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Last-modified: 2012-08-31 (金) 00:11:40

358 :幼女の旗の下に:2010/07/08(木) 22:41:17 ID:NB9Ssi5X

173

3 自分の案を採用する ブラザーアーチで飛んで行くぞ! 兄上、俺たちをブン投げてくれ!

エフラム 「やはりブラザーアーチが一番だろう。あっという間にフェニキスにつくぞ」
アイク  「わかった任せろ」
カナス  「ちょ…ちょっと待ってください!? 付いても死んでたら意味ありませんよ!?」
アイク  「なに、タフさだけが耐える方法ではない。地面に突っ込むタイミングで受身をとれ。
      それで大丈夫だ」
カナス  「そ…そんな馬鹿な…」
オグマ  「こうなったら腹をくくるか…」
ロイド  「一人一つ特効薬を持とう。生きてたらこれを使え」

男たちの覚悟は決まった…
アイクの豪腕がエフラムをかかえあげる。
アイク  「ぬぅん!」
エフラム 「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
まるでミサイルのように勢いよくブン投げる!
瞬く間に地面が遠ざかり眼下に広がる海の上を高速で飛んでいく。
エフラム 「ぬぅぅ!? こ…これは聞きしに勝る凄まじさ…リーフのやついつもこんな目にあってるのか…
      …しかし参った。このまま地面に突っ込んだら受身を取っても死にかねんな。さてどうしたものか」
後方から次々とアイクに投げられた仲間たちが飛んでくる。
ロイド  「ぎええええええええ!!! ちくしょーくたばってたまるか!」
オグマ  「着地まであまり時間が無いぞ! どうする!?」
カナス  「ああ…せめてもう少し考えるべきだったのでは…」
シャナン 「いや! 我に策あり!」
エフラム 「さすがだシャナン! してその策とは!?」
シャナン 「我がバルムンクの素早さ補正を持って島を回避する!
      海に突っ込めば助かるに違いない!」
ロイド  「…そうか?…つーかそれじゃお前しか助からんだろうが!」
カナス  「あぶぶぶぶぶ……」
オグマ  「カナス!? 気をしっかりもて!」

5人をブン投げたアイクは誰も姿の見えなくなった空を眺めていた。
アイク  「…考えてみれば自分で自分は投げられんな。俺は泳ぐか…いや待て」
ふと思い立ったアイクはラグネルを抜き放った。
アイク  「ぬおりゃあ!」
そのまま渾身の力を込めてブン投げると全速力を持ってラグネルの後を追う。
アイク  「ふぬぅ!」
鍛え上げられた脚の筋力と助走の勢いをもって大ジャンプをかますとラグネルに飛び乗り、
そのままアイクはエフラム達の後を追って飛んでいった。

359 :幼女の旗の下に:2010/07/08(木) 22:42:00 ID:NB9Ssi5X

174

フェニキス上空を2人の鳥翼族が飛んでいる。
ウルキ  「……間違いない…この風切り音…何か飛んでくるぞ」
ヤナフ  「視界に入った…な…なんじゃあありゃあ!?
      ベオクが空を飛んできやがる!?」
ウルキ  「後方…もう一つ音源を感じた。大きいぞ。勢いが他の物とは比較にならない」
ヤナフ  「見えた…あ…ありゃあアイクじゃねえか!? 族長に知らせねえと!」

オグマ  「いかーーーん! 万策無いまま突っ込むぞ!?」
ロイド  「受身受身…」
エフラム 「うぬ…こういう時は前周り受身がいいだろうか」
アイク  「心配するな」
エフラム 「兄上!?」

異常な速度でアイクを搭載したラグネルはエフラム達を追い抜いていく。
両腕のKINNIKUをもって空気を掻き分け、まるで暴風のような速度を出している。
空力だの空気抵抗だのといった理屈はアイクのKINNIKUの前には無力だった。

アイク  「先に着地して受け止めてやる」
ラグネルが着弾して出来たクレーターで両腕を広げると、次々と男たちをキャッチしていく。
エフラム 「やはり兄上はすごい…どれだけ修行すれば追いつけるのか…」
オグマ  「いや…世の中には人外の領域ってものがあってな…ほらしっかりしろ。ついたぞ」
カナス  「ああ…母が手招きしてます…」
ロイド  「お前の母ちゃんはまだそっち行ってねえって」

男たちは命があった事を喜び合う。
その彼らの側に、大きな翼を持った筋骨逞しい男が舞い降りてきた。
ティバーン「よお、相変わらずベオク離れした野郎だな。こないだ泳いできたと思ったら今度は空か」
アイク  「おう、空を飛ぶとは気持ちのいいものだな」

鷹の族長ティバーン。
フェニキスを纏める猛者である。
全身を傷跡が彩っており、幾多の修羅場を潜り抜けてきた風格が備わっている。

エフラム (…おそらく…いや、間違いなく戦うことになろう…)

360 :幼女の旗の下に:2010/07/08(木) 22:42:45 ID:NB9Ssi5X

175

駒を進める音が響き渡る。
こうしてチェス盤を挟むのも幾度目になるだろうか…
盤面の駒たちの装飾に職人の美意識が感じられ、タナス公オリヴァーは瞳を和ませた。
オリヴァー「C2にアーチャー。そうそう好きにはさせませんぞ」
セフェラン「ふむ、これは容易にはなりませんね。時間をかけて崩すよりなさそうです」
オリヴァー「時間を…ふむぅ……なれど…時がありませぬ。議会選挙が終わって一年後には大統領選挙が控えておりまする。
      バイロン様の再選はかないますまい」
セフェラン「…バックアップすべきバーハラも崩れ、軍部も軍需産業もルカン殿の手が回ってきておりますな。
      ベルン署の腐敗が一掃されたのがせめてもの救いでしょうか」
オリヴァー「…保守系が連立を図りつつありますが…貴族系という点では元老党も同系にあたります。
      その動きはやがて元老党の知るところとなるでしょうな」
セフェラン「財界の動きは?」
オリヴァー「フリージ、ドズル両社の分離により、バーハラ系は一時的に失速しました。
      この機を見逃すサナキ社長ではありません。ベグニオングループが業績を伸ばしております。
      さて、この資金がいずれに流れますやら」
セフェラン「持ちつ持たれつ…とは申しますが……E5に傭兵」
オリヴァー「睨みを利かしにまいりましたな……そういえば一点面白いことがございましてな」
セフェラン「伺いましょう」
オリヴァー「ほぼすべての地区で攻勢に出てグランベル社を圧倒したベグニオンではありますが…
      ただ一つ、ヴェルダン地方においてはグランベルに遅れをとったそうですぞ。
      大局からすればささいなことですがな」
セフェラン「ほほぅ…ベグニオン社でもグランベル社でもヴェルダンは無能者の左遷先と伺っておりますが…」
オリヴァー「詳しいことはわかりませんがな。ヴェルダン人の多くを占める木こりたちのコミュニティを引き込んだグランベルは
      生活用品の売り上げや保険等の契約も伸ばしておるとか…中には優秀な者もおるのやもしれませぬな」
セフェラン「競争は大いに結構なことです。
      ビジネスモデルとしてサナキ様にも学んでいただくことがあるやも知れませんな…
      サナキ様のご様子は?」
オリヴァー「シグルーン殿とタニス殿がよく補佐しておりまする。業績も伸びておりますが、
      フリージ、ドズル系の割合と、それらを引き込んだ者たちの発言力の増大も無視できませぬ。
      ……B3にパラディン…ふぉふぉふぉ、そう簡単に戦列を抜かれてはたまりませんな」
セフェラン「これは良い手ですな…腰を据えてかかりましょう」
オリヴァー「……時節が至るまで…まだ時がいりましょうか」
セフェラン「国家百年の計のためですよオリヴァー殿。必ず流れは変わるものです。
      最低限のラインを踏み越えさせないことを今は考えるべきでしょうな」
オリヴァー「…これから私が申し上げることは私の憶測にすぎませぬが…
      次の選挙で元老党が過半を取ることがあらば…ルカン殿は大統領選に名乗りをあげるかと…」
セフェラン「ふむ。政治と経済は分かち難く結びついております。元老党が強くなればベグニオンもまた強くなる。
      その逆もしかり、これほど効率的で反発の小さい支配は例をみないでしょうな」
オリヴァー「…それが実現すれば…もはや引き返すことは出来ないのでは…」
セフェラン「憂慮されるのも当然の事です。なれど元老党には貴方がいる。
      ……一つ…話しておきたいことがあるのですが……」

豪奢なる牢獄の中で、駒が乾いた音を立てて転がった……

361 :幼女の旗の下に:2010/07/08(木) 22:44:54 ID:NB9Ssi5X

176

グランベル社のオフィスに男の声が響く。
通りのよい声で周囲の注目を集めていく。
アルヴィス「シグルドは本社時代確かにこれといった成果をあげてはいません。
      ですが我が社の業績が伸び悩む今、ヴェルダン支店躍進のきっかけをつくりました。
      シグルドを左遷したレプトール専務も退職されたことですし、
      ここは一つ呼び戻しを考えてもよいのではないでしょうか人事部長」
フィラート「そうは言うがのう…ヴェルダンから本社への異動など前例の無いことじゃし…」
アルヴィス「どんな事でも最初の一歩というものはあります。
      …どうかご一考ください」
フィラート「うぅむ…いやわかった…アルヴィス課長がそういうのであれば…」
アルヴィス(…これでいい…私は弱いから…いつまでもお前が帰らんと、
      クルト社長の誘いに乗ってしまいそうになる…)

こうしてヴェルダンでの成果とアルヴィスの推薦によりシグルドの本社帰還が決定した。
帰還後のポストは未定ではあるが栄転が期待できる。

そして…これがアルヴィスにとっての踏ん切りであった。

閑静な住宅街。
その一角にある兄弟家の玄関口でマルスは帰宅際にポストの中身を回収した。
マルス  「ただいま~エリンシア姉さんに手紙が来てますよ」
エリンシア「え、私に? も…もしやバアトル様からのラブレター!?」
マルス  「いやそれ既婚者…残念ながらジョフレ将軍からです」
エリンシア「…え…じょ…ふれ……? 心当たりがありませんが…どなたでしたっけ…」
マルス  「……」
エリンシア「あ…ああ…ああ! ジョフレねジョフレ!」
マルス  「本人が聞いてなくてよかったですね」
エリンシア「どれどれ…内容は…え、そんな遠くまで派遣されてたんですか?
      …知りませんでした」
マルス  「セリノス送りにされたって話ですか? いつだかルキノさんが言ってたじゃありませんか」
エリンシア「そうでしたっけ?……あ…まあそれはともかく、元気でやってますよ~って内容でしたわ」
マルス  「ふーん…で、お返事はするんですか?」
エリンシア「そうですわねぇ…」

続く

1 ジョフレに返事を書く     それではお返事でこちらの近況を知らせましょうか
2 バアトルにラブレターを書く  それよりもKINNIKU!KINNIKU!