16-106

Last-modified: 2011-06-07 (火) 22:45:32

106 :Let's肝試し!(68):2008/12/19(金) 23:57:56 ID:bScIhxma
ものっそ久々の投下です、語ることは最後にしてとりあえず本編
前回(14スレ目 200-206)

アルム「ああ…別の方向で驚かされたよ」
エイリーク「そうですね…元々アイク兄上は様々な事を可能にしましたけど」
リン「なんか人間としての壁をどんどん越えていく様が見えるわよ…」
アルム「越えた先に何があるんだろ…」
リン「前人未到の領域よ、わかるはずないじゃない…」
アルム「だよねぇー…」
神剣でネジ締めという本来の使用用途からも、
人間業としても離れ過ぎている兄の行動に呆気にとられた三人、
回復するには少し時間を要してしまった
エイリーク「それにしても本当に直ってます」
開閉させてみると、勝手に開いたりや先ほどの開くときの耳障りな音もしない
しかも開閉が実にスムーズだ、いい仕事をしている
アルム「うわ、ネジがしっかり締まってるよ…」
蝶番のネジを指でなぞってみても、しっかり留っているのが分かる
リン「今日また一つ壁を越えたわね、アイク兄さん…」
アルム「いや、あの神業はとうの昔に出来てたみたいだし、すでに越えてるよ」
リン「そうね…とりあえず先に行きましょうか」
アルム「賛成、えっと階段は?」
エイリーク「こっち、みたいです」
扉を指さすエイリーク、そこには『階段』とわかりやすいプレートが貼ってあった
リン「そ、じゃあ行きましょ」
アルム「あ、待ってよ、置いてかないで…」
とりあえず2Fへ行くことにしたようだ、リンが代表して扉を開ける
リン「よいしょ、と」
コンッ
リン「きゃ…何?」
リンの頭に何かぶつかったようだ
アルム「(すごい女らしい悲鳴だしたな、リン姉さん)何か落ちたみたいだね」
リン「アルム…解説はありがたいけど、失礼なこと考えなかった…?」
アルム「! や、やだなぁー、失礼なことって何さ?」
リン「珍しく女らしいとか」
アルム「(心読めんのこの人!?)そ、そんな事思ってないって…!」
リン「本当にー…?」
アルム「あ、あう…」
どこか怒りのオーラを纏いアルムに詰め寄るリン、その迫力に押されるアルム…女は強し
エイリーク「何か書いてありますね、これ」
リン「え?」
ところがエイリークが拾ったもの、つまりは自分の頭に当たった者への関心の方が大きかったようだ
そちらへ意識が向いたことで解放されたアルムは、安心し一息つく
アルム(エイリーク姉さん、GJ…)
リン「確かに何か書いてあるわね」
エイリークが手にしていたボールを覗き込み、リンはそう呟いた
エイリーク「暗くて読めません…」
少し日が傾いてきたようだ、光の向きが変わり、ボールの字を読むのに適した明かりがない
リン「姉さん、それ貸して」
エイリーク「え? いいですけど」
了承を得たことでひょいっとボールを取り、リンは鋭い視線でボールを見る
アルム(獲物を狙う肉食獣みたいだ…は! やばい、またリン姉さんに悟られる!)
自分の思考を振り払うようにブンブンと頭を激しく振るアルム、
そんなアルムをエイリークは不思議そうに見る
リン「読めそうよ」
アルム「よく読めるね…僕には全く読めないよ」
リン「私、夜目がきくから」
アルム(ますます動物的だよ!!)
リン「アルム…あなたまた何か」
アルム「わー! わー! それよりなんて書いてあるのさ?」

107 :Let's肝試し!(69):2008/12/19(金) 23:58:59 ID:bScIhxma
リン「ま、いいわ、んーと…」
字を読み始めたリン、答えを待つ他二名
しばし静寂が訪れた…が
リン「マァルゥスゥゥゥゥ!!!!」
その静寂を突如破るは怒りに満ちたリンの声
言の葉に含むはこの場にいない弟の名
しかもボールを手にいきなり階段を駆け上がってしまった…
アルム「ちょ、リン姉さーーーーん!!?」
エイリーク「…」
アルムはとりあえず呼び止めようとし、エイリークはポカンとしてしまっている
エイリ-ク「…とりあえず追いましょうか」
アルム「あ、うん」
二人して階段を上りはじめた、その瞬間

「いやああああああああぁぁぁぁ…」

取り残された二人の耳に届くは誰かの悲鳴…その正体は
アルム「今のって」
エイリーク「マルスの声、ですね」
とりあえず階段を駆け上がる二人、2Fへ近づくにつれ声が明瞭に聞こえるようになってきた

「マルスゥーー!!! あんたって奴はぁーーーーー!!!」
「アッーーーー! というかなんで僕の居場所わかったのさ アイダダダダ!!」
「ボールにあんたの匂いが染み付いてんのよ!!」
「ちょ、それなんて警察犬…ナアァァァァー! ちょ、ギブギブ…NOOOOOOO!!!」

アルム(何がおきてんのー!?)
エイリーク「リーン! ボールには何が書かれてたのか気になるのですがー!?」
アルム(え、マルス兄さんの心配は!?)
しばし間、階段を上った先で二人はマルスの悲鳴をBGMに佇むのだった、
それぞれ違った気がかりを胸にしながら…
―(改めて)2F―
数分後、リンがどこからか戻ってきた
リン「はぁー…はぁー…はー…」
アルム(目が怖いよ!!)
エイリーク「あ、あの…ボールには何g」
リン「なんか言った!?」
エイリーク「い、いえ何でも…」
すごい剣幕で睨まれ、エイリークは畏縮してしまった
リン「今度簀巻きにしてイリアの海に投げ込んでやろうかしら…」
アルム(マルス兄さん、ほんとに何したのさ)
もはや誰をも寄せ付けぬオーラを発しながらリンは先へ歩いて行ってしまう
他二名はある程度距離を置きつつリンの後をついていく

108 :Let's肝試し!(70):2008/12/20(土) 00:00:17 ID:Kjxomp7u
リーフ「ねぇ…生きてる?」
マルス「な、なんとか…」
ロイ「リン姉さんにシメられるのはいつものことだけど、何したのさ」
マルス「う…ボ…ル…を、見…ガクッ」
マルス、機能停止
リーフ「マルス兄さーーん!! 散り際の台詞にしてはあんまりだよー!!」
マルスの意識を呼び戻そうと揺さぶるリーフ、されるがままガクガクと揺さぶられるマルスを
ひとまず視界の端に追いやり、ロイは先ほどリンがマルスに豪速球で投げつけたボールを手に取る
ロイ「…これじゃ無理もないなぁ」
そこにはもう悪口の嵐、『ヘザーさん二号』とか、『野生動物』とか、『太足』とか
ロイ(ま、気を引きたいがための無自覚な行動なんだろうけどね)
それにしても―――
ロイ(またマルス兄さんが使い物にならないや…)
1Fでは暴走、2Fでは気絶、先が思いやられる
はぁー…っと深いため息を吐き、ロイは日が傾いたことで
少しずつ夕日に近付きつつある橙色の空を逃避目的を兼ねて窓から見るのだった…

リン「まったく…マルスの奴…」
先ほどよりかは怒りも治まってきたようだ、いくらか他者を寄せ付けぬ雰囲気が薄れた
アルム「何やったかは知らないけど…懲りないなぁ、マルス兄さん」
リン「いくらシメあげても同じことやらかすのよね」
エイリーク「それにしても…なにも起きませんね」
アルム「そういえばそうだね、もうだいぶ進んでるのに」
リン「…忘れてた、そろそろ何か来るかしら?」

ロイ「リーフ兄さん、どうしよ?」
リーフ「んー…何かないっかなー」
ガサゴソと袋をあさり、仕掛けを探すリーフ
ちなみにマルスはその辺にあった椅子を並べ、そこに寝かせた
椅子の高さがマチマチのため寝心地は悪そうだ
意識が戻るのはいつになるやら…
ロイ「リン姉さんとかは普通じゃ驚かなさそうだしね…」
リーフ「そうなんだよ、どうしたものかな」
リーフはこの袋には良いものがないと判断し、机の端に袋をどけ、
また別の袋を手元に持ってきて漁る、どれだけ用意したのだろうか
リーフ「ん? これなんだっけ…」
何か気になるものがあったのだろうか、袋の奥へ手を伸ばし、取ろうとする
ロイ「なにかあったの?」
リーフ「いやちょっと気になるのがあって…取れないなぁ、よっと!」
もどかしくなり一気に袋の奥へ手を突っ込む、その拍子に先ほど端へどけた袋を突いてしまった
ロイ「あ!」
ガシャンッ!!
当然の如く床へ落ちる袋、散乱する中身

109 :Let's肝試し!(71):2008/12/20(土) 00:02:24 ID:bScIhxma
リーフ「HAHAHA、やっちゃったZE!」
ロイ「『やっちゃったZE』じゃないよ、もう! 全く…」
とりあえず片付けるべく落ちた袋の元へ向かうロイ
ロイ「へ? 何コレ」
リーフ「ん?」
二人の目線の先には散乱した袋の中身、それとなぜか虹色に光り輝く袋があった
ロイ「確かこれマルス兄さんが持ってきたんだっけ」
リーフ「うん、確かそうだったはず、マルス兄さーん、これ何…って聞こえないか」
当の本人、現在進行形で気絶中
ロイ「とりあえず片づけないと…」
リーフ「はは、ゴメンゴメン」
ロイが身をかがめ、正体不明の物を片づけようとする、その瞬間部屋に突風が吹いた
ロイ「うわ…! すごい風」
リーフ「なんか風が強くなってきたね」
今でも開けっぱなしの窓から新鮮な空気がこれでもかといわんばかりに入ってくる
リーフが窓から外を見ると木々が激しく揺れている光景が飛び込んできた
ロイ「あ、それどころじゃないや、片づけ…あれ?」
袋がない、どこにいったのかと探すと部屋の端っこに、くしゃくしゃになった袋を見つけた
ロイ(あの光の正体なんだったんだろ…というかどこにいったのかな)
周りを見渡してもそれらしきものは見当たらなかった…

リン「ついに何も起きなかったわね、もうすぐ階段」
エイリーク「なんだか拍子抜けです…」
アルム(マルス兄さんは大方ダウンしてるだろうけど…あと二人いるのに?)
リン「あった、あれね」
アルム「うーん、腑に落ちないんだけど」
エイリーク「私もです、何かあると思ったんですけど」
緊張が完全に緩みつつある三人、その時だった

フゥッ…

リン&エイリーク&アルム(((…!)))
背後に何かの気配を感じ、一斉に後ろを向く
が、なにもいない…
リン「あれ…なんか気配があったと思ったんだけど」
アルム「気のせいじゃないと思うんだけど…うーん」
エイリーク「…」
確かになんらかの気配があった、三人は辺りを見渡すが何も見えない
エイリーク「気のせいだったんでしょうか」
リン「でも私たち全員が気配を感じてるのよ」
アルム「なんか気味が悪いなー…」
得体のしれない悪寒がする、しかし何もない以上気にしても仕方がない
気配もすっかり消えてしまった
アルム「やっぱり気のせいだったのかも…先行こうよ」
エイリーク「そうですね…何もないですし」
二人は階段へと歩み始めた

110 :Let's肝試し!(72):2008/12/20(土) 00:03:22 ID:bScIhxma
リン(気のせいなんかじゃない…確かになにか居た…―――!)
背後に何かの気配をまた感じる、リンがそっと後ろを向くと…
リン「きゃーーーーーーーー!!!!?」
アルム「おわぁ!? リン姉さんいきなり何…って、わーーー!!?」
エイリーク「シ、シグルド兄上!!?」
三人の目線の先にはシグルドがいた…
しかもただのシグルドではない、虹色に輝くシグルドの顔があった、
首から下はない、所謂「生首」状態、それが宙に浮いている
リン「いやぁーーーー!! 何よこれーー!!」
アルム「ビジュアル最悪だよ!」
エイリーク「なんでシグルド兄上の顔なんでしょう…!?」
リン「こっちが聞きたいわよ!」
とりあえず三人して謎のシグルド(以下、虹シグルド)から距離を取る、
一番近くにいたリンはものすごい速さで後ずさりした、虹シグルドはというと
三人を黙って直視している、リン達は目線を合わせることができずにいた
アルム「ど、どうしよ?」
リン「とりあえず絶対近づきたくない」
エイリーク「同じく…ちょっと…その」
三人で対策を練る中、虹シグルドはふいに三人から視線を外してしまった
そしてしばしその辺をふよふよと動きまわる
エイリーク「ど、どうしたんでしょう?」
リン「知らないわよー…」
アルム「ゆ、夢に出そう…」
ふいにまたピタリと動きを止める、そしてゆっくりまたこちらへ視線を向ける
リン「こっち見んな…!」
アルム「目が…合わせられない…!」
エイリーク「これが…眼力ですか…!」
数秒見つめた後、今度はくるりと壁の方へ向きを変える虹シグルド、そして
虹シグルド「キンシンハユルサンゾォー…」
そう呟きながら壁の中へ吸い込まれるように消えてしまった…

沈黙

アルム「…怖っ!!」
アルムが他二名の心中を代弁し、三人はその場でしばし凍りついているのだった

111 :Let's肝試し!(73):2008/12/20(土) 00:04:21 ID:Kjxomp7u
一方こちら仕掛け人組み
リーフ「おろ、リン姉さんの悲鳴?」
ロイ「なんか凄い罠仕掛けたっけ?」
一旦作業をする手を止め、口を開く二人
マルス「ん…アイタタ…体の節々が傷むよ…」
ロイ「あ、目覚ました」
リーフ「おはよう、マルス兄さん」
マルス「…三途の川って、向こう側に花畑見えるんだね」
ロイ(危うく渡りそうだったのか)
リーフ「兄さん、3Fに仕掛けしに行くことにしたから、早いとこ体動かしてよ」
マルス「体が痛いんだけど…ものすごく」
リーフ「いつも僕が負う傷に比べたら遙かに温いよ、その程度なら動けるって」
ロイ「とりあえず傷薬渡しとくから、使いながら来てよ、時間ないし、今までサボってたし」
荷物をまとめるリーフ、ロイは袋から傷薬を差し出しながら、マルスに動くよう促す
マルス「…はいはい、僕の袋はどこ?」
ロイ「んっと、これかな」
袋を受取り、中を少し確認する
マルス「うん、確かに…あれ?」
リーフ「どしたの?」
マルス「仕掛けが一つないんだ、ちょっと自信作のやつだったんだけど」
ロイ「…もしかしてそれ、虹色に光ったりしない?」
マルス「そう…ってなんで知ってるの」
リーフ「ごめん、さっき僕が荷物落しちゃってさ、その辺にいっちゃったみたい…」
マルス「そうか…まあ無くなったものは仕方ないか」
ロイ「あれ、なんだったの?」
マルス「地区対抗の『スマッシュボール』だよ、それをカプセル状態で持参した」
リーフ「なんでそんなの持ってきたの、ハンマーといい…」
マルス「何かに使えるかなって思ってさ、しかもただのスマッシュボールじゃないんだ」
ロイ「また物騒な細工したんじゃないだろうね…」
マルス「それが、わかんないのさ」
リーフ「え、なにさそれ、自分で把握してないの?」
マルス「ルーテさんに頼んだんだ、『これを素に肝試しで使えそうな物にしてほしい』って、
    そしたら二つ返事でOKだったよ、興味深いと言ってたかな」
ロイ「ルーテさんの手が入ったスマボ…すさまじく嫌な予感がする」
リーフ「それが今、野放しになってるんだよね…」
マルス「一応安全は保証すると言ってたけどね」
ロイ「アテにならないと思う…」
リーフ「まあ、とりあえず行こう、時間が惜しいし」
マルス「後で見つけたら処理しとこうか」
荷物をまとめ、3Fへ急ぐ仕掛け人三名、
3Fを前に時が止まってるリン、アルム、エイリーク
そして…
虹シグルド「キミニキスデキナイウンメイナンテ…」
ルーテ作のスマッシュボールがその辺を何か呟きながら徘徊してる最中、
肝試しはなおも続く…