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Last-modified: 2011-08-15 (月) 18:10:17

172 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:51:02 ID:+2ekXDX0

163
この死神どこまで優しいんだろう?

164
リリーナがこの短期間で幼馴染+妹から変態にクラスチェンジを・・・

続きを投下させて頂きます。

第三章 とある主人公の烈火乃剣(デュランダル)(中編)

「さて、これで竜とまともに対抗できる手段が得られた。デュランダル達が
あれば、町の中を調査することも出来るだろう。これから――」
「ちょっと待って」
 竜を倒して一息ついたエリウッドがこれからの行動について話そうとして
いたのを、リンが制する。
「ヘクトル、私のソール・カティは?」
「あ~、悪りぃ。まだ物置の中だ。アルマーズとデュランダルはでかくて
目に付くからよ、とりあえず急いで引っ掴んで戻ったんだ」
「仕方ないわね。それじゃあ、一旦家に戻りましょう?」
 リンの言葉に、ヘクトルとエリウッドがうなずく。

「・・・ヘクトル。あんたねぇ」
 そして、ここは兄弟家の庭。物置の前でリンが呆れた声を出し、ヘクトル
はバツが悪そうにそっぽを向きながら頭の後ろを掻いている。
「仕方ねぇだろ。急いでたんだから」
「・・・・・・」
 無言で物置を見つめるエリウッド。その視線の先には、豪快にぶち破られた
入口の扉の残骸がある。
「・・・・・・」
「いくら急いでたからって・・・。これ、どうするのよ?一応、貴重品とかも
しまってあるのよ」
「でもよ、玄関開けて鍵取って、開けて、なんて余裕は無かっただろ」
「・・・・・・」
「でも・・・って、エリウッド!大丈夫?顔が真っ青よ!」
「・・・また修理代が飛んでいくのか。うぅ、胃が痛くなってきた」
 顔を青くして胃を押さえるエリウッドの姿を見てさすがに気の毒になったのか、
「いやその、悪かったよ」
 とエリウッドに向きなおって謝るヘクトル。
「・・・いや、いいんだヘクトル。確かにあれ以上遅れていたら危なかった
かもしれない。助けてもらったのは僕の方なんだから、気にしないでくれ」
 まだ顔色は良くないものの、頭を下げるヘクトルにエリウッドが声をかける。
「・・・とりあえず、私はソール・カティを取って来るわね」
 反省の態度を一応示したヘクトルを見て、肩を一度すくめて見せてから
リンが物置の中に入っていく。
 と、そこへ突然、リンを見送るエリウッドとヘクトルの背に玄関の方から
誰かの声が聞こえてきた。
173 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:52:20 ID:+2ekXDX0

「ヘクトル兄様!エリウッド兄様!」
 ヘクトル達を兄と呼ぶ声。しかしその声は兄弟家の者ではない。突然の声
に驚いた二人が玄関の方を見ると、そこにはヘクトルとよく似た青い髪を持つ
少女、ロイの幼馴染であるリリーナの姿があった。
 兄弟家に幼い頃からよく訪れている彼女は、一緒にいたロイの影響もあってか、
兄弟家の面々をこうして呼ぶことがある。
リリーナの後ろには、天馬を従えた少女の姿も見える。
「リリーナじゃねぇか!一体、どうしたんだ!?」
「君は確か、ロイの友達のシャニーだったね。 
二人とも、町がこんな状況でどうしてこんなところに?」
 今、紋章町中には竜が溢れている。身の安全のため、高校や中学の生徒たちは
学校で待機しているはずだ。エリウッド達も人のことを言えた立場ではないが、
それでもこの状況で本来学校にいるはずの人間の姿を見たならば疑問が口を
ついて出る。
「それが、あたしたちだけじゃないんです」
「え?」
 天馬の手綱を握っている少女、シャニーの言葉に疑問符を浮かべるエリウッド。
しかし、どういうことかを尋ねる前に、
「お願い、ヘクトル兄様!ロイを・・・ロイを止めてッ!」
 少女の悲痛な声がヘクトル達の耳に届く。

「あん?一体、どういうことだよ?」
 まっすぐに自分を見上げてくるリリーナ。その言葉の中に出てきた弟の名に、
ヘクトルが反応を示す。
「ロイ君、先生から町の様子を聞くなり、教室の窓から外に飛び出しちゃって・・・」
 答えたのはリリーナではなくシャニーだ。シャニーの言葉を聞いたヘクトルが
「あいつもか」といった目でエリウッドに視線をやると、エリウッドはその
視線から逃げるようにして尋ねる。
「つまり、ロイも学校を飛び出したということかい?」
「そうみたいね」
 今度の答えはエリウッドの後ろ。物置から出てきたリンより返ってきた。
その右手には太陽の精霊剣(ソール・カティ)が握られている。
 リンの姿を認めたリリーナとシャニーがぺこりと頭を下げると、リンは
それに微笑みで返し、言葉を続ける。
「・・・というよりも、どうやら私達が一番最後だったみたいよ」
「どういうことだい?」
 先を促すエリウッドに、リンは空いている左手の親指で後ろ、物置を指す。
「物置の中、からっぽ・・・って訳じゃないんだけど、ラグネルはもちろん
のこと、ファルシオンもティルフィングも、ブラギの剣から封印の盾まで、
みんな『出張中』みたい」
「・・・そうか。まぁ、予想はしていたけど。それで、封印の剣もかい?」
「えぇ」
「って。もしかしてロイ君のお兄ちゃん達、みんな武器を持って竜をどうにか
しに行っちゃったのッ!?」
 二人の会話にシャニーが驚きの声を上げて割り込む。町中に警戒態勢が
敷かれているのに家族総出で竜退治などと聞かされれば、むしろ驚かない方がおかしい。
「僕達の家族は、少し変わっているんだ」
 驚くシャニーに苦笑いを浮かべて答えるエリウッド。
シャニーは「少しってレベルじゃ・・・」となにやら呟いているが、隣にいる
リリーナは付き合いの長さか、兄弟家のことを理解しているようで、呆れては
いるようだが驚いた様子は浮かべていない。
 おそらく皆、ロイやエリウッドのように学校や職場を飛び出したのだろう。
正義感の強いシグルドやセリスは勿論、普段はふざけて見せているリーフや
マルスだって、このような事態では素早い。
174 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:53:46 ID:+2ekXDX0
10
「とにかく、みんなの神器がねぇってことは、全員無事にここまでたどり着けた
みてぇだな。
だがよ、だったらロイの奴も心配いらねぇと思うぜ?なんたって、あいつが
ここから持ってた剣は俺やエリウッドの【神将器】の上を行くんだからな」
 ヘクトルがリリーナを安心させるように、身をかがめてリリーナと頭の
高さを揃えて言う。その顔には、彼には珍しい穏やかな笑顔が浮かんでいる。
リリーナは一度それに頷き、しかし晴れぬ顔のまま言葉を紡ぐ。
「うん・・・。だから、最初は私達もそこまで心配はしてなかったの。
現れた竜は人を襲っていないって先生は言ってたし、ロイには【封印の剣】があるから・・・」
「だな。ロイの奴ならここまで竜を避けてたどり着けるだろうし、あいつの
剣は、正直言って反則的に強ぇからな。
少なくとも、竜相手に心配する必要はないんじゃねぇか?」
 隣で聞いていたエリウッドとリンもそれに頷く。
封印の剣には、強力な竜封じの力(厳密に言うと封印の剣に秘められた能力
は竜封じではないが)のみならず、その主を守り癒す力もがある。
その加護があれば、例え高位の竜族相手でもロイが敗れることはそうそうない。
 剣を手にする前に竜につかまればどうなるか分からないが、この家まで
たどり着き、無事に封印の剣を持って行きさえすれば、竜が町にあふれている
この状況でもロイの心配は必要ないだろう(もちろん、ヘクトルやエリウッド達が
ロイの心配をしていないというわけではないが)。
 それはリリーナも知っていることだが、それでなお彼女の顔が暗いのは
どういう理由からか。
「リリーナ、何か知っているのかい?」
「はい。――知っているというか、その、占いみたいなものなんですけど・・・」
 エリウッドが疑問を口にすると、リリーナは少し歯切れ悪そうに口を開いた。
「その占いで、ロイ君がとっても危ないって出たの」
「占いだぁ?お前ら、そんなもん信じてこんな危ねぇ町に出てきたのかよ?」
 シャニーがリリーナの言葉を継ぐと、ヘクトルがそれに呆れたような声を出す。
ヘクトルの物言いにリリーナは下を向いてしまい、シャニーは「だって!」と
抗議の声を上げようとする。
が、その声は彼女達を庇うエリウッドの言葉によって遮られた。
「ただの占いというわけではないんだろう。ミカヤ姉さんや、ニニアン達の
ような特別な才能を持つ人が占ったのかもしれない」
「そう!そうなんです!私達のクラスに、ソフィーヤっていう子がいるんだけど、
その子は竜の血を引いてて、占いもとってもよく当たるから・・・!」
「・・・竜族の巫女というわけね。それで、もう少し詳しく聞かせてくれるかしら?」
 ――紋章町には、ほとんど未来予知じみた占いをする者が少なからず存在する。
その多くは高名な魔術師であったり、竜の血を引く巫女であったりなどと、
常ならざる者だ。
 予言を紡ぐ彼女たちの言葉ならば、占いといっても十分に信憑性はある。
 竜の血を引く少女と聞いて、ヘクトルの顔つきも真剣なそれとなる。

175 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:55:04 ID:+2ekXDX0
11
「・・・その子。ソフィーヤは今日、はじめ学校に来てなかったの。
午前中ずっと来なかったし、ロイが学校を飛び出した時もいなかったわ」
 リリーナが説明を始める。
「ソフィーヤが学校に来たのはロイがいなくなって暫らくしてからよ。本当は
もっと早く、ロイが学校を飛び出す前には着きたかったらしいのだけど、
竜から身を隠しながら来たから遅くなってしまったって。
それで、めずらしく慌てた様子で教室に入ってきたソフィーヤが、
『ロイ様が危険です』って・・・」
「危険というと、具体的にどう危険なのかは分からないのかい?」
「・・・ロイ君が、何かと戦って、負けちゃうって。しかも、ケガをしたのに
その後また、誰かを助けるために危険な場所に向かってしまうって言ってたわ」
「ロイ・・・!」
 ロイが怪我を負う(あるいはもう負ってしまったのかもしれないが)と聞いて、
リンが息をのむ。エリウッドとヘクトルは目で二人に先を促す。
「その子の占いのおかげで、ロイ君がどこに向かってるかは見当が付いてるんです。
ロイ君、ベルン署の方角に向かって進んでるみたいで」
「ベルン署?・・・一体どうして?」
「それは分かりませんけど・・・」
 リンの口から出た疑問に、リリーナが困った顔をする。
「とにかく、それを聞いた担任のセシリア先生がすぐにロイを止めに行こうと
したのだけれど・・・」
「私たちじゃ、止められないって。
その前に、ロイ君の家に行かなきゃダメって・・・」
「それも、占いってやつか?」
「うん」
 リリーナとシャニーがお互いの言葉を継ぎながら説明をしていく。
「・・・この家なら、いつもエリンシア姉様がいらっしゃるわ。
私たちではロイを止められなくても、姉様なら。
そう思って、シャニーのペガサスでここまで来たんです。
セシリア先生やクラスのみんなも、ロイが危ないって聞いて、先にロイを
探しに行ってます」
 そこまで聞いて、ようやくエリウッド達は状況を掴むことができた。
リリーナ達はロイの身に危険が迫り、その上さらに無茶をしていると知って、
ロイを止めるため彼の家族を頼りにここに来たということだろう。
だから、リリーナは開口一番に「ロイを止めて」と言ったのだ。

「――状況は分かったけどよ。封印の剣を持ったロイが竜に負けるたぁな」
「それが・・・今、封印の剣を持っているのはロイではないらしいの」
「なんだと?」
 ヘクトルが訝しげな顔をする。エリウッド達も同様だ。
 物置にない以上ロイが持って行ったとばかりに思っていたし、いかに強力
と言えどロイ以外には使えないあの剣を、他の兄弟が持って行ったとは考えにくい。
「それじゃあ、一体誰が封印の剣を持って行ったんだ?」
「ごめんなさいエリウッド兄様。そこまでは分かっていないの。
ただ、ソフィーヤはロイと一緒にあった大きな力が、今は感じられないと言っていたわ」
「その大きな力が、封印の剣というわけね・・・って。
ちょっと待って!それじゃあ、今あの子は封印の剣も無しに竜と戦おうと
しているってことッ!?」
 リンが、悲鳴のような声を上げる。神器無しで竜と戦うのは至難の業だ。
しかも今の話を聞く限り、ロイは自分たちとは違い一人で学校を飛び出したらしい。
 そんな状況で竜と戦えばどうなるか・・・考えるまでもないし、考えたくもないと、
リンはかぶりを振る。
「だから、ロイを止めてもらうためにここまで来たんです。
ねぇ、お願いヘクトル兄様!ロイを止めてッ!」
 リリーナもまた悲痛な声で、最初と同じ言葉を言う。
 妹の様に可愛がっている少女から、実の弟を助けるように求められたヘクトルは・・・
ゆっくりと、頭を横に振る。

176 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:56:22 ID:+2ekXDX0
12
「ヘクトルッ!?」
「そんな・・・兄様!」
 ヘクトルの否定の態度に再びリンが大きな声をあげ、リリーナとシャニーは
泣きそうな顔になる。エリウッドは何も言わず、表情も変えない。
その様子を冷静に見つめながらヘクトルが訳を説明する。
「・・・残念だけどな、俺がどんなに言ったって、アイツは止めらんねぇよ」
「そんなことないわ!
・・・確かに、ロイは兄様に反抗的に見えるかも知れないけど、でも、心の
中ではヘクトル兄様を本当に慕って、尊敬しているわ。
ヘクトル兄様が言えば、ロイも無茶を止めてくれるはずよッ!」
「そうだよ!だってロイ君、学校ではヘクトルさんの悪口なんか一回も
言ったこと無いんだよ?そりゃ、ちょっと家を壊し過ぎだとか文句を言うときも
あるけど、本当に楽しい顔で話すんだからッ!」
 ヘクトルの物言い―まるで自分の言うことにはロイが耳を貸さないとでも
言うような―に、すぐ様リリーナとシャニーが言い返す。
しかし、それを聞いてもヘクトルは首を縦には振らない。
「そんなこと、お前らに言われるまでもなく分かってんだよ」
 そして、そっぽを向いて話し始める。その横から見える耳は赤くなっている。
「あいつのは、ただの反抗期みたいなもんだからな。ただ、うちには親父や
お袋もいねぇし、苦労して養ってくれてるシグルド兄上やミカヤ姉上には
そんなことできねぇだろ?
リンやエイリークは女だし、エリウッドも体のせいで心労をかけられねぇし、
エフラムの奴は弟妹に甘いからな。結局、俺くらいにしかそういう構い方が
できねぇんだ。
俺もロイも、心の底ではお互いをちゃんと大切に思っているのを分かってる。
兄弟だからな」
 そこまで一気に言い切ると、ヘクトルは再びリリーナ達を見据えて言う。
「だから、そういう問題じゃねぇんだ」
「・・・それじゃ、なぜなの?兄様」
「ヘクトルだからどうこう、というわけじゃないんだよ、リリーナ。
たとえ僕がいっても、シグルド兄さんがいっても、ロイは絶対に止められないだろう」
 今度はエリウッドに顔を向けるリリーナとシャニー。二人はまだ分からない
顔をしているが、リンは今の短い言葉でエリウッドの言わんとしていることが
分かったのか、先程までヘクトルの言葉を聞こうとを上げていた顔を俯き気味に、
説得を諦めるように下げた。
「・・・ロイが今、どういう状況にいるのかは分からないが、恐らくは
僕たちよりも真相に近い所にいるのだろう。そして、ロイはそれを解決する
と決めたんだ。
――だったら、絶対にロイは止められない。たとえ力づくで止めようとしても、
這ってでも成し遂げようとする筈だ。だから、僕達ではロイを止めることは
できないんだよ」
 最後に「うちの連中はこうみえて頑固者が多いんだ」と、茶化すように
付け加えてエリウッドは柔らかい笑みを浮かべる。
 しかし、それだけ聞いてもリリーナ達は納得しない。それでは、一体何の
ためにここまで来たのか分からない。
「でも・・・このままじゃロイが本当に死んでしまうかも知れないわ!」
 今にも泣きだしそうなリリーナを、ヘクトルが頭を撫でて慰める。
シャニーもまた沈痛な面持ちで自分のペガサスの背を撫でている。
「確か、占いでうちに来るように言われたんだったね。
・・・少し待っていてくれ」
 そういって、エリウッドは背を向けて物置へと向かっていく。なにやら物置の
入り口近くに置いてあった布きれを引っぱり出しているようだが。
177 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/16(土) 01:57:03 ID:+2ekXDX0

「・・・これを、ロイに渡してくれるかい?」
 少しして、エリウッドが戻ってくると、彼は白い布に包まれたものを
リリーナ達に差し出す。
「これは・・・!確かに、これがあればロイの助けになるけど・・・
エリウッド兄様、宜しいのですか?」
 エリウッドから差し出されたものを見て目を大きく見開くリリーナ。
ヘクトルとリンも顔に驚きを浮かべている。
「構わない。僕には、ヘクトルとリンディスがいるからね。ロイが持って
いたほうがいいだろう。それより、すこし重いけど大丈夫かな?」
 エリウッドが言いながら、ちらとヘクトル達に視線を向ける。
それを受け、ヘクトルとリンは驚きの表情を消し、頼もしい笑顔で頷く。
 リリーナとシャニーは頷く二人の顔と、やわらかな笑みを浮かべる
エリウッドを見て多少安心したのか、先ほどの泣きだしそうな顔を打ち消して
エリウッド達に頷く。
「うん。ペガサスに括りつければ、あたしとリリーナを乗せても、あっという
間にロイ君のところに行けるよ!」
「そうか。それでは、よろしく頼むよ。
・・・僕達の弟を、助けてあげて欲しい」
「リリーナ、気をつけて行けよ。
それとロイの奴に、後のことは気にしねぇで思いっきりやって来いッ!
って言っといてくれ」
「空には飛竜もいるわ。
ロイのためにあなたたちが傷付けば、あの子も悲しむわ。
だから、けして無理をしては駄目よ?」
 口ぐちに伝えるエリウッド、ヘクトル、リンの三人。
それに対して、今度はリリーナとシャニーが笑顔を浮かべて三人を安心させようとする。
「大丈夫です!ここにくるまでも、竜たちには全然気づかれなかったんだからッ!」
「分かりましたヘクトル兄様。兄様達も、これから町に出るのでしょう?
どうかお気をつけて・・・!」
 そう言うと、二人はペガサスの背にまたがり大空へと飛び立っていった。

「本当に大丈夫かしら?」
「これだけの竜がいる中を、気付かれずに来れたって言ってるんだ。
あいつらを信じようぜ」
 小さくなっていく白い影を見つめながら二人が話していると、エリウッドが声をかける。
「・・・さぁ、僕達も行こう。町の中には竜が溢れている。
大きな被害が出る前に、僕達もできる限りのことをしなくてはッ!」
 そうして、三人もまた竜が溢れる町の中へと駆けだす。