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Last-modified: 2012-08-24 (金) 20:46:02

234 :弄ばれる兄:2010/02/14(日) 03:32:35 ID:vh0+y5EJ

「お帰りなさい、にいさま」
「サラ…いい加減にリワープで部屋に入るのは止めろ」
帰宅し、自室に入った俺を出迎えたのはリワープで部屋に無断侵入していたサラだった。
こいつは何回注意しても行動を改める気配が無い。
「まあいいじゃない、細かいことは。それより…今日は何の日?」
俺の言葉を当然のように流し、サラが問いかけてくる。
「ああ…バレンタインだろ?」
「覚えてたの?にいさまは修行ばっかりしてるから、絶対忘れてるって思ってたのに」
「まあ…俺も興味はないが、この日が来るとチョコがばら撒かれるんだ、嫌でも覚えるさ」
この手のイベントに俺は余り積極的に関わらないが、この日は別だ。自分がどうこうするわけではないが
女兄弟と知り合いの女性からチョコを配られるので否が応でも覚えてしまう。
さっきも冷蔵庫に今日ばら撒かれたチョコを押し込んできたところだ。
「覚えてるならいいわ。じゃあ、あたしからも鼻血が出そうになるもの…あげる」
「ん…?ああ、ありがとう…」
こいつもようやく他人を気遣って贈り物をすることが出来るようになったか…
俺の日々の指導、説得も無駄では無かったということか…よかった。
「じゃあ…あげるから、ちょっと目を瞑っててね」
「…?わかった」
少々不思議に思いながらも目を閉じる。一体何をするつもりなんだ…?チョコをくれるだけではないのか?
俺が考えを巡らせていると、しゅる、という何やら衣擦れのような音が聞こえた。
「はい、じゃあ目を開けて」
音が聞こえてすぐに、目を開けるように促された。サラを見ると、何やら指に何かを引っ掛けてくるくると回している。
「にいさま、パス」
サラが回していた何かを放るが、すぐさま反応して掴み取る。日々の鍛錬は伊達ではない、こんなものは左手一本で十分だ。
渡されたものを確認して、いや、確認しようとして俺は驚愕した。今まで見たことの無いものがあったからではない、
むしろある意味見慣れたものだ。洗濯物を畳む手伝いをしたときに、これと似たものを何度も見ている、これは…
「チョコよりこっちの方が嬉しいと思って、どう?あたしが今まで穿いてた生ぱんつ♪」
脳が知覚するのを拒否していたが、サラから言われてようやく認識した。これは正しく女物の下着だ。

235 :弄ばれる兄:2010/02/14(日) 03:35:07 ID:vh0+y5EJ

「お前!?一体どういうつもりだ!?」
「え?気に入らなかった?柄がダメ?調べたら男の人はボーダーが好きってあったからそれにしたんだけど」
よく見てみると、確かにサラの長くウェーブのかかった髪と同じ紫に、雪のように白い肌と同じ
純白の二種類の横縞の下着だ。これなら確かによく似合…いかん、何を考えているのだ俺は。
「とにかくだ!これは返すぞ!ほら!」
「…あ…っ」
サラに下着を返そうと左腕を差し出すが、焦っていたためか下手から大きく振り上げる形になってしまった。
その際に、指先がサラの長いとは言えない丈のスカートに引っかかり、捲れそうになる。
今まで俺をからかうように笑みを浮かべていたサラが、慌ててそれを押さえる。
スカートが捲れなかったことを確認すると、ふう、と一息ついた後に、にやりという言葉がぴったり合う表情で俺を見た。
「もう…あたしが穿いてないって分かったらすぐにスカートを捲りにくるとか、にいさまってやっぱり変態なんだ」
「い…いや、今のは事故だ。それより、冗談でもこんなことはやめろ。いたずらにしては度が過ぎてるぞ」
「…冗談じゃないよ」
そう言うとサラは、俺の空いている右手を掴み、俺の体勢を崩す勢いでぐいと引っ張ると、自らの左胸に押し当てた。
「…お前!?」
「ほら…すっごくドキドキしてるの…わかるでしょ…?」
サラの胸に押し当てられた手に、バクバクと早鐘を打つような勢いの鼓動が伝わる。
「どう…わかってくれた?…それと、あたし最近…前からかな?結構胸大きくなってきたの。触ってて分からない?」
俺の右手を、毎日の鍛錬の際に振るう槍の硬さとは真逆の柔らかさが刺激する。こういうときは何と言えばいいのだろうか…
ゴム鞠とか水風船のような感触?とでも言えば…いかん、現実逃避をしている場合ではない。
「…サラ…いい加減に…」
「ね…にいさまはロリコンなんでしょ…?だったら早く手を出しちゃいなよ…のんびりしてたら…育っちゃうよ?」
とんでもない台詞を言う奴だ。この状況でそんなことを言われれば、本物のロリコンならすぐさま襲っているだろう。
…俺はロリコンではないので問題ないが、断じて。今一度自分に深く言い聞かせる…そうしなければまずい状況だ。
「…にいさま……」
サラの潤んだ瞳から放たれた熱の篭った視線が俺を捉える。先程からサラの体から手を剥がそうと努力しているのだが、
あの瞳に見つめられると金縛りにかかったかのように体が動かない。
「…にい…さま……エフラム…」
擦れた声で俺の名前を呼ぶ。その瞬間、背中に軽く電撃を食らったかのような衝撃を感じた。…なんて奴だ。
熱に浮かされたかのような表情、紅潮した肌、触れている体の弾力、そしてあの声。まだ十五年も生きていないような
少女が発する艶ではない…このままだと俺は…

236 :弄ばれる兄:2010/02/14(日) 03:37:31 ID:vh0+y5EJ

「…うおおぁっ!!」
気合の雄叫びを上げ、全身全霊の力を込めてサラの体から手を引き剥がす。間に合った、そんな言葉が頭に浮かんだ。
何か越えてはいけない線の限界近くで踏みとどまった、そんな気がしてならない。
「…もう少しだったのに…」
「お前な…」
サラを見てみると、先程のことなど無かったかのように落ち着いている。あれは演技だったのか?それとも切り替えが
早いだけなのか?どちらにしても怖ろしい奴だ。
「まあいいわ、今日はこれくらいで許してあげる。でも、我慢できなくなったら言ってね。…あたしはいつでもいいよ」
「…何がだ?」
「…ナニが」
「帰れ!」
思わず声を張り上げてしまった。大人気ないとは思うが、ここで強気に出ないと精神的に飲まれてしまうと本能的に思った。
「はーい…じゃあまたね、にいさま」
サラがなにやら呟くと足元に魔方陣が現れる、次に一瞬光が閃くともうサラの姿は無かった。
「…やれやれ」
…よく凌いだ。流石は俺だと自分で自分を賞賛したい。日々の修行は無駄では無かったのだ、ありがとう俺。
しかし疲れた…嫌な汗が大量に噴き出している。額の汗を拭おうと左手を上げると、あるものが視界に入った。
「しまった…返せなかった…」
俺の左手には、サラの横縞の下着がしっかりと握られていた。あいつを追い返すのに精一杯で、自分の手の中にあるものの
ことを完全に忘れていた。何たる失態だ…。
「…捨ててしまうか?いや、それだと返せと言われたときに困る。しかし…どう保管しろというんだ…
 これが見つかれば言い訳のしようが無いぞ…」
必死に考えを巡らせるが、何も浮かんでこない。だが何とかしなくては、これは流石に成り行きまかせというわけにはいかない。
…どうやら今日はこの布切れの処遇について考えることで一日が終わりそうだ。

 終わり