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Last-modified: 2011-06-06 (月) 21:44:07

93 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/11(火) 15:55:26 ID:5rJUUakk
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3 サラを参考にする  ……あいつはあんまり愛想のあるヤツじゃないが……

エフラム 「……というわけなんだ。参考にお前の笑顔を見せてくれ」
サラ   「………………あら…素直じゃないんだ?」

ここはマンフロイとサラが暮らすマンション。
接客用の営業スマイルを会得しようとエフラムはサラの部屋を訪ねていた。
エフラム 「なにがだ?」
サラ   「要するにそういう理由をつけて私の微笑が見たいわけでしょ?
      でもね…女の笑顔は安売りしちゃだめなの、
      ここぞっていうタイミングで出してこそ男心を揺さぶる事ができるのよ」
エフラム 「……お前本当に小学生か?」
サラ   「もうすぐ中学生だけどね…あ…それって兄様のストライクゾーンから外れちゃうって事?
      ピンチかも……ここで兄様の男心を揺さぶって引き付けないとだめね。いいよ、見せてあげるから参考にしてね」
エフラム 「……あのな…まあいい…頼む」

否定しようとしてエフラムはやめた。この程度のからかいはいつもの事だ。
サラ   「それじゃあ…いくよ……クスッ」
ベッドに腰を下ろしたサラは小さく小首を傾けて……柔らかく微笑んだ。
エフラム 「…………」
サラ   「ねぇ…今キュンときたでしょ?」
エフラム 「……なんの話だ」
サラ   「ふぅん…じゃあもっと本気だそうかな」
エフラム 「い…いやいい…もう充分だ!」
サラ   「ちぇっ…ざぁんねん」

なんだか惹きこまれそうで危険だった…
だがしっかりとサラのスマイルを見たエフラムは魅力スマイルをラーニングした…明らかに不完全ではあるが。

その晩…洗面所の鏡に向かってサラのスマイルを練習するエフラムの姿を目撃したヘクトルは語る。

ヘクトル 「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
      おれは夜中に小腹が空いてなんか食おうと台所に向かっていたら洗面所から明かりが漏れていた…
      覗いてみるとロリラムの野郎が鏡に向かってひたすら微笑んでやがる!
 
      な… 何を言ってるのか わからねーと思うが俺もヤツが何をしてるのかわからなかった…
      頭がどうにかなりそうだった…
       
      ロリコンだとかシスコンだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
      もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
94 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/11(火) 15:59:25 ID:5rJUUakk
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昼なお暗いヴェルダンの大森林…森の小道に二人の男女の姿がある。
二人は新婚旅行中の夫婦である。
長身の男は両腕を広げ天を仰いで叫んだ。
シグルド 「神よ!もし私たちの愛が罪だと言うならその罰は私一人に与えよ!
      私は誓う!たとえこの身が切り刻まれようと決して後悔などしない!
      わが愛しきディアドラを…神よ…どうか永久に守りたまえ!!!」
ディアドラ「ああ…シグルド様…」
うっとりと頬を染めたディアドラはシグルドの胸に飛びこむ。
ディアドラを抱きとめたシグルドはそのまま抱き上げると晴れやかな笑顔で大仰に回ってみせた。
まるでミュージカルのワンシーンだ。
傍から見たらすっかりウザいカップルになってしまっているが当人たちは幸福なのだ。
遠巻きに二人を見る観光客たちは生暖かい視線を向けていた。

ディアドラ「あの…シグルド様…ワンモアプリーズ」
シグルド 「はっはっはっそれじゃあとっておきを披露しようかな!」

阿吽の呼吸と言うべきかシグルドのこの後の台詞を察したディアドラはヒラリとシグルドの腕の中から逃げてみせる。
それを追ったシグルドはディアドラの手を取って捕まえた。
シグルド 「捕まえた…」
ディアドラ「は…放してください…」
シグルド 「放さないさ。しばらくこうしていたいんだ…」
ディアドラ「し…知ってますでしょう…戒めの事…世界に災いが降りかかるって」
シグルド 「その辺りは原作と違うから…もといなにが起こるかわからない物を恐れていたらなにもできない!
      私は君にキスできない運命なんて認めない!!」
         
そのまま二人はそっと唇を重ねる。
周囲からは祝福の拍手と口笛が鳴り響いた。

とある一室…こうして二人で盤面を挟むのも幾度目になるだろうか…
二人の男が駒を進めている…

セフェラン「B6にソルジャー」
カツンと音を立てて駒の兵士が前進する。
オリヴァー「ふむぅ……」
セフェラン「オリヴァー殿ベグニオンの一件、ご苦労様でした。
      貴方のお力が無ければグループの経営はルカン殿の支配するところとなっていたでしょう」
オリヴァー「未だ予断は許しませぬが……一つお耳に入れたき事がございます」
セフェラン「伺いましょう」
オリヴァー「……複数のラインからこちらに接触しようという動きがあります。
      未だ私と特定してはいないようですが…調査させたところ緑髪の若者がこちらの動きを調べている様子」
セフェラン「ルカン殿の手の者やも知れません。身辺には充分に注意してください」
オリヴァー「ふぉふぉふぉ…まだ死ぬわけにはいきませんからな。
      ……F6に僧侶…そろそろ盤面も終幕が近いようで…滅びの美学に浸るには未だ早いと言いたいところですがな」
セフェラン「ふふ…議会支配と一党独裁体勢の流れを変えることは容易ならざること、ですが滅びる前に逆転のトライを決める手段は…
      何かお分かりになりますか?」
オリヴァー「怖い方だ…手は打っておいでというわけですな」
95 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/11(火) 16:00:18 ID:5rJUUakk
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セフェラン「時にオリヴァー殿…彼の動きは?」
オリヴァー「セフェラン殿が興味を持ってらした…あの若者ですな。しばらく前にトラキア方面を回ってたそうですが…
      特に有力者の周りを動いていたとは聞きませぬ」
セフェラン「ほう…なるほど…」
オリヴァー「議会には2席を保有しておりますが…はてさて次回選挙ではどうなりましょうかな?」
セフェラン「ふふふ、若い人が元気なのは嬉しい限りですよ。昨今の若い人はとかく政治と言うと自分たちには関わりの無い物と思いがちです。
      選挙にも顔を出さぬ人も多い中、自らの主張と理想を実現しようとするエネルギーは他の模範となるべきものです…
      C5に魔道士」
オリヴァー「…貴方がここに来てから3年…ここで盤面をはさむのも最後になるでしょうが…D6に戦士」
セフェラン「奇しくもと言うべきでしょうか。中央を離れて初めて見えてくるものも数多くありました。
      私にとっても有益な時間でしたよ」
オリヴァー「この私にとってもこの3年は長かった…ですが回想に浸るのはいささか早いようです。
      生きてルカン殿の滅びるのを見るまではこのオリヴァーどこまでも貴方様のお力になりましょうぞ」
セフェラン「心強く思いますよオリヴァー殿。それではもう一働きと参りましょう紋章町百年の繁栄のために…」

黒髪の男は白い指先で一つの駒を手に取った。
盤面に小さな音を立てて前進したその駒の先には君主…全ての駒を支配する王…ロードの姿があった……

セフェラン「チェックメイト……」

3年にわたって続けられた戦いの幕が下りる……

テリウス地区シエネの裏路地にサザの姿があった。
その瞳には元老党の豪奢な党事務所の姿が映っている。
サザ   「まったく…手がかりが少ないんよ。ヌミダ、オリヴァー、バルテロメ、ヘッツェル…誰が前党首セフェランに協力してるんよ?」
政治ヤクザやジャーナリストなどさまざまな方向から調査はしてみたが容易には尻尾をつかめそうにない。
それも当然といえば当然の事だ。
バレればおそらくその者の政治生命は終わるだろうから。
サザ   「ボスの指令も容易じゃないんよ…」
党事務所への潜入も考えたが極めて厳重な警備が敷かれている。
その時であった。
党事務所の敷地内から1台の車が出て行く。
入れ替わりに1台の車が入ってくるのも見えた。
いずれの後部座席にも見覚えのある顔が映る。新聞の政治欄やニュース等で見る顔だ。
元老党の幹部たちだ。彼らはいずれも大貴族揃い。職場も事務所も自宅も警戒は厳重を極める。
サザ   「接触するなら…今がチャンスなんよ?」

事務所の敷地に入ろうとする車には…小太りの男…あれは確かタナス公オリヴァーだ。
逆に出ていく車にはクルベア公バルテロメの姿がある。

あまり迷っているヒマもなさそうだ。
どちらかにこの機会に接触を図らねばならない。

決断しようとしたサザの視界に…もう一つ意外な者が映った。
サザ   「あ…アイツこんなとこで何してるんよっ!?」
元老党事務所の正門を出てきた黒い巨体…そう…それはサザの終生のライバル…
漆黒の騎士の姿だった…

続く