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Last-modified: 2012-08-29 (水) 20:45:59

182 :幼女の旗の下に:2010/06/25(金) 19:36:24 ID:XvbU88AO

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2 遭難者を装う   も…森で迷って死に掛けてるのだ…助けてくれ……そして幼女たちの献身的な介護…芽生える愛…

シャナン (そうだな…それがよかろう…いきなりベオクが声をかけたら怯えさせてしまいかねんが、
      死に掛けた遭難者なら無下にはすまい…そして…そして…うは! たまらんね!)

そうと決まれば後は行動あるのみである。
シャナンはよろめきながら歩き出した。

シャナン 「う……ぅぅ……」
白鷺幼女A「!?」
白鷺幼女B「Learnesama! ningenga!」
リアーネ 「E!?」

たちまち幼女達が怯えて騒ぎ出す。ここまでは予想通りだ。
シャナン 「くっ…力が出ない……」
そこで少々おおげさに倒れてみせる。
空腹で死に掛けてる設定だ。
ついでに幼女達&リアーネをローアングルから眺められるという邪心もあったかもしれない。
シャナン 「み…道に迷って……何も食べていないのだ…た…頼む…助けてくれ…」
ちなみにシャナンは幼女に与えるためのお菓子を持っている。
それを食えばいいじゃんと突っ込まれた時の事をシャナンは考えていない。
白鷺幼女A「Kononingenha、naniwoitteruno?」
リアーネ 「Minnasagattete、watasigahanasitemiruwa……」
幼女達を下がらせるとリアーネはシャナンのそばにしゃがみこむ。
話しかけようとして懸命に現代語の単語を考えている。
白鷺は一定の年齢になると他のラグズやベオクと話をするために親や周りから現代語を学ぶ。
しかし、ここにいる者たちで現代語を習い始めているのはリアーネ一人。
まずは意思の疎通を図らねばならないし、悪いベオクだったら自分が幼女達を守らねばならない。
それにしても無邪気さは時に大胆というか…屈んだ拍子に純白のぱんつが見えてしまった…
シャナン (ぬおおおおおおおおっは…鼻血が出そうだ…いかんいかん耐えねば…
      しかしラクチェ達に会えないのを我慢してテリウス周りに同行した甲斐があった…)
リアーネ 「…ど…したの…?」
シャナン 「う…うむ…森に迷い込んでしまって……」
どうやら遭難者のようだ。
白鷺はある程度他者の心が読める。
リアーネもシャナンの心を読んでみたのだが、その言葉には嘘はなかった。
昨晩森で迷ったのは本当の事だ。
しかし…なんだかこの男の心からはよからぬ物を感じる。
なんだか自分たちに妙な執着を持っているというか…負の気というか…
純粋なリアーネにはいまいちわからなかったが、なんだか寒気を感じた。
いま少しリアーネに人生経験があればそれをロリ萌えだと見抜けただろうが…
とりあえず警戒心を強める。
リアーネ 「お…なか…すいてる?」
シャナン 「うむ! すいてる! で…できれば…献身的に手料理とか食べさせてほしい…
      弱って動けない私に口移しなんてイベントがあるとなおよし……」
朝飯を食ってないので腹減ってるのは事実だ。
白鷺幼女B「Learnesama、ningenhawarumonodesu hayakunigemasyou!」
リアーネ 「Sonnakotowoittehadame、iibeokukamosirenaijyanai
……nandakamyounaozokehasurukedo……sinisounahitowohouttehaokenaiwa」
シャナン (な…何言ってるかわからん…だが幼女たちの透き通るような声が耳に心地いい…)

183 :幼女の旗の下に:2010/06/25(金) 19:37:05 ID:XvbU88AO

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リアーネは悩んでいた。
餓えて倒れているベオクをほっておくのも気の毒だし助けてやりたいが…
連れて帰ってもリュシオンは絶対受け入れてくれない。
間違いなく追い返すだろう。
…それならせめて食べ物を持ってきてあげよう。
それと幼女達は帰したほうがいいと判断した。このベオクが悪者である可能性は否定できない。
リアーネ 「ちょ…と…まってて…たべもの…もてくる」
シャナン 「す…すまん…」
そしてリアーネは幼女達を連れて飛び去った。
シャナン (うむ! 第一歩はクリアしたぞ! 何をもってきてくれるか楽しみだ!
      …はい、あーんは基本だが…私は衰弱していて食べられないってことにしてやはり口移し…)

シャナンが邪念をたくましくしてる頃、飛んでゆくリアーネ達のはるか下をAKJが疾走していた。
ラケシス 「コラーーーーまちなさーーーーい!!!!」
プリシラ 「降りてきてくださーーーいっ真実の兄妹愛について語り合いましょう!」
クラリーネ「ああもう茂みが邪魔で走りにくいですわ!」
だが上空を飛ぶリアーネ達には聞こえない。
まったく失念していた…集落を出るリアーネたちをつかまえて話をしようと思ったのだが、
彼女たちが飛べることを考えていなかったのだ。
おかげで必死に追いまくった結果、再び森に迷い込むことになってしまった。
数時間彷徨ってようやく再発見したのだ、逃がすわけにはいかない。
AKJは藪をかきわけながら必死にリアーネ達を追いかけていった。

184 :幼女の旗の下に:2010/06/25(金) 19:37:46 ID:XvbU88AO

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エフラム一行はアイクの案内で白鷺の集落に辿り着いた。
やはり幾度も尋ねた事の有る者がいると違う。シャナンやAKJのように迷うこともなかった。
ベオクの一行に白鷺たちは警戒したが、アイクは顔見知りである。
アイク  「騒がせてすまんな、リュシオンに会わせてくれ」
白鷺族A 「少し…待ってくれ…アイクさん。その連中は何者だ?」
アイク  「俺の弟とその仲間たちだ。リュシオンに頼みがあってきた」
しばらく怪訝そうに顔を見合わせていた白鷺達だが、一人が族長の家に赴く。
その男は数分で戻ってくると、一行を家に案内した。
白鷺族B 「リュシオン様がお会いになられる」
アイク  「ああ、すまんな」
エフラム 「よろしくお願いする」

行く道で案内役の男に聞いてみたがシャナンは来ておらず、AKJは追い返されたという。
AKJと鉢合わせにならなかったことはよかったもののシャナンの行方も気になるところだ。
エフラム 「やはり森で道に迷ったのだろうか…」
オグマ  「話がついたら探してみよう」

質素だが風通しのよい木造の家の一室でリュシオンは一行を出迎えた。
眉間にシワを寄せている。どうみても歓迎していない。
リュシオン「困るなアイク…ここにお前以外のニン…ベオクを連れてきては…」
アイク  「そう言うな。話だけでも聞いてやってくれ」
リュシオン「…お前がそういうなら話くらいは聞いてやるが…言ってみろ」
エフラム 「率直にお願い申し上げる。次回の選挙で我々を支持していただきたいのです」
リュシオン「断る」
ロイド  「即答!?」
オグマ  「ま…待っていただきたい! 我々の活動や政策を聞いてから判断してもらいたい!」
リュシオン「ほぅ…お前たちベオクの政はベオクのためのものだろう?
      票が集まらんので苦肉の策で我々を懐柔しに来たのではないか?」
エフラム 「それは違います。我々は紋章町全幼女のために活動している。
      それには無論白鷺の幼女も含まれている」
リュシオン「ベオクが白鷺の子供に何をしたか知ってそんな口を叩けるのか?
      …先週も一族の子供が軍馬に跳ねられそうになった。
      一年前からこんな事は四六時中だ。全てお前たちベオクのせいだ!」

185 :幼女の旗の下に:2010/06/25(金) 19:38:27 ID:XvbU88AO

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あらかじめ演習場の問題についてはカナスが調べていた。
エフラム 「事情は聞いております。我々は白鷺の幼女を守るため、政権を取った暁には演習場の移転を約束します。
      選挙公約として発表してもかまいません」
リュシオン「……」
その言葉には嘘は無いようだ…
だがリュシオンは知っている。
ニンゲンは本音を話しても、結局その時の状況によって節を曲げてしまうことがある。
その時点では嘘を付いていなくても将来変節しないとは言い切れないのだ。
リュシオン「…それで…移設案を出したら今度は移設先のベオクが文句を言うだろうよ。
      その連中の支持を失わないためにも結局お前たちは公約を反故にする。信用できない」
カナス  「リュシオン様…党首は約束は絶対に守る方です。どうか…どうか信用してはいただけませんか?
      失礼ですが、このままでは演習場の移転などかないません。
      ならば……」
リュシオン「ならお前たちに賭けてみろと? それもお前たちが政権を取ったらの話だろう。
      聞けば元老党がほとんど唯一の巨大政党として君臨してるそうじゃないか。
      それでお前たちが政権を取るまで何年かかる?」
エフラム 「確かに一朝一夕で取れるとは思っていません。ですが、我々は10年20年かかってもやりとげるつもりです。
      そしてそのためには貴方の支持がいる」
リュシオン「その年月を待つ間にも森は踏みにじられているのだ。
      私たちには悠長にお前らの相手をしてるヒマなどない!」
アイク  「……聞くが…ではどうするつもりだ?」
リュシオン「…友といえども踏み込んでほしくないことはある…」
アイク  「そうか…俺はお前のためならいつでも手を貸す用意がある。それだけは忘れるな」
カナス  「話の腰を折って申し訳ありませんが…リュシオン様がおっしゃっているのは禁断の呪歌ですかな?」
リュシオン「貴様…どこでその名を聞いた?」
カナス  「以前シエネの大学で古典の研究をしていた折に古い文献で見つけました。
      詳しいことはのっていませんでしたが…白鷺が唯一戦いうる手段であるとか…
      それがいかなるものか私にはわかりかねますが、少なくとも演習場の軍隊を吹き飛ばすことはできるのでしょう」
オグマ  (…目に見えて動揺している…白鷺に嘘や隠し事はできないというが…不便なことだな)
エフラム 「カナス…それは本当か?」
カナス  「そのようなものが実在するか半信半疑でしたが…リュシオン様の反応を見て確信しました」
リュシオン「仮に…仮にそうだとしたらどうだというのだ?
      私の邪魔をするつもりか? やはりベオクはベオクの味方だということだな」
オグマ  「言うまでもないがそんなことをしたら紋章町の陸軍が押し寄せてくるぞ。
      その呪歌とやらがどのくらい強いのか俺はわからんが、以前傭兵として軍で働いた事のある俺にはわかる。
      勝ち目はあるまい…そして白鷺の幼女が戦に巻き込まれることを望むか?」
リュシオン「……」
エフラム 「……俺はかかる事態を認めるわけにはいかない…ベオクとラグズの幼女が手を取り合う未来を潰させはしませんぞ!
      もし戦いを望むというなら俺はこの場で貴方を斬ってでもそれを止める!」
リュシオン「…お前の言葉に嘘が無いことはわかる。そしてお前の言葉がすべて本気であることも…
      さすがにアイクの弟だな。血は争えないか…だが、私にはこの森を守る義務がある。
      森の声に耳を塞ぎ、いつになるかわからないお前たちの政権取りを待っている余裕はないのだ…」
アイク  「…男なら焦るな」
リュシオン「アイク?」
アイク  「男ならどっしり構えろ。お前を信じてついてくる連中のためにも堂々とした姿を見せてやれ」
リュシオン「……少し…考えさせてくれ。今日は泊まっていくといい」

一族の大事だ。簡単に決定は出来ないだろう。
リュシオンはエフラム達に部屋を割り振った。
彼の心はどう傾くだろうか…

186 :幼女の旗の下に:2010/06/25(金) 19:39:09 ID:XvbU88AO

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リアーネが家に戻ると客がきていた。兄の部屋で難しい話をしているようだが、現代語のため充分に聞き取れない。
どこか他のラグズかあるいはジョフレ将軍がまた来たのだろうか。
リアーネ 「…Imanouti…」
台所の棚からいくつかの木の実を取り出す。
ベオクの胃袋に合うように、なるべく腹に溜まるものを多めに持った。
はやくあの遭難していたベオクに持っていってやらねば。
兄に見咎められるとまずい。兄はベオクが大嫌いだ。
ちなみに誤魔化すとか嘘をつくという選択は初めからない。
それが白鷺の特性だ。

慌ただしく木の実と水差しを持ったリアーネは窓から飛び立つ。
風が出始めたので低空飛行に切り替える。
そのまま森を飛んでいると下から何か聞こえてきた……

続く

1 ほっといて先を急ぐ  Hayaku anobeokuwo tasuketeagenaito……
2 着地して確かめてみる Nanikasira? tyottokininaru……
3 木の実を食べる    Souiebagohanntabetenai……onakasuita……