16-254

Last-modified: 2011-06-07 (火) 23:25:14

「アイク兄上、一体どこに行かれるのです?」
と、エイリークが尋ねた。
疑問に思うのも無理はない。
今はすでに夜、懐中電灯なしでは周囲を確認するのも困難なほどだ。
そんな時間に出かけるなど、特別な用事でもあるのかと思える。
アイクは心配するエイリークの顔を見て、宥めるように頭を撫でた。
「心配するな、エイリーク。少し山に行ってくるだけだ」
「山・・・って余計に心配になりますよ!」
逆効果だった。
余計に心配し始めたエイリークをどうしようかと悩むアイク。
その様子を見ていたミカヤが、助け船を出すつもりで
「山に行って何をするつもりなのかしら?」
と尋ねた。
思いもよらない人物からの質問に一瞬固まったアイクだが、それにすぐ答えた。
「滑ってこようと思う」
「・・・は?」
予期せぬ回答にミカヤ、エイリークの両者は声を揃えて驚いた。
そんな二人に構わず、アイクは続ける。
「暗闇を滑ると目前にいきなり障害物が現れるだろう?
それを避けるには反射神経が必要になる」
「・・・つまり、アイク兄上は修行のために今から山に行かれる、と」
「そういうことだ」
真顔で淡々と語るアイクに、言っても無駄と判断したエイリークは
「それなら仕方ありませんね・・・、行ってらっしゃいませ」
と、見送ることにした。

翌朝、アイクが野生の鹿や猪を担いで帰って来たのは言うまでもない。