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Last-modified: 2012-08-27 (月) 21:38:28

417 :幼女の旗の下に:2010/04/26(月) 04:28:19 ID:WyDmyFpG

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1 キャスを追跡する なんだか気になる…す、ストーカーじゃないからねっ!私はロリコンじゃないもん!

ターナ  (無性に気になるなぁ…ちょっとつけてってみようかな?)
すでにキャスは狭い廊下を通って角を曲がっていった。
機材置き場へはほぼ一本道である。
廊下に出しっぱなしのダンボールやドラム缶の間を抜けてその後を追ってみた。
ターナ  (な…なんだかストーキングみたい…、ちっ違うのよ!同室の相手の不振な行動を確認するだけなんだからね!)
心の中で叫んでいるとキャスが扉の前で立ち止まった。
ターナ  (!?)
とっさに姿勢を低くしてドラム缶の影に隠れる。

キャス  「……………」
背後に視線を向ける…2秒ほどで視線を外すと扉の中に入っていった。ここは鍵はかかっていない。作業時に時折人の出入りがあるためだ。
ターナ  「ほ…ほんとになんなのかしら…」
ここまで来たら今更引き返す気にもなれない…少しだけ扉を開けて中を伺ってみる……
窓もない暗い部屋の中には、ところ狭しと機材が置かれている。
キャスの姿は……奥の方だ…すばやく身を滑り込ませると静かに扉を閉じた……
小声ではあるが…何か話している……他に人がいる様子はない……
ターナ (…なんだろ…もうちょっと…)
機材類に身を隠しながら近寄ってみる…相手は盗賊だ、あまり近寄ると気付かれ…

ガタンッ!!

キャス  「!?」
ターナ  「あ……」

しくじった…思い切り物音を立ててしまった…

キャス  「ゲッ!? なんでここにいるのよ…やっぱアンタアタシを襲う気でしょ!?
      ロリコン、そうはいかないんだからね!」
ターナ  「んなわけないでしょ!? 私はノーマルだってば!」
キャス  「またそんなこといってアタシを安心させよーってわけね!」
ターナ  「……ねぇ…いま隠したの…なに?」
キャス  「…あー…やっぱ誤魔化せなかったか…」

懸命に別の話で注意を逸らそうとしたキャスだったが、さすがにうまくいかなかった…
観念したようにソレを見せる。

ソレは本来囚人が持ってるはずも無い物…携帯電話だった…

418 :幼女の旗の下に:2010/04/26(月) 04:29:01 ID:WyDmyFpG

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駄目だ…いくら周囲を回ってみても侵入の方法が思いつかない…せめてターナが窓際にでも来てくれれば話も出来るのだろうが…
作業所の周囲を回ってみたがエフラムは機会を見出すことが出来なかった。

エフラム 「やむをえん…これ以上は誤魔化せまい…」

今日のところは諦めざるをえないだろう…エフラムは医務室へと戻っていった……

指揮所3F…所長室にてダノミルは診察記録を眺めている。
ダノミル 「妙だな。あの囚人は入所時は健康体だったはずだが?」
ローラ  「異常はありませんでしたけど…きっと疲れがでたんですよ」
ダノミル 「たった1日の労務でか?」
ローラ  「ええ、なれないお仕事や初入所の緊張もあったんだと思います」
ダノミル 「まぁ…いい。持ち場に戻ってくれ」

ローラが退室すると苦々しく吐き捨てる。
ダノミル 「フン、お人好しめが! サボリたいがゆえの仮病に決まっておろうが!
      ……いやまて…急病はどんな健康な人間にも起こりうることだ…ぐふふふ…そうだな。
      仮病でなどあろうはずがないな…」

419 :幼女の旗の下に:2010/04/26(月) 04:29:42 ID:WyDmyFpG

44

どことも知れないとある場所……2人の男がチェス盤を挟んで向き合っている。
傍らにはワイングラス。
深い赤が男の目を楽しませる。差し向かいの男が白くしなやかな指先で駒を進めた。

?????「F4にペガサス」
?????「ふむ……白き天馬の羽が目に浮かぶ様な…優美なる差し手ですな」
?????「お眼鏡にかなったようでなにより」
?????「食えない方だ…貴方は先ほどより…いや、初めから最善手を差しておられない。
      私ではお相手になりませんかな?」
?????「いいえ、とんでもない。私は貴方とこうして盤を挟むことが唯一の楽しみなのです。
      次の手はナイトを用いようか…それともアーチャーがよいか…毎週頭を楽しませて待っているのですよ」
?????「貴方のささやかな慰めになっておるのなら嬉しいのですがな。
      このような場所に貴方がおらねばならぬこと…誠に惜しむべきことです」
?????「なに、ご心配にはおよびません。世の中の流れは移ろい変わるものです。
      政治もしかり。5年後、10年後のことを考えていかねばなりません。貴方にはそれができる」
?????「ほほほ…貴方の口からお褒めの言葉をいただけるとは光栄の極み。
      ですが政策を講じても手足が伴わねば意味をなさない……無念なことです。
      …今は2大政党がしのぎを削っておるように見えますが…バーハラはまもなく崩れ始めます。
      ……C4にジェネラル」
?????「これはこれは……城門を押さえられてしまいましたな……」
?????「左様…なれど城壁の内は空洞と化している…貴方にはお分かりのはずです」
?????「…水清ければ魚住まず…クルト殿にはそれがお分かりになりませぬな。
      腐った柱でも全て取り除けば家そのものが崩れ去る…」
?????「その後にどのような家が建つか……」
?????「国防軍の内情はいかがなりましょうか?」
?????「ロンブローゾ大将、カヒタリーノ少将らがルカン殿の熱心なシンパとなっております。
      いまだバイロン元帥の影響も強く残っていますが…いやはやそれもいつまでもつやら…」
?????「なるほど……D3にシューター」
?????「むむ…城攻めの構えですな………」
?????「ふふ…長考になりそうですね。ワインの替りをお出ししましょう」
?????「おお、これはかたじけない……むぅ…」
?????「エトルリア産の495年ものです。お口に合うといいのですが」
?????「ほほ、これは麗しき色合いですな。燦然たる日を浴びて咲き誇るロサ・キネンシスのようだ」
?????「お気に召したようでなによりです。このような果ての地にあってもなおこの輝きは曇ることがありません」
?????「よき主に恵まれたからこそワインも輝きを失わぬのでしょうな。
      …返礼というわけではありませぬが一つお耳に入れておきたきことが…」
?????「なんでしょうか?」
?????「先立って収監された新党の党首ですが…このままではおそらく命を落とすことになるかと…」
?????「ほう?」
?????「バルテロメ殿のラインで聞いた話ですが…ナーシェン殿が所長に抹殺命令を出しておるそうです」
?????「あの方々の好みそうな手段ですね…」
?????「これ以上元老党を貶めないでほしいものです…誠に嘆かわしい…」
?????「先も言いましたが世の中の流れは移ろい変わる物ですよ。今日権勢を誇っていても明日もそうとは限りません」
?????「そう願いたいものです…どれ、名残は惜しいがそろそろお暇せねばなりませぬ。
      来週までに次の差し手を考えねばなりませんな」
?????「ええ、楽しみにしておりますよ……オリヴァー殿」

小太りの貴族は優雅に一礼すると踵を返して歩み去った…
後に残されたチェス盤では駒たちが戦列を敷いて敵陣を睨み付けていた……

420 :幼女の旗の下に:2010/04/26(月) 04:30:44 ID:WyDmyFpG

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刑務所に夜の帳が下りる……
あらゆる極悪人たちが各々の部屋で暇を持て余し、たわいもない話に興じている。
ターナは早々に自分の布団を敷くとその中に篭っていた。

同室のキャスはターナから最も離れた畳を占拠している。やはり警戒されている。
ターナ  (あぅぅぅ…やっぱり誤解されっぱなし…なんか私どんどんドツボにはまってくよぅ…
      私ロリコンじゃないもん…)

そりゃたしかにサラは可愛いし綺麗だと思うが…
ターナ  (…って今、何を考えたっ!? いいいいいやこれはあれよ!
      同じ女の子から見ても可愛く思えるってだけで、へんな意味じゃーないのよ!)
試しにエフラムの事を想像してみる。
…ドキドキする。
ターナ  (ほらやっぱ私はノーマルノーマル…)
想像してたらエフラムがサラを抱っこしてる姿が浮かんできた…
ターナ  (いいなぁ…私も抱っこしたいしされたい…アレ?)
     「イヤァァァァァァ!!!!!このままじゃマジでエフラムの仲間になっちゃうわ!
      好きな相手でも趣味だけは真似したくないのにー!?」
キャス  (…なにあれ…布団の中で暴れてる…引くわ…やっぱりアイツに見られたのはまずかったなぁ)

……日中の機材置き場の一件が思い起こされる…
携帯電話など囚人が持ってるはずはない…
ターナ  「ど…どうしたのよソレ…」
キャス  「…先に聞くわ…このことは秘密にしてくれる?」
ターナ  「え?……いいけど…」
キャス  「オーケイ、ならこの話は終わり…っても興味を持たれたままだと、どこで探られるかわかんないかんね。
      この際ぶっちゃけてあげる。これは間抜けな看守からパクッたものよ。
      所持品検査にひっかからないようにここの床下に隠してるの」
ターナ  「な…なんでそんなことを…」
キャス  「ムショん中にいるとシャバの仲間が恋しくてねー。時々友達の声が聞きたくなるわけよ」
ターナ  「そーなんだ…うん、そーだよね。早く出所したいよね」
キャス  「そーそー。うら若い少女がこんなトコでいつまでもクサいメシ食ってたくないもんね」

その場はそれで収まったのだが……

キャス  (…いっそアイツも仲間にしようか? …でもなぁ…アタシ狙われてるしなぁ…
      気があるとか思われても迷惑だし)

421 :幼女の旗の下に:2010/04/26(月) 04:32:19 ID:WyDmyFpG

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ところ変わって男子の収容棟。ムサ苦しい山賊やら悪党たちがシャバでの武勇伝(悪行)を語り合っている。
だがそんな話に興味はないエフラムは部屋の片隅に腰を下ろし天井のしみを眺めながら一日を振り返っていた。
エフラム (結局…この日は何も得る物はなかったな…だが焦りは禁物だ。
      1日2日でどうにかなるものでもあるまい)
しかし…こうしていると胸に寂しさがよぎる。
エフラム (最後に会ったのは…2週間前になるか…サラ、ミルラ、チキ、ファ…みんな…
      俺は幼女を守っているつもりでいたが…むしろ俺の方が幼女の純粋さに心慰められ…救われていたのかもしれんな。
      早く帰ってお前たちと遊んでやりたい…そのためにも一刻もはやく開かずの間とやらを調べて、サラが言っていたのものを確認せねば…
      明日こそターナと連絡を取れるだろうか…)

1 寝る       明日も重労働なんだ…早く寝て体力を回復しよう
2 食堂へ行く    飯の時間は終わったが…なんか残り物ないかな?
3 風呂に入る    そういえば今日はまだ風呂入ってなかったな…
4 幼女を思う    みんな……それと俺はロリコンではない
5 エイリークを思う エイリーク……それと俺はシスコンではない

続く