5コンポーネンツ(PCS:演技構成点)の解説。同時にPCS解説映像も参照して欲しい。
(定義、基準は Program Components Overview(リンクを貼ること)の和訳、解説は http://openaxel.blog14.fc2.com/blog-entry-143.html より引用部分多し)
(tba: PCS全般の概説など)
概要
Program Components Score
TESが実施された個々のエレメンツにのみ着目してるのに対し、PCSはプログラム全般に対して五つの項目(評価軸)について評価を行い、得点をつける。いまだに芸術点と称されることもあるがこれは誤りであり、芸術性[のみ]を評するものではない。
演技構成点と訳されてはいるが、「演技」とは(役者が何かの役柄を演ずるといった演技=actという意味ではなく)プログラムの訳語である。「構成」はcomponentsに対応するが、強いて訳せば構成要素、成分というところか。
考え方としては、プログラム全般を評価といっても漠然とし過ぎているため、その[良し悪し]を分析するにあたり、プログラムの構成成分として五つの要素、評価軸を採択し、それぞれに対する評価点の合計で表せると仮定した線形モデル、とでも言えようか。(ここもうちょっと書き直す)
このモデルの妥当性は疑問の残る点もあるが(評価軸として適切か、互いに独立してるか、寄与率は均等でいいのか、など)、現実的な妥協点としてはある程度機能してると言えるだろう。
さて、それではその評価軸とはどのようなものなのか。それそれに関して次項より云々。
スケーティング技術 (Skating Skills)
定義
- 総合的なスケーティングの質
- スケーティング能力(エッジコントロール・フットワーク・加速させる能力)
- 氷上での流れや正確さ。
基準
- 体幹のバランス、膝の使い方、正確な足裁き
- リズム、パワー伝達、体幹を使った効率的な推進能力
- 重心を効率的に使う、無理のない加速
- クリーンでコントロールの効いた滑走能力
- ディープエッジを使ったコントロールされたステップ
- パワー(エネルギー)・スピード・加速の多様性
- 多様な方向・回転方向・フォア・バックのスケーティング
- 片足スケーティングの習熟度や両足スケーティングの少なさ
解説
PCSの最重要ファクターとしてスケーティングスキルがベースとあり、この評価が高い選手こそスケーティングの上手な選手とも言える。この「スケーティング技術」こそ全てのエレメンツを含め全体を評価していると考えられる。
映像ではスピードや一歩の伸びなど見分けにくい部分も多く判り辛い。深いエッジワークをこなし、尚且つスピードも豊富で一歩の伸びやカーブを使う加速に優れ、膝の柔軟性を十分に使って氷に乗る技術…。膝や体全体を使う、効率よく氷を推す力と膝の柔軟性を使った引く(伸ばす)技術。
ターンなどステップ中に減速してしまったり両足を簡単について バランスを回復しているような選手は上がりにくい。 絶対的なスピードや、そのスピードを維持したままのエレメンツ実行力 また、その正確さ、ダイナミックさなど、ゆっくりやれば簡単なことでも他を圧倒するスピードの中で実行出来る能力などTV観戦では伝わりにくい事もある。
技と技のつなぎ (Transitions)
定義
全ての技術要素間をつなぐ、多様で複雑なフットワーク、ポジション、動作、ホールド。 シングル、ペアでは技術要素の出入りも含む。
基準
多様で複雑なフットワーク、ポジション、動作、ホールド。
- 多様性
- 難度
- 複雑さ
- 質
- パターン(アイスダンス)
- パートナー間の仕事量のバランス(アイスダンス)
- ダンス・フットワーク、ホールド、つなぎの動作の難しさと多様さ(アイスダンス)
要素間のつなぎには長短があるので、ブレード・身体部分それぞれを どのように使うかは、音楽に従属させて良い。 (クロスカットは少ない方が望ましい。)
解説
プログラム中のエレメンツをつないだり、その価値を高めることによって要素が孤立せずにプログラムの一部をなすようないろいろなステップや動き、要素を評価する。プログラム全体の密度の濃さやバランスを繋ぐことを表すもの。
基準とされる内容は少なく抽象的だが、スピードやパワー、フットワーク、ポジション、動作などを多様性・難度・複雑さ・質・独創性などを複合的に判断しており高度なプログラムの技術的見地が必要な項目。この要素のつなぎも、技術力の高さに裏づけされたエレメンツ実施能力が伴っていなければ、それほど評価は上がらない。
パフォーマンス (Performance/Execution
定義
音楽や振付けが意図するところを表現するための、肉体的、感情的、知性的な関わり。 また、動きの質と正確さ。ペア、アイスダンスでは動作の調和も含む。
基準
- 肉体的で、感情的で、知性的な関わり合い
- 全てのスケート種目でスケーターは、音楽の理解力を身体的表現において誠実に実行する
- 身のこなし
- 肉体内面から出る、表現の力。動作の流れが自然に行われる身のこなし
- スタイルと個性
- スタイルは、音楽によって喚起される独創的な表現や動作。個性は、スケーターの嗜好や着想と芸術的志向が合わされプログラムの概念、スタイル、内容にもたらされるもの。
- ボディ・アラインメント
- 洗練された身体・手足のライン、動作の正確な実施で特徴付けられる
- 多様性とコントラスト
- テンポ、リズム、力、動きの大きさ、難易度、形、角度を多様に、また身体を多様に使っているか、また強弱をつけているか。
- 投影(プロジェクション)
- スケーターのエナジーと観衆との目に見えないつながりを獲得しているか
・ユニゾン(アイスダンスおよびペア)
・パートナー間の演技のバランス(アイスダンス)
(ペア・ダンスの一部省略)
解説
フィギュアスケートは芸術か?スポーツか?などの議論を呼ぶ演技力と解釈されている項目。プログラムの音楽性の表現・ハイライトやストーリー性・キャラクター性などをスケーティングで表す能力の評価。
観衆との目に見えないつながり(スケーターが内面から打ち出すエナジー)を観衆が受け止め、その肉体的、感情的、知性的な関わりを感じる事が出来ているか? という部分は、[みなさんが一番ストレートに感じる事が出来る項目だと思います]。
振付 (Choreography)
定義
空間バランス、統一性、空間利用、パターン、構造、フレーズの原理に従って すべての動作を計画的に展開させた独創的なアレンジ。
基準
- 目的(意図、概念、ビジョン、ムード)
- プログラムの意図や概念に基づいた質の高いデザイン(ビジョンやムード)になっているか
- 調和あるプログラム構成
- プログラムの美的追求を達成させる為に各部が等しい重要度で貢献しているか。
- 統一性
- すべての動作が目的を持ってつながっているか。プログラムに統一性があるのは、ステップ・要素・動作がすべて音楽によって動機づけられ、また、大きくても小さくても各部がすべて全体の中で必要不可欠に思え、根底にビジョンがあったり、全編を貫く象徴的な意味があったりする場合である。
- スケーターの表現・共有空間の利用
- スケーティング動作の各フレーズが、360度全ての観衆との対話が成立するように配置されているか。
- プログラム・パターンの独創性、配置
- 滑走方向がバラエティに富み 興味を引く工夫がなされプログラムがデザインされているか。
- フレーズとフォーム(音楽のフレーズに合わせた動作や各要素の構成)
- 動作が音楽のフレーズに合わせて構成されているか。フレーズには起承転結などの一連の動作。フォームとは、適当な数と順序のフレーズによって表現されたアイデア。
- 目的、動作、デザインの独創性
- 音楽や根底にあるビジョンから喚起される独創的な構成や調和を追及しているか。
- 創造性および独創性(アイスダンスのみ)
- 両者が、一つの作品を作り上げることを目指し、ステップ、動作を同じくすることで 美しい構成を追及することに等しい役割を担っているか。
解説
要素のつなぎ・実行力/遂行力とも連動する。要素やそれらをつなぐステップに関連したプログラムのレイアウト。 独創的な振り付けや、音楽にマッチした雰囲気などを表現や調和する才能。上半身の動きが十分で、訴えかける振り付けは、観る者の心を打つ。 全ての観衆との対話が成立するように目に見えないつながりを獲得する力。
プログラムを作るコリオグラファーが様々な演出項目をリンク一杯に散りばめ、偏る事無く、意図、概念、ビジョン、ムードをスケーティングの表現の中で実現させているか?を審査している。
音楽表現 (Interpretation)
定義
氷上の動きを通じた、音楽の独創的、創造的表現。 テンポ・リズムを様々に使ったり、メロディ、リズム、調和、音色、歌詞、様式など音楽のニュアンスを反映させる技巧や表現。音楽解釈の熟達度。
基準
- 音楽にしっかりと合った楽々とした動作
- リズムやテンポの正確さ・効果的な動作・無理のない流れを氷上に表現しているか。
- 音楽のスタイルや特色の表現
- プログラム全体を通し、身体表現で、音楽の特徴、様式、キャラクターを表現しているか。
メロディ、調和、リズム、音色、歌詞、形式など音楽の構造に喚起される、ムード、様式、形態、主題を描写しているか。 - 音楽フレーズの巧みさ、ニュアンスの表現(アイスダンスではさらにアクセントと速度変化)
- 作曲家や演奏者が音楽の強度、テンポ、原動力に細かな変化をつけるために用いた芸術的手法(ニュアンス)を、スケーターが、洗練された巧みな技で表現しているか。
- 音楽の特徴を反映させる両者の関係
- 音楽の解釈やニュアンスの等しい理解(解釈のユニゾン)が築かれているか。
- タイミング(オリジナル・ダンスおよびフリー・ダンスのみ)
- 音楽を自分たちのものにできているか。
解説
振り付けや実行力/遂行力とも密接に関係のある要素。音楽の雰囲気と特徴を表現する身体表現。音楽の世界に引きこむような優秀な選手は曲の理解も素晴らしいものを持っていますね。音楽の世界観を身体表現で伝える能力なのかと思っています。