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Last-modified: 2011-05-30 (月) 21:47:37

アルム「うぅ…さっきの光景が目に焼き付いてる」
エイリーク「夢に…出そうです」
リン「今日ちゃんと寝られるかしら…?」
先ほどの、一家の長兄の虹色に輝く生首という神秘的なのか、奇怪なのか…
強烈なビジョンが脳にしっかり焼き付いてしまったようだ
疲労してるわけではないのに、どこかげんなりした雰囲気を漂わせる三人
エイリーク「と、とりあえず進まないと…」
アルム「あうー…」
リン「そう、ね」
未だ回復してはいないが立ち止まるわけにもいかない
少し強引にでも精神を立ち直らせながら進む三人、階段そのものはすぐそこだ
階段への扉を開け、階段を上りはじめる
アルム「ねぇ、アレ、どこ行ったんだろ」
あえて具体的に言わず、指示代名詞、さっきの今だ
二人にはアルムの指す『アレ』が何かはすぐにわかった
リン「知らない…でもどこかにいるでしょうね」
エイリーク「またいつ出ても良いように心構えしとかないと…」
階段を一段上がる、一歩ずつ確実に踏みしめながら、そして
心の準備をしながら…目指すは3F
-3F-
アルム「うわ…話には聞いてたけど入り組んでるね」
目の前にはあちこちに分かれた道、
まるで樹から枝が生え、そこから更に小枝に分かれるように…
エイリーク「…少しだけ風が吹いてません?」
リン「うん、吹いてる、いい風だけど…どこから?」
アルム「どこか窓が開いてるのかな」
エイリーク「まあ…不用心ですね、窓もドアと同じ、ちゃんと閉めないと」
リン「廃ビルに不用心も何もないと思うんだけど」
とにもかくにも行動を開始する、もちろん案内板を見ながら確実に

リーフ「お、きたきた」
ロイ「んじゃ、まず軽く一発」
マルス「いってみよー」
ヒモのような物を軽く引っ張った

ファサッ…
アルム「おお!?」
エイリーク「きゃ…! ちょっと驚きました」
リン「ただの布じゃない」
アルム「さすがというか、なんというか…動じないね、リン姉さん」
三人に突如大きな黒い布が被さり、視界が奪われる、
リンが三人の頭からそれをどけ、その辺に放る
エイリーク「あ、畳まないと…」
アルム(几帳面だなぁ、本当)
リン(私ってちょっとガサツなのかしら…?)

マルス「くそぅ…リン姉さん、足と同じで神経も太いな」
ロイ「後者はともかく前者は言ったらまた確実にシメられるよ」
リーフ「んーじゃあ次はどうしよっか」
ロイ「うーん…色々あるけど」
マルス「だからこそ迷うんだよねぇ」

エイリーク「うん、これで大丈夫です」
リン「じゃ、行きましょう」
無事畳み終えたところで三人が再び廊下を迷いなく進み始める

マルス「あ、動きだした」
リーフ「…なんか小腹空いてきたなぁ、何か持ってくればよかった」
マルス「いきなり何さ、話変えすぎだよ」
リーフ「いや…この辺一帯を見たら、もうじき夕飯だったの思い出してさ」
リーフの目線の先には、賞味期限切れの加工食品の山
3番手達が探索した後の給湯室に現在身を潜めているのだ
マルス「少なくともこれ見て食欲はわかないよ僕…
    さっき何の気なしに見たけど全部期限切れしてたし、得体の知れないのあるし」
リーフ「僕だって食べたいとは思わないよさすがに…でも一応食品は食品だしさ」
ロイ「…今晩のメニュー何かな」
マルス「…まあ、気にはなるけどね」
何故か本日の晩御飯について気になってしまった三人…食欲旺盛なのは良い事だろうか?
ロイ(ん…?)
ロイが何かを発見したらしく、二人から少し離れた部屋の奥へ歩みを進める
他二名もその動きに気づいたらしく
マルス「どうかしたのかい?」
代表してマルスが問いかけた
ロイ「いや、こんなの見つけたんだけど」
マルスの声に振りかえったロイの左手にはフライパン、右手にお玉
どちらもフライパンはよく家庭にあるようなデザイン、お玉は持ち手以外完全な金属製
リーフ「何それ」
ロイ「なんか置いてあった…それともう一つ気になることがあってさ」
マルス「気になる事?」
うん、とロイは頷き、続いて自分の手に持ってる二つの物を見やる
ロイ「よく漫画とかでさ、フライパンとお玉をガンガンやって起こしたりするのってない?」
リーフ「あーなんかあったような…」
マルス「場面は想像がつくね、で?」
ロイ「なんか凄くうるさそうなイメージあるけど、そんなにうるさいのかなって」
リーフ「そういえば実際に聞いたことないなぁ…」
マルス「大げさに描写してるんじゃない? そんなうるさくないと思うけど」
ロイ「僕もそう思うんだけど、どうせなら実際にやってみようかなって」
リーフ「…ちょっと気になってきたかも、今やっちゃえば?」
マルス「一瞬で終わる実験だし、やってみたらどう?」
ロイ「そう? じゃあちょっとやってみよーっと」
何故かどこか楽しそうな顔でフライパンの底とお玉を向き合わせるロイ、そして
ロイ「せーのっ」
力いっぱい、勢いよく互いを近づける―――

ゴワンッ!!!!!!

アルム「わっ!?」
エイリーク「きゃ!」
リン(!)
突如どこからか耳を叩くような音が廃ビル内に響き渡った
アルム「な、なんだろ…なにか金属音みたいなのが」
リン(不覚にもちょっと驚いたわ…)
エイリーク「ちょっと…耳が痛かったです」
リン「マルス達かしら?」
アルム「ちょっと驚いたなぁ…」
少しの間だけ歩みを止めたが、さして気にはしなかったようだ、行動を再開
仕掛け人達は…?

ロイ&マルス&リーフ「「「………」」」
無言…そして耳を押さえていた
マルス「う、うるさ…」
リーフ「頭にダイレクトに響いたよ…」
ロイ「み、耳が…」
各々それぞれの体勢で悶絶する、ちなみにこれ、実際にやると案外効く…
音源の奏者となったロイが一番ダメージがでかいだろうか
マルス「僕らの家族でコレする人いなくてよかったね…」
リーフ「今後はどうだろ…やるんならエリンシア姉さんあたりかな」
ロイ「それ一番自然だよね…今後されないこと祈ろう…」
しばし時を置き、回復した後、次に4番手達をどうするかの結論だが
リーフ「しばらくは様子見かな、一気に仕掛け作動させちゃうと面白みないし」
ロイ「それに耐性ついちゃうかもしれないもんね」
マルス「そうそう、少し気が緩んだときにやるのが狙いどきってやつさ」
どうやらしばしの間高みの見物を決め込むらしい、
様子を伺うためにはここからではもう視界に入らない、
三人はそっと4番手達の監視ができる部屋へ気付かれぬよう行動し始めた

アルム「でも、驚いてこそ肝試しだよね」
エイリーク「ふふ、そうですよね」
リン「そうねぇ…でも、なんの音か少し気になるわね…」
引き続き4Fへの階段を探す三人、次の曲がり角を曲がった時だった
アルム「…何あれ」
リン「かなり大きい穴が開いてる…」
エイリーク「自然に開いたものじゃありませんね、なんか強い力で破壊されたような」
廊下の外側に大きな穴が開いており、外に通じてしまっている
三人はあまり身を乗り出さないように外を見ると
そこには夕暮に近づいたことで、橙色に染まった美しい景色、
風が少し強いのか木々がザワザワと音を立てて揺れている、自然を感じさせる世界だ
リン「風、ここから入ってたみたい」
リンが外の景色を見続ける中、アルムは自分たちの周りを何の気なしに見回す
アルム「この辺一帯がなんか他よりボロボロじゃない?」
エイリーク「言われてみればそうですね」
アルムの発言によりエイリークも周りを見渡し、同意する
向こうにも内側の壁に穴が開いており、そこから部屋に入れるようになってしまっている
ちなみにこれらの傷、2番手の時に幻覚ガス騒動で
アイクがラグネルによる衝撃波で破壊しまくった惨状である、その事はこの三人は全く知らない
2番手たちが語りたがらなかったためである(要するに思い出したくない)
リン「あー新鮮な空気がいいわ」
アルム「うん、廃ビルなだけあってちょっと空気澱んでたしね」
エイリーク「この穴を開けてくださった方に少し感謝でしょうか…
      建物を壊すのは褒められたことではないのですけど」
しばし新鮮な空気を味わうため、穴付近に留まる三人、小休止といったところか

ロイ「そういえば僕らもほとんど中にいるね」
目的の部屋へ到着後、小休止を取る姉たちを見てロイが言った
リーフ「まあ、さっき換気で窓開けてたけど、換気しなかったらちょっと苦痛かも」
マルス「僕らもちょっと休もうか、もちろん姉さん達に気を配りつつ、ね」
マルスはそう言いながら立ち上がり、近くの窓を開けに行く
ロイとリーフは適当な椅子を探し出し、そこに腰かける
リーフ「兄さん、椅子出したよ」
マルス「やあ、ありがとさん」
窓を開け終えたので続いてマルスも椅子に腰かける
肝試しの最中、どこか平和なムードになる、ほのぼのとした時間、廃ビル内だけど…
やけに入り組んだ3Fにしては珍しくやや広めの部屋にて寛ぎ始める三人
ロイ「…思い出した、ルーテさん作スマボ、どうしよ?」
リーフ「あ、そうだ…処理しなきゃいけないんだっけ」
マルス「でも結構骨が折れると思う、スマボってほとんどの壁をすり抜けられるから」
リーフ「マジで…? しかもルーテさんの手が入ってるってだけで何があるかわかんないし」
マルス「壁すり抜けは本当だよ、もう少しで壊せそうな時壁すり抜けられて、
    すり抜けた先のアイク兄さんにスマボとられた時の絶望感といったら…」
ロイ「悲惨だねぇ」
リーフ「だい、てん、くぅ~」
マルス「わー! 今その単語を出すなぁー!!」
ロイ(やっぱり犠牲になったんだ)
マルスが頭を抱えて悶える中、ロイはスマボ対策を考え始めたときだった

――キ…シンハ…サン…ォー…

ロイ「ん…?」
なんか聞こえた気がする…それもよく知ってる声で
リーフ「どしたの?」
ロイ「なんか聞こえなかった?」
マルス「とくに何も?」
ロイ「空耳かなぁ」
リーフ「どれ、ちょっと耳を澄ませてみようじゃないか」
マルス「僕も乗ってみよっか」
しばしの間、聞こえてくるのは外から入ってくる風の音のみとなる

数十秒後…
リーフ「なんも聞こえないけど」
マルス「同じく」
ロイ「んー空耳だったのかなぁ」
マルス「どんなのが聞こえたのさ」
ロイ「凄く聞き覚えのある声、そしてフレーズで」

――キンシンハユルサンゾォ

ロイ「そうそう、こんな…の…?」
マルス「今の…何?」
リーフ「なんか聞こえたよね?」
ロイ「え、何、空耳じゃないってこと?」
マルス「そのようだね、誰だい? 出てきなよ」
辺りを見渡し、マルスが音源にどこか冷徹さを含んだ声色で呼びかける
しかし応答なし、静寂が支配するだけ

48 :Let's肝試し!(78):2009/01/21(水) 17:48:00 ID:+tUqN4mX
リーフ「ていうか、今のシグルド兄さんの声じゃん」
ロイ「あ、やっぱり…でもフレーズといいそうじゃないかって思ったんだけど」
マルス「この場にいるはずないからね」
ロイ「うん、だから違うと思うんだ」
リーフ「でも…シグルド兄さんにしか聞こえないよ」
マルス「とりあえず、何かいる事は確かだし、見つけてシメあげとこうか」
立ち上がり、不敵な笑みを浮かべるマルス
ロイ「シメあげるは置いとくとして、見つけないと気が済まないや僕」
リーフ「ま、気になるしねぇ」
続く形で二人も立ち上がる、捜索開始だ

数分後…
ロイ「なにもいないや」
リーフ「こっちも、成果ゼロ」
マルス「こっちもいないや…どこから声がしたんだろ」
うーん、と円状になり考え込む三人、その時だった、天井からまばゆい光が射したのは
マルス&ロイ&リーフ(((!?)))
光源を見ようとしたが眩しくて直視することができない、手で影を作りながら光源を見る
ロイ「な、何アレ!?」
リーフ「うおっ まぶし…」

――キンシンハユルサンゾォ~

光源から声がした
マルス「どうやらあれが犯人らしいねぇ」
光が弱くなり、直視できるようになった、
といってもまだ光っているので輪郭はわからない
ロイ「兄さん、これじゃないの? ルーテさん作スマボ」
リーフ「かもね…(でもやっぱりこれシグルド兄さんの声だよなぁ…?)」
その通りだった、これこそルーテ作のスマボそのものだ
少しだけ光りながら部屋をうろつき始めた、相手は壁すりぬけが可能、ならば
マルス「ここで捕まえてやる!」
ロイ「よっし!」
リーフ「やるぞー!」
逃げられる前に捕獲あるのみ、武器はない、こういった事を想定してなかったため
捕獲に適した道具もない、頼れるのは己の体だけ、今この時より
仕掛け人組みからスマボ捕獲隊へと変わった三人はスマボを追って床を蹴り、走り出した
マルス「二人とも! さっきも話した通り、相手は壁をすり抜ける、この部屋から出しちゃダメだ!」
リーフ「ここから逃げられると、また見つけるのに時間かかるかもだしね」
ロイ「相手を逃がさない事が最重要事項ってことだね!」
あちこちに進路を変え、トリッキーな動きをするスマボ
三人は相手を逃がさない事を念頭にスマボを追う

リーフ「くっ…!」
寸でのところで脇をすり抜けられてしまうリーフ、壁をすり抜けようと、
リーフの後方にあった壁を目指すスマボ
ロイ「させない!」
間にロイが入り、阻止
スマボは進路が阻まれたことで方向を変えざるを得なくなる
マルス「甘いね…」
進行方向を変え、スピードが落ちたスマボを上から適当な布をかぶせ、
押さえつけるマルス、布が球状に膨らんだ
ロイ「案外余裕だったね」
リーフ「ま、なんてったって僕達だし?」
マルス「はは、相手が悪かったって…こ…と?」
ロイ「あ、あれ?」
とたんにマルスの抑えていた布が萎びたようにぺしゃんこになってしまった
マルスが袋を上げて中を確認するとスマボがない
リーフ「なんで? 確かに捕まえたはず」
マルス「…! しまった迂闊だった…!」
ロイ「へ、どういう事…わ!?」
いきなり虹色の物体がロイの顔をかすめる、目で追うとそこにはさっきのスマボ
マルス「壁を抜けられるってことは、床も抜けられるんだ…
    もしかしたらこの布もアウトだったかもしれない」
リーフ「じゃあ捕まえようがないじゃん…」
ロイ「ど、どうしよ…」
リーフ「マ○ターボールとかないの?」
マルス「あるわけないでしょ、というか他作品ネタやってる場合かい」
リーフ「じゃあ、せめてマルス兄さんの『く○いまなざし』で逃げられなく」
ロイ「リーフ兄さん自重、というか真面目に対策考えてよ!」
マルス「それ以前に僕そんな技使えないし! あと同じネタ引っ張るな!」
対策が思い浮かばず、思案する三人、そんな三人を余所にふよふよと壁に移動するスマボ
ロイ「まずい、逃げられちゃう!」
マルス「…とりあえず素手で捕まえよう、
    一応拳で破壊したりは出来るから人体貫通は出来ないはずさ」
リーフ「とにかく捕まえないと話にならない、か」
ロイ「そうだね…もう一度!」
ロイが先陣を切って駆け出す、リーフ、マルスが後に続く

ロイ「じゃあさっきのと同じ作戦で!」
スマボの前に回り込むロイ、再びスマボは進路を変えようと速度を落とす
リーフ「学習能力はないみたいだね、と!」
その隙を逃さずガシッとスマボを掴むリーフ、捕獲成功だ
マルス「あっけないねー…でもどうしよコレ」
リーフ(なんだろ、やけにゴツゴツした手触りだなー?)
とりあえず捕獲したリーフの元に駆け寄る他二人、そして処理の仕方を考える
しばしの間あーでもない、こーでもない、と思案を巡らす
ロイ「んー…袋はダメ、というか何ならOKなのかわかんないし」
リーフ「…ねぇ、話の腰を折るけど、スマボって球だよね?」
マルス「うん? 僕が今まで見たのは綺麗な球体だけだよ」
リーフ「だよね、だけどなんか触った感じ球じゃないよ、これ」
マルス「忘れてたけどルーテさんの手が入ったスマボだったね、少し変わってるのかも」
リーフ「う、なんか持ってるの嫌になってきた、ロイ、変わってよ」
ロイ「い、嫌だよ、そんな得体の知れないの」
リーフ「僕だって嫌なの! いつも僕は酷い有様なんだから代わってもいいじゃないか!」
ロイに持ってたスマボを押しつけようとするリーフ、
ロイがマルスに矛先を向けさせようと視線を送ると
そこには我関せずと言わんばかりの笑顔のマルス、妙な攻防が繰り広げられる
そんな時、スマボの光がかなり弱まった…当然の如く輪郭がはっきりとする

マルス&ロイ&リーフ(((………)))

一点を見て言葉を失う三人、その一点とは

虹シグルド「キミニキスデキナイウンメイナンテ」
リーフの手に収まってる、よーく見覚えのある長兄の虹色の生首

マルス&ロイ&リーフ「「「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」

大絶叫が部屋を、廃ビルを、外の空気をも大きく揺るがした