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Last-modified: 2011-05-30 (月) 21:27:17

246 名前: リムステラさんが暴走したようです26 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 03:48:53.02 ID:/5rK9sLj
前回までのあらすじ
「前スレの>>275-283を見ろ」
「ちょ、アイク兄さんそれはいくらなんでも乱暴すぎるのでは……」

―――紋章町中央区

紋章町はいくつかの地区ごとに区分されているが、ここ中央区は文字通り全ての地区の中央に位置し、
全ての地区への行き来が可能となっている利便性の高い地域だ。
最もトラキア地区のような無法地帯や、ラグズ達の居住区のような未開の地への移動はできないのだが。

それ故、大勢が集まる大会や重要なイベントに利用される機会が多く、大型店やドーム等が数多く存在している。
ちなみにメタな発言をするとかつての○○や△△等はここで行われていた。(野球大会、幼女旗の投票、演説等をチェック)

通常ならば様々な作品の登場人物達で賑わっているここ中央区だが、今は普段のそれとは違った、狂気を含む賑わいを見せていた。

「断固逮捕されるべし!犯人は(ピー)で(見せられないよ!)な目に合わせるべし!」
「「「「オーーッ!」」」」

中央区の中心に、女性達の集団が屯っている。
どの女性もハチマキや立て札を持ち、恐ろしげな表情をしていることから、只ならぬ事態であることは想像に難くない。

と、そこに、ベルン署の一団が現れた。
こちらもそれなりの規模、武装をしており、中央区は更に殺伐とした雰囲気に包まれる。

「やめなさーい!届け出のされていない集会は違法です!」
「何言ってるのよ!あなた達がいつまで経っても犯人を逮捕しないからこんな事態になったんじゃないの!」
247 名前: リムステラさんが暴走したようです27 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 03:51:01.29 ID:/5rK9sLj
「う、それはたしかにそうだが……
 そ、そもそも君達は一時的に大きくなった胸が元に戻っただけだろう!別に被害がないのに何で……」

痛い所を突かれたせいか、ツァイスは思っていたことをそのまま口走ってしまった。
こういう所がまだ、姉離れ出来ていないと揶揄される所以なのかもしれない。

暴徒達は、ツァイスの一言を聞き、一瞬黙り込んだ。
そして……

「被害がない、ですって……?」

この女性の発言を皮切りに、彼女達の叫びの本流が押し寄せる。
ツァイスは自分が火に油どころか、ガソリンを投げ込んでしまったことに気がついたがもう遅い。
元々危うかったダムは決壊してしまった、後は中身全てをぶちまけるまで流れつづける。周りの物を巻き込みながら、その唸りは留まる所を知らない。

「あなた達にはわからないでしょうね!普段から胸の無いせいで女扱いされない、お子様体型(笑)、と貶められる日々!」
「もうレベルアップしないから一生このまま……そう落ち込んでいた時に差しのべられた一筋の希望!」
「でもそれは、犯人の卑劣な罠だった!私達は一度大きくなったという希望を持たされた事で、再び奪われた時の落差による二重の絶望を味わされたのよ!」
「すでに買ってしまった二度とつけないであろうブラジャー、以前のブラと比べて改めて思い知らされる持つべき者と持たざる者の絶対的落差!」

「一度与えておいてから再び奪い、惑う私達を影で嘲笑っているであろう犯人……そんな卑劣漢を、許しておく訳にはいかないわ!」

「なのにいつまで経っても、逮捕されない犯人……私達のやり場の無い怒りはどこにぶつければいいというの!?」

「そ、それは……」

正論とはいいがたいが、彼女達の心からの叫びを無碍にする事もできない。
というよりも、目の前の女性達の迫力を前にひたすら圧倒されていたと言ったほうが正しいのかもしれない。
暴動鎮圧に狩り出されたベルン職員達は、ただただ困惑するしかなかった……

248 名前: リムステラさんが暴走したようです28 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 03:51:23.84 ID:/5rK9sLj
「皆さんには申し訳ない事をしました……」
「仕方がなかったのだ。我らはその分、彼らの想いを背負っていくしかない」
「……そうですね。日々の食事から私達は全て、他の生き物達から奪うことでしか自己を保てないのですから……」

明らかに無理な論理を展開しつつ、エイリークとリムステラの二人は薄暗い裏路地をゆったりと進んでいく。
そのしぐさ、表情は普段と変わりない。
ただ一つ、大きくとは言わないがそれなりに自己主張している一部分を除けばだが。

たゆん、たゆん……
普段の二人には似つかわしくない効果音が自然と耳に入ってくる。
それだけで、エイリークは元より普段無表情なリムステラでさえ抑えきれない喜びが表情に現れている。

「持つ者と持たざる者の差……分かってはいましたが、これ程までとは……」
「過去は過去、そして今は今だ。
 ……同士エイリーク、私はこの姿になった目的を果たしに行く」
「目的……ですか」
「ああ、見せたい人がいる。そのために罪を犯してまでこの姿を手に入れた。
 お前にもいるのではないか?」
「私は……」

エイリークは戸惑うような表情をした。
しかし、それは相手がいないことへの困惑というよりも、
何故その相手に見せたいのか自分でも分かっていない事への戸惑いに見えた。

「……む。私はこっちだ。
 じゃあ、ここで別れるとしようか」
「はい。そちらもお気をつけて」

249 名前: リムステラさんが暴走したようです29 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 03:53:02.19 ID:/5rK9sLj
エイリークと分かれ、リムステラは一人人気の少ない裏路地を進んでいく。
一人で歩いていると、ふと考えてしまう。
そもそも、何故このようなことになったのか――

………………
……………
…………

今回の紋章町全土に及ぶ珍事件。
全ては、二、三か月程前、とある中学校で行われた会話から始まっていた。

「ふぅ……やっぱり一か月も授業を受けてないと、普通の学校生活でも疲れるね……」
兄弟家(ほぼ)全員遭難事件解決直後、無人島に閉じ込められていたロイ達は、平和な日常へと戻りつつあった。
久々のクラスメイト達との対話、そして勉強に充実感と疲労を覚えつつ、末っ子のロイは帰り支度をしていた。
と、そこに、
「ロイ、一緒に帰らないか?」
「あ、チャド。うん、いいけど」

「こうして一緒に帰るのも久しぶりだな」
「ははは……言われてみればそうかもね」
(無人島で遭難してたから……なんて言っても信じないだろうなぁ)

「キャスの奴がうるさくてな……巨乳の方がいいとかどうとか」
「あ、あはは……」

「ちなみにお前はどっち派?俺は巨乳派だけど」
「僕は……うーん」

(ん?あの後ろ姿は、もしや……)
「ロイ様、こんな所で奇遇ですn(ry」
「どっちかと言えば巨乳派……かな?」
(良く分からないけどチャドと同じにしておこう。
反対すれば気分を悪くするかもしれないし)
250 名前: リムステラさんが暴走したようです30 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 03:57:27.02 ID:/5rK9sLj
「!!!!!!」

「おお、分かってるじゃねえか!
 そうだよな、やっぱりエレンさんみたいな、大人な人がいいよなー……」
「エレンさんって?」
「近所に住んでるシスターだよ。
 俺みたいな孤児院の奴にも優しい人で……」

二人がそんなことを話しながら帰っていく傍らで、そのまま地底にのめり込んでいきそうな位に沈んでいる人影が一つあった。
(ロイ様が……巨乳派?キョニュウハ?オオキイハセイギ?そんな……)
分かり切ってはいたが、急成長という一抹の奇跡に願いを掛けて自分の胸部をまさぐってみるも

スカスカッ

……そもそも触れる部分すら皆無だった。

………………
……………
…………

(……今更だが、これで本当によかったのだろうかとふと思う。
しかし、もう戻れない。犠牲にしてきた同胞達の為にも……必ず)

自分はただのリムステラではない、全ての胸に対して苦しむ人々、一万人の自分達の代表としてここにいるのだ。
だから、彼らの為にも自分は成し遂げなければならない。
改めて決意を固めた所で、もう目的地が目の前に迫っていることに気がついた。
想い人が通っている、放課後目前のエレブ中学校。

(ロイ様……今、会いに行きます)

251 名前: リムステラさんが暴走したようです31 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 04:01:16.59 ID:/5rK9sLj
「あれ?もしかして……リムステラ、さん?」
「!!!!!」
思いがけない方向から聞こえてきたのは、紛れもなく今の今まで考えていた人の声。
コンマ一秒で振り返った先には、恋焦がれていた少年の姿があった。

「………」
「………?」

想像していた邂逅と違っていた所為か、緊張のせいか、あれ程話したかった人を前にして言葉が出てこない。
向こうも戸惑った表情でこちらを見ており、数秒間奇妙な沈黙が流れた。

(いかん、このままだとせっかくロイ様に会えたというのに……何でもいいから、何か話さねば)
そう思い、口を開きかけた瞬間に目の前の少年――ロイはこう言った。

「あ!すいません……人違いでした。
 僕のよく知っている人に……良く似ていたものですから」
「……!?」

驚いて二の句が継げない。
その間に、ロイは人違いだったと自己完結してしまったようだ。

「本当にすいません、後ろ姿だけ見ていたもので……
 あ、でも本当に良く似ていますね。ネルガルさんの所の方ですか?」
「あ、いや、違……」

252 名前: リムステラさんが暴走したようです32 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 04:02:09.64 ID:/5rK9sLj
どんどん話が面倒な方向に転がっていく。
というか、どうして目の前の少年は自分の事が分からないのか。

「……?」
「その……私のことを覚えていますか?」

「え?以前、どこかでお会いしましたか?」

ひっさつ の いちげき!
ざんねん!リムステラ の ぼうけん は ここで おわってしまった!

(胸が大きくなったらなったで知人に認識してもらえないとは……
というか私の普段のイメージは貧乳しかなかったのか?)

「……いえ、すいません。人違いでした」
絞り出すようにそれだけ言うのが精いっぱいだった。
そのままよろよろとした足取りで、リムステラは帰路へと付いた。
不思議そうな顔でこっちを見送る、ロイを後ろに残したまま……

そういえば、エイリークはどうしただろうかとふと思った。
様子を見に行こうかと思った矢先、泣きながら走り去っていくエイリークの姿が目に入った。
どうやら、殆ど同じような目にあったようだ。

(私は、どうしたらいいのか……ネルガル様……)
253 名前: リムステラさんが暴走したようです33 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 04:03:32.23 ID:/5rK9sLj
二人の女性の想いが破れた夜、紋章町に今月二度目の光の雨が降り注いだ。
普通の人は寝入っているような時間であり、騒ぎは起きていない。

「やはり、こうなったか」

そんな夜更けに、窓の外の景色を見ている老人が一人いた。
リムステラの生みの親、ネルガルその人だった。

「リムステラ、お前に罪を犯すまでにコンプレックスを抱かせたのは他でもないわしのせいじゃ。
 お前には、本当に苦労を掛ける」

誰に言うともなく、ネルガルの独白は続く。
目の前の幻想的ともいえる景色も相まって、神聖で厳かな雰囲気に辺りが包まれる。

「しかし、他人から奪って手に入れた力では、あの家の者達は見向きもせんだろう。
 いや、あの家の者に限った話ではない。
 それに気がつくのが遅すぎたのじゃ。わしも、お前もな」

語りつかれたのか、一呼吸おき近くの褐色色の液体をぐいと一口飲み、こう続けた。

「胸部エーギルはより大きな力に惹かれるが、元の持ち主とも密接な関係にある。
 解放すれば、多少の時間こそ要るが、元の持ち主へと還っていくことだろう。
 あれだけの人数の分をたった二人の人間が持っていたのだから、さぞ肉体に負担が掛かった事だろうに……」

それっきり、老人は口を閉じ、黙って外の光景を見続けていた。
彼が最後にぼそりと言った一言は、誰に聞かれる事もなく宵闇に吸いこまれていった。

「すまんな、我がモルフ。そして……我が娘よ」
254 名前: リムステラさんが暴走したようです34 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 04:05:50.13 ID:/5rK9sLj
…………………
………………
……………

「本日のFETV、朝のニュースです。
 これまで数カ月に渡ってお茶の間を騒がせてきた一連の巨乳、貧乳事件ですが、ここにきて大きな動きを見せました。
 今朝になって被害にあった殆どの人々が元の体型に戻った、という報告が相次ぎ、ベルン署はここに事実上の事件解決という見解を述べました。 
 昨夜遅くに観測された奇妙な現象とも関連性があると見られており、犯人確保も兼ねて記者会見を近い内に……」

「この事件、解決したんだ。
 ここしばらくで胸の無いシア姉さんとリン姉さんに慣れ切っちゃって、なんか違和感があるね」
兄弟家居間で、赤毛の兄弟二人が揃って朝食を摂っていた。
「本人達はもっと、だろうね。
 せっかく買った服も殆どが着られなくなったってぼやいてたし」
年上の方の少年――エリウッドはそう返したが、彼は目の前の少年が解決したとは露ほども知らなかった。
もっとも、ロイ本人もその自覚はまるでなかったのだが。

「まぁでも、やっぱり皆普段通りが一番落ち着くと思うよ」
「……そうだね。…………ふぅ」
「?どうしたのエリウッド兄さん、朝からため息なんか吐いて」

「いや、久しぶりの出番なのに胃が痛くならない喜びを噛締めていたら、つい、ね……」
(兄さん……そんなことで喜びを見いだせる位まで追い詰められていたのか……)
今度家計簿をつけるのを手伝ってあげよう、そう強く思ったロイであった。

しかし、紋章町、そして兄弟家で「平和」という発言はフラグにしかなりえない。

255 名前: リムステラさんが暴走したようです35 [sage] 投稿日: 2011/05/22(日) 04:06:25.21 ID:/5rK9sLj
「………!!!?……!!!」
「……っ!……?!!」

「なんか二階の方が騒がしいな……皆起きてきたのかな?ちょっと見てく(ry」

「うおおおお!?なんだこりゃあああ!!!」
「いやーっ!こっちこないで!気持ち悪い!!」

「「…………」」

まずリンが慌てて階段を駆け下りて来た。
そしてその直後に下りてきたのは……
変わり果ててしまった兄弟、ヘクトルだった。

「へ、ヘクトル……?それは……?」
ヘクトルの異常なまでに自己主張をしている一部を指差しながら、微妙な沈黙をエリウッドが破る。
それは、皆が聞きたいけれどある意味聞きたくなかったであろう質問そのものであった。

「ヘクトル兄さん……太った?」
一縷の望みを掛けたロイの常識的な解釈。
しかし、その努力も実を結ぶ事は無かった。

「どこの世界に胸だけ脂肪が付く太り方があるんだよ!?
 そんなんあったらエイリーク姉に教えてるっての!」

さらりと実姉に酷い事を言っているが、ヘクトル本人も相当酷い事になっている。
画像でお見せできないのが残念……いや、幸いである。本当に。

「うわあ……じゃあやっぱりその不自然なまでに膨らんだ胸元は……おええ……」
「テメー!俺だって好きでこんなことになったんじゃねえよ!」
「ちょっと!こっち向かないでよ!
 あまりの気持ち悪さに目が腐ったらどうするのよ!」

ワーワーギャーギャーヌウン!アイクニイサン!?アッー!コノヒトデナシー!

ヘクトル本人に非がないというのに、この扱いの酷さはどういうことだろう。
なんだかんだで、ある意味エリウッド以上にヘクトルは苦労しているのかもしれない。

「というか、実は僕も胸が大きくなってるんだよね」
「セリス兄さん……違和感なさすぎ」
「あれ?アルム兄さんいたの?」
「……(´・ω・`)」
 

終わり……?