372 :ある男の一日:2009/10/16(金) 01:56:44 ID:o2htXwnA
1
足元にエフラムが這いつくばっている。
エフラム「くっ…負けた…無念だがお前には勝てん…」
妹が私を尊敬の視線で見つめている。
ターナ「お兄様…ステキ…私、AKJに入ろうかしら…」
ゼトもサレフも負けを認めた。
ゼト「貴方にはかないません」
サレフ「我々は身を引きましょう」
そして愛しの少女が駆け寄ってくる。倒れたエフラムを踏んづけて。
エイリーク「ああ…なんて素晴らしい方…私をお嫁さんにしてください…」
寄り添う私たちを世界が祝福する…しゅくふく…しゅく…
ヒーニアス「…む…正夢か…」
私はベッドから身を起こした。
今朝はいい夢を見たから気分がいい。まもなくリアルの方も夢と同様になるであろう。ふふふ。
まずは朝の日課だ。
ヒーニアス「おはようエイリーク」
壁にはったエイリークのポスターにおはようのキスをする。
きっとエイリークも毎朝私の愛を受け取ってくれているに違いない。
時刻は6時半。
さっそく着替えて洗面台で顔を洗い、身だしなみを整える。
ヒーニアス「うむ、今朝もいい男だな」
鏡に映った私は惚れ惚れするような美丈夫だ。
ターナ「お兄様…顔洗いたいからどいてよ、邪魔」
ヒーニアス「こら、なにをする!」
せっかく浸っていたのに無理やり押しのけられた。
まったく兄なんだと思っているんだ。
373 :ある男の一日:2009/10/16(金) 01:58:41 ID:o2htXwnA
2
モルダ「朝食のお時間ですぞー」
我が家の使用人頭のモルダが呼びに来た。
私とターナは食堂に向かう。
父上と3人で食卓を囲む。毎朝の食事は元気の源だ。朝食抜きはいかんぞ。
ヒーニアス「うむ、美味い」
ヘイデン「ターナ、最近学校のほうはどうだね?」
ターナ「生徒会活動の方が忙しくなってます」
父上はターナの言葉に顔を綻ばせた。
ヘイデン「うむうむ、名門ルネスの次期生徒会長とは私も鼻が高い。しっかり頑張りなさい」
ターナ「はい父上!」
父上はターナには甘い。ターナも父上にはよく甘えている。まぁ末っ子だしな。
そういえば最近父上は私にこの種の話を振ってこないな。
まあ聞くまでもないということか。優秀な息子を信頼しているのだな。
歯を磨いたら登校だ。ターナは天馬に乗っていく。
ヒーニアス「ちょっと待て!今朝はエイリークと登校するのだろう?私も…」
だがターナはさっさと一人で飛んでいってしまった。
せっかちなやつだ。
いや、この完璧な兄と一緒に登校するのが照れくさいのだろう。
その気持ちはわからんでもないな。
しかし心配だ…。
優れた兄をもった妹はブラコンになりやすいと聞く。
私はエフラムなんぞと違いシスコンではない真っ当な人間だからな。ターナにはまともな恋愛をしてほしいのだが…。
完璧すぎるのも考え物というわけだ。
374 :ある男の一日:2009/10/16(金) 01:59:54 ID:o2htXwnA
3
ターナの天馬に便乗できなかった以上今日は一人で登校した。
自慢じゃないが私は学業優秀だ。
一時間目は国語の小テストだ。予習はバッチリ。スラスラ解けるぞ。
時間に余裕のできた私はエフラムの様子を伺う。
近くの席のエフラムは額に汗を浮かべてうなっている。答案は…なんだ間違いだらけじゃないか。
フン、貴様のお味噌では難しいのだろうな。いい気味だ!
デュッセル「こら、ヒーニアス!カンニングしてはいかん!」
ヒーニアス「ちょっ…私はそんなマネは…」
デュッセル「ばか者!エフラムの答案を覗いておったではないか!
間違いだらけの答案とはいえカンニングはいかん!貴様は0点!」
……お、おのれエフラム!
卑劣な手を使って私を陥れおって!この屈辱はいつか必ずはらすぞ!
エフラム(ヒーニアスの奴…俺の答案に頼るようではよっぽどわからなかったんだな…)
そして昼休みになる。
私はモルダが持たせてくれた弁当を食う。
エフラム「あ、それ美味そうだな。一つもらうぞ」
え、エフラムの奴!私が楽しみにとっておいたエビフライを食いやがった!!!
ヒーニアス「き、きさまぁぁぁぁ!!!!私の大好物をよくも!」
エフラム「ケチくさいこというな、人間の小さいヤツだな」
こ…この野郎!
人のエビフライ食っておいてこの態度!
ヒーニアス「今日という今日は我慢ならん!決闘を申し込むぞ!」
エフラム「よかろう」
さっそく我々は校庭に出るとお互いの得物を構える。
ヒーニアス「食らえ!必中!」
いかん!発動せん!?
エフラム「そりゃ!」
アッー!タスケテエイリーク!
…ふ…今日のところは勝ちを譲ってやろう…
私の寛大さに感謝するのだな!
375 :ある男の一日:2009/10/16(金) 02:00:52 ID:o2htXwnA
4
キーンコーンカーンコーン!
放課後だ!
私は全速力をもってルネスに向かう!
未来の妻、エイリークと会って好感度をUPせねば!
ルネス女学園は高い塀に囲まれている。校門には守衛までいる。
ベルクローゼンなどはワープで侵入するらしいが、私は魔法は使えん。
だが、私の頭脳をあなどるなかれ!
一ヶ月がかりでトンネルを掘ったのだ!
ふふふ、さすが策謀の王子…自分の頭脳が怖い…
私は早速、裏山にあるトンネル入り口に入る。
茂みでカモフラージュしてるからな。誰も気づくまい。
このトンネルはルネスの体育館裏に通じている。人一人が這ってどうにか進める程度の狭さだがやむをえん。
ヒーニアス「待っていてくれエイリーク…」
私の鞄にはエイリークに贈るスク水とウェイトレス服が入っている。
ハァハァ…彼女にどんな服が似合うか考えこんでこれになった。ナース服もよいかと思ったが持ち切れなかった。
次はナース…いや巫女服もいいな。きっと喜んでくれるだろう。
ヒーニアス「よっと…」
私は出口の蓋をそっとずらす。
上には土を被せてある。隙間から土が落ちてくる。
ヒーニアス「む…白?」
上に白い物が見える…
アメリア「なんだろ?…今、地面が動いたような…」
ヒーニアス「ぬおっ!?パンツ!」
アメリア「え…きゃああああああああああ痴漢!」
なんて事だ!ちょうど出口の上に人がいたのだ!
ヒーニアス「お…落ち着け!私は痴漢などではない!」
アメリア「えーん!私だってベルクローゼンやヘザー先生にセクハラされてばっかりじゃないんだからー!」
少女はがむしゃらに槍を突き下ろしてくる!
アッー!タスケテエイリーク!
376 :ある男の一日:2009/10/16(金) 02:01:52 ID:o2htXwnA
5
あの後、私は駆けつけたターナにフルボッコにされた…
なんて事だ!
兄を信じぬとは!
私は憤慨しながら兄弟家に向かう。
どうにかエイリークに贈り物を渡さねば。
正面から訪ねるとエフラムのヤツめが邪魔をするからな。
そっと私は塀を越えて庭に忍び込む。エイリークの部屋は二階だ。
しかし、私の行いは傍から見ると、姫君の待つバルコニーをそっと訪ねる騎士のようだな。
まるで恋愛物の戯曲のようだ。待っていてくれエイリーク!
私はさっそく壁をよじ登ろうとしたが…その時横から衝撃波が!?
アイク「ぬうん!」
アッー!タスケテエイリーク!
アイク「む…気のせいか?…稽古の続きだ、ぬんぬん!」
吹き飛ばされた私は民家に突っ込む。
ヒーニアス「あいたたた…ここは…」
ビラク「うほっ」
アッー!タスケテエイリーク!
377 :ある男の一日:2009/10/16(金) 02:02:58 ID:o2htXwnA
6
ひ…ひどい目にあった…
私は命からがら逃げ帰った。くそ、今日は残念ながらエイリークに会えなかったか。
部屋に戻った私はスク水やウェイトレス服を床に広げ、エイリークがこれらを着た姿を思い浮かべる。
ヒーニアス「ハァハァ…さすが我が未来の妻、美しい…」
ターナ「変態!」
ヒーニアス「ぬお!?勝手に入ってきてはいかん!」
ターナ「文句言いにきたのよ!あの後トンネル埋めるの大変だったんだからね!」
ヒーニアス「な、なにいぃぃいぃぃぃ!…兄の一ヶ月に渡る労働の成果を台無しにするとは!」
ターナ「やかましい!あーもう、また腹がたってきた!」
ヒーニアス「ま、待てヴィドフニルはよせ!…は…話せばわかる!」
アッー!タスケテエイリーク!
私をボコッた妹は荒々しく部屋を出て行った。
まったく…最近私に反抗するようになったな。
いや、これはアレだな。
私がエイリークにばかり構うからヤキモチを妬いているのだろう。
いつまでも兄離れできん困った妹だ。レイヴァンとかいう男も私と同じような悩みを抱えているという。
今度話でもしてみるか。
そして私は眠りにつく。
私のお手製、エイリーク抱き枕を抱えて…。
ヒーニアス「ふふふ…昨日の夢が現実になる日も近いな…」
エイリーク…明日こそ…会ってプレゼントを渡してあげよう…
エイリークの喜ぶ顔が目に浮かぶ…
終わり