エニグマセクターより緊急連絡! | ||
…… | |||
小さな空間はあっという間に警報音に包まれた。 | |||
突如オアシスに降臨した嵐が、マグラシア全体を呑み込もうとしていた。 |