21-672

Last-modified: 2011-06-02 (木) 00:15:13

672 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:44:08 ID:LsPn876L

FETVの一室では企画会議が行われている。
俺は安物のコーヒーを啜りながらバカ社長の戯言に耳を傾けていた。

シャナム「視聴率だ!視聴率を上げてスポンサー様を増やすのだ!」
セーラ「じゃー美少女アイドルセーラちゃんの特番を組めばいーじゃん」
お前ね…まぁいつものことだけどよ。
ユアン「ケッ…んなもん撮りたくねぇ…(ポソリ)」
セーラ「あによ!なんかほざいたかクソガキャ!(ギロリ)」
こんな調子でロクな企画がでねぇ…俺だって企画なんざねぇけど。

シャナム「真面目にやれー!お前らー!」
セーラ「んじゃ社長にはなんかいい企画あんの?」
シャナム「あったら会議なぞ開かんわ!」
……大丈夫かよこの会社……
しかし最近視聴率が下がり気味なのは確かだな。
フリージでもスポンサードを続けるかどうか検討してるらしい。
オルエンのヤツがかばってくれてるけど、それで上司に随分イビられてたって怒ってたな。
なんかいい手ねぇかな。

そのとき部屋の扉が開いた!
イリオス「誰だ!?勝手に入ってくんじゃねぇ!」
???「まぁそう言わずに…」
…部外者がポンポン入ってきやがる。企業秘密もへったくれもねぇな…
そして野郎は俺たちを見て口を開いた。
???「ふふふ…お困りのようですね…僕にいい考えがあります」

673 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:45:18 ID:LsPn876L

一ヵ月後…俺たちは紋章町スタジアムにいた…
イリオス「なななななななぁ社長!大丈夫なのかよ!俺らみてぇなローカル局がこんなでけぇ会場借りて!」
シャナム「ううううううううむもももももももちろんだとも!大船に乗ったつもりでいろ!*1)ガクガクブルブル」
オルエン「ごめんなさい社長…上司の締め付けが厳しくて…私がもっと社長を応援できてれば社長に借金なんかさせずにすんだんですが…」

バカ社長は会議に現れた謎の男に丸め込まれて、このイベントのために大借金を抱えちまった。
普段ならケチの代表みたいなヤツなんだがな。
バカ社長よ…生命保険入っといたほうがいいぜ…
スターバイザーM「なに、心配要りませんよ。この番組が成功すれば何倍にもなって返ってきます」
出たなうさんくさい野郎。
イリオス「なぁ…普通はスーパーバイザーってなんじゃねぇの?」
スターバイザーM「これはこだわりというか…まぁ気にしないでください」

まったく何者なんだこの野郎…妙に口が上手くて俺も社長も丸め込まれちまった…
会社が潰れたら新しい仕事探さねぇとな…貴族への道は遠いぜ…

674 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:47:41 ID:LsPn876L

野郎が持ち込んだ企画は障害物レース大会…
その光景を面白おかしく撮影してお茶の間に流そうってわけだ。
視聴率が取れればスポンサーが増えて借金を返せる。
ちなみに優勝者には1億ゴールドの賞金が出る。資金源は社長の借金だ。
俺もエントリーしようかと思ったがスタッフは駄目だとよ…当たり前だが。
辞表出してエントリーすっかな?

オルエン「駄目よ、ちゃんと社長を信じてついていかなきゃ!」
イリオス「のわぁ!人の心を読むな!」
し…心臓に悪りぃ…
オルエン「途中から口に出てたわよ。大丈夫シャナム社長ならやりとげるわ!だからイリオスも頑張らなきゃ!」
イリオス「……あ…ああ」

コイツ…つくづく人を見る目がねぇな…箱入りだからしょうがねぇのかも知れんが…
あのインチキパチモン社長のどこをどう見れば信用できるってんだ?

675 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:48:52 ID:LsPn876L

控え室には何頭もの馬が繋がれている。
今回のイベントは徒歩で走るも馬に乗るも自由。
しかしペガサスやドラゴンは禁止。障害物の意味が無くなる。

リーフの馬「一億取ったら俺もいいもん食わせてもらえる!」
エイリークの馬「相変わらず食い意地がはってますわねぇ…でもご主人が寄せてあげるブラを欲しがってましたし、
        頑張りますわ!」
エフラムの馬「寄せてあげるモノすらないけどな」

エイリーク「はっ…無性に馬刺しが食べたくなってきました…」
アイク「肉…」
エフラム「金が入ったら幼女たちのために保育園を作る」
ヘクトル「犯罪者乙」
闘志に満ちた兄弟家の面々。
一億ゴールドが手に入ればシグルドの給料1000年分だ。気合も入るってものだ。

やがて参加者にルールが説明される。
ドロシー「ルールは簡単。一斉にスタートして一番にゴールした人が優勝です。
     しかし途中には各種トラップや障害物がてんこ盛り。
     バルキリー代は保障しませんので自分で用意しといてください」
リーフ「なんというデンジャラス」
だが兄弟家は恐れない。
リン「逆に気合が入るってものよ!…ところでマルスはどこいったの?」
ミカヤ「そういえば姿が見えないわね?…このイベントの話もってきたのマルスなのに」

訝しがる面々。その時ドロシーから衝撃的な言葉がもたらされた。
ドロシー「なお徒歩か騎馬かは自由ですが、騎馬の方にはハンデがつきます。
     このクジを引いて他の方の馬と交換していただきます」
エフラム「なにぃ!?乗りなれない馬で走れということか!」
ドロシー「そういうことです」
控え室にざわめきが走る。

676 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:49:44 ID:LsPn876L

ゼロット「まぁ徒歩と馬では勝負にならない。ハンデをつけるのも仕方ないな」
ドロシー「なお事前に説明のあったとおり、ペガサスドラゴンは禁止。ちゃんと地面を走ってもらいます」
ファリナ「チッ」

こうしてくじ引きが行われ、騎馬兵たちは互いの馬を交換した…その結果は…

シグルド「よろしく頼むぞ」
エリウッドの馬「シグルドさんかぁ…よし頑張るか」

エイリーク「なぜでしょう…兄上の馬に憎しみを感じます…」
エフラムの馬「なぜだ…主の妹からプレッシャーを感じる…」

リーフ「一億ゴールド手に入れたら……ブバァァァァァァァ!」
シグルドの馬「またなにかロクでもないこと考えてるね…駄目な人間だなぁ」

エフラム「リーフの馬か…やむをえん」
リーフの馬「なんかエフラムさんの表情がひっかかるなぁ」

エリウッド「セリスの馬だね、勝てば僕は胃痛から解放されるんだ…」
セリスの馬「ちょ…セリスたんのお尻はっ!?…いやだー他のヤツなんか乗せたくなーいっ!」

ヘクトル「そんで俺…ってあれ?」
エイリークの馬「…いやぁぁああああああ!!!!美しい主人のかわりにこんな重たいピザなんか乗せたくありませんわ!」

丁度兄弟家の間で入れ替わることになった。これも兄弟の強い縁。決してご都合主義ではない。

677 :明日に向かって走れ!前編:2009/11/07(土) 21:50:30 ID:LsPn876L

そうここはセリスのはずだが…
ミカヤ「ごめーんおねえちゃん、エントリーの書類書き間違っちゃってセリスとヘクトルの項目が逆になってたのってへっ♪」
ヘクトル「ちょっ…」
セリス「僕は降りれるからいいけど…兄さん大丈夫?」
心配そうなセリス。この表情を見てると兄として不安な顔は見せられない。
ヘクトル「し…心配すんな!馬くらい軽く乗りこなしてやるぜ!」
エイリークの馬「ああもう、どうして人間には馬語が通じないのかしら!おデブなんか嫌ですってば!」

騒ぐエイリークの馬の手綱を取るヘクトル。
乗ったことはないがなんとかするしかない。
ヘクトル「ちくしょうおとなしくしやがれ!」
エイリークの馬「あっちおいき!」
エイリーク「兄上…もう少し優しく…」

だがやった事ないことはそうそう要領よくいかないものである。
無理やり馬に飛び乗ったヘクトルだがエイリークの馬はなかなかおとなしくならない。
エイリークの馬「重たい!重たいですわ!その汚い尻でわたくしに乗るなんて許せませんわ!」
ヘクトル「危ねぇ!おわったった!」

ドロシー「そろそろお時間ですので選手の方々はグラウンドに集合してください」
そういわれてもヘクトルは満足に馬を動かすことができない。
仕方なくセリスが手綱をつかんでグラウンドまで馬を引いた。
エフラム「棄権しろピザ。お前の体重でエイリークの馬が潰れたらどうする」
ヘクトル「いやかましい!こんなもん屁でもないぜ!」

こうしてヘクトルは無謀な戦いに挑もうとしている…

続く


*1 ((;゜Д゜