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Last-modified: 2007-07-29 (日) 23:45:10

兄弟一クサい台詞が様になる男

 

~夕暮れの商店街~

 

エリウッド「さて、買い物も終わったしそろそろ帰ろうかな……」
ニニアン 「……エリウッドさま……」
エリウッド「あ、やあニニアン、こんなところで会うなんて奇遇だね?」
ニニアン 「はい……あの、ご一緒してもよろしいですか……?」
エリウッド「もちろんさ。君の家まで送っていってあげるよ」
ニニアン 「ありがとうございます……」

 

 静々と歩くニニアンに合わせて、エリウッドはゆっくりとした歩調で歩き出す。

 

エリウッド「だんだん暑くなってきたけど、ニニアンは大丈夫かい?」
ニニアン 「はい……氷竜石を持っていればある程度は涼しく出来ますので」
エリウッド「へえ、便利なんだね。僕は毎日夏バテの危機にさらされているけど」
ニニアン 「……エリウッドさまは、あまりお体が丈夫ではないのですね……」
エリウッド「まあ、昔からちょっと病気がちだったけど……
      ヘクトルやリンやエフラムに連れ出されて毎日のように泥だらけになっていたものだから、
      子供の頃に比べればかなりマシになったんだよ、これでも」
ニニアン 「そうなのですか……いいご兄弟をお持ちですね」
エリウッド「うん。皆ちょっと元気すぎるけど、基本的には自慢の兄弟だよ。
      ニニアンの家だって、たくさん人がいて賑やかだろうね」
ニニアン 「はい。正直言って、少し騒がしいぐらいですが……」
エリウッド「あははは、我が家の兄弟喧嘩もなかなか凄いけど、
      ニニアンのところだともっと壮絶だろうね」
ニニアン 「……皆、わざわざ竜に変化して喧嘩しますから……
      デギンハンザーおじ様やムルヴァおじ様が結界を張ってくださっていなければ、
      今頃紋章町は草一本生えない荒野になっていると思います……」
エリウッド「……ホントに壮絶だね」
ニニアン 「はい……特に最近ユリウスに対するユリアの制裁に容赦がなくなってきて……あ……」
エリウッド「うん? どうしたんだい、ニニアン?」
ニニアン 「あ……あの……あそこ……」

 

 ニニアンの視線を追うと、少し離れたところに固まっている女学生らしき一団が、
 何やらこちらを見てコソコソ喋っていたり。

 

エリウッド「ああ、またか」
ニニアン 「また……と仰いますと……」
エリウッド「なんだか、最近こんな風に遠くから注目を浴びることが多くてね……
      多分、また我が家の兄弟が何かしでかして、『あれがあのお家の人よ』なんて噂されているんじゃないかと」
ニニアン (違う……あの子たちの目、まるで憧れの王子様を見るような憧憬の色を帯びている……
      ああ、わたしの知らない間に、エリウッドさまは遠いお人になってしまわれたのですね……)

 

 などと一人で勝手に考えて、はらはらと涙を流し始めるニニアン。
 隣にいたエリウッドは当然ギョッとする訳で。

 

エリウッド「に、ニニアン!? どうしたんだい、一体!? 具合でも悪いのかい?」
ニニアン 「ち、違います……ごめんなさい、わたし、泣いてはいけないのに……」
エリウッド「……よく分からないけど……」

 

 ごく自然に、そっとニニアンの肩を抱くエリウッド。

 

ニニアン 「……あ……」

 

 エリウッドの腕の中で顔を上げるニニアン。その視線の先には、歯をきらりと輝かせて優しく微笑む王子様の顔が。

 

エリウッド「泣くのを我慢しちゃいけないよ。辛いときは泣いてもいいんだ。
      悲しみを涙で流してしまって、僕にまた、君の素敵な笑顔を見せてくれないか?」
ニニアン 「エリウッドさま……」

 

 頬を染め、うっとりしながらエリウッドと見詰め合うニニアン。
 二人の背景に色とりどりの花々が咲き乱れる。
 そんな少女漫画もかくやという光景を、先程の女学生の集団も当然目撃している訳で。

 

~兄弟家~

 

マルス  「『エリウッド王子とニニアン姫を見守る会』が結成されたってさ」
リーフ  「あの二人はアザラシですか」