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Last-modified: 2012-09-01 (土) 01:44:32

14 :スター俳優マルス 3章1/4:2010/07/23(金) 22:54:53 ID:2b3huACh

しっこくハウスでエフラムは座禅をくみながら考えにふける
夕食後に電話を借り、しばらく漆黒の騎士の家に厄介になることを伝えた
漆黒の騎士が辛いことがあったならいつでも頼りたまえ、と言ってくれたのもあるが
それ以上に今家に帰るとマルスを勢いで殺してしまいそうな不安があるからでもある
しかしいつまでも漆黒の騎士のお世話になる訳にもいかないので布団の中で
どうすればよいかを考え込んでしまい結局寝ることなくエフラムの一日が過ぎていった

一週間後
マルスはエイリークとの特訓により序盤の台詞は完璧に熟していた
エイリーク「そろそろシーナ姫に刺される場面でもやりましょう」
マルス「うん、何とか再開のシーンまでは出来るようになったしね」
エイリーク「そうと決まれば魔王役も必要ですわね」
マルス「今日はシーダ来ないしね。とりあえずリーフを呼んでくるよ」

リーフ「…で、呼ばれた理由はわかるけどどうして僕が魔王役なの?」
マルス「家族の男で1番しぶといから」
リーフ「…まあわかるけどさ」
エイリーク「リーフはここに立つだけでいいわ」
マルス「じゃあ始めようか」

マルス達が練習をしている時、こっそりと兄弟家に入る者がいた
エフラム「くそ、これ以上考えても仕方がないしエイリークに直接聞こう」
普段なら誰かしら家に帰ってきたエフラムに気がつくはずなのだが
たまたまマルス達以外は外出しておりエフラムは誰にも気づかれずにマルスの部屋の前を通り掛かる
するとマルスの部屋からマルスとリーフ、そして
エフラム「…む、エイリークの声がするな」
ちょうどいい、直接2人に真意を聞こうと思いエフラムはドアノブに手をかけた
その時、たまたま大きな声で台詞を読んだマルスの声が聞こえた
マルス「………に刺されて君が助かるなら本望だ」
エイリーク「………」ドスッ!
マルス「…うっ…これで…君は…救われ…る」ガクッ
エフラム「わぁぁぁぁ!!」
声を聞いて慌ててドアを押し破るエフラム。吹き飛んだドアはドアの前に立っていたリーフごと吹き飛ぶ
リーフ「このひーとーでーなーーしーーー!!」
しかしエフラムやマルス、エイリークはリーフを気にしなかった…

そしてエフラムの目に映るのはこちらを呆然とした表情で見るエイリーク
その手には刃物が握られており、その刃は…マルスを貫いていた
エフラム「嘘だ…嘘だろ…あぁぁぁぁぁ!!」
パニックになったエフラムは叫びながらその場を逃げ出していった……

エイリーク「あ、ちょっと?エフラム兄上?」
エイリークは慌てて廊下に飛び出すが既にエフラムは消えていた
マルス「エフラム兄さん、いきなり人の部屋のドア壊して何するんだ!?」
リーフ「…というかまず助けてよ…このひとでなしー!」
横になっていたマルスはドアの下敷きになっていたリーフを華麗にスルーして廊下に向かう
エイリーク(エフラム兄上…)
マルス「エイリーク姉さん、エフラム兄さんは皆に任せて演技指導お願いします」
エイリーク「あ…はい」

15 :スター俳優マルス 3章2/4:2010/07/23(金) 22:55:39 ID:2b3huACh

家を飛び出したエフラムは近所の公園のベンチで泣いていた
エフラム「エイリーク…どうして…」グスン
そんな時エフラムの前をたまたま通り掛かった男が泣いているエフラムを見て声をかけた
ビラク「お、エフラム。泣いているなんてどうしたんだ?」
エフラム「ビ、ビラク殿…実はカクカクシカジカでして」
ビラク「そうか…今日はもう遅い、うちに来るか?」
エフラムは無我夢中で泣いていて気がつかなかったが既に辺りは暗くなっていた

ビラク「適当に座りたまえ。俺は少し電話してくる」
エフラム「ありがとうございます…ウウ」グスン
マンションの1室がビラクの住まいであり、そこそこ広かった
エフラム「…ビラク殿は優しいな」
エフラムがそんなことを考えている頃、兄弟家では…

ミカヤ「ヘクトルー悪いけど電話出てー!」
ヘクトル「へーい」
居間でテレビを見ていたヘクトルが姉の頼みで電話を取りに行く
ヘクトル「はい、兄弟家です」
ビラク「その声は、ウホッ!へっきゅ…ガチャン!!」ツーツーツー
ヘクトル「ハァハァ…ゆ、油断も隙もねぇな」
実はエフラムが泣いていた公園でビラクに会ったのは偶然ではない
たまたまヘクトルがビラクに追い回されていた公園であり、出会いは必然であったのだ
肩で息をしていると再び電話が鳴りはじめる
ヘクトル「…はい、兄弟家です」
ビラク「いきなり切るなんて酷いなー」
ヘクトル「…悪戯なら切るぞ」
ビラク「あー待った待った!今日は大事な用があるんだ!」
ヘクトル「何だ?デートや贈り物の類は断るぞ」
ビラク「それも大事だが今日は違う、エフラム君を今日は預かるから頼む」
ヘクトル「……っておい!エフラムに手をださないつもりじゃなかったのかよ!?」
ビラク「心配するな。俺はいつでもへっきゅ…ガチャン!!」ツーツーツー
ヘクトル「余計なお世話だったな…けっ!!」

ヘクトルがミカヤに電話の内容を伝え、ミカヤ達はエフラムが無事で安心していた
しかしエイリークだけは未だに帰って来ないエフラムを心配をしていた

16 :スター俳優マルス 3章3/4:2010/07/23(金) 22:56:22 ID:2b3huACh

ビラク「さて、エフラム君の妹君が弟君を刺した理由だったな」
エフラムはビラクに何故エイリークはマルスを刺したのかを悩んでいたことを説明した
ビラクは少し考えてからエフラムに質問を始めた
ビラク「たしか妹君は弟君の恋人とも仲良くしていたのだな?」
エフラム「はい、マルスの恋人、シーダさんとも一緒にいました」
しっこくハウスにいた時にマルスの部屋からマルス、エイリーク、シーダさんの声が聞こえ
漆黒の騎士の部屋からマルスの部屋の窓を覗いた際に確認している
ビラク「ふむ、そしてたしか別の妹君には同性愛者がいたな?」
エフラム「はい、リンはクラスの友人とそのような関係らしいです」

リン「はっ!!マルス!またあんたは私のことで何か言い触らしたわね!!」
マルス「リン姉さん、誤解だ。僕は練習で忙しいんだダカラチョークスリーパーハヤメテ!イタイ!イタイ!グキッ!アー!」

ビラク「なら導かれる結論は一つだ!」
エフラム「ま…まさか…」
予想がついてしまいエフラムの背中、頬に冷や汗が流れる
ビラク「おそらく妹君も同性愛に目覚めたんだよ!!」
エフラム「な、なんだってー!」
ヒーニアス「な、なんだってー!」
ゼト「な、なんだってー!」
サレフ「な、なんだってー!」
エフラム「出てけ!」
アータスケテエイリークギャー!
ビラク「今誰かいなかったか?」
エフラム「気のせいです…つまりエイリークは…」
ビラク「ああ、きっと弟君が邪魔だったのだろう」
エフラム「マルスは…家族想いだからな…だから敢えて刺されたのか」
ビラク「立派な弟君だな」
エフラム「はい…しかしエイリークは…」グスン
ビラク「気持ちはわかる。俺も世間から異端で見られてるからな」
エフラム「いえ、ビラク殿とは違うんです…」
ビラク「まあとにかく飲もう。辛い時は飲むのが1番だ」
エフラム「は、はい」

だが飲み慣れない酒を飲んだ上に一週間寝不足であったためであろうか
ビラクに酔いが回る前にあっさり潰れたヘクトルであった
ビラク「エフラム君、君はまだ人生は長い。きっと君にもいいことがあるさ」グビグビ
エフラム「…エイ…リーク」zzz

17 :スター俳優マルス 3章4/4:2010/07/23(金) 22:57:06 ID:2b3huACh

エフラム「うう…頭がいてぇ…昨日飲み過ぎたか」
頭を触りつつ俺は人が疎らなショッピングモールを歩いていた
飲み始めてからの記憶が曖昧だがきっとビラク殿のお世話になったのだろう
起きたら机の上に『少年よ、頑張れ』と書かれた紙と朝食があった
時計を見るともうすぐ11時ってところであったので急いで食べ、後片付けをする
俺はヘクトルと違って保母志望だからな。家事はそこそこできる
今朝のことを振り返っていると視界に見覚えのある人が入った

エフラム「あれは…エイリークとシーダさんか」
声をかけようと思ったが昨日のビラクの言葉が再生される
「同性愛」…そうか、きっとあれはデートなんだ。邪魔してはいけないな
そう思った俺は声をかけずに元来た道を戻ろうとした…2人が立ち止まった店を見るまでは

エフラム「あれ…たしかあそこは…」
少し前にミルラ達とあそこでとある服を見た記憶がある…
まさかと思い2人に気づかれない角度から店のショーケースを覗きこむ
俺は自分の記憶力のよさをこれほど後悔したのは初めてかもしれない
2人が見ているショーケースには純白のウェディングドレスが飾られていた
更に会話を聞くために2人の死角(ガラスの反射からもだ)から近づく
シーダ「……なら………様も見とれますかね?」
エイリーク「ええ、きっと見とれるわね。どうする、これにする?」
シーダ「はい!じゃあ行きましょうか」

………そうか、2人の愛はそこまで進んでいたのか
もうこの世の全てが嫌になった…鬱だ…そうだ、また寺に行こう
俺はマルスに同情しつつ、世俗から離れるために寺へ向かった

4章へ続く