507 :私のお兄ちゃん 1:2009/10/23(金) 23:55:25 ID:peRgpISe
―――グレイル工務店
ミスト「お兄ちゃん、はい!」つ お茶
アイク「ああ、すまないな・・・・・・」
ミスト「えへへ・・・・・これ、私が煎れてみたんだ!
お兄ちゃんに最初に飲んでもらおうと思って。
・・・・・・美味しい?」
アイク「む、そうか。(ズズズ・・・・・)
・・・・・・うむ、美味い。腕を上げたな、ミスト」
ミスト「えっへん!毎日頑張ってるからね!!」
アイク「だがまだ、オスカーには及ばないな」
ミスト「う・・・・・・・オスカーさんと比べるのは反則だよぉー」
中睦まじく話す2人
会話だけを聞けば、赤の他人は本当の兄妹と思うに違いない
ミスト「じゃあ私、皆に配ってくるね!」
ぱたぱたと駆けていくミストと、仕事に戻るアイク
この2人が出会ったのは数年前だが、当初からこの2人は仲が良く、このような感じであった
ミストはアイクをお兄ちゃんと呼び、アイクも妹のようにミストに接していた
これは、まだアイクが工務店に来てまもない頃・・・・・・
―――数年前、空き地
アイク「ふぅ・・・・・・・今日はここまでにするか・・・・・・」
当時はまだ蒼炎時の体格のアイク
強くなろうと、毎日無茶な訓練を続け、体には生傷が耐えなかった
この日はこれで訓練を終え、工務店に戻っていく
508 :私のお兄ちゃん 2:2009/10/23(金) 23:57:29 ID:peRgpISe
―――工務店
ミスト「お兄ちゃん、また怪我してるよ。はい!」つ 絆創膏
アイク「ああ、すまないな・・・・・・」
ミスト「もう、お兄ちゃんには私がついてないと駄目なんだからね!」
ミストはアイクの怪我を心配して言ったのだろうが、
この頃のアイクにはその心配を掛けているという事実が辛かった
アイク(む・・・・・・俺は、ミストにまで心配を掛けていたのか。
姉さん達のためにも、もっと頼りがいのある男にならなければ・・・・・・・)
「・・・・・・・・・・・・よし」
―――翌日
アイク「しっこく・・・・・・あんたと、手合わせしたい」
しっこく「愚かな・・・・・・その若さで死に急ぐ事もあるまいに」
アイク「俺は・・・・・・もっと早く、強くなりたいんだ!
だからあんただって・・・・・・倒す・・・・・・・倒せなきゃいけないんだ!」
しっこく「焦りのある剣で、私が倒せるとでも思っているのか?」
アイク「やってみなければわからない!」
そして、戦いの火蓋が切って落とされる
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ミスト「お兄ちゃん、今日は用事があるっていってたけど・・・・・・。
ん・・・・・・・?何の音だろ?」
近所の空き地から、無数の金属のぶつかり合う音
その音源の方へ向かうミスト。そして・・・・・・
509 :私のお兄ちゃん 3:2009/10/23(金) 23:59:02 ID:peRgpISe
ミスト「お兄ちゃん!?」
アイク「くそ・・・・・・俺は・・・・・・こんな、ところで・・・・・・・・・・!」
地面に仰向けになっているアイク
血は出ているが、命に別状はないようだ
アイク「ミス、ト・・・・・・?なんで、ここに・・・・・・・・・」
しっこく「・・・・・・娘。この男の知り合いか?」
ミスト「そ、そうですけど・・・・・・」
アイクを怪我させた張本人・・・・・・・
その漆黒の騎士に話しかけられ、反射的に身構えてしまうミスト
(もっとも、誰が見ても身構えたくなる外見ではある)
しっこく「勝負はついた。解放を頼む」(ヒュン!
そういうと転移の粉で颯爽と去っていくしっこく
ミスト「お兄ちゃん・・・・・どうしてこんな無茶を!?」
アイク「俺はもっと強くならないといけないんだ。
弱いから、姉さん達にも・・・・・・お前にも、心配を掛けて・・・・・・ぐっ!」
ミスト「お兄ちゃん、無理に喋らないで!」
(どうしよう・・・・・・傷薬は持ってないし・・・・・・・そうだ!)
背中に吊るしておいたライブの杖の存在を思い出すミスト
(まだ、成功した事ないけど・・・・・・・ううん、成功させなきゃ・・・・・・!)
アイクの損傷部位に杖をかざし、詠唱を始める
淡い光、そして・・・・・・
アイク「・・・・・?治った・・・・・・のか?」
ミスト「や、やった・・・・・・初めてライブ・・・・・・出来たっ」(ドサッ
アイク「ミスト!?」
ミスト「へへ・・・・・・・動けないや」
治療の終了と同時に倒れる、ミスト
幸い、厚い草の上に倒れたので怪我は無い
どうやら、初めてライブを使った事による緊張、魔力消費で体力を使いすぎたようだ
510 :私のお兄ちゃん 4:2009/10/23(金) 23:59:52 ID:peRgpISe
アイク「すまない・・・・・・・こんな頼りない、無力な兄貴で・・・・・・」
ミスト「そんなことないっ!
アイクお兄ちゃんは、頼りなくなんかない!」
アイク「ミスト・・・・・・?」
ミスト「私が困ってる時は、いつも助けてくれるもん!
血はつながってなくても、ほんとのお兄ちゃんだもん!
だから、だからっ・・・・・・!」
感情が爆発したかのように、泣き出すミスト
アイク「・・・・・・っ」
また、心配をかけてしまった・・・・・・・
自らの無力さ故に
だが、こんな無力な自分でも、頼りになるといってくれる妹がいる
その妹を泣かせたままで、自分は兄と言えるのか
アイク「もういい、もういいんだ、ミスト」
ミスト「ひっく・・・・・・えぐ・・・・・・・」
アイク「・・・・・・・すまん。また、心配をかけてしまった・・・・・・・」
ミスト「・・・・・・・」
アイク「俺は、焦っていた・・・・・・。
強くなろうと、支えになろうとして。
だが、焦ったとは言えその気持ちは今も同じだ」
ミスト「・・・・・・・・・」
アイク「無茶に見えるかもしれん。
心配をかけるかもしれん。
だが・・・・・・お前を悲しませるような事は、もうしない。
だから・・・・・・もう、涙を止めてくれないか・・・・・・?」
511 :私のお兄ちゃん 5:2009/10/24(土) 00:01:25 ID:s7l5hKTi
ミスト「・・・・・・・うん、分かった。
でも、私は支えられるだけじゃ嫌なの。
私もお兄ちゃんを支えて、支えあっていきたい。
だから・・・・・・多少の無茶は許してあげるけど、私にも背負わせてね。
・・・・・・お兄ちゃん一人じゃ、心配だもん」
アイク「む・・・・・・・・すまない」
ミスト「あ、また謝ってるー!そういうのは無し!!」
アイク「すまん・・・・・・あ」
ミスト「もう!・・・・・・うふふ」
どちらからともなく、笑い出す
初めは小さく、それから大声で・・・・・・
ひとしきり笑い、やがて笑い声が収まった頃
アイク「ふぅ・・・・・・疲れた。腹が減った」
ミスト「そうだね。でも私、まだ上手く歩けないかも」
アイク「・・・・・・・・・」
ヒョイ
アイクは無言で、ミストを背負って歩き始めた
ミスト「お、お兄ちゃん、傷が・・・・・」
アイク「俺は頼りないが・・・・・・こういう時位、頼りにしてくれ」
ミスト「・・・・・・うん」(でも本当は、いつも頼りにしてるよ・・・・・・・お兄ちゃん)
日が暮れる中、二人の共に帰っていく影が、どこまでも長く伸びていた・・・・・・
アイク「しかし・・・・・・意外と、重いな」
ミスト「・・・・・・お兄ちゃんの馬鹿ッ!」
アイク「ぐおっ!?傷口は・・・・・・やめろ・・・・・・・」
・・・・・・この頃から、フラグクラッシャーでもあったようだ
終わり