第拾九話 男の戰い/EPISODE19:INTROJECTION

Last-modified: 2020-07-13 (月) 16:31:40

Aパート

マヤ:初号機の連動回路、カットされました。

冬月:射出信号は?

マヤ:プラグ側からロックされています。受信しません。

マコト:しかしシンジ君、ああしなければ、君がやられていたぞ!

シンジ:そんなの関係ないよ。

マコト:だが、それも事実だ。

シンジ:そんなこと言って、これ以上僕を怒らせないでよ。

シンジ:初号機に残されている後185秒、これだけあれば、本部の半分は壊せるよ!

シゲル:今の彼なら、やりかねませんね。

マヤ:シンジ君、話を聞いて!

マヤ:碇司令の判断がなければ、みんな死んでいたかもしれないのよ!

シンジ:そんなの関係ないって言ってるでしょう!

シンジ:父さんは、あいつは、トウジを、殺そうとしたんだ!この僕の手で!


シンジ:父さん!そこにいるんだろ!何か言ってよ、答えてよ!

ゲンドウ:L.C.L.圧縮濃度を限界まで上げろ。

マヤ:ええっ?

ゲンドウ:子供の駄々に付き合っているヒマはない。

シンジ:まだ直結回路が残っ…がはっ!

シンジ:チクショウ…チクショウ…チクショウ…………


作業員:ライトブレストの溶解処理、完了しました。

作業員:体液の洗浄は予定通り、30(サンマル)から始めます。

作業員:第6パーツは熱処理されます。エリア内の作業員は待避してください。

リツコ:もういいの?

ミサト:仕事ができれば問題ないわ…

ミサト:休んでらんないわよ、この非常時に…

ミサト:シンジ君は?

リツコ:あの後レーザーカッターで非常ハッチを切断。強制排除されたらしいわ。

ミサト:参ったわねー、今度は…


アスカ:だめかもしれないわね、あのバカ。立ち直れないわよ。きっと。

レイ:碇君は?

アスカ:怪我はしてないんだし、そのうち気付くわよ。今ごろ夢でも見てんじゃないの?

レイ:夢?

アスカ:そう。あんた、見たこと無いの?

レイ:……


トウジ:シンジ…なんでシンジが横に寝とんのや…ここは…どこやろ…妹の病院か…


トウジ:何や、シンジと綾波やないか。

レイ:碇君、どうしてあんなことしたの?

シンジ:許せなかったんだ、父さんが。僕を裏切った父さんが。

シンジ:せっかくいい気持ちで父さんと話ができたのに、父さんは僕の気持ちなんか分かってくれないんだ。

レイ:碇君は分かろうとしたの?お父さんの気持ちを。

シンジ:分かろうとした。

レイ:なぜ分かろうとしないの?

シンジ:分かろうとしたんだよ!

レイ:そうやって、いやなことから逃げているのね。

シンジ:いいじゃないか!いやなことから逃げ出して、何が悪いんだよ!

トウジ:なに口喧嘩しとんのや、あの二人…


看護婦:面会は特別だから、5分だけよ。

ヒカリ:はい、ありがとうございます。

トウジ:なんや、イインチョやんか…

ヒカリ:鈴原、大丈夫?

トウジ:ああ、生きとるみたいやな。

トウジ:なんや、シンジがおったような気がしとったけど、夢やったんかいな。

ヒカリ:碇君は昨日退院したそうよ。3日も寝てたんだから、鈴原は。

トウジ:そうか…3日もか…………イインチョは…

ヒカリ:ああっ、ここに来たのは委員長として、公務で来たのよ!それ以外の何でもないのよ…

トウジ:ああ、分かっとるわ…

ヒカリ:分かってないわよ…

トウジ:済まんかったな…弁当、食えへんで。

ヒカリ:いいのよ、そんなこと…でもごめんね、ここでお弁当食べさせちゃいけないんだって…

トウジ:イインチョ…

ヒカリ:なに?

トウジ:一つ、頼んでええか?

ヒカリ:うん…

トウジ:妹に、わしは何でもあらへん、と言うといてんか?

ヒカリ:うん。


NERV職員:出たまえ、碇シンジ君。総司令がお会いになる。


ゲンドウ:命令違反、EVAの私的占有、稚拙な恫喝。

ゲンドウ:これらはすべて犯罪行為だ。

ゲンドウ:何か言いたいことがあるか。

シンジ:はい、僕はもう、EVAに乗りたくありません。ここにもいたくありません。

ゲンドウ:では出て行け。

シンジ:はい。先生のところへ戻ります。

ゲンドウ:また逃げ出すのか。

シンジ:………。

ゲンドウ:おまえには失望した。もう会うこともあるまい。

シンジ:はい、そのつもりです。


ゲンドウ:私だ。サードチルドレンは抹消、初号機の専属パイロットはレイをベーシックに、ダミープラグをバックアップに廻せ。


ケンスケ:シンジか?ここから出てくってほんとか?……ほんとなんだな?でもなぜだよ、なぜいまさら逃げんだよ。

ケンスケ:俺はおまえに憧れてたんだ。羨ましいよ、おれたちとは違うんだからな。畜生、トウジまでEVAに乗れるって言うのに、俺は!…

オペレータ:この電話は盗聴されています。機密保持のため回線を切らせていただきました。ご協力を感謝いたします。


シンジ:アスカはあきれてこないでしょうね。

ミサト:ええ、よろしく、とも言ってなかったわ。

シンジ:彼女らしいです。安心しました。

ミサト:そうやって愛想ばかりついてると、これから先辛いわよ。

シンジ:それはミサトさんの生き方です。僕にはできません。

ミサト:分かってると思うけど、これから先、あなたの行動にはかなりの制限がつくから。

シンジ:はい……あの…

ミサト:なに?

シンジ:一つだけ教えてください。なぜトウジなんですか?フォースチルドレンが。

ミサト:第4次選抜候補者は、全てあなたのクラスメートだったのよ。私も最近知ったわ。全て、仕組まれていたことだったの。

シンジ:みんなが…クラスのみんなが…

ミサト:鈴原君のことは、いくら言葉で謝っても取り消されるミスではないわ。

ミサト:でもシンジ君、正直私は、あなたに自分の夢、願い、目的を重ねていたわ。それがあなたの重荷になってるのも知ってる。

ミサト:でも私たちは、NERVのみんなは、あなたに未来を託すしかなかったのよ。それだけは、覚えておいてね。

シンジ:勝手な言い分ですよね…

ミサト:それは分かってるわ…本部までのパスコードとあなたの部屋はそのままにしておくから。

シンジ:無駄ですよ、片付けておいてください。

シンジ:僕はもう、EVAには乗りません。

ミサト:積極的に話をしている…始めてね、こんなの…


放送:ただいま東海地方を中心に、非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します、ただいま…

シンジ:使徒だ…

Bパート

BGM:2-12

オペレータ:総員第一種戦闘配置、地対空迎撃戦用意。

冬月:目標は?

シゲル:現在、侵攻中です。駒ケ岳防衛線、突破されました!


オペレータ:第1から18番装甲まで損壊!

マコト:18もある特殊装甲を、一瞬に?

ミサト:EVAの地上迎撃は間に合わないわ。弐号機をジオフロント内に配置、本部施設の直縁に廻して!

ミサト:アスカには目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて!

ミサト:零号機は?

マヤ:A.T.フィールド中和地点に、配置されています。

リツコ:左腕の再生がまだなのよ。

ミサト:戦闘は無理か…

ゲンドウ:レイは初号機で出せ。ダミープラグをバックアップとして用意。

ミサト:はい。

BGM停止


オペレータ:エントリースタート。

マヤ:L.C.L.電化。

リツコ:A10神経、接続開始。

レイ:うっ………だめなのね、もう。

オペレータ:パルス逆流!

マヤ:初号機、神経接続を拒絶しています!

リツコ:まさか、そんな…

冬月:碇…

ゲンドウ:ああ、私を拒絶するつもりか。

ゲンドウ:起動中止、レイは零号機で出撃させろ。初号機はダミープラグで再起動。

ミサト:しかし零号機は!

レイ:構いません。行きます。

ミサト:レイ!

レイ:私は死んでも、代わりはいるもの。


シンジ:(僕はもう、乗らないって決めたんだ…)

男:君、何をしている!早くシェルターに避難しなさい!


シゲル:だめです、後一撃ですべての装甲が突破されます!

ミサト:頼んだわよ、アスカ…


BGM:1-3

アスカ:来たわね…シンジなんかいなくったって、あんなの私一人で御茶の子サイサイよ…

アスカ:このぉ!!

アスカ:チッ、次!

アスカ:A.T.フィールドは中和しているはずなのに…

アスカ:なんでやられないのよー!

アスカ:もう二度と負けらんないのよ、この私は!

アスカ:うそ!

アスカ:くぅぅっ!

アスカ:こんちくしょーっ!

ミサト:アスカ!全神経接続をカット、早く!


BGM停止

(アスカ:避難訓練?あんたバカぁ?私たちパイロットには関係ないじゃん。)

シンジ:うわっ!

男:第8区に直撃!

男:第6シェルターは放棄、生きてるものは第3シェルターへ急げ!


BGM:1-19

シゲル:弐号機大破、戦闘不能!

ミサト:アスカは!?

マコト:無事です!生きてます!

アスカ:チッキショウ…

シゲル:使徒、移動開始!

ミサト:初号機の状況は?

オペレータ:ダミープラグ、搭載完了!

マヤ:探査針、打ち込み終了!

リツコ:コンタクト、スタート!

マヤ:了解!

リツコ:何!?

マヤ:パルス消失、ダミーを拒絶、だめです!EVA初号機、起動しません!

リツコ:ダミーを、レイを、

冬月:受け入れないのか…

ゲンドウ:冬月、少し、頼む…

BGM停止


男:怪我人は第6ブロックへ!

男:無事なものは第3シェルターへ集合しろ!

男:こっちだ!

男:早く!

男:急げ!

男:早く!

男:おい君!何をしている!死にたいのか!

シンジ:アスカ…

加持:シンジ君じゃないか。


シンジ:加持さん…。何やってるんですか、こんなところで。

加持:それはこっちのせりふだよ。何やってるんだ、シンジ君は。

シンジ:僕は、僕はもうEVAには乗らないから…そう決めたから…

加持:そうか…アルバイトが公になったんでね。戦闘配置に俺の居場所はなくなったんだ。以来ここで水を撒いてる。

シンジ:こんな時にですか?

加持:こんな時だからだよ。葛城の胸の中もいいが、やはり死ぬ時はここにいたいからね。

シンジ:死ぬ…


BGM:2-17

加持:そうだ。使徒がここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びるといわれている。サードインパクトで。

加持:それを止められるのは、使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけだ。

シンジ:綾波!?ライフルも持たずに!


リツコ:自爆する気!?

ゲンドウ:レイ!

レイ:A.T.フィールド、全開…

シンジ:う、ぐっ!

マコト:零号機は…

ミサト:レイっ!

リツコ:何てこと…


加持:シンジ君、俺はここで水を撒くことしかできない。だが、君には君にしかできない、君にならできることがあるはずだ。

加持:誰も君に強要はしない。自分で考え、自分で決めろ。自分が今、何をすべきなのか。

加持:ま、後悔のないようにな。


シゲル:第三基部に、直撃!

マコト:最終装甲版、融解!

ミサト:まずい、メインシャフトが丸見えだわ!

リツコ:初号機はまだなの?

オペレータ:ダミープラグ、拒絶。

オペレータ:だめです、反応ありません!

BGM停止


ゲンドウ:続けろ。もう一度108(ヒトマルハチ)からやり直せ。

シンジ:乗せてください!

シンジ:僕を、僕をこの初号機に乗せてください!

シンジ:父さん…

ゲンドウ:なぜここにいる。

シンジ:僕は…僕はエヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジです!


BGM:1-19

シゲル:目標は、メインシャフトに侵入、降下中です!

ミサト:目的地は!?

マコト:そのまま、セントラルドグマへ直進しています!

ミサト:ここに来るわ…総員待避!急いで!

マコト?:総員待避!繰り返す、総員待避!


ミサト:EVA初号機!?…シンジ君?

シンジ:うわあああああ!

シンジ:わああああああ!

シンジ:ふわあああああ!

シンジ:ミサトさん!

ミサト:5番射出、急いで!

シンジ:うおおおおお!

シンジ:うわああああ!


シンジ:エネルギーが切れた!?

BGM停止

マヤ:初号機、活動限界です!予備も動きません!

ミサト:シンジ君…


ミサト:シンジ君!

シンジ:動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないんだ!

ミサト:あれは…

シンジ:動け、動け、動け!動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動いてよ!

シンジ:今動かなきゃ、今やらなきゃ、みんな死んじゃうんだ!もうそんなの嫌なんだよ!

シンジ:だから、動いてよ!


BGM:2-16

マヤ:エ、EVA、再起動…

ミサト:すごい…

マヤ:まさか…信じられません、初号機のシンクロ率が400%を超えています!

リツコ:やはり目覚めたのね、彼女が。


ミサト:使徒を…食ってる…

リツコ:S2機関を自ら取り込んでいるというの?EVA初号機が…

マヤ:ううっ!

リツコ:拘束具が!

マコト:拘束具?

リツコ:そうよ。あれは装甲板ではないの。EVA本来の力を私たちが押え込むための拘束具なのよ。

リツコ:その呪縛が今、自らの力で解かれていく…私たちには、もうEVAを止めることはできないわ…


加持:初号機の覚醒と開放。SEELEが黙っちゃいませんな。

加持:これもシナリオの内ですか?碇司令。

冬月:始まったな。

ゲンドウ:ああ、全てはこれからだ。

BGM停止