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Last-modified: 2008-02-19 (火) 21:57:45

リン姉さん、ビョーキにかかる

 ある晴れた紋章町の昼下がり、主人公家近くの道路を上機嫌に歩く少女が一人。

リィレ  「にゃ、にゃ、にゃ~♪」

 猫ラグズ姉妹のアホな方、と言えば誰もが頭に思い浮かべるこの人、リィレさんである。
 目の前にお肉を釣り下げられたら何も考えずに飛びついていきそうなぐらい能天気な表情が、
 アホの子好きな男性諸氏の心を捕らえて離さないと噂の御仁である。
 そんなアホの子に声をかける少年が一人。

ロイ   「あ、あのー」
リィレ  「ん? なに? なんか用?」
ロイ   「突然で申し訳ないんですけど……ほんの一時間ぐらい、アルバイトしませんか?」
リィレ  「なにそれ、うさんくさーい! あのさー、そんな誘い文句でついていく馬鹿がいるわけ」
ロイ   「報酬は最高級の猫缶10個で」
リィレ  「でも話ぐらいだったら聞いてあげるわ!」
ロイ   「ありがとうございます! 実はですね」

 と、ロイが言うところでは、一時間ほど病人の相手をしてほしい、とのこと。

リィレ  「えー、病人? 変な病気うつされるなんて嫌なんだけど」
ロイ   「いやいや、そういうんじゃないですから。感染するような病気じゃなくて、何というか、心の病と言うか……」
リィレ  「よくわかんないんだけど」
ロイ   「とにかく、ちょっと落ち込んでる人がいるんで、励ましてほしいんですよ! お姉さんにしか出来ないことなんで……」
リィレ  「ふふん……よく分かんないけど、まあいいや。案内しなさい!」
ロイ   「はい、ありがとうございます! それじゃあ、こちらへどうぞ」

 と、通された家の一室。家具が置いてあるだけで、何もない部屋である。

リィレ  「何よー、誰もいないじゃーん」
ロイ   「いやいや、病人がいるのは隣の部屋で……ちょっと、襖の間から覗いてみてくださいよ」
リィレ  「んー?」

 言われて襖の奥を覗いてみると、確かにそこには床に敷いた布団の中で寝ている病人らしき少女と、
 その周囲で看病していると思しき男女が数人。

リン   「ああ……もう、ダメ……」
ミカヤ  「しっかり、しっかりして、リン!」
エリンシア「もうすぐロイちゃんが、あなたに必要なものを用意してきてくれるはずですからね!」

リィレ  「……重病じゃない。あんなん、あたしにどうしろっての?」
ロイ   「普通に相手してくれるだけでいいんです。
      ああでも、ちょっと体力と気力使うかもしれないんで、そこんとこだけ了承してもらえれば……」
リィレ  「よく分かんないけど……あんなフラフラの女相手に体力使うほどヤワじゃない!
      あたしは軟弱なベオクとは違うんだから!」
ロイ   「頼もしいなあ、それじゃ、よろしくお願いしますね……あ、出来れば化身してもらいたいんですけど」
リィレ  「え、なんで?」
ロイ   「そのままでもまあいいんですけど……化身してもらわないと、一人出血多量で死にそうな人がいるもんで」
リィレ  「よく分かんないけど……まあいいや。それじゃ」

 と、リィレが化身すると同時に、ロイが襖を勢いよく開け放った。

ロイ   「お待たせリン姉さん、この人でどうかな!?」

 叫んだ瞬間、リィレは何かに飛び掛られた。

リィレ  「ギャーッ!? なに、なに!?」
リン   「ああ……! ぬこ、大きなぬこ……! うふふ、ああ、野生の香りがするぅ……!」

 見ると、先程布団の中で死に掛けていたはずの少女が、恍惚の笑みを浮かべながら自分の体に抱きついているではないか!

リィレ  「なに、なにがどうなってんのーっ!?」
リン   「ああ、毛皮モフモフ肉球ぷにぷに……」
リィレ  「いやーっ! なんかほお擦りされてる! まさぐられてる! あ、ダメ、そこはーっ!」

 ブバァァァァァァァァァァァァァッ!

ロイ   「ああ、やっぱりダメだったか」
リーフ  「レズプレイ……獣姦……!」
ロイ   「良かった、化身してもらっておいて……リーフ兄さんが出血多量でくたばるところだった」
マルス  「いやー、でも、やっぱりラグズの人は違うね。効果覿面!」
アルム  「サカ草原で部族間の争いが起きてて通行不能で、リン姉さんのストレスが溜まってたんだよね」
ヘクトル 「一週間に一度は草原通いして野生分を補給しないと禁断症状起こすからな、こいつ……」
エリウッド「本当に草原の人だよなあ、リンは……」
ミカヤ  「ああ、リン、楽しい我が家は物足りないと言うの……! よよよ……」
エリンシア「気を落とさないでくださいな、お姉さま」
ロイ   「……でも、ラグズの人たちならよくて、家で飼ってる馬や天馬じゃダメって言うのもよく分からないよね」
ヘクトル 「『都会で飼い慣らされた馬のどこに野生を感じればいいの!?』……だってよ」
エリウッド「その点、ラグズの人たちは野生味たっぷりだからな。リンも元気になること請け合いだよ」

リィレ  「の、のん気に喋ってないで助けてーっ!」
リン   「ああ、このたくましくもしなやかな筋肉と可愛らしいお髭……!」
リィレ  「いやーっ! 助けてレテーッ!」

 ……一時間後。

ロイ   「いやー、本当にありがとうございました。お礼の猫缶どうぞ」
リィレ  「うう……明らかに割に合ってない……」
リン   「本当にありがとう! おかげで野生の勘を取り戻した気分だわ!
      ……で、サカの抗争がいつまで続くか分からないから、また一週間後に来てほしいんだけど……」
リィレ  「いやーっ! もう勘弁してーっ!」

 逃げ帰ったリィレだったが、「アイクの家に一時間も滞在した」と言うので、今度は姉からも詰問を受けることになったと言う。