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Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:21:19

なめてましたァーッ!

 

エイリーク「ただいま」
ロイ   「あ、お帰りエイリーク姉さん。大変だねこんな暑い日も部活なんて」
リーフ  「ホントホント。お疲れ様エイリーク姉さん」
エイリーク「……二人とも、アイスを食べているのですね」
ロイ   「あ、これ? そう、このラクトアイス、最近発売したやつでね」
リーフ  「なかなかおいしいんだよ。でもごめん、僕ら自分の小遣いで買ってきたから、他の皆の分はないんだ」
エイリーク「ああいえ、それはいいのですが」
リーフ  「あ、なんだったら一口食べる? エイリーク姉さんならいいよ、ホントに一口で済むし。
      これがヘクトル兄さんだったら『そうか一口か』って言って大口開けて一気に全部食べるし、
      エフラム兄さんなら『そうか一口か』って言って木のスプーンで物理的な限界までガバッと持ち上げちゃうし、
      アイク兄さんに至っては『そうか一口か』って言って容器ごと飲み込んで後で容器だけ吐き出すからね」
ロイ   「ホント無茶苦茶だよねアイク兄さんは……」
エイリーク「あの……私、そのアイス自体が食べたい訳ではないのです」
リーフ  「? でも今、なんか食べたそうにしてたよね?」
エイリーク「はい。実は……あの、笑わないでくださいね?」
ロイ   「うん」
エイリーク「私、一度でいいから、その」
リーフ  「一度でいいから?」
エイリーク「アイスのふたの裏を、舐めてみたいのです」
ロイ   「……はい?」
リーフ  「あ、あの常時高貴なオーラを完全装備、まるでお姫様みたいで我が家の貧乏な空気にあんまり馴染んでない
      エイリーク姉さんが、アイスのふたの裏を舐めるという貧乏人共通の下品な行為を!?
      うひゃあ、聞いたかいロイ。こりゃ珍しいよ。例えて言うなら烈火の剣の天候システム作動場面ぐらい珍しいよ」
ロイ   「よく分からないよそのたとえは……でも、本当にどうしちゃったのエイリーク姉さん?」
エイリーク「いえ、以前から一度してみたいとは思っていたのです。
      ヘクトル兄上やエフラム兄上がよくしていますよね、袋を傾けてポテトチップスのクズを口に流し込んだり、
      から揚げを食べ終わったあとのクズを一生懸命突きまわしたり」
ロイ   「あー、うん。でもリーフ兄さんの方がそういうことに関する執念は凄いと思うな」
リーフ  「任せておいてよ。僕の目の黒い内は、空になったマヨネーズの容器に肌色の部分は残させないよ」
ロイ   「何でそんなに得意げなのさ……」
エイリーク「それで、そうしているときの皆さんの顔があまりにも満足げなもので……
      私も、ほんの少しだけ興味を惹かれていたのです。でも、そういう行為ははしたないですから、なかなかする機会がなくて」
リーフ  「……どうせ僕は貧乏臭いですよ」
ロイ   「駄目だよリーフ兄さん、そうやって悪い方向に取っちゃ。うん、でもエイリーク姉さんの気持ちはよく分かったよ」
リーフ  「そうだね、どうぞエイリーク姉さん、遠慮なく舐めてください」
エイリーク「ありがとうございます……あの、これは他の皆さんには」
ロイ   「あはは、もちろん秘密にしておくよ」
リーフ  「エイリーク姉さんも、こういうことしたがるんだねえ。やっぱり僕たちの兄弟だよ」
エイリーク「では……んっ」

 ペロッ。

リーフ  (ブバッ!)
ロイ   「うわぁ、リーフ兄さんの鼻から温泉のように鼻血が噴き出したァーッ!」
リーフ  「こ、この人でなしーっ!」
エイリーク「まあ、リーフ、待ってくださいね、今ティッシュを取ってきますから」
ロイ   「……で、急にどうしたのリーフ兄さん」
リーフ  「ろ、ロイ……君はさっきのを見て何も感じなかったのかい?」
ロイ   「さっきのって……エイリーク姉さんがアイスのふたの裏をペロッと舐め」
リーフ  (ブバァッ!)
ロイ   「うわっ、また!」
リーフ  「は、発言には気をつけてくれロイ! おかげでさっきの光景を思い出しちゃったじゃないか」
ロイ   「えー、じゃ、エイリーク姉さんがアイスのふた舐めてるところに興奮したんだリーフ兄さん」
リーフ  「うん……ああ、僕は知らなかった。普段はそんなはしたないことはしない清楚なエイリーク姉さんが、
      ちょっと頬を染めながら恐る恐るアイスのふたに顔を近づけるときの、あの恥じらいの表情!
      舌を出すときのあのためらい、アイスがつかないようにそっと髪をのけるさり気ない手つき、
      そして何より、ああ、あのちょろっと覗いた細かく震える舌先の、なんといやらしいことか……!」
ロイ   「はあ……」
リーフ  「自分侮ってました、全く分かってませんでした! 
      ああ、アイスのふたを舐めるという行為があんなにいやらしいなんて……!
      僕は舐めていた、舐めきっていました! アイスのふただけに!」
ロイ   「いや、うまいこと言う前にまず鼻血止めようよリーフ兄さん……」
リーフ  「クソッ、ぬかった! 写真撮っておけばよかった……!
      ルネス女学院で売りさばけばどれほどの儲けになったことか……!」
ロイ   「その辺はいろいろと自重しようよリーフ兄さん」
リーフ  「……ふーっ、ごめんごめん、ちょっと興奮しちゃったかな」
ロイ   「ちょっとどころじゃなかったけどね」
リーフ  「しかし、あの清楚なエイリーク姉さんのあんな下品な行為……
      それを見られただけでも、今日という日には宝石のような価値が」
セリス  「ただいまー」
ロイ   「あ、セリス兄さん、お帰り」
セリス  「うん。あ、アイス食べてるんだね二人とも」
ロイ   「んー、まあ、一応そうしてたよ、五分前ぐらいまでは」
セリス  「? ああ、それ、新発売のやつだね。おいしそうだなあ……ね、ロイ」
ロイ   「なに?」
セリス  「あとでさ、ちょっと食べさせてくれないかなあ?
      ああ、ううん、食べるまでいかなくてもいいや、せめて、ふたを舐めるだけでも」
リーフ  (ブバァァァァァァァァァァッ!)
ロイ   「うわぁ、リーフ兄さんの鼻から間欠泉のように鼻血が噴き出したーッ!」
リーフ  「こ、この人でなしーっ……」
セリス  「大変だ!」
エイリーク「リーフ、ティッシュを持ってきましたよ」
セリス  「ああ、駄目だよエイリーク姉さん、そんなんじゃ全然足りないよ」
エイリーク「そ、そうですね、これは大変です」
セリス  「ああ、どうしよう……と、とにかくもっとたくさんティッシュを持ってこよう!」
エイリーク「はい!」
ロイ   「……ねえ、リーフ兄さん?」
リーフ  「……なんだい、ロイ」
ロイ   「ひょっとして、今の鼻血はセリス兄さんがアイスのふた舐めるところを想像して……」
リーフ  「……ロイ、僕はね、ときどき自分の想像力のたくましさが嫌になるんだよ」
ロイ   「まー、リーフ兄さんの自虐嗜好はほとんど思い込みのせいだからね……
      想像力というか妄想がたくましいのも頷けるよ」
リーフ  「それとさ……さっきアイスのふた舐めるセリスを想像したとき、
      何故かスカートはいてたんだよね、セリスが……何でだろう」
ロイ   「兄さん……一回病院行った方がいいんじゃない、いろんな意味で」

<おしまい>