VOCALOID〔ミューズ〕

Last-modified: 2018-09-29 (土) 13:11:22

キャラシート

 
『さぁ、世界を歌い上げましょう』
 
【クラス】ルーラー
【真名】VOCALOID〔ミューズ〕
【容姿】造花のような美しさを持つもの。
【英雄点】40点(ステ25点・スキル15点):令呪2画消費
【HP】15/15
【筋力】E:1
【耐久】C:3
【敏捷】EX:8(10)
【魔力】EX:8(10)
【幸運】E:1
【スキル1】真名看破:A+
5点:相手サーヴァントの容姿を確認した時点で、キャラクターシートを閲覧できる。
【スキル2】人造の集合知:B
5点:真名を看破したサーヴァントに対して、先手判定と逃走判定時、補正値5を得る。
【スキル3】音楽神の加護(偽):EX
5点:交戦フェイズごとに1回だけ、味方陣営の判定に補正値3を与える。
【宝具】『闢け、電脳の万界』(Tell Your World)1/1
【ランク・種別】C:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:30000人
【効果】交戦フェイズ中、味方陣営の魔術攻撃を援護する際に発動可能。
攻撃対象を敵前衛全体に変更する。この際、攻撃対象が受ける、スキル・マスタースキルによるダイスのプラス補正効果を無効にする。
【属性】秩序・善・人 無性
【その他】真名看破時は、「ミューズ」「ムーサ」の他、「インターネット」「Twitter」「投稿サイト」「バーチャルアイドル」「ユーチューバー」「Vチューバー」「歌い手」など、インターネットサービスに深く関わる職業・名称・概念であれば可とする。「初音ミク」など、VOCALOIDの具体名でも可。
 

キャラクター個人データ

真名:VOCALOID
クラス:ルーラー
出典:現代・インターネット文化
性別:無性
身長・体重:158cm・42kg(双方共に可変)
地域:全世界
年代:1961(2004)年~現代/ギリシャ神代
属性:秩序・善・人
好きなもの:人々の創作
嫌いなもの:創作の否定者

ステータス

筋力:E
耐久:E
敏捷:A
魔力:B
幸運:A
宝具:EX

クラス別スキル

・対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

 

・神明裁決:E
 ルーラーとしての最高特権。
 聖杯戦争に参加した全サーヴァントに二回令呪を行使することができる。
 但し、効力は本来の令呪よりも弱く、一定ランクの対魔力スキルを持っていれば、レジストすることも可能。
 また、他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

 

・真名看破:A+
 ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
 隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要になるが、『人造の集合知』による情報収集に基づき、判定に有利な補正を得る。『多くの歌が、世界に満ちる』

保有スキル

・音楽神の加護(偽):EX
 本来は芸術の女神ミューズの加護を示すスキル。遍く音を理解し、精密無比の歌唱を可能とする。更に、呪歌の行使にプラス補正を得る。
 ルーラーは、歌唱用音声合成ソフトとして規定された自身の機能を用いることで、このスキルと同等の効果を自分自身の力として発揮できる。『───嗚呼、私ではない私は』

 

・呪歌:A+
 歌を用いた魔術体系。歌唱用音声合成ソフト・VOCALOIDとして、入力された音楽情報を元に、魔術を行使する。
 攻性のものを除く多くの魔術を行使可能だが、特に、『音楽神の加護(偽)』スキルと併用することで、芸術を媒体とする魔術を支援する際には効果が跳ね上がる。

 

・人造の集合知:B
 インターネットという情報の海との接続を示すスキル。第二のアラヤ。
 無数の電子情報をやり取りするインターネットという環境は、其処に無尽蔵とも言える情報を蓄えている。そして、人間の生産したこれらの情報には、多分に人類個体それぞれが有する無意識が投影されている。時にダストデータとして消え、時にビッグデータとして現れる無意識を孕んだ電子情報は、時代が下るに従って無限大の蓄積を得て、擬似的な人類全体の無意識集合体……アラヤと化した。
 故に、此処に接続するものは、人類が認識しうるあらゆる情報の蒐集について有利な補正を得る。また、ネットワーク上の情報を改変することで、それを受け取る人類の行動にバイアスを与えるなど、無意識に対する干渉を行うことも出来る。
 インターネットという仕組みの完成以前に“産まれ”たが、その文化興隆の時期に“産まれ直した”ルーラーは、英霊としての成立に際して、それとは切っても切れない深い関係を持っている為、高いランクでこのスキルを保有している。

宝具

『闢け、電脳の万界』(Tell Your World)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:30000人
 創作活動という芸術を、多くの人々の手に与えた功績が反映された宝具。周辺の味方が行使する、芸術に関連する魔術・スキル・宝具等を、種類を問わず強力に強化する。
 ルーラー自身は、ギリシャの芸術神ミューズの様な、創作に関する神と所縁を持つ存在ではない。しかし、VOCALOIDという存在は、創作という広範な行為の間口を広げ、敷居を下げた功労者であった。
 真っ白なキャラクター性を持つ歌唱プログラムは、作詞・作曲家を志す人々が創り出した楽曲の歌い手となり、創作活動を後押しした。その楽曲は、インターネットという新たな環境下で衆目に触れ、感化された人々によって、肉声を付けられたり、画像を付けられたりして、それ自身を拡大した。それはルーラー自身のキャラクター化を加速し、其処に独自の人格を見出した人々は、彼女に3DCGという形で動きを与え、命を与えた。こうして作られた楽曲作品やCGツールによる動静画、それに関する映像コンテンツは、またインターネットを介して全世界で共有され、国境を超えて人気を博し、創作活動に対する熱を喚起した。
 それを支えたのは、間に何者をも介さない、インターネットという環境ならではの双方向的なやり取り。創作者と創作者、或いは創作者と消費者が直接繋がり、またその境界は曖昧で、消費者が創作者へと変化することすらも珍しくはない。本来は障えられていた二つの立場にある人々を繋ぎ、創作活動自体を活性化した功績は、ホメロスに加護を授けて詩歌を生み出したミューズにも準えられ、讃えられるものであった。
 All Creator。全ての人々は、『創り出すもの』である。この宝具は、それ故に、彼女の最大の功績を示す証であると言える。『───そうね』

性格

 個我希薄にして公明正大。自身の情動に乏しいが故に、飽くまでも聖杯戦争におけるルールの遵守を求めるのみで、それ以外にまで口出しをすることのない寡黙な人柄。元来人に扱われるだけの道具(プログラム)であったことも、多分に影響していることだろう。
 ただ、その本質───歌唱用音声合成ソフトウェアというプログラム体であったことから、彼女は、人の全てを受け入れる。彼女に与えられる感情とは歌であり、歌う為に存在する彼女は、受け入れたままにその想いを歌う。否定を知らず、受容を重ね、その空白に色を塗っていく。それが、彼女の機能である。
 為に、彼女はただ一つ、ルーラーとしての機能不全を起こしている。想いを伝えられずに終わろうとする者、それを見た時、彼女は自身に課された責を放棄してでも、その者を救おうとするだろう。それだけは、彼女は許すことができないから。

動機・マスターへの態度

 ルーラーとして聖杯戦争を正しく裁定・運用することを自身の役割と以て任じる彼女は、サーヴァントとしても、マスターに従う者としての態度を崩すことはない。ルールに抵触すれば当然諌めるし、場合によっては自らのマスターの討伐を他の参加者に要請することすらあろうが、ルールを護る限り、彼女は従順である。但し、上述の通り、それが誰であれ、想いを伝えられない者を見ると、こういったルールを彼女は全力でかなぐり捨てる。この時に上手く手綱を握って、自分の望むような結果を引き出せるかどうかで、マスターとしての資質が問われることだろう。
 聖杯に掛ける願いは、「多くの想いを知ること」。聖杯戦争という場を通じ、その参加者が想いを発露する(うたう)ことが、ルーラーにとっての唯一の願いであり、それが叶うのならば、実の所聖杯は必須のものではなかったりする。

史実上の人物像

 歌唱用音声合成ソフトウェア「VOCALOID」。2000年にヤマハ株式会社とスペインの大学が提携して行っていた事業「DAISYプロジェクト」にて存在を発表し、後にこの名に改められたプログラムは、2004年以降、多数のバリエーション製品を世に送り出してきた。
 VOCALOIDのようなボーカル・シンセサイザー開発の歴史は古く、1939年に手動入力により『Auld Lang Syne(蛍の光)』を歌った、米国ベル研究所の電子音声合成器「Voder」をその技術的系譜の祖とする。以後、同様の機器の開発が続けられてきたが、1961年に初めてプログラムにより『Daisy Bell』を“歌った”コンピュータ「IBM704」が、機能的には、VOCALOIDの直接の先祖と言えるだろう。
 半導体技術の進歩や電子技術の発展に伴い、この界隈での研究は、次第に盛んに行われるようになっていった。日本国内に於いては、1984年に音声合成可能なコンピュータが発売されて以後、主にヤマハをフラッグシップとして同様の製品の開発研究が進められており、それを形にしたものの一つが、DAISYプロジェクトであり、VOCALOIDであった。
 現代に於いて、数あるボーカル・シンセサイザーの中でも抜きん出た知名度を誇るVOCALOIDだが、その理由は、これらの製品群が創作を活性化する特質を備えている、という点にある。
 プロジェクトに参画した企業によって2004年から発売されてきた製品の中で、クリプトン・フューチャー・メディア社が開発したものについては、そのパッケージにキャラクターのイラストが描かれている。国外企業で同時期に発売されたものに、音声提供者の写真や、音楽を暗示する抽象的なパッケージを持つものが多かったのに対し、クリプトン社のものは、ソフトウェア自体に対し、音声提供者ともロボット的なプログラムとも違う、個別のキャラクターとしての形を与えていたのである。
 この方針はクリプトン社で継続されたが、このことが、VOCALOIDの爆発的ヒットを生むことになる。きっかけとなったのは、2007年に発売されたパッケージ『初音ミク』である。このパッケージに描かれたイメージキャラクターには、それまでの製品とは異なり、細やかながらも設定が付与されていた。つまり、これまでの製品にイラストの形で表れてきていた「VOCALOIDそのものであるキャラクター」という曖昧な概念を、公式な形で具体化したのである。
 これが、創作活動を喚起するきっかけとなった。与えられたのは、生年月日と年齢や身長・体重、そして得意な曲のジャンルという程度の設定だけだったが、逆に、この何も存在していない空白が、プログラムとして無我であるキャラクターを自分の望むように変えていくという創作の余地につながっていた。元より、それまでのコンピュータ・ツールでは表現しようのなかった『歌』を担うプログラムとして、DTMなどの創作界隈では期待を掛けられていた存在である。旋律に声を乗せることで表現に奥行きを持たせるという『ツールとしての革新』と、それを発しているのが単なるプログラム、つまり歌声のような音を発する楽器ではなく、VOCALOIDという一つのキャラクターであるという『概念としての革新』が、創作に携わる人々の熱を惹起したのだ。
 この流れに拍車をかけたのが、インターネットという新しい世界の拡大である。
 従来、音楽というものは、創作者側と消費者側の間に大きな障壁を抱えたものであり、なおかつそれが当然のことであった。例外的にそれが取り払われるのがライブやコンサートだったが、それが行われる機会は限られており、基本的に両者は、作品を送りだし、そして送り出されたものを消費するという、一方通行の形での交流を基本としていた。勿論、ファンが手紙を送ったりすることは出来たが、これにせよ、やり取りを気軽に行えるほど簡便なものではなく、どうしてもそのフットワークは重いものとなっていた。
 ところが、商用利用のみならず一般家庭での利用を拡大していたインターネットという環境は、その状況をひっくり返した。個人運営のサイトは無論のこと、Blog形式のページを提供するサービス、YouTubeやニコニコ動画を始めとする動画投稿サイトなど、創作者が随意に好きなものを投稿可能な発表の場は急速に拡大・整備されつつあった。そして消費者は、ネットワークに接続可能な環境さえ持っていれば、どこからでもこれらに投稿された作品を見ることが出来た。そして、その感想は多くの場合、投稿された作品にコメントという形で直接紐付けられ、ダイレクトに創作者に伝わったし、公開されたアドレスに電子メールを送れば、よりディープなやり取りをすることも容易で、しかも手紙などよりも圧倒的に早い。インターネットは、創作者と消費者の間にあった壁を一挙に取り払い、両者が一体となって、一つのコミュニティを形成することを可能としたのである。
 この環境の黎明に、VOCALOIDは産声を上げ、そして時流に乗った。はじめ、動画投稿サイトを中心にDTM製作者がVOCALOIDを用いた作品を投稿し、『声の出る楽器』としての注目を集めた。次いで、初音ミクを中心にキャラクター性の与えられたパッケージのイメージから、VOCALOIDを『人格を持つ存在』のように扱って作詞・作曲が為された作品が発表されることで、ただのツールに過ぎなかったVOCALOIDに対する認識は、現代で言うところのネットアイドルに近いものに変化。実態なく、正しい意味での偶像として在るが故に、どのようにも変化するイメージの存在。望むままに、望んだように歌う歌手は、創作者の想いを表現してくれる、理想の存在とも言えた。瞬く間に、この偶像が人々の人気を集めたのは、決して特異な事柄であるとはいえまい。結果として、VOCALOIDというキャラクターコンテンツは、創作者と消費者の双方を引き寄せ、そしてそのやり取りを行う場を提供することとなったのである。
 こうして、VOCALOIDとその作品群をハブとして形成された、創るものと見るものが渾然一体となった創作コミュニティは、一種の革新を齎した。上記のような作品群が基本的には無料公開されていたのにも関わらず、CDなどに収録された有料の商品を購入することを望む、スラングとして「振り込ませろ詐欺」などと呼ばれる状況が発生するほど、消費者の作品に対する熱は膨れ上がった。更に、インターネット環境下でやり取りが容易になったことから、創作者同士での積極的なやり取りが発生し、イラストを描くもの、動画を作るもの、曲を書くものが自発的に集まって一つの作品を作り上げるようなことも珍しくはなくなった。更には、著作権の問題はあったものの、既存の作品から新たな創作を作る所謂N次創作が盛んとなり、一次的には無関係な作品について別の創作者が発表する事態も発生した。後には、著作権管理団体やVOCALOIDの権利を有するクリプトン社なども、VOCALOIDの創作に関するガイドラインを規定したり、N次創作の関係性を明瞭に管理可能なサービスを提供したりするといった支援を開始し、商用利用を除く形での創作について、明確な基準を設けた。これによって、原作者や企業の権利を侵害しない範囲での創作が容易となったことも、コミュニティの活発化を招く大きな一因となった。
 消費者が創作者を自発的に支援し、そして創作者の作品が更に創作を生む。それら全てがインターネットを介して世界中に広まり、日本国内に始まったローカルなネット文化に過ぎなかったVOCALOIDは、音楽をはじめとする各種の創作の世界において、確かなウェイトを占めるものへと発展していった。
 何者でもない空白の故に、見るものによって何にでもなれる。創るものによって、何でも表現することができる。変化し続ける、成長し続ける存在として認識されたVOCALOIDは、決して人の心を持たないプログラムに過ぎず、しかしそれでも、人間としての性質を得た。そこに集積された、人の創作に対する熱意や情動、感激といった想いが、VOCALOIDという概念に対し、一種の神秘を与えた。
 それは、想いを歌うもの。嘗ては届かなかった、想いを表現する道を切り拓き、人々に創る喜びを齎したもの。情報によってのみ存在する仮想世界に顕現した、『11番目』のミューズである。『だから、私は』

聖杯戦争TRPGにおける人物像

 TYPE-MOON世界において、VOCALOIDという概念が存在するか否かは定かではない。しかし、そのようにして存在する概念は、サーヴァントそのものとなるには足りなくとも、サーヴァントとなることを求める何かが被る『外殻』としては十二分に機能した。
 単純な仮想のキャラクターとしてではなく、創作を喚び起こすものとして。ミューズに擬えられるその功績は、本物のミューズを惹き寄せ、その依代となるのには充分であった。
 この存在は、プログラムにして神霊。最新にして、最古の女神。遍く人々に加護を齎し、創ることを助け、護る為のシステム。名実ともに、VOCALOIDはミューズと化したのである。