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Last-modified: 2011-05-30 (月) 22:28:00

終章 若さの意味

―兄弟家、夜、入浴を済ませたリンは、脱衣所の鏡の前で自分の顔をじっくり観察していた。

リン   (顔立ちは・・・たしかに童顔とは決して言えないわね・・・
      目がなあ・・・ぱっちりじゃなくて、角があるのよねえ・・・
      これはサカの血だからしょうがないか。
      でも、肌は大丈夫のはず、染みなんてひとつもないし、
      しわもなく、ツルツルのピンピンよ。
      全体で見れば、顔は問題なしよね・・・)

―続いてまだ湿りが残っている髪を手でもってい、色々な髪型を作ってみた。

リン   (この長さがいけないのかしら・・・?
      そういえば、幼い子ってショートカットが多いわよね。
      いっそのこと私も切っちゃう?
      でもチキは長いし・・・ポニーテールってどっちかといえば子供っぽい髪型よね・・・)

―顔と髪を一通り観察したリンは、己の外見について思考をめぐらす。

リン   (顔も髪もそこまで問題はないはずよね・・・でも老けて見られるって事は・・・)

―リンは視線を下に向ける、体に巻いたバスタオルから、今にも零れ落ちそうな、
充実した胸の谷間が視界に入ってきた。

リン   (やっぱり、胸(これ)か・・・)

―リンは何歩か後ろに下がり、鏡にほぼ全身を映すと、体に巻いてあるバスタオルを外し、
今度は己の体を観察した。
日頃の剣術の賜物か、全体的に引き締まったは健康的な魅力に溢れている。
その一方で、豊かな胸や肉感的な腿は、成熟した女を感じさせる。
健康的な魅力と女の魅力、その二つを兼ね備えた肢体は、非常に魅力的であり、魅惑的だった。
そんな100人の男が見たら99人が鼻血を出すであろう、リンの肢体だが、
「幼さ」「あどけなさ」と言った言葉は、お世辞にも出てこなかった。

リン   「はあ、剣や弓の時には邪魔になるし、男にはいやらしい目で見られるし、
      少女扱いされないし、胸が大きくていいことなんて1つもないわ・・・」

―愚痴りながら服を着て、脱衣所から出ようと戸を開けると、そこには・・・

エイリーク「ふふふ、胸が大きくていいことなんて1つもありませんか、
      ふ~ん、へえ~、さすが我が家1の巨乳はおっしゃることが違いますね」
リン   「ね、姉さん!!聞いてたの?」
エイリーク「そうですよね、私なんて、剣を振っても邪魔になりようがないし、
      殿方の視線なんて絶対引くことはありませんし、
      この間の銭湯では5歳の女の子と同い年扱いされましたし、
      つまり、貧乳の私は幸せなんですね・・・
      ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ・・・」
リン   「え、ええっと、お、お風呂空いたし、姉さん、どうぞ」
エイリーク「そうさせてもらいます、
      今日も薄い胸を見て絶望に打ちひしがれる時間が始まるのです。
      あは、あはははははははは、あは・・・」
リン   「こ、この間の銭湯から、まだ立ち直りきれていないのね・・・」

―不気味な笑い声を立てながら脱衣所に入っていくエイリークを見送りながら、
リンはふと、疑問をもった。

リン   (他に色々あるかもしれないけど、姉さんはあの体型のおかげで
      歳相応に見られているのよね・・・
      他の子はどうだったかしら?明日調べてみよう・・・)

―翌日、エレブ学園女子更衣室は異様な雰囲気に包まれていた。

フロリーナ「リ、リン・・・ええっと、そろそろ服着ていい?」
リン   「もうちょっと待って!!」
リン   (フロリーナ・・・全体的に私より細いわね・・・
      でも胸のふくらみはあるし、幼児体型ではないはずなんだけど、
      なぜか幼く見られるのよね、この子・・・一体何故?)
レベッカ 「うう、寒いし、恥ずかしいよぉ・・・」
リン   (レベッカ・・・この子結構胸大きいわね・・・
      太腿もむっちりしているし、私に似た体型だわ・・・
      それなのに老けて見られない、どこに違いがあるのかしら?)

―リンが服を脱いだ女子の体を徹底的にガン見しているのである。
無論、リンの目的は「若さの秘密を探ること」なのだが、
やっていることがやっていることなだけに、女の子達は不安でしかたがない。

シャニー 「(小声で)ね、ねえ、ロイ様のお姉さん、一体何してるの?」
リリーナ 「(小声で)わ、わかんないよ・・・」
シャニー 「あたし、聞いたことあるんだけど、リンディスさん、実はレズって噂が・・・」
リリーナ 「わたしも聞いた事あるわ、ロイは否定していたけど・・・」
シャニー 「じゃ、じゃあ、これって、その、品定め?」
リリーナ 「ま、まさか・・・わ!こっちにきた」
リン   「あなた達、ちょっといいかしら」
シャニー、リリーナ「い、いやああああああ!!」

―リンが中にいる女の子を一通り視姦、もとい観察し終えたその時、
タイミング良いというか悪いというか、新たな生贄が入ってきた。

ララム  「やばい、体育の授業に遅れちゃう!!」

―大急ぎで制服を脱いで、体操服に着替えようとするララム、しかし、リンが見逃すはずが無かった。

リン   「(キュピーン!!)ストップ、そのまま!!」
ララム  「へ?」
リン   (踊りをやっているだけあって、引き締まっているわね。
      でも胸は結構あるし、太腿もむっちり・・・
      この子も私に似ているわね・・・でも老けて見られることはない・・・
      レベッカといい、この子といい、なんの違いがあるの・・・)
ララム  「な、なによ、女の子といえど、乙女のヒミツをじろじろ探るなんて・・・」
リン   「ちょっといいかしら?」

―そう言って、リンはおもむろにララムの胸に手を伸ばす。
無論、リンの目的は「若さの秘密を探ること」なのだが(以下略)

ララム  「!!!!!!!!!」
リン   (触り心地に特別変わったことはないわね・・・)
ララム  「あ・・・あ・・・//////////」
リン   「ねえ、悪いけど、ちょっと下着脱いでみて」
ララム  「き、き、き、きゃあああああああああああ!!」

―ララムは全速で更衣室を逃げ出した、そして、運よくというか、悪くというか、
丁度、ロイが更衣室の前を通り過ぎようとしていた。

ララム  「うわああああん、ロイさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ロイ   「ちょちょちょ、ちょっと、ララムさん!!その格好で抱きつくのは、いろんな意味でまずいです!!」
ララム  「汚されちゃった、あたし汚されちゃったぁ~~~~~~」
ロイ   「お、落ち着いて、ね?////////」
ララム  「綺麗な体じゃなくなったけど、捨てないでね、あたしのこと捨てないでね」
ロイ   「わ、わかったから、と、とにかく離れて、あと服を着て///////みんなが見てるよおおおお!!」
通行人一同(はあ・・・またロイか)

―放課後、結局若さの秘密を見出せなかったリンは、1人思い悩んでいた。

リン   「はあ~~~、若さって一体何なのかしら?」
サザ   「ん?リンディスじゃないか」
リン   「あ、サザさん・・・」
サザ   「どうした、何か悩んでいるのか?」
リン   「え、いえ、大したことじゃないんですけど・・・
      そうだ、1つ質問してもいいですか?」
サザ   「何だ?」
リン   「サザさんは、若さって一体なんだと思いますか?」
サザ   「若さ?そうだな、若さとは、『壁にぶつかって行くこと』だろうな」
リン   「壁に?」
サザ   「ああ。どんなに困難で、不可能だとさえ言われる壁にも、
      恐れずにぶつかっていく、これこそが若さの証だと思う。
      そう、こんなふうにな!!」
リン   「え!?」

―サザは突如走り出し、猛スピードで前を歩いていった人物に向かっていった。
そして、短剣を抜き、大声で叫んだ。

サザ   「勝負だ、フォルカ!!」
フォルカ 「・・・・・・」

―地面を蹴って飛び上がり、切りかかるサザ、しかし・・・

サザ   「ぐはあああああ!!」

―フォルカの滅殺により、一瞬で勝負はついてしまった、フォルカは何事もなく去っていく。

リン   「だ、大丈夫ですか!?」
サザ   「り、リンディス、こ、これが若さだ・・・」
リン   「しゃべっちゃダメです、誰かああああ!!」

―たまたま通りかかったクロード神父のリカバーにより、サザは一命を取り留めた。

サザ   「ふう、助かった」
リン   「助かった、じゃ、ないですよ。フォルカさんに立ち向かうなんて、死ぬ気ですか!?」
サザ   「リンディス、若さとはこういうことだ。
      かたやラグズ最強、かたやラグズ最弱、確かに俺に勝ち目はゼロかもしれない。
      だが、それでも、自ら立ち向かって、壁にぶつかる、これこそが若さだと、俺は思うんだ。
      そう、こんなふうにな!!」
リン   「また!!?」

―サザは再び走り出し、猛スピードで、前を歩いていった人物に向かっていった。

サザ   「ミカヤは俺が守る!!奥義、瞬殺!!」
漆黒の騎士「身の程をわきまえよ、月光」

―エタルドの輝きが増し、5回の斬撃が放たれる。

サザ   「致命傷・・・ってのかな・・・・・・」
リン   「当たり前です、208のダメージに耐えられるユニットはこの世にいません」
サザ   「だが、何度でも俺は立ち向かう・・・それが・・・わか・・・さ・・・」
リン   「その前に死んじゃいますって!!誰か、誰かああああああ」

―幸い、たまたま通りかかったエレンのリカバーにより、サザは再び一命を取り留めた。

リン   「流石にサザさんの真似はできないわ・・・どうしよう?」
???? 「若さについて、知りたいのですか?」
リン   「・・・あ、あなたは!!!???」

―声の主を認識するや否や、リンディスは咄嗟に声の主と距離をとり、身構えた。
声の主は、シグルドの務めるグランベル商社の社長、クルトだ。
彼とは一度も会ったことがないにもかかわらず、リンが身構えたのには理由がある。
それは、昨夜の夕食時、家族で観ていた特別番組だった。

ドロシー 「さあ、『緊急特番、女の敵は誰だ!?紋章町、女たらしランキング』も
      あとは第1位をのこすところとなりました。
      って、いいんですか、こんな番組?」
セーラ  「今のところ、第3位がホメロス、2位がレヴィン、
      いずれもユグドラル区が上位を占めているわ」
ドロシー 「このまま1位もユグドラルから出るのでしょうか?
      それでは発表です、紋章町女たらしランキング、第1位は・・・」
セーラ  「全ての悲劇はこいつの人妻好きからはじまった、
      ロプトの子孫と不倫するなんてヘイム直系の自覚はあるのか!?
      人妻大好きのろくでなしプリンス、クルト!!」
ドロシー 「ええ、クルトさんはグランベル商社の社長をつとめていますが、
      判明しているだけで、これまで49人の女性と関係をもっており、
      いずれも全て人妻です」
セーラ  「うわ~~~、まさに女の敵ね。
      ロプトウスよりこいつを倒すべきなんじゃないの?」
ドロシー 「それゆえトラブルも多いそうです。
      これまで女性がらみで訴訟19件、殺傷事件6件、
      戦争1件を起こしています・・・って、戦争!?」
セーラ  「つまりは聖戦の系譜本編でしょ」
ドロシー 「また、全体的に見て、社会的地位の高い女性が多く、
      有名なところではヴェルトマーのシギュンさん他、
      ドズル家のランゴバルトさんの奥さんや
      フリージ家のレプトールさんの奥さんとも関係があるとか・・・」
セーラ  「っていうか、こいつが暗殺されたのって、
      政治とか陰謀とかじゃなくて、それが原因じゃないの?」
ドロシー 「ええ、クルトさんからのコメントが届きました。
      『あと1人で50人、これからも頑張って、籠に閉じ込められた小鳥達を、
       愛の力で解放していきたいと思います』とのことです」
セーラ  「コメントも最低ね」
ドロシー 「紋章町の女性の方、とくに既婚者の方は十分にご注意下さい」

―以上のような番組内容であった。
リンは人妻ではないが、クルトの姿を見たとたん、思わず身構えてしまったのだ。

クルト  「あなたは、うちのシグルド係長の妹さんですね?」
リン   「そうですけど・・・」
クルト  「身構える必要はありませんよ、私が愛を説くのは人妻だけですから」
リン   「・・・・・・そ、それで、なにか御用ですか?」
クルト  「若さについてお悩みなら、私が教えて差し上げましょうか?」
リン   「え・・・」
クルト  「私、40を越えておりますが、外見については、
      それなりの若さを保っていると自負しておりますが・・・」
リン   「よ、40!?」

―リンが驚くのは無理もない。
精悍な容姿と癖のない長髪はどう見ても20代にしか見えなかった。

注 クルト王子の年齢はゲーム中では不明ですが、ディアドラの父親ですから、
少なく見積もっても40にはなっているはず、間違っていたらごめんなさい。

クルト  「若さの理由、お教えしましょうか?」
リン   「ぜ、ぜ、ぜ、是非ともお願いします」

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クルト  「私の若さの秘密、それは『自由への渇望』です」
リン   「じ、自由への渇望?」
クルト  「私は生まれて以来、グランベルの跡継ぎとして育てられました。
      古い観衆に縛られた私の生活に、自由はありませんでした。
      子供の頃から、私は自由を渇望していたのです」
リン   「・・・」
クルト  「幸い、今に地位になってからは、私自身の自由は利くようになりました。
      しかし、今度は私と同じように縛られた者達の自由を、私は望むようになったのです」
リン   「他の人たちというと・・・?」
クルト  「家庭という篭に閉じ込められ、結婚という名の鎖に繋がれた、
      哀れな小鳥達・・・他者のこととはいえ、私には耐えられなかった」
リン   「それって、つまり人妻・・・」
クルト  「私は力の及ぶ限り、愛を持って小鳥達を束縛から解放するよう努めました。
      するとどうでしょうか、私の体は老いを忘れ、
      いつまでも若々しい姿を保つことができたのです!!」
リン   「要するに、人妻に手を出していたら、元気がでて若返っちゃったと・・・」
クルト  「具体的な方法をお見せしましょう。あちらをご覧下さい」

―クルトが手を向けた先に、1人の女性がいた、キュアンの妻、エスリンである。

クルト  「しばらくご覧になっていてください」

―クルトはエスリンの方にむかい、声をかける。

クルト  「これはこれはエスリン夫人、ごきげんはいかがですか?」
エスリン 「あ、あなたは!!??」

―エスリンはクルトの姿を確認するや否や、警戒感を露にした。
昨夜の番組もさることながら、実際彼女はクルトに口説かれたことがあるからだ。

クルト  「そう固くならずに、お互いの本音で語り合いませんか?」
エスリン 「あ、あなたの下心の詰まった本音など、知りたくありません」
クルト  「ああ、なんということだ、夫人は束縛のあまり、
      真実の愛を感じることができなくなったのですね・・・」
エスリン 「そんなことありません、キュアンへの想いが、私にとっての真実の愛です」
クルト  「ほんとうに、そう思われますか?」
エスリン 「え?」

―クルトはエスリンとの距離を詰め、彼女の肩をつかむ。

エスリン 「や、やめてください、私は夫のある身で・・・」
クルト  「今の言葉は、心からのものですか?それとも、世間体によるものですか?」
エスリン 「え・・・その・・・」
クルト  「思い出してください、貴女がまだ何も囚われない少女だった頃を、
      自由な心から生まれる真実の愛を、貴女は求めていたはずだ」
エスリン 「あ・・・/////////」

―クルトはエスリンの瞳を見つめ、顔を近づける。
ヘイムの血脈のなせる業か、彼自身の魔力か、エスリンの思考能力が次第に麻痺してきた。

クルト  「さあ、貴女の求めるものは、何ですか?」
エスリン 「///////////」

―2人の唇が今にも触れあいそうになった瞬間・・・

エスリン 「だ、だめえええええええええ!!」

―かろうじて思いとどまったエスリンは、彼を突き飛ばし、その場を走り去っていった。

クルト  「あと少しですね・・・いかがですか、リンディスさん?これが私の若さの理由です」

―あっけに取られるリンディスだったが、確かにクルトの肌は先ほどより艶を増していた。

リン   「ほ、本当に、若さの秘密だったんですね
      あ、あの、ところで、エスリンさんは・・・その・・・?」
クルト  「彼女の束縛は相当強固ですが、もう一度私が愛を語れば、彼女は解き放たれるでしょう」
リン   「え!!?じゃあ、クルトさんとエスリンさんが・・・ふ、不倫・・・/////」
クルト  「彼女が、私にとって50人目の解放者となるわけですね。
      ああ、彼女との次の出会いが待ち遠しい・・・」
???? 「安心しろ、未来永劫、その時は訪れない」
クルト・リン 「え?」

―クルトが後ろを振り向くと、そこにはキュアンが立っていた。

クルト・リン( ゚д゚)
キュアン 「クルト殿、さきほどは私の妻が世話になったようだな」
クルト  「い、いえ、ほんの少し、愛を語ったに過ぎません」
キュアン 「少女の頃に戻って本音で語れ、か・・・では、我々も本音で語るとしようか。
      少年らしく、言葉ではなくて・・・拳でな!!」

―クルトの首根っこを掴み、引きずっていこうとするキュアン。

クルト  「・・・リンディスさん、これも、これも若さなのです」
リン   「え?」
クルト  「自由には代償がつきものです、自由を求めれば人は必ず傷つきます、
      しかし、それを恐れずに、自由を望みつづける、それこそが若さなのです」
リン   「は、はあ・・・」
キュアン 「では、代償を払いにいこうか。リンディス、シグルドとリーフによろしくな」
リン   「え、あ、はい・・・」

―キュアンはクルトを物陰に引きずっていった、そして・・・。

クルト  「痛い、痛い、ちょっとは手加減してください!!
      私、戦いは一切できないもやしっ子なんです。
      ナーガを持っているくせに、スワンチカ(笑)に暗殺されるくらいの、
      ヘタレユニットなんですよ!!
      ぎゃあ、やめて、アッーーーーーーーーーー!!」
リン   「・・・・・・」

―リグレ家

パント  「え?若さの秘密?それはね、『愛』だよ。
      愛する家族、愛する妻とどんなときも愛し合っていれば、人はに老いないさ。
      昨夜のルイーズなんて、そりゃあね・・・」
ルイーズ 「まあ、あなたったら・・・////////」
パント・ルイーズ (イチャイチャイチャイチャイチャ)
リン   「・・・・・・」

クレイン 「・・・若さというのはね、『苦労』だよ。
      天然過ぎる両親、じゃじゃ馬な妹、そんな家族に囲まれ、
      全ての仕事を背負い、愛する女性は他の男とラブラブ、
      唯一の楽しみといったら、同じ境遇の男と自棄酒を煽るくらい・・・
      若い頃の苦労は買ってでもしろ、というけど、むしろ他人に売りたいくらいだよ・・・
      そんな苦労が、僕の若さの秘密かな・・・」
リン   「そ、それって、逆に老けちゃうんじゃ・・・」

―道端にて

ヘザー  「いいこと教えてあげる、若くなる方法、それはね、レズになることよ」
リン   「・・・・・・(無視)」
ヘザー  「無視しちゃいや~ん」

―結局のところ、リンは自分にあった若さの秘密を知ることはできなかった。
流石に歩きつかれたリンは、近くの公園のベンチに座り込んだ。

リン   「はああああああ、何にもわからなかったわ・・・
      どうしたら私、少女になれるのかしら・・・?」
???? 「あら、リンディスさん」

―落ち込むリンディスに声をかける女性がいた、
クルトの娘にしてシグルドの恋人(?)のディアドラである。

リン   「あ、ディアドラさん、こんにちわ」
ディアドラ「随分悩んでいたみたいだけど、なにかあったの?」
リン   「あ、その、実は・・・」

―リンはディアドラに自分の悩みを打ち明けた。

ディアドラ「・・・そう、外見が大人びてみられることを、
      気にしていたのね」
リン   「私の友達は皆年齢相応なのに、私だけ、15歳に見られていないんです。
      なんとかしようと色々試してみたけれど、うまくいかなくて・・・」
ディアドラ「・・・・・・リンディスさん、これ、見てくれる?」
リン   「え?」

―ディアドラは一枚の写真を取り出した。
写真に写っているのは彼女自身、構図はやや斜めを向いた彼女の顔のみを映している。
つまりはゲーム本編につかわれた彼女の顔グラフィックである。

ディアドラ「これ、私なんだけど、幾つに見えるかしら?」
リン   「ええっと、今のディアドラさんですよね・・・
      そうすると、24歳くらいですか?」
ディアドラ「正解は、17歳」
リン   「え、ええええええ!?」
ディアドラ「ふふふ、驚いているわね」
リン   「え、あ、す、すみません」
ディアドラ「いいのよ、見る人は皆驚いているからね。
      たしかに私の顔グラはどうみても、20過ぎた成人のものよね。
      でも、これが17歳であるのは本当よ、
      じつはシグルド様と初めてお会いした頃のものなの」
リン   「兄さんと知り合ったのって、そんなに昔のことなんですか?」
ディアドラ「昔、というか、私、親世代ではそもそも17から20くらいなの。
      これ(↓)が証拠よ」

(聖戦の系譜 第1章 マーファ上南西の村人の会話)
その子(ディアドラ)は村の占いおばばにひきとられたときいたが
今はどうしてるかのぉ
もし生きてれば「17、8才」にはなっていると思うが・・・

リン   「ほ、本当だ・・・」
ディアドラ「でも、誰も私を年齢相応に見てくれる人はいなかったわ。
      シグルドさまですら、『え、君、未成年?』と驚いていましたし。
      『一章のタイトル、【精霊の森の熟女】の方がふさわしくね?』
      なんて書き込みを、聖戦スレでみたこともあります。
      昔から、老けて見られていたのよ」
リン   「ディアドラさんも私と同じ苦労をなさっていたんですね・・・」
ディアドラ「でもね、私は一度も悩んだことは無いの。
      見た目が老けているのなんて、気にしたことは無かったわ」
リン   「え?どうして!?」
ディアドラ「それはね、これよ・・・」

―ディアドラはもう一枚の写真をリンディスに見せた。
1枚目と全く同じディアドラが写っている、違いは全くわからない。

ディアドラ「その写真の私、いくつにみえるかしら?」
リン   「一枚目と全く同じですよね、ということは、これも17歳?」
ディアドラ「正解は30歳」
リン   「えええええええ!!だって、1枚目とまったく変わっていませんよ」
ディアドラ「それはね、聖戦本編で私が死ぬ寸前の姿よ。
      聖戦を14回クリアするとオープニングで見られるけど、その時の私、30過ぎているの。 注
      でも、その姿は親世代のときと全く変わっていないわ」

注 聖戦一章はグランベル暦758年前後、そのとき17歳くらいということは、
ディアドラの生年は740年前後となる。
そして、終章(779年)のユリウスは「7年前にディアドラを殺した」と述べているので、
ディアドラが亡くなったのは772年頃、つまりディアドラの享年は30を過ぎていることになる。

リン   「え、でも、それって・・・」
ディアドラ「メタ的視点からいえば、もちろんわざわざ1シーンに
      老けた私の顔グラを用意するのが手間だっただけでしょう。
      でも、アルヴィス様やトラバントがことごとく老け込んでいる中、
      私は最後まで若い姿を保っていた事実に変わりはないわ」
リン   「・・・・・・」
ディアドラ「リンディスさん、若い頃老けて見られる人はね、
      えてして歳を取った時は若く見られるものなの。
      ずっと見た目が変わらないのよ」
リン   「そ、そうなんですか?」
ディアドラ「逆に、幼い子は老けちゃうのも早いのよ。
      オイフェなんて、子供の時はあんなに可愛かったのに、
      子世代ではひげなんか生やしちゃって。彼、多分まだ30前半よ」
リン   「そ、そういえば・・・」
ディアドラ「それはあなたのお兄様にも言えるんじゃないかしら?
      エリウッドさんやヘクトルさん、確かに今はいいかもしれないけど、
      20年後の彼らはかたや病人、かたやメタボ、40前とは思えないわ」
リン   「た、たしかに・・・」
ディアドラ「その点、私達はいつまで経っても若く綺麗なままでいられるの。
      これって、どちらが得だと思う?」
リン   「わ、私達ですか・・・?」
ディアドラ「そう、だから気に病むことなんか無いのよ」
リン   「な、なんか、ちょっと、わかってきました」
ディアドラ「あら?あ、丁度いいところに・・・マードックさーん!!」
マードック「これはこれは、ディアドラ殿・・・」

―ディアドラは前を通りかかった男に声をかけた。

ディアドラ「紹介するわ、ベルン署のマードックさん。
      マードックさん、この子は私の友人の妹で、リンディスさんよ」
リン   「こ、こんにちわ」
マードック「よろしく頼む。それでディアドラ殿、いかがなさいましたか?」
ディアドラ「例のアレ、この子に見せてあげられないかしら・・・」
リン   「アレ?」
マードック「あまり人に見せるものではないのだが・・・」

―マードックは一枚の写真を取り出した。写っているのは今と変わらぬマードック自身である。

リン   「ええっと、これ、今のマードックさんに見えますけど・・・」
マードック「これは、私の20年前の姿だ」
リン   「ええええええええええ!!!」
ディアドラ「初めてみたときは私も驚いたわ。私以上に見た目の変わらない人がいるなんて。
      おかげで私と彼は友人になれたのよ」

リン   「ということは、マードックさんも・・・」
マードック「小学校5年の頃、すでに周囲には高校生に見られていた」
ディアドラ「でも、そのおかげで50過ぎの今でも、変わらない姿を維持できるのよね」
リン   「・・・・・・」
ディアドラ「リンディスさん、わかったかしら?
      たしかに今、老けて見られるのは辛いかもしれない、
      でもね、10年後、20年後に笑うのは、私たちなの。だから、気に病んじゃダメよ」
リン   「・・・・・・はい、ありがとうございます、肩の荷が降りました。
      私、なんてつまらないことで悩んでいたんでしょう?
      ディアドラさん、マードックさん、今日は本当にありがとうございました」
マードック「例には及ばん」
ディアドラ「シグルド様によろしくね」
リン   「はい!!では失礼します!!」

―リンはお辞儀をし、その場を立ち去った。悩みから解放された彼女の足取りは、非常に軽やかだった。

リン   「見た目が老けているなんて、悩むこと無かったのね。
      10年後、20年後も変わらない見た目でいられるなんて、
      実はすっごく恵まれていたのよ、私!!」

―リンが帰宅すると、玄関にはミカヤとエリンシアが立っていた。

リン   「ただいま!!」
ミカヤ  「おかえりなさい」
エリンシア「おかえりなさい、悩み事はもう大丈夫なの?」
リン   「うん、つまんないことで悩むのはもうやめたの。心配かけてごめんね」
ミカヤ  「それはよかったわね」
エリンシア「では、こちらの話に入れますわね」
リン   「こちらの話?」
ミカヤ  「リン、さっき学園から電話があったの。
      あなた、今日、更衣室で裸の女の子を視姦してまわったそうね」
リン   「え!?いや、あれは、その・・・」
エリンシア「中には見るだけでは足らず、事に及んだ子までいるそうですね・・・
      ララムちゃんが泣いていたって、ロイから聞きましたわよ」
リン   「事に及んだって、ちょっと体を触っただけで、そんな大げさなことは・・・」
ミカヤ  「ショタコンだって聞いたから安心していたけど、リン、あなたやっぱりレズなのね!!」
エリンシア「いつか素敵な殿方にめぐり合えるから、
      女の子に走る必要はないと、あれほど言ったのに・・・」
リン   「違います、私はレズじゃありません!!」
ミカヤ  「問答無用、今日という今日は許さないわ!」
エリンシア「今後二度と女の子の体に興味を持たないよう、
      徹底に徹底を重ねてあなたを矯正しますわ。
      題して『エリンシアマッスルレッスン・アルティメット』
      120時間休みなしで人体のありとあらゆる筋肉を教え込み、
      殿方の逞しさを細胞レベルまで叩き込んで差し上げますわ!!」
リン   「120時間って、5日!!何よその殺人的なプログラム!!
      大体学校はどうするのよ!?」
ミカヤ  「大丈夫よ、すでに学校には1週間休むことは連絡済だから」
リン   「えええええええ!!??」
エリンシア「早速はじめますわよ、さあ、私の部屋に来なさい!!」
リン   「まって、ちょっと・・・いやあああああああああああ!!」

―こうして人類史上、かつてない筋肉の祭典がエリンシアの部屋で繰り広げられた。
5日に渡る筋肉漬けを終え、部屋から出てきた二人・・・。
エリンシアは、これ以上無い充実した5日間を過ごし、肌は艶々で、体は活力に溢れ、
若さをその身に取り戻した。
一方、リンは疲労で10歳以上老け込んでしまったらしい。