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Last-modified: 2007-10-09 (火) 22:25:30

力み姉さん

 

リーフ 「ふう……」
リン  「ん、どうしたのリーフ、また暗い顔して」
リーフ 「うん……来週、剣技の実技試験があって、クラスメイト相手に手合わせやらされるんだけど」
リン  「へえ。いいわねえ、羨ましいわー」
リーフ 「羨ましいもんか。相手はアレスやらスカサハやらラクチェやら……ああ、今度は一体何回切り刻まれることやら。
     しかもリカバーとオーム完備なもんだから、『間違って相手殺しちゃっても大丈夫だから、遠慮なくやれよーっ』とか
     平気で言うんだよ、トラバント先生」
リン  「……わたしらのときはそこまで過激じゃなかったんだけど……凄い教育方針ね」
リーフ 「ああ、明日は休もうかなあ……」
リン  「むっ……リーフ、お姉ちゃん、そういうの感心できないわ。ええ感心できませんとも」
リーフ 「え? り、リン姉さん?」
リン  「そんな風に、困難からすぐに逃げ出すような態度じゃいけないわ!
    男子たるもの、どんな大きな壁にも怯まずぶつかっていくぐらいの根性を持たなければ!」
リーフ 「えー……」
リン  「そう、努力と根性こそ、眼前に立ちふさがる壁を乗り越える唯一の手段なのよ!」
ワレス 「よくぞ言った!」
リーフ 「うわ、誰この禿親父」
リン  「ワレス先生! ご無沙汰しております」
ワレス 「ガハハハハ、日課の紋章町一周マラソンの途中で、この家の前を通りかかってな!」
リーフ (紋章町一周!? どれだけ広いと思ってんだ、この町……しかも日課!?
     たまげたなあ、まだまだ知らない化け物がいるとは思ってもみなかった)
ワレス 「リンよ、昔と変わらず熱血しているようではないか!」
リン  「もちろんです! ワレス先生の教えを胸に、日々血潮を燃やして邁進しております!」
リーフ (うわ、なんか姉さんのノリがいつも以上に暑苦しいぞ……! これは今の内に逃げないと……)
ワレス 「小僧!」
リーフ 「は、はい!?」
ワレス 「いかんな、男子ともあろうものがそんな様では! よし、これから一週間、このワシが直々に鍛えてやろう!」
リン  「……! もしかして、ワレス式訓練法で?」
ワレス 「うむ! という訳で、早速山へ行くぞ、小僧!」
リン  「わたしもお供します、先生!」
リーフ 「え、ちょ、待っ……! だ、誰か、助けてーっ!」

 

マルス 「という訳で、リーフはマレハウト山岳に連れ去られてしまった訳だよ」
ロイ  「うーん、リン姉さんのノリが時々スポ根っぽいのは、そのワレスって人の影響もあるのかあ」
マルス 「だろうね。さー、リーフがどうなって帰ってくるのか、楽しみだなあ」
ロイ  「……ガチムチになって帰ってきたら、エリンシア姉さんは大喜びだろうけど」

 

 ~一週間後、マレハウト山岳~

 

リーフ 「し、死ぬ……もう家に帰らせて……」
ワレス 「なんだ、この程度で、だらしない!」
リーフ 「じょ、冗談でしょ? この一週間、ほとんど不眠不休で、頭上から落ちてくる岩を避けてばっかり……
     こんなんで本当に訓練になってるんですか?」
ワレス 「む……疑うというのなら、自分の身で確かめてみるのだな!」
リーフ 「はい?」
リン  「という訳で、わたしが相手になるわ。さ、剣を取りなさい、リーフ」
リーフ 「え!? む、無理だよ、勝てっこないって! リン姉さんの速さと技は僕らの兄弟でもピカ一」
リン  「問答無用!」
リーフ 「わわっ、と……?」

 

 切りかかるリンの斬撃を、紙一重でかわし続けるリーフ。

 

リーフ (な、なんだ……? 体がやけに軽いぞ……!)
ワレス 「ガハハハ、どうだ、それがワレス式訓練法の成果よ!」
リーフ (スゲー嘘っぽいけど……でも、これならイケるかも……!)

 

 反撃に転じるリーフ。その剣を何度も受け止めながら、リンはにやりと笑う。

 

リン  「ふふっ、どう、リーフだって、頑張れば強くなれるってことが分かったでしょう」
リーフ 「うん、そうみたいだ。ありがとう、姉さん、ワレス先生!」
ワレス 「ガハハハハ、これからも訓練を怠らんようにな!」
リン  「クーッ、燃えてきたーっ! よーしっ、じゃ、次は本気で行くわよ、リーフ」
リーフ 「……え? 本気?」
リン  「はっ」
リーフ 「ちょ、待っ」

 

 そしてリーフの眼前に迫る、必殺発動リン×5。
 少々身軽になったリーフだが、さすがに全部受け止めることはできず、

 

 グサッ。

 

リン  「あ」
リーフ 「ぎゃあああああああああああっ!」

 

 ~翌日、兄弟家~

 

リン  「……ごめん、マジごめん」
リーフ 「別にいいよ……結果的に学校休めたし」
リン  「でもあれよ、今回の訓練を通して、努力と根性の大切さについては学べたでしょう?」
リーフ 「うーん……まあ、多分。一応は」
ワレス 「ガハハハハ、よくぞ言った小僧! さあ、怪我が治り次第また山篭りへ行くぞ!」
リーフ 「えぇ!? いや、僕はもう……」
ワレス 「案ずるな、姉君の許可ならもう取り付けてある!
     『リーフちゃんがガチムチになるまで徹底的に鍛えてあげてください』と、これこの通り」
リーフ 「ぼ、僕を売ったな、エリンシア姉さん!」
ワレス 「ガハハハ、遠慮することはないぞ、今回は特別にお前の知人の協力も取り付けた!」
ナンナ 「回復係です」
ミランダ「攻撃係です」
サラ  「逃亡防止係です」
リーフ 「自重しろ君ら! 特に最後の! た、助けてよ、リン姉さん!」
リン  「ああ、友を思う心……これぞ友情、スポ根の醍醐味ね……!」
リーフ 「姉さんの友情はいろいろと間違っている!」
ワレス 「ガハハハ、さあ、準備が整ったところで、早速出発するとしようか!」
リーフ 「えぇ!? でも僕、まだ怪我が……」
ワレス 「着くまでに治せ!」
リーフ 「無茶言うな!」
ワレス 「さあ行くぞ皆の衆! 合言葉は――」
リン  「気合だ!」
三人娘 「努力だ!」
ワレス 「根性だーっ!」

 

 ウオオオオオオオオオオォォォォォッ!

 

リーフ 「ちょ、どこから歓声が……や、やめろ、僕を布団でグルグル巻きにして担ぎ上げるなぁぁぁっ! 誰か、助けてぇぇぇぇっ!」

 

 一ヵ月後に帰還したリーフは、精神崩壊一歩手前だったそうな