商店街の一角にある、それこそ老舗中の老舗…もとい商売してんのか?というぐらい外装の古い建物がある。
名前は「ネルガル人形店」七五三やひな祭りの人形を扱う由緒正しき古店なのだが……
ネルガル 「はぁ…娘婿達の誰一人伝承できる器がおらんとは、ワシの代で終わりかのぅ」
ラーチェル 「誰か家筋以外の人を見つければ宜しいじゃないですの!器とかいってないで」
ネルガル 「また勝手に入ってきおって、ボランティアだかなんだか知らないが。迷惑じゃ」
エイリーク 「まぁまぁ…掃除は終わらせたので、ご飯はちゃんと食べられてますか?」
ネルガル 「わしゃ、まだぼけとらん。三時に一回食べたわい」
ターナ 「それオヤツよ。うまい棒はご飯じゃないでしょ……」
ラーチェル 「ぁーもうっ!部屋に引き篭もってるから性格も陽に当たらなくてこう三回転半ぐらい捻くれてるのよ!」
ネルガル 「お主の様に陽に当たりすぎて際限なく高飛車になるのもどうかと思うがのぅ」
ラーチェル 「もう!ああいえばこういう!少しは商店街に出なさい!」(ぐいっ)
ネルガル 「いたたた、老人はもっと優しく労わらんか!」
エイリーク 「ラーチェル。もう少し穏便に…」
~ボーレ豆腐店~
ボーレ 「いらっしゃい!両手に花っていうレベルじゃないねぇ、ネルガルのじいさん」
ネルガル「うるさいわい!お主辺りの気骨がある男がワシの技術を引き継いだらのぅ」
ボーレ 「すまないが俺は豆腐に命かけてんだ。半端に他の技量を伸ばすのは怪我の元さ」
ネルガル「はぁ………残念じゃのぅ………」(がっくり)
ターナ 「逆効果だったんじゃない?」
ラーチェル「ぅ…うるさいですわね!少しぐらい気晴らしになると思って店から出したのですけど」
エイリーク「困りましたね……あら?」
(くいくい)
ネルガル 「ん……服の裾を引っ張って…なんじゃ?お嬢ちゃん」
ミルラ 「溜息は………幸せが逃げるとおじいちゃんが…言います…良い事……どうぞ」
ネルガル 「この老いぼれにくれるというのか………こ、こ…これは!」
ボーレ 「ぉ、いらっしゃい!じいさんにあげたの、お手製の豆腐かい?」
ミルラ 「はい……たくさんできたから…皆に御裾分けの最中……です」
ネルガル 「ボーレよ、この豆腐の造形美。分かるか?」
ボーレ 「どうしたんだ?急にマジメに。ぉ、こりゃ黄金比……たまげたなぁ」
黄金比 ぶっちゃけて数字で言えば1:1.61803
比率じゃさっぱりなので簡潔に言うともっとも形が美しいとされる比率なのである……トウフダケド
ネルガル 「……この娘に一子相伝の人形術を教えようかと、素質は見抜いた」
ボーレ 「じいさん、このミルラちゃんには既に夢があってだな…素敵なお嫁さんになるという夢がな!」
ラーチェル「真顔で言い合ってますわよ、あの二人……」
ターナ 「ラーチェルが呆れるなんて相当なものね……」
ネルガル 「ぬぅぅ……ならば!婿殿に掛け合ってみるしかあるまい!」
エフラム 「やっぱりここだったかミルラ、豆腐を届けたい気持ちは分かるが一言声をかけてからいかないと皆が心配するぞ?」
ミルラ 「ぁ…エフラムお兄ちゃん……ごめんなさい」
ネルガル 「貴様、兄と呼ばれていて兄ではないな。我が眼力で見抜いた!というわけで…我が一子相伝の技を継ぐがいい!」
「「「じいさん、自重しろ!」」」