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Last-modified: 2012-09-01 (土) 13:34:04

253 :風の交響曲 3 1/2:2010/08/06(金) 14:32:14 ID:bFT33aXx

「な…ウインドを突き破った…だと!?」
僕の唱えたエクスカリバーはダークマージのウインドを突き破った。
そしてその勢いのままダークマージのウインドの書を切り裂いた。
「ああ…この突き抜ける風の感覚…これはサカの風だな。」
「な、何を訳のわからないことを…くそ、トルネードを喰らえ!」
狼狽えるダークマージの唱えたトルネードが僕に向かってくる。
竜巻が現れれた時に僕がイメージしたのはアイク様の発想だった。
衝撃波の上に乗る…なら僕はエクスカリバーに乗ればいい。
脳内に風の刃の魔法ではなく、別のイメージが浮かぶ。
「ハッハッハッ!見たか、トルネードを!跡形もねえ…ぜ…?」
ダークマージは唖然としている。それもそのはず、僕は空を飛んでいた。
正しくは飛ぶではなく跳ぶであり、ただ滑空しているだけだが。
トルネードが来る直前にエクスカリバーを唱え足元から僕を押し上げる。
トルネードを飛び越え、再び唱えたエクスカリバーで方向転換する。
そしてグライダーのように滑空しながら3回目のエクスカリバーを唱えた。
「な…ぐわっ!?」
風の刃はダークマージのトルネードを切り裂き、地面に押し倒した。
そして4回目のエクスカリバーで着地直前にエクスカリバーの風で
落下スピードを相殺し僕は華麗に地面に着地した。
「貴様…その…魔法は…?」
「エクスカリバー…僕のイメージを自在に具現化する風の魔法だ。」
「エクスカリバー…か。風を自由自在に操る…見事だ…」
よし、ダークマージは気を失った。残るは山賊だ!
「くそっ!こうなったら逃げるぞ!ピー!」
山賊は女性を無理矢理担ぐと指笛を吹き鳴らした。
すぐさま上空からドラゴンが飛んで来て山賊と女性を乗せて空へ逃げ出した。
「ハッハッハッ…俺を倒すとこの女も真っ逆さまだぜ!」
山賊は勝ち誇っていた…けど僕はどうすればいいか理解していた。
風…いや、自然が全てを教えてくれた。こうすればいいと!
エクスカリバーは2つの風を作り出す…1つは研ぎ澄まされた刃を
そしてもう1つはすべてを包み込む優しい風を。

「さて、この女はどうするかな…うん、この音は何だ?」
山賊が音を認識した時、ドラゴンの剣すら弾く鱗が引き裂かれた。
バランスを崩したドラゴンは山賊と捕われた女性を落としてしまう。
気を失っている女性はともかく意識のある山賊は叫び惑う。
「あああああ!?まさか女性ごと撃ち落とすとは!?」
自由落下していく2人をもう1つの風が優しく包み込む。
そして風は長い時間2人を滞空させながらゆっくりと下ろした。
急いで2人に駆け寄ると山賊は失禁して気を失っていた。
僕は気を失っている女性の縄を解き、山賊を縛り上げる。
そういえばこの女性…見覚えがあるような…?
そんなことを考えていると女性が目を覚ました。
「うぅ…ここは?」
「安心してください。あなたを襲った山賊は倒しました。」
「あ、ありがとうございます。あの…名前を教えていただけませんか?」
「マリクです。カダイン学院のマリクといいます。」
名前を名乗ると何故か女性はいきなり抱き着いてきた。
「ああ、マリク!あなたなのですね!」

254 :風の交響曲 3 2/2:2010/08/06(金) 14:33:48 ID:bFT33aXx

…もしかして…この声は…
「エリス…様ですか?」
「そうよ。怖かったわ!ありがとうマリク。」
昔、マルス様とよく遊んだりしたエリス様。僕の初恋の人…
エリス様が中学生になって留学してしまい伝えることはできなかったけど。
久々に出会ったエリス様は…あの頃よりも美しくなっていた。
「あ、あの…あまり抱きしめるのはやめてください…」
「え?別にいいじゃない。」
「い、いえ…その…はい…」
「怖かったんだから…」
怖かったのは本当なのであろう。エリス様の目にはうっすらと涙が見える。
「大丈夫です…エリス様は…これからは僕が守りますから…」
「え…それって…?」
しまった…潤んだ瞳で上目使いされていたら口が滑った…
……誤魔化すくらいなら正直に答えて玉砕しよう…
「僕は昔からエリス様が好きでした…だから…ずっと側にいてください!」
ああ、終わった。今日はエルレーンにやけ酒に付き合ってm…
「本当!?私も…マリクのことがす、好きなの!」
「エリス様…冗談はやめてください…」
「本当よ!あんなに頼りなかったマリクが…」
「まあ昔からよく看病されてましたからね。」
「さっき助けられて確信したわ…あなたに惚れてしまったようだわ…」
「エリス様…僕なんかでいいんですか?」
「あなただから…いいのよ…」
初々しく顔を赤らめる僕達…そんな2人を柔らかで優しい風が包み込む。
ああ…きっとこの風は僕達を祝福してるんだね…と僕は思ったのだった。

誘拐未遂事件が終わった後、エクスカリバーを自由自在に使えるようになり、
気がついたら僕は風の魔術師と呼ばれるようになっていた。
ウェンデル師匠は僕の風を操る様を交響曲と例えた。
いろいろな風が響きあい、交わることでハーモニーが生まれたらしい。
エクスカリバーをここまで使いこなせたのはいなかったようだ。
ガトー様に一度見せた際はガトー様も唸っていたらしい。
風の魔術師…そんな二つ名は今の僕は気に入っている。
そしてあの時から僕は風の意思を感じ取れるようになれた。
エリス様にも告白できたしエクスカリバー様々である。
「さて、今日の風はどんな風かな?行こうかな。」
僕はエクスカリバーを持って中庭に向かうのであった……

終わり