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Last-modified: 2012-08-25 (土) 20:15:38

この日は朝から晴天であった。小鳥は絶えず鳴き、動物たちは朝の光を受けて活動を開始する。
そんな中、FE主人公兄弟家長男のシグルドは曇り空を見つめるかのような顔をしていた。
…二日酔いだとか虫の居所が悪いだとかそういう理由では断じてない。彼はある新聞の記事を見ていたのである。
そこには彼の大親友の妹であり、ある組織を束ねる金髪の少女 ラケシスの姿があった・・・

エリンシア 「シグルドお兄様、早く朝食を済ませませんと片付きませんわよ」
シグルド  「あっ、ああ…すまんな」
エリンシア 「…紋章町新聞の記事に気を取られてる様ですけど、大丈夫ですか?」
シグルド  「問題ない。…うむっ、エリンシアの作った味噌汁はいつ食べても美味しいな!」
エリンシア 「うふふっ、ありがとう」
シグルド  「…エリンシア、これを見てくれないか?」
エリンシア 「?……あらあら、うふふっ……」

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紋章町新聞 KINSHIN欄
 『兄妹は永久に一緒であるべき! 兄妹結婚法、参議院提出の方向へ』
 例え血の繋がった兄と妹であろうと、お互いの承諾さえあれば一緒になれる法、『兄妹結婚法』について
ラケシス 「世界にはお兄様と一緒に居続けたい女性が数多く存在しています。
      しかし世間体、モラル的等の理由により涙を飲んでいる方々は少なくありません
      私はそういう女性の味方と成る法律を作りたいのです!
      ・・・もし兄側が望まないのであれば仕方がありません。この点は否定しませんわ
      しかし逆に言えば相手側が望むのであれば、兄妹の愛は認められるべきなのです!!
      この法律を足掛けに、私が世界を変えたい!
      それがこの法律を作った理由であり、我が使命の第一歩なのですから・・・(以下略」

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エリンシアはこの記事から驚きと不安、そして何故か小さな安らぎを感じていた・・・

413 :2/7:2010/01/30(土) 20:02:21 ID:S74GsffK

シグルド 「彼女…いやラケシスは本気の様だ。
      ティルフィング(リターン機能付き)をタイミングよく投げてイケナイ行為の邪魔をしたり、
      集会場に行って彼女達を何度も武力で止めてきたのが…もっと徹底する必要があるのかもな」
エリンシア(…でもお兄様はまったく変わりませんわね、フフッ)
シグルド 「…なんだエリンシア、そのほっとした様な顔は…!」
エリンシア「違いますわシグルドお兄様……ただ、ラケシスちゃんも変わりましたわねぇと思っただけですわ」
シグルド 「……ああ、そうだな」

シグルトはそう言って自分の記憶から過去の出来事を調べていた・・・
どうやら彼には心辺りがある様だ

シグルド 「小学生、中学生の時の彼女は本当に辛そうだった」
エリンシア「………」

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…断言しよう。ラケシスは小学生時代と中学生時代、酷いいじめに遭っていたのである。
今のカリスマ溢れる姿からは想像もつかないだろうが、貴族の娘…
特に有名なノディオン家の者だけあって、他の貴族の生徒から深く遠ざかれていた。
生来気が強い彼女はよく男子と対立していたが、その頭脳明晰さと可愛さ故に、
女子からも嫉妬と非難の目を受けていた。
そんな彼女を度重なるいじめから助けてくれたのが、兄であるエルトシャンとシグルドなのだ。

女子中学生「アンタの様な女は、誰も相手にしてくれないのよ、ププッ」
男子中学生「苦しんで氏ね!」
ラケシス 「……うぅ……」
シグルド 「そこのお前たち、何をしてるんだ!!」
エルトシャン(以下エルト)「また俺の妹に…よくも…!」
女子中学生「くっ、またあんた達…!相当暇な様ね、この子の様にしてあげるわ!」
男子中学生「うぉりゃあ!!」
二人   「「…ラケシスに手を出した事、後悔させてやる!」」

414 :3/7:2010/01/30(土) 20:03:19 ID:S74GsffK

シグルド 「痛たたた…」
エルト  「(ラケシスをおんぶしながら)ああ、まさかエルウインドとキルソードを持ってたとはな。最低な奴らだ」
ラケシス 「お兄様…シグルド様…私の為に…」
エルト  「気に病むなラケシス。兄として当然の事をしたまでだ」
シグルド 「そうさラケシス。僕達は友達じゃないか!」
ラケシス 「…とも…だち……」

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シグルド 「…高校に入ってからは随分と変わった。高校を変えたのもあるが、
      エルトシャンが言うには友達も沢山作り、持ち前のカリスマで皆を引っ張っていってるらしい」
エリンシア「それはいい事じゃありませんの?」
シグルド 「…まぁな」

寂しい。…言葉で表現すればそれが今の彼の心境である。
昔は彼女とエルトシャン、そして時々レンスター家のキュアンを交えてよく遊んだものだ。
かくれんぼや缶蹴り、かけっこ、お医者さんごっご、だるまさんが転んだ等昔ながらの遊びで遅くなるまで楽しんできた。
勿論男組は社会人、残るラケシスも高校生である今、そういう事をする時間は殆ど取れない訳だが……・・・・・・

エリンシア「お兄様、もう8時ですわよ!!!」
シグルド 「ぬっ、もうそんな時間か。……(ガツガツ)…行ってくる!」
エリンシア「はいはい、いってらっしゃい」
ロイ   「……兄さんがディアドラさんの話をしないなんて珍しいね」
セリス  「そうだね」
エリンシア「ロイちゃん、セリスちゃん聞いてましたの?…うふふっ」
ロイ   「ラケシスさんってあのAKJの会長で、シグルド兄さんの信条に反する人でしょ?
      いくら親友のエルトシャンさんの妹だからって…」
エリンシア「…ロイちゃん、あの子もまた、シグルドお兄様の大切な人なのですわ」

415 :4/7:2010/01/30(土) 20:04:54 ID:S74GsffK

…シグルドはグランベル社への道のりを歩きながら、深く考え込んでいた。
彼はラケシスの行動が理解出来ない訳ではない。…彼女を一番護って来たのは兄のエルトシャンであり、
その彼に恩返ししたい。それがこのKINSHINの底辺にあるのだと彼は感じているからだ。
しかし認めてしまえば自分の信条を裏切る事になる。やはり恋愛というものは他人同士で行われるべきであり、
兄妹や姉弟の間のモノは本能的にも避けなければならない!
…しかし、相手も望んで…・・・・・・

シグルド 「……んっ、あれは…?
      ラケシスッ!!」
ラケシス 「あっ、シグルド様…!」

噂をすれば影ありと言うのか、信号の所にはラケシスが居た。
どうやら中々変わらない赤信号に苛立ってる様子である。
尚補足するが、AKJの前ではラケシスはシグルドを呼び捨てにするが、こういった所では昔の様に様付けなのだ。

シグルド 「最近高校の方はどうなんだ?」
ラケシス 「…とても忙しいですわ。文化祭も近づいてきていますし」
シグルド 「文化祭か。アレには悪いイメージしかなくてな」
ラケシス 「……どうしてです?」
シグルド 「何故か毎年その日に限って(ディアドラと一緒に)出し物を見たりしようとすると、
      男子生徒の妨害が入ってきてな…今では苦い思い出だよハハハッ」
ラケシス (…未だにエーディンさんが一枚絡んでいた事に気づかないなんて…
      流石は主人公兄弟家の一員と言うべきなのでしょうか)
シグルド 「ん…信号が変わったな」
ラケシス 「あっ、本当ですね」

信号が緑風に変わるのを見て二人は再び歩き出した。

416 :5/7:2010/01/30(土) 20:06:22 ID:S74GsffK

ラケシス (…シグルド様は今日の朝刊を見たはず。やはり私を止めようとするのかしら…('A`)
シグルド 「…ラケシス、今日の朝刊に載ってた兄妹結婚法についてだが…」
ラケシス 「はい」(もし何か悪く言ったらこの大地の剣で攻撃しますわ!)
シグルド 「き、基本的には認められないが…あ、相手の承諾を優先してる所は…評価したいな」
ラケシス 「( ゚Д゚)……(゚Д゚)!?」
シグルド 「こっち見んな。…いや、何を驚いてるのだラケシス!」
ラケシス 「え…あっ、シ、シグルド様いつもなら全てを否定してくるのに!…何か今日は変よ!」

ラケシスの言う通りである。本来KINSHINに関するモノ全てを真っ向から否定してくるシグルドらしくないのだ。
勿論彼女は自分の過去に起きた問題が、この発言に影響してるのは夢にも思ってないのだが…

シグルド (い、いつもなら全否定して口論にでもなっているはずなんだが…じ、自分でも何を言ってるのか分からん!)
ラケシス 「何か悪い物でも食べたのですか?」
シグルド 「い、いや、違うな。…ただエリンシアに作って貰った朝食だけだ」
ラケシス 「そう…」
シグルド (むっ、心配させてしまったのか……流石に何か明るい話題に変えた方がいいかもしれん)
ラケシス 「…あ~あ、まだマスターナイトではありませんから学校まで長い距離を歩くのは少し疲れますわ」
シグルド 「!…そうだ……ぬぅうん!!」
ラケシス 「えっ?…きゃあっ!?」
シグルド 「ラケシス、肩車をしてあげよう」
ラケシス 「シ、シ、シグルド様一体何を…///」
シグルド 「小さい頃は毎日エルトシャンがしてくれてたじゃないか。一体何が不満なんだ?」
ラケシス 「…ふ、不満とか…そ、そういうモノじゃありません(スカートの中が…///」

417 :6/7:2010/01/30(土) 20:07:40 ID:S74GsffK

・・・この時、ラケシスは過去の楽しかった記憶を思い出していた。
いじめから助けてくれ、いつも一緒に遊んだシグルドにエルト兄様の顔がそこにはあった。
彼女のエルトシャンへの狂気とも取れる情愛や想いは、この時に芽吹いたといってもいい。
エルトシャンが社会人となってグラーニェと結婚した後も、それは変わる事がなかった・・・。
ある意味ではエルトシャンを追い続ける為に、AKJを設立したといってもいいのである。

ラケシス 「…昔の楽しかった時の記憶が…思い出されます」
シグルド 「ははっ、そうだな……いじめも、もう受けてないのだな」
ラケシス 「…はい。皆優しい人です。特に体育のベオウルフ先生は…」
シグルド 「フッ、それが聞けて安心したぞ。
      私もエルトシャンも、それが本当に気掛かりだったからな」

…シグルドも、兄のエルトシャンもこうやって優しい言葉を投げかけてくれる。でも今は昔とは違う。皆、お互いから離れて、違う環境や生活の中で生きている。
ラケシスは…もう昔には戻れないと感じていた。
…でももしかしたらと信じ、ある質問を投げかける。否定される事を心に決めて・・・

ラケシス 「………シグルド様」
シグルド 「ん、何だラケシス?」
ラケシス 「エルト兄様もキュアン様も貴方も会社勤め、
      そして私は高校生で、貴方が拒絶するKINSHINを崇拝する組織の首領…
      それでも私達は……ずっと友達で居られるのかしら?」
シグルド 「………何を馬鹿な事を言ってるんだ?」
ラケシス 「えっ」
シグルド 「どんなに離れていようと、どんな風になっていようと、私達は絆で繋がった仲間だ!!
      …例え、何が起きようともな」
ラケシス (……ありがとう…シグルド…様……///)

418 :7/7:2010/01/30(土) 20:11:34 ID:S74GsffK

ラケシス 「…高校が見えてきましたわ」
シグルド 「むっ、もうすぐか」
女子高生A「おーい!」
女子高生B「ラケシスさん、早く来ないと遅刻しますよーっ!」
シグルド 「……い、いかん。流石に遅刻してアルヴィスに貸しは作れん!
      ラケシス、ココで分かれるぞ!(ラケシスを下ろす」
ラケシス 「…え、ええっ」
シグルド 「…子供みたいな事を言うが…
      もし時間が空いたら、また皆で缶蹴りやかくれんぼでもしたいな」
ラケシス 「…はいっ!」

ラケシスを高校まで肩車した後、シグルドは遅刻した言い訳を考えながらも不思議な感覚に囚われていた。
シグルド (何かラケシスと話してる間ずっと変な気分だった…何故だろうな…?
      そ、それはともかく言い訳を考えんと…orz)

アルヴィス「遅いぞシグルド!何をやってたんだ!!遅刻した言い訳なら聞いてやる!!」
シグルド 「……わ、私だけ、Bボタンでダッシュ出来ませんでしたッ!!」

終わり