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Last-modified: 2012-08-29 (水) 21:00:02

237 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:09:54 ID:JwSuKWNm

162

1 自室に連れて行く  Tyottosemaikedo…

知らないベオクを家に上げるとリュシオンが怒るだろうが…
だが基本的に人の好いリアーネは3人を自宅に泊めることにした。
リアーネ 「こっち…」
ラケシス 「わかったわ。お世話になるわね」
4人は族長家の扉を潜った。

リュシオン 「…ん? リアーネ…帰ってきたのか?
       …なんだ…友達でも連れてきたのか?」
自室でアイクと酒を酌み交わしていたリュシオンは玄関の方から複数の足音を聞いた。
椅子を立って部屋から顔を出す。
リュシオン 「Na……」
そこにいたのはリアーネと3人のベオクの娘だった。
リュシオン「Nande ningenwo turetekiterunnda!?」
リアーネ 「Nisama Konohitotati niisamaniyoujigaaruno
 hanasiwo kiiteagete…soreniomotehamoukuraiwa hitobanntometeagetaino」
アイク  「なんかあったのか?」
リュシオン「…私が門前払いした連中が押しかけてきた…
      リアーネを丸め込んでな…」
ラケシス 「まぁご挨拶ですこと。リアーネさんはAKJの仲間。
      仲間同士親睦を深めるのは当然のことよ」
リアーネ 「そう…だっけ?」
リュシオン「とにかく帰ってくれ! ニンゲンなど用はない! 迷惑だ!」
アイク  「まぁそう言うな。もう日も落ちてるんだし泊めてやればいいだろう」
リアーネ 「Nisama…onegai…」
軽く溜息をつくとシュリオンは言葉を搾り出した。
リュシオン「…Hitobanndakedazo…」

パッと華やいだ笑顔を浮かべたリアーネはAKJの3人を自室へと案内した。
小さな部屋だが綺麗に整頓されている。
AKJの3人は思い思いにマントを敷き、その上に寝床を作った。
プリシラ 「さ、それではリアーネさん。どうぞこの入会届けにサインを…」
クラリーネ「およしなさいな。もうリアーネさんはお疲れのご様子。
      今夜はもう休みましょう」
今日は色々あって体力の無いリアーネはくたびれていた。
ベッドに腰を下ろしてトロンとした瞳で壁を見ている。
リアーネ 「Afu…」

小さく欠伸を漏らすとリアーネは眠りへと落ちていった。

238 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:11:01 ID:JwSuKWNm

163

翌朝……アイク、ロイドの2人はシャナンを迎えにいくことにした。
リアーネが2人を案内する。
本心を言えばエフラムは自らシャナンを迎えに行きたかった。
幼女主義の精髄をみせた同志の手を取りたかったのだが、リュシオンと話をつけなくてはならない。
族長家の居間には、リュシオン、エフラム、オグマ、カナス、ラケシス、プリシラ、クラリーネの面々が集まった。
リュシオンとしてはAKJを追い返すつもりだったのだが、リアーネに頼まれて話くらいは聞いてやるかと思ったのだ。

ラケシス 「…まさか貴方たちが先に来ているなんてね」
エフラム 「同じく政党の党首同士だ。こういうこともあろう。悪いが遠慮せんぞ」
ラケシス 「フン、こっちの台詞よ」
プリシラ 「その通りです! 私たちの尽力で犯罪者の汚名を免れたにもかかわらず恩を仇で返すなんて…
      兄とは思えない恥知らず! 必ず天罰が下ることでしょう!」
オグマ  「その件は感謝しているが…不信任案の時に協力して義理は果たした。
      ならば引くつもりはない」
プリシラ 「な…なんて厚かましい…あなた方のような腐ったロリコンは罰かぶって死にさらしなさい!!!」

リュシオン「ベオクのいがみ合いならよそでやれ。そんなくだらんことに付き合っているほど暇ではない」
ラケシス 「プリシラ、控えなさい」
プリシラ 「……っ!」
唇を噛み締めて忌まわしそうにオグマを睨み付けると、ようやくプリシラは口を閉ざした。
仕切りなおしとばかりにラケシスはリュシオンを見据える。
ラケシス 「さて…大方の事情は察しております。私どもAKJも選挙公約に演習場の移転を加えましょう。
      …ざっくばらんに申し上げますが、私どもは議会に21議席を有しています。
      2席しかもたないエフラムの政党とどちらが政権に近いか…自明の理というものですわ」
エフラム 「今は2席とはいえ獣牙族の支持を取り付けている。次回選挙では大幅に議席を伸ばしてみせる!」
その言葉にリュシオンが眉を動かす。
ラグズの重鎮の一人カイネギスがエフラムを信用したと言う事だ。
その心には嘘は感じられなかった。

239 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:11:45 ID:JwSuKWNm

164

朝露の滴る森の中…待ち人の来ないシャナンは風邪を引いて震えていた……
シャナン 「へっくしょいくしょい!!!!
      …ううぅ…まだだ…まだここを動くわけにはいかん…
      白鷺少女白鷺少女白鷺少女……」
ぶつぶつ呟いていると白い羽が落ちてきた。
シャナン 「ん?」
羽を手に取って空を見あげると昨日の少女が慌ただしく舞い降りてきた。
リアーネ 「遅く…なてごめん…! ご飯…もてきたよ…」
シャナン 「少女キターーーーーー!!!!!!
      何、気にすることはない! だが…ゴホゴホ…風邪を引いてしまった…
      私は弱っているので口移しで食べさせてくれ…
      あと、ふきっさらしの場所で一晩すごして体が冷え切ってる…
      人肌で暖めてくれ……そうしないと死んでしまうかもしれん…」
ロイド  「なに!? 大丈夫かシャナン!」
アイク  「迎えにきた。もう心配いらんぞ」
シャナン 「あれ?」
茂みからリアーネの後をついてきていた2人が顔を出す。

シャナン 「な…なぜお前たちが少女と一緒に!?
      抜け駆けか!?」
ロイド  「何を言ってるんだお前は…お前を迎えに来たんだよ。
      お前が率先してセリノスに向かった事でエフラムが方針を変えたんだ。
      今頃は白鷺の集落でリュシオンを説得してるころだぞ」
シャナン (あ…そういえばそんな名目で森に入ったんだった…少女に心を囚われて忘れてた…)
その時アイクの大きな掌がシャナンの額を覆った。
アイク  「…少し熱があるな」
シャナン 「…そういうのは白鷺少女におでこを合わせて計ってほしかった…」
ロイド  「それにしてもお前、物が食えないほど弱ってるのか…嫌だがしょうがねぇ…」
言うが早いかロイドはリアーネが持ってきた木の実を口に含んで柔らかくし始めた。
シャナン 「あ、いや…たった今、元気になった! はっはっは!」
リアーネ 「無理…よくない…風邪治ってない」
シャナン 「いやほんとにそこまでは弱ってなかったから!」
ロイド  「ならやめとくぞ。自分で食え」
ロイドも口移しなどせずに済んでほっと一息だ。
シャナンはアイクに背負われて集落に運ばれることとなった。

シャナン (くそ…なんでこうなるのだ…私と少女の幸せタイムが消えてなくなってしまったではないか!
      本来なら献身的な少女の人肌ウハウハ介護を受けるはずが…筋肉男のおんぶになってしまった…orz)

せめてもの慰めはリアーネの羽をゲットできたことだ。宝物にしようとシャナンは固く決心した。

240 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:12:27 ID:JwSuKWNm

165

紋章町市街地では各政党が激しく票を争っていた。
久しく安定することのなかった紋章町の政局ではあるが、元老党の巨大化によって一定の安定を得たかに見える。
だが、それを望まない者も多い。
どうにか足場を崩してやろうと次回選挙に向けた足場固めに各政党は余念がなかった。

大統領府においてバイロンはヘッツェルより報告を受けていた。
ヘッツェル「今期予算案は可決いたしました。大統領の署名をお願いします」
バイロン 「うむ…用はそれだけか? では下がるがよい」
ヘッツェル「はい…それでは失礼いたします」
首相の重職にありながらルカンの操り人形から脱そうとせず唯々諾々と従うだけのこの男をバイロンは内心で嫌っていた。
ヘッツェルが退室するのを見届けるとバイロンは溜息を漏らした。
バイロン 「ランゴバルトもレプトールも商人に身を落とした…グランベル貴族として恥ずべき事だ…」
レプトールがランゴバルトの説得でバーハラ保守党を離脱してベグニオン元老党に合流したとの知らせが昼ごろに入っていた。

あの2人のことは幼少の頃から知っている。
バイロンが軍人に進んだのに対して2人はビジネスの道を選んだ。
元来グランベル系貴族は騎士道を重んじ、軍に入る者が多かったのだが平和な時代が続き軍縮の世の中となっては
それも時代の流れ…主家であるバーハラすらそうなのだ。
騎士道精神だけでも失わずにいてくれればそれでもよいと思っていたが…
バイロンにはドズルもフリージも利益のために堕落した元老院と結びついたとしか思えなかった。

241 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:13:15 ID:JwSuKWNm

166

激戦地の一つトラキア…南部のスラム街ではトラバントがメガホンで声を張り上げていた。
その姿はいっぱしの政党の党首とは思えない質素なものだ。
事実トラバントは貧乏である。本業は鉱山労働者であり労働組合のリーダーであったが、
賃上げ要求のストライキを敢行したためにクビになって失業中だ。
それでも労働者仲間からのカンパでかろうじて食いつないで政治運動に精を出している。
トラバント「南トラキアの貧困の原因はただ一つ!
      北部資本家の搾取にある! 鉱山の経営権を牛耳って自らは大もうけし、
      ワシらにはろくに食ってけないような賃金しか渡さん!
      このような貴族や資本家階級を排斥し万民平等の世の中にせねばならん!
      南北の格差は取り除かれねばならん!」

アリオーンとアルテナは大声を張り上げるトラバントを会場の片隅で見守っていた。
アルテナ 「父上…」
アリオーン「よく見ておけ。父上のお姿を。本来貴族でありながら進んで身分や階級の無い世の中を作ろうとしておられる」

トラキア家が没落して久しい。
最後の手段であったアリオーンとターラ公爵家の令嬢リノアンとの縁談も、
家の使用人だったディーンとリノアンが恋仲となったためご破談となった。
屋敷も手放し、使用人も居なくなり、今は3人でスラムの一角で細々と暮らしている。

その頃からトラバントは北部の貴族や金持ちに苛烈な憎しみを向けるようになった。
貧民や左派の人間をかき集めて政党、国家社会主義トラキア統一戦線を立ち上げ政権掌握を狙っている。
トラバント「一部の金持ちばかりが肥え太ることのないよう、全ての財産は国有とし万民のために運用されねばならん!
      金持ち貴族の贅沢のためにワシら労働者がこき使われることのないようにせねばならん!」
労働者A 「そうだ! その通り!」
労働者B 「北部の金持ちは死ね!」

この地区には北部への怨嗟が渦巻いていた。

242 :幼女の旗の下に:2010/06/30(水) 04:14:50 ID:JwSuKWNm

167

サカ地区は人口が少なく、ローカル政党ともいうべきサカ天命党がほぼ票田を掌握している。
それで満足したのかそれ以上、他の地区への進出を図ろうという動きは無い。
今日もこの地区では遊牧民たちが馬に草を食ませている。

リンは久しぶりに草原分を思い切り補充していた。
リン  「ふわ~草原の風が心地いい~!」
最近エフラムがテリウスに長期出張に出かけてしまい寂しい思いをしていたが、
こうしていると欝の気が晴れる。
草原に寝転がって日を浴びていると、クトラの族長ダヤンと息子のラスを見かけた。
リン  「あぅ……はぁ…」
以前は付き合ってたこともあるのだが、
レズ疑惑でラスに振られてしまってから正直気まずくて顔を合わせにくいのだ。
とりあえず気付かれない内に立ち去ろうとすると、二人の会話が耳に入ってきた。
ラス  「父上はあまり選挙活動をしてないようだが…いいのか?」
ダヤン 「構わんよ。1、2議席があれば遊牧民の暮らし向きについて困ったことにならんよう議会で意見が言える。
     それ以上何を望むのだ。あとは天地の恵みがあればワシらは生きていける」

リン  (…そういう考えもあるのねぇ…兄さんは政権を取るのに熱心だけど…)

セリノスの集落…アイクたちはシャナンを連れ帰った。
族長家の玄関を潜ると、エフラムとラケシスの論争が聞こえてくる。
リュシオンの決断はまだ下っていないようだ。
エフラムを支持するか…ラケシスを支持するか…どちらも支持しないのか…
アイク  「ふむ」
ロイド  「やっぱ長引いてるな」
シャナン 「けほけほ…とりあえずリアーネの部屋でリアーネに看病させてくれ…今度こそ人肌で…」
アイクの背中でシャナンがせきをする。
リアーネ 「おくすり…ださなきゃ…」

アイク  (…リュシオン…)

1 居間に行く       リュシオンの決断を見届けねばならん
2 リアーネの部屋に行く …リアーネより俺がシャナンの世話をしたほうがよかろう。
                俺は丈夫だし風邪が移ったりはせんだろうからな