Backstory/Chronicles/For the State

Last-modified: 2020-04-25 (土) 10:39:06

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For the State

 

YHB-349に着陸した一行は、すでに気の毒な集団だった。星系に入ったところでピケットパトロールに待ち伏せされた護衛部隊は、ガレンテの邀撃隊に襲われ、隊列を切り裂かれてしまった。作戦指揮官は発見を避けるために護衛艦隊を最小限にしていたが、賭けに失敗した。迎撃部隊との遭遇後、まだ戦闘力を有していた艦艇は自らを犠牲にしてしまった。混乱の最中、クレーン輸送艦は船体構造の殆どを無傷で着陸することに成功した。

 

6時間後、目標とする小惑星の地表に着陸し、生き残った乗組員たちは損傷を確認する為に拘束具から飛び出した。船体の損傷によって指揮官とその部下の殆どが犠牲となった。乗船していた3つの専門作業チームのうち、2チームを編成することができる程度の人数が辛うじて生存していたことが分かった。過酷な環境のために設計された資材や機材は真空に晒されていたが影響を受けず、残された人員で出来る限りリスニング・ポスト構築を試みる合意がなされた。

 

しかし、最初の仕事は生き延びることであった。隊長の静かな指示の下、作業チームは作業服に身を包み、船体の穴から居住設備を運び出した。これは標準的な装備で、チームの男女は厳選されたものだった。3時間の過酷な作業の後、彼らは傷ついた岩の暗闇の中に生存可能な居住センターを構築した。

 

ドームの加圧が終わると、岩の住民たちは次の緊急の問題を解決するために中央のホールに集まった。隊長は輸送船の船長代理を見て、「ダートサイド」と答え、首を振った。フォアマンはうなずいてから発言した。「私は労働者の代弁者だ。エンジニアリング・マネージャーは、我々を指導する仕事に最も適している。私は彼をディレクターと呼ぶ」

 

作業チームはゆっくりとうなずいた。新隊長が前に出た。「私はこの仕事を引き受け、全力で遂行する。5分以内にディレクターとチームリーダーとの計画会議を開いてくれ。1時間以内に全在庫の棚卸しをするんだ。全員がやるべき仕事があるんだ。きびきび動け!」

 

計画策定には6時間を要し、プロジェクト全体の計画を見直し、再評価し、修正した。リスニング・ポストの心臓部にあるセンサークラスターは、必要な電源や通信機器とともに岩の奥深くに埋設する必要があった。必要なものが適切に評価され、スケジュールの草案がまとまると、ディレクターは隊長を見上げた。

 

「これは2つのチームの為の多くの仕事だ。」

 

「仕事は必要だし、2チームでやればいいんだ。私に命令を出してくれれば、部下がやってくれる。」

 

作業はすぐに開始された。第一坑道を開くために制御されたブラストを使用した。検知されないように、センサーの信号を最小限にしなければならなかった。また、YBH-349のアルベドやプロファイルを変化させずに瓦礫を除去しなければならず、電磁波の痕跡があるため、重機は持ち込むことができなかった。最も肉体的な作業はシバーのロードジャッキに割り当てられていた。彼らの強靭な肉体と無限に近いスタミナは、大部分の作業員を占めるディティスの技術者が管理する2倍の速度で「剪断、岸壁、シャベル」を行うことができた。

 

そして、彼らは仕事をしていた。もちろん、作業チームは作業の基幹であり、作業の大部分を担っていた。隊長は片手で指示を出し、もう片方の手で岩を掘るのと同じように一生懸命働いていた。海軍の将校はオーバーオールを着て、敷設や支保工の手伝いをしていた。そしてディレクターはどこにでもいて、見張り、励まし、叱責、評価をし、必要なところには余力を差し伸べていた。技師長が言っていたように、仕事は必要なものであった。

 

やがて立坑は完成し、最終的にはプロジェクトの中心となる機器を収容するための部屋をくり抜く掘削の最終段階に入った。その日の夜、隊長はディレクターを脇に引き寄せた。

 

「私のロードジャッキは疲れているんだ。疲れた男はミスを犯す。今夜彼らがシフトから外れたら、2交代で休ませる必要がある」と言った。

 

ディレクターは考えた「シフトを外すと、掘削工事の完成が遅れる。当初の予定より遅れているんだ。」

 

「陥没すればさらに遅れる」

 

「分かった」 ディレクターはため息をついた 「よし、各ロードジャックに技術者を割り当てて、常に彼らの後を追うようにしてミスが発生しないよう監視し、作業が終わるまでノンストップで作業を続けさせろ。掘削が完了したら、彼らに休息の時間を与える。」

 

技師長はゆっくりと頷いた。「いいだろう。頑張れば、朝飯までには終わるだろう。」

 

朝食の時間になると、ロードジャッキたちは複雑な表情で座り込んだ。彼らの仕事は終わったが、3人はテーブルに着くことができなかった。

 

朝遅くには、設備を完成した部屋に移送し、壁や床に密閉され、入念に連結されて稼働状態になった。掘削ほど肉体的に疲れるものではないが、日が経つにつれ、窮屈で低G値の条件の中で複雑な電子機器を操作する事への疲労が表れ始めた。間違いはあったが、それを見つけて修正していった。最終的にはすべてが所定の位置にあり、機械の心臓部である彼らの単一の特殊な流体ルータは、そっとにストレージから取り出され、中央のチャンバーに下ろされ、慎重に設置された。それが終わると、発電機がオンラインになり、リスニングポストの電源がゆっくりと起動した。

 

初期診断によって、2つの重要な情報が明らかになった。1つ目は、作戦が成功したことである。作業チームの3分の1、作戦司令官、計画スタッフの大部分を含む多くの人員を失ったにもかかわらず、すべてが完璧に機能し、詳細なセンサーデータが正常に海軍司令部に送信されていたことである。第二に、あらゆる予防策にもかかわらず、ガレンテが彼らの居場所を突き止め、数時間以内に護衛部隊を伴った海兵隊輸送艦がYHB-349に上陸するという事であった。

 

降伏という選択肢は議論の余地もなく即座に捨て去られた。その仕事に価値があるとするならば、出来る限り努力をする価値のある仕事であった。海軍関係者の協力を得て防衛計画を立案し、スケジュールを立案し、任務を割り当てた。館長代理が数名の技師を連れて緊急用武器庫を破壊し有用な装備を回収し残りを破壊する間、ロードジャッキ達はメインシャフトの周囲と下部に陣地を構築し始め、技師たちは臨時の武器とするために道具を改造し始めた。ガレンテ艦の排気フレアが見える頃には皆が準備を整えていた。

 

艦は放棄された居住地を強襲し、武装兵達が速やかに脱出口より抜け出した。坑道の先端ではディレクター、隊長、海軍兵達が陣取って彼らが接近するのを見守った。最初の敵が無害な岩の山を通過すると、武器が塹壕の上から振り落とされ、戦闘が始まった。最初の一斉射撃で数人の海兵が倒れたが、最初の塹壕に入り、再び塹壕の外に出てきた。彼らの多くは損傷し、血まみれとなったアーマーを着ていた。隊長は最後にもう一度レールガンを確認してディレクターを見た。

 

"彼女は「国の為に」と彼に言い聞かせると、射撃の姿勢をとった。

 

「国の為に」と彼は不機嫌な笑みを浮かべて答えた。

 

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