バッグ/任務アイテム/本文(Ver2.4~Ver3.0)

Last-modified: 2023-12-20 (水) 04:11:29

物語:キャラ/ア-カ | キャラ/サ-ナ | キャラ/ハ-マ | キャラ/ヤ-ワ || 武器物語 || 聖遺物/☆5~4 | 聖遺物/☆4~3以下 || 外観物語
図鑑:生物誌/敵と魔物 | 生物誌/野生生物 | 地理誌 | 書籍 | 書籍(本文) | 物産誌



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バッグ/任務アイテム/本文(Ver2.4~Ver3.0)

ボロボロなノート

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医者はお前が重病だと言っていた。だが、心配するな。どんなに金がかかろうとも、絶対にお前を助ける。

薬を飲んでも快復の兆しは見られず、どんどん憔悴していくお前を見ていると、私はまるで心から血が滴るかのような思いになる。できることなら、私がお前の代わりになってやりたい…

お前は自分の人生に悔いはないと、唯一の願いは私が鶴の面倒をきちんと見ることだと言っていた…しかし、それならなぜ泣いているのだ…

ここ数日、私は自分が何をしているのかさえ分からなくなることがある。ただ毎日を屍のように過ごし、お前を救う方法を求めて古書を漁るが、何も得られずにまた一日が終わる。

見つけた、明俊がお前を救う方法が載った書物を隠し持っていたんだ!それを奪ってきた、書物の通りに神を呼び出し、生け贄を捧げれば…

神が現れた。私は自分の命と引き換えに、お前を救ってほしいと神に願った。だが神は何も言わず、私たちの娘である鶴を指さした。

この子は孤独で仇なす者、このまま生き長らえたとしても周りの人間を傷付けるだけ…鶴のせいでお前も死んだのだろうと、神に言われた。だったら、いっそのこと…。

私は、神の言う通りに鶴を山洞に捨てた。もう三日経つ、しかし何の知らせもない。悪い予感はとうにしていたが、それでも不安と焦燥を抱えながら待つことにした…

ごめんよ、鶴、本当にすまない。私はどうかしていたんだ!どうか…直接お前に会って、謝らせてくれ…

村の変遷記録

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村の東に住む一家は、元々妖魔退治を生業とする一族の分家だった。しかし、罹患から僅か十数日で妻が病死すると、幼い娘も失踪した。それからしばらくして、夫も庭の木で首を吊っていた。

調査の結果、村には魔神の残骸が現れていたようだ。

村人たちでは、魔神の残骸が今も残っているのか判断できず、ここを離れたのだろう。

今後、この地を訪れる者がいたら、どうか気を付けてほしい。

山石閑談

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通常、秘華石に刻まれた法術は長く保たれるため、陰陽に通じる力があると言われている。

だが、「秘華石」を見つけることは容易ではない。ある特殊な「時間」と 「場所」が必要だ。

伝説によると、天衡山南部の湖中心に立ち、黄昏時日が落ちる方向を探せば、何かが見つかるだろう。

厳密なスケジュール

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1.食事、身支度、着替え、外出の準備。
2.昼に琉璃亭で商人の羅巧と会食する。
3.三人の情報提供者と会い、情報を交換する。
4.月海亭の会議に参加する。
5.軽食を取り、会議で結論の出なかった点を協議したのち、群玉閣へ戻る

1から3に関して、時間は状況に応じて調整する。4の会議は夕方頃を予定しているため、早めに到着しておくことをお勧めする。

簡潔なスケジュール

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一日休み!

怪奇な「おみくじ」

1日目

「北国の鬼・炎刀望理須」
近々、ファデュイの密偵が稲妻城地下の洞窟に出没している。
城の治安を脅かす企みがあるとか。
その名は「望理須」

罪人と敵に「終末」を下せ。

2日目

「大悪党の盗賊・ネズミ坊主の牧」
九条陣屋近くの浜辺に出没する大盗賊。
絵に示した位置に出没し、幕府の軍需品を盗む。
窃盗を働いた者は、罪の軽い者は入れ墨を入れ、罪の重い者は刑罰を課す。

「ネズミ坊主」の渾名を持つ牧田海雄はその武芸と狡猾さで、幾度も捕縛から逃れた。

罪人と敵に「終末」を下せ。

3日目

「同じ穴の貉」
近々、稲妻城の地下にある洞窟で賊の会合が行われる。
会合時間のおそらく深夜から黎明の間。
その一行は、軍で物資を横領する内通者と、ここ数年で結成された窃盗や密入国を繰り返す一団。

罪人と仇人に「終末」を下せ。

4日目

「三十年越しの終わり・斬鬼金」
先日、三十年前の神無塚人斬り事件の犯人の手がかりが見つかった。
「斬鬼金」こと松平金次郎は、 その仲間とヤシオリ島南部で目撃された。
図に示した地点を調査せよ。
斬鬼金本人を発見した際は……

罪人と仇人に「終末」を下せ。

誰かが残したメモ

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「賊の末路」
絵に示した地点ヘ行き、異常を調査せよ。

罪人と敵に「終末」を下せ。

「ファデュイ暗号集」

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故郷を忘れた同郷:ファデュイが身分を名乗る時に使う呼称。
遠足:任務実行、行動。
日光浴:潜む、時機を待つ。
皿を割る:気を引き締めて大事を成す。
皿洗い:身分がバレて捕まった。
左手を握りしめる:仇を討つ。
右手を握りしめる:同盟を組む。
左手をはなす:■叛。
右手をはなす:許す。
南風:順調。
北風:不■
■陽ガニ:万国商会、稲妻のカニでは■■からかもしれない
■■ガニ:勘定■行、たぶん将軍の配下■■■■因■■■
■■ガニ:野■衆、■乱鬼■色■■■■■から
鉄■■■:終末■、ネ■ミと呼ばれて■■■■、ひどい、怒ったら■■■■■

(最初は比較的読みやすい文字が並んでいるが、後半になるにつれて読みにくくなる。水で滲んでしまったのは一目瞭然だ。)

特別な「おみくじ」/リュドヒカのおみくじ

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──末吉──

晴れた空に突如として吹く強い風。何を意味しているのだろう?
ずっと同じ場所で足踏みしているかのような感覚だが、それは一時的なものに過ぎない。
自身の周りに現れた者は、たとえ顔なじみでも注意すべきである。
あなたの運命は、彼らの存在によって密かに変わっていく...

今日の幸運のお守りは、遠い異国の蒲公英。
風と共に舞う種は、あなたをもっとも象徴するもの。
飛んで、漂い、海を渡って、はるか遠くへ。
でもいつの日か、あなたの彷徨は終わる。
いつの日かきっと、あなたは自分の望む姿になる。

リュドヒカの手紙

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旅人とパイモンへ
最終的に、このような形でのお別れとなってしまい申し訳ございません。お詫びの言葉を述べようにも、私にはそのような資格すらないと重々承知しております。お二人には合わせる顔もありません。
お二人は以前、私のために手伝いを申し出てくださいました。それについては深く感謝しており、私もどのようにすればいいのか考えておりました。ただ、お二人が私の服を持っていった後、私はすぐにお二人が考えていることに気づいたのです。そして、お二人を危険に晒してしまうかもしれないことも。
ですので、私は八重堂を離れ、お二人を探しました。その結果、荒海付近でお二人と写真でしか見たことのない方──百代さんを見つけました。
私はかつて、彼女と外見が似ていたことを利用して彼女の身分を奪いました。そんな私を彼女が恨むのは当然のはず。なのに私が死を偽装した時、彼女は私のために大きなリスクを冒し、しまいには片目を失うことになりました。
私は罪人です。手伝う価値のない人間であるにもかかわらず、お二人は私のために 数々のことをしてくださいました。お二人には、一生かけても返しきれないほどの恩があります。
この手紙に添えられた袋には、稲妻に来てから蓄えた、私の貯金がすべて入っています。どうか、百代さんと一緒にお受け取りください。このような形でしかお返しができず、本当に申し訳ありません。また、そのお金はすべて私が仕事で稼いだものですので、ご安心ください。
私は稲妻を…この借りを作りすぎてしまった地から永遠に去ることにします。さようなら。

彦博のメモ

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アン卜ン・メルニコフさんヘ

すみません、状況が変わり、補給拠点も閉鎖されてしまいました。あなたが来るのを待って、一緒に「炎水」を飲もうと言いましたが、どうやらその約束は果たせそうにないようです。
個人的な行動ですが、食料を少し残しておきました。短い期間ならきっと持つでしよう。自分たちで取りに来られることを願っています。
本当に申し訳ございません。友人として、できることはこれで精一杯なのです。今度会ったら、お互い敵同士だと思ってください。地上で起こったことが、あなたの任務とは無関係かもしれないことは分かっています。しかし、理解してほしいのです。我々はこのような侵害行為は容認できないということを。
あなたがスネージナヤの女皇のために戦うように、我々千岩軍も故郷を守る必要があります。我々はみな、互いに大切だと思うものに、責任を持たなければなりません。

幸運を祈っております。彦博より

志璇の手紙

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探検隊の皆さんへ

何の説明もせずに去ってしまい、本当にすみません。
探検隊の先輩方には長い間お世話になりました。しかし、これからは皆さんと一緒に仕事をすることができなくなります。

瑾武姉さん、どうか私の身勝手に怒ったり悲しんだりしないでください。あなたはこれまで、運命に屈しない未熟な若き冒険者たちを見てきたと思います。そして、私はその未熟者のうちの一人に過ぎません。私の旅立ちが、あなたに悩みではなく、いい思い出だけを残すことを祈っています。もし私に家族がいたとしたら、あなたは私にとってもっとも親しい家族だったでしょう…あなたに話したいことはたくさんありますが、今のところ、私が残せる成果は地図にある適当な地名だけです。入念に調査をし、よく考えてもっといい響きの名前を付けたかったのですが、それができずとても悔しいです。
いずれにせよ、ずっと面倒を見てくれたことを心から感謝しています。ですが、永遠に面倒を見てもらうよりも、一人で旅に出た方が自分にとって有益だと思ったのです。

ヘディーヴさん、私のわがままを許してください。あなたにはあなたなりの考えがあることを理解していますし、おそらくあなたの言う通り、層岩巨淵に潜む秘密は想像を絶するような、常人には手が届かないものだらけなのでしょう。「神の目」がないから、こんなにも苦労しているだけかもしれませんが…
それでも私は気になるのです。もしもレーナルトやスタンレー、ロアルドのような、名だたる冒険者たちが私と同じ光景を見たら…深邃なるいにしえの岩石広間、溶岩のように湧き出る暗紫色の泥、空中に浮かぶ透き通る青い晶石、破損した石版に刻まれた古き地図、他にも摩訶不思議なさまざまな光景を目の当たりにした時…偉大なる冒険者たちは、危険を恐れて諦めるでしょうか。それとも私と同じように無謀な行動を取り、命を犠牲にしてでも世界の謎を追い求めるでしょうか?
私と同じくただの人であるヘディーヴさんはこのような状況にぶつかった時、学者としてどんな選択をしますか?

クレイトポン、今まで信用していなかったこと、迷惑をかけてしまったことを謝らせてください。宝盗団出身のあなたのことが嫌いなわけではありません。あなたのそのソワソワとした不審な振る舞い、いつもコソコソと怪しげな顔をしているところ、みんなのために飲み物を用意する時も不衛生で、瑾武姉さんにも失礼な態度を取っていましたよね。鉱区では総務司の安全規定を無視し、あらゆる警告を気にも留めていませんでした…ただ、そのような欠点があったとしても、関係ありません。あなたとは、もっと早く知り合っていたかったです。

沐寧兄さん、申し訳ありません。私が職務のために戻ってくることはありません。総務司の任のために尽力してくれてありがとうございます。もしあなたがいなかったら、私は層岩巨淵に入ることさえできなかったでしょう。私が辞めた後、総務司からの正式な許可が下りるはずです。機会があればまたごちそうしますから、私のためにその許可は保留しておいてください。忘れないでくださいね!

(旅人名)先輩、旅の間ずっと一緒にいてくれたこと、教えてくれたこと、危険に状況に遭遇した時に助けてくれたこと感謝しています。どうお返ししたらいいのか分からず…何も渡せないのが残念です。元素力を操れるあなたは神に選ばれた者です。そこで、とても気になることがあります。もしかしたら、一生その答えを得られないかもしれませんが聞かせてください。あなたは私たち常人を、どのように見ているのでしょうか?

英雄と夜叉が岩王帝君と共に戦い、砕けた岩で山を作り、石を投げて海を創造した古代において、神々が目を留めることすらしない、私たちみたいなちっぽけな人間は、いったいどのような存在なのでしょう?常人の愛と憎しみ、幸せと苦しみ、功績、争いや絆…これらはすべて、神々が見向きもしない光景なのでしょうか?古代の神々の存在、常人には説明のつかない風景は、本当に私たちの勇気では乗り越えられない禁断の地なのでしょうか?

岩王帝君が逝去された今、こんなことを言うのは失礼かもしれませんが…
しかし、選ばれた者たちとは対照的に、神の目の届かないところで生まれた私たちが、心から夢を持ち続け、貧しくても小さな志を持ち、忙しない日々を送る…忘れられたくないから、少しでも役に立ちたいと努力したり、毎日コツコツと仕事をこなしたりするのは…どれも無意味なことなのでしょうか?
断崖絶壁に立って作業する薬草採り、落盤という危険と隣り合わせの中で毎日働く鉱夫たち、建物何回分もある巨大な船に釘を一本一本打ち込む作業員…もし、そのような人たちの苦労が、平凡なもので、記憶するに値しないものとされるなら、私たちの願いや尊厳に優劣をつける神々に、疑問を感じずにはいられません。

そんな疑問を胸に抱きながら、私は先輩の後を追って、常人の限界に挑戦し、層岩巨淵の奥深くにある不安や危険に身を投じます。「征服」や「探索」といった大仰な言葉は使いません。ただ、せめて自分が層岩巨淵の地図を描き、それを編纂できたらと思っています。私が行った場所や層岩巨淵の様々な風景に、平凡な者の名前、私の名前を付けたいのです。
不器用な私ですが、これが後に続く者たちを鼓舞する唯一の方法だと信じています。神に選ばれなかった人間が、どこまで行けるのか、どんな物語を残せるのかを、世に示すことができるのです。

先輩、どうか心配しないでください。私の旅はまだ始まったばかりです。一息ついたら、さらに奥へ奥へと進んでいきます。道を切り開いてくれてありがとうございました。私は、力が尽きるまで、層岩巨淵に挑戦し続けます。
探検隊の皆さんも、どうかご武運を。
近い将来、旅の道中で再びお会いできることを楽しみにしています。

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ニコライの手紙

(注:この項目は正確には任務アイテムでは無く、任務中に表示された本文内容です)
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到着時刻表

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開幕二日前
船と賓客の情報:大型客船にモンドの吟遊詩人数名、画家白亜およびその家族
到着予定時刻:午前八時

開幕二日目
船と賓客の情報:大型客船に璃月の書道家、画家、機関棋譚棋士数名と作家の枕玉
到着予定時刻:午前十時

開幕三日目
船と賓客の情報:大型貨物船、船が止まる、一人。
到着予定時刻:午前九時

……

新刊即売会翌日
船と賓客の情報:小型客船に二人
到着予定時刻:午前十時

五歌仙の資料概要

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「五歌仙」について
五歌仙とは、かつて稲妻にいた伝説の人物たちのことである。詩歌を読む*のが達者であることから「五歌仙」という美名を授かった。伝説では、将軍様が彼らの作品を好んでいたという。そのため、毎年五人の新作を一冊の詩集にまとめた後、一人を天守閣へ向かわせ、それを将軍様に献上していたそうだ。五歌仙の名はそれぞれ「翠光」、「葵の翁」、「赤人」、「墨染」、「黒主」である。
五人の本名は今はもう不明。ただ、よく知られている説の一つに、次のようなものがある――五歌仙物語が大量に舞台化された時、登場人物を識別しやすいよう緑、青、赤、白、黒の五色で服を作ってそれぞれ区別させたそうだ。そして月日が流れ、観客たちは登場人物の代表色でそれぞれの歌仙に名をつけたという。ただ「翠光は草庵の名である『翠光堂』によるもの」という説や、「赤人は作品に朱色の印をつけるのを好んでいたため」という説もあるようだ。
……

「五歌仙物語」について
五歌仙の形象は人々の心に深く根付いており、彼らを主人公とした作品もかつて稲妻で人気を博していた。
五歌仙物語は、ここに至るまで数多く伝わってきた。しかし今となっては、その具体的な内容の正確さを知ることは不可能である。おそらく、五百年前の大災の際に失われてしまったのだろう。
現存する資料によれば、五歌仙物語の創作全盛期、その作品は基本的にすべて同じ形式で作られていたようだ。四つの詩を一組とし、それぞれの歌仙の視点から書かれている。それら四つが合わさると、完全な物語となるのだ。ただ興味深いことに、これらの物語に「黒主」視点の独立した章はない。
……

五歌仙の個人資料まとめ
翠光:酒飲み、平民出身、自由奔放な性格。ある説では、住んでいた草庵の名が「翠光堂」であったためつけられた名だという。

葵の翁:奕棋を得意とした老人。詩歌以外にも、小説という形で作品を世に残している。ある説では、彼が名声を得たのは比較的晩年で、その正体は幕府の役人だったという。また彼は人間ではなく、長寿の妖狐が化けた姿だという説もある。

赤人:剣術に長けており、武人の出身である可能性が高い。ある説では、赤人の名の由来は自分の作品に朱色の印をつけることを好んでいたからだと言われている。

墨染:かつては巫女であり、華道、舞踊に長け、後に将軍の侍女を務めた。墨染は有名になったあと官職を辞任し、創作に専念したという説があるが、晩年まで将軍の側近として仕えていたという説もある。

黒主:情報が少なく、正体不明。そのためか、物語における黒主の身分や人物像は、他の者より多種多様である。
……

『五歌仙容彩・翠光編』

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五歌仙容彩・翠光編

よばなれて かりほに住みし 身なれども
かかる憂き名に なまわずらはし
緑衣着て 歌仙のうたを 献ずれば
欠きしものあり 翁の秀歌
頭たれ 叩きやうやう おぼゆるを
舌疾に訴ふ かくて言ひけり
あなかしこ 酔ひさまたれし 昨夜のこと
仮寝のわが身 寄るけはいあり
かるが故に さる盗人の 後ろ矢に
御前でかかる 恥をみしかな

『五歌仙容彩・葵の翁編』

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五歌仙容彩・葵の翁編

年老いて 冠掛けし かたはらは
松影霞む 月はかりなり
敢え無くも からき命を 守りたり
逆ふることは ほいなきにこそ
しぶしぶに せいて探りて 見つけたるを
衣の中に もて隠したり
脅しつるは 何人ならむ 如何にぞや
恐らくかのもの たぶれたるべき
赤人を 想ひて詠んだ 歌ゆゑに
友は何処や あな口惜し

『五歌仙容彩・赤人編』

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五歌仙容彩・赤人編

かねてより 世の覚え良く 名を立ちて
熱き心に 大志抱きぬ
新しく 詠む歌綴る 紙屋紙
朱印残して 名を轟かす
然れども 歌奉る こぞの会
古人の歌を 掠みにけりな
盗作し 上欺きぬ 咎により
侘しき荒野 追放たれぬ
人の世は なべて無常 移りける
五色の光も 消え失せにけり

『五歌仙容彩・墨染編』

水に浸す前

五歌仙容彩・墨染編

ゆく水よ 沈めよ沈め たとうがみ
あらふ白波、正をあからむ

水に浸した後

五歌仙容彩・墨染編

皆人の なべて閲する 赤人の
歌集の作に み朱印みざる
ゆく水を 沈めよ沈め たとうがみ
あらふ白波 正をあからむ
あはれなる 歌はいづれも えながせず
掠むとおぼゆは あさくも見ゆる
浮かばぬか 葵の翁 かいまみて
友を悼みて 詠みしそへうた
波風の 止まざるままに 日きにけり
主上御覧ず 五色の歌集…

楓原義慶の手紙

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魔神任務間章第三幕開始前
この手紙を読む者へ
拙者、楓原義慶は生涯、ある「秘密」に囚われた。今となっては、老い先短きこの命。とくと考えた末、これを以て仔細を記すことにする。
あれは、社奉行の神里様と共に離反した刀工たちを追っていたときのことであった。あのとき神里様が負われた傷は、脱走者によるものではない。
真相は別にある。あれは夜のことであった。手がかりを頼りに岸辺まで辿り着いたものの、刀工の姿はなく…ただ一人の傾奇者がそこにいた。傾奇者は拙者をずっと待っていたと話した。そして、自らが裏で手引きし、雷電五箇伝を消滅させるのだと語った。
その者の実力は、到底常人が敵うものではなく、須臾の間に、同行したすべての武士が倒されてしまった。神里様も重症を負われたが、拙者のほうはというと、攻撃が笠に当たったために死を免れた。
傾奇者がもう一振りしていれば、拙者の命を奪えたであろう。ところがやつは拙者の顔を見ると攻撃をやめ、厳かな声で、拙者と「丹羽」の関係について問いただした。拙者はそれが父の旧姓であり、父が失踪したのち拙者が楓原の養子になったことを告げた。
傾奇者はそれを聞いて口を噤んだ。長い沈黙の後、口を開いた――「彼女に告げよ、我が名は『国崩』である」と。そしてその後、その者は去っていった…

鍛造がうまくいかなかったのは、この傾奇者によって大御所様の鍛造図を改ざんされてしまったが故であった。神里様はこの出来事の重要性を知っていたが、拙者が部外者に濡れ衣を着せられ、巻き込まれることを恐れた。それ故、病で危篤の状態になっても、脱走者にやられたと主張し、拙者にも口止めをした。神里様のお心遣いには感激しかないが、現状ではこの件を心の底に秘めることしかできぬ。
楓原の当主として、『一心伝』の没落を深く恥じる。しかし一人の父として、子孫の安泰を願わずにはいられぬ。この手紙を読む者が楓原家の後人であるならば、これだけは忘れないでほしい。過去の敵を盲目に追いかけてはならぬ。過去に縛られれば、自らの境地を見失ってしまうであろう。

楓原義慶直筆の手紙

魔神任務間章第三幕以降
※「国崩」に関する記載が変化
この手紙を読む者へ
拙者、楓原義慶は生涯、ある「秘密」に囚われた。今となっては、老い先短きこの命。とくと考えた末、これを以て仔細を記すことにする。
あれは、社奉行の神里様と共に離反した刀工たちを追っていたときのことであった。あのとき神里様が負われた傷は、脱走者によるものではない。
真相は別にある。あれは夜のことであった。手がかりを頼りに岸辺まで辿り着いたものの、刀工の姿はなく…ただ疑わしげな人物が一人、そこに逡巡していた。その者は、先祖が拙者たちの先祖に陥れられて死んだと話した。そして、自らが裏で手引きし、雷電五箇伝を消滅させるのだと語った。
その者の実力は、常人には敵い難く、須臾の間に、同行した大半の武士が倒されてしまった。神里様も重傷を負われたが、拙者のほうはというと、攻撃が笠に当たったために大傷にならずに済んだ。
しかし、如何に強い人であれ所詮は人間であり、武士たちの数を頼んだ全力の抵抗により、ようやくその者は討ち取られた。
死の間際に、その者は叫んだ。「雷電五箇伝など、そもそも存在すべきではない!あれがなければ、私もこのような…」そして、言い終わる前に息絶えてしまった。

後になってようやく知ることができたが、鍛造がうまくいかなかったのは、その者の小細工が故であった。神里様はこの出来事の重要性を知っていたが、拙者が部外者に濡れ衣を着せられ、巻き込まれることを恐れた。それ故、病で危篤の状態になっても、脱走者にやられたと主張し、拙者にも口止めをした。神里様のお心遣いには感激しかないが、現状ではこの件を心の底に秘めることしかできぬ。
楓原の当主として、『一心伝』の没落を深く恥じる。しかし一人の父として、子孫の安泰を願わずにはいられぬ。この手紙を読む者が楓原家の後人であるならば、これだけは忘れないでほしい。過去の敵を盲目に追いかけてはならぬ。過去に縛られれば、自らの境地を見失ってしまうであろう。

楓原義慶直筆の手紙

雷電将軍に転生したら、天下無敵になった

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人生とはこういうものだ。
「善悪を弁え、良し悪しを見極めろ」…いつも両親からはそう言われてきた。
だが、現実はいつだって二つの悪い選択肢の中から、少しマシなほうを選ぶだけ。
付き合っていた彼女から別れを切り出され、さらに俺が博打に依存していると上司に告げ口された。そのせいで俺は仕事を失った。当然ながら、俺にそんな無駄なことをする金なんてない。保護費を払わなければ、両親の安否だって危ういのだから。
親からは不甲斐ないと罵られた。仕事もせず、金も貯めていないことを責められた。
だったら、俺は一体誰のために…俺は間違ったことなどしていないはずだ。
しいて言うなら、努力しても生きていけず、死のうにもその勇気がない――そんな存在自体が間違っていたのだろう。
もういい、あいつらが来たら金を渡すだけだ。その後、どうモラを稼ぐかを考えないと。でなきゃ、海草だけを食べる生活になる。
さて、二つの悪い選択肢の中から、どっちがマシかを決めるとしよう。
一太刀で斬り伏せられるか、あるいは飛んできた石で頭を潰されるか――どっちが楽に逝ける?
「ジジ…ジジジ――」
さっきから変な音がするが、一体なんだ…
雷でも落ちるのか?
……
再び目が覚めた時、あれからどれほどの時間が経ったのか分からなかった。
意識を失う寸前の記憶しか残っていない。あの時、何か鋭いものが一瞬で全身を貫いた感覚がした。
「ん?痛くない…えっ!?」
あまりの衝撃に、大きな声が出てしまった。
今のは、俺の声か…?
「ああ、ああ――」
どうやら間違いないようだ。
腕を上げると、華やかな布地の下から真っ白な肌が見えた。
明らかに俺の体じゃない。だが俺の脳は、その簡単な答えに辿り着けずにいた。
どう考えてもありえない。
立ち上がり、やっと身に着けている服の全貌を目にすることができた。
細部に至るまで作りは豪華。もっとも高貴な者のみが着られる品だろう。
まさか…
「あいつ、どこいったんだ…なっ!ら…雷電将軍!?」
それは、衝撃的な呼び名だった。
そうか。
どうやら、俺は雷電将軍になっているようだ。
保護費を回収しに来た海乱鬼が隊列を組む。顔は見えなかったが、その動作からは警戒心と恐怖が感じ取れた。
そんな様子の彼らを、俺は今まで見たことがない。
「野郎ども…今こそ復讐を果たす時が来た…」
声が明らかに尻すぼみしている。怯えているようだ。
手下の前で恥をかきたくはないが、このまま逃げることもできないのだろう。彼はとうに戦いの結末を予測できているのだ。
人数が次第に増えていく。十人、二十人、五十人…
戦力的に不利な部分を人数で補おうとしているのか。
だが雷電将軍の力は、凡人と同じ秤にかけられるようなものじゃない。
「お前たちで、試し斬りしてみよう。」
息を止め、集中して構える。
この一太刀を振るった後、すべての運命が変わる予感がした。
「無想…」
……
ん?待てよ。
「無想の一太刀」って…どうやって使うんだ?

お願いっ! 私の仙狐宮司

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「おかえりなさいませ、将軍様!」

赤と白の巫女服を着た八重政子が、慎み深く目の前で正座している。モフモフとした狐耳が微かに動いており、その下にはいつも人々が仰ぎ見る顔があった。
「おかえりなさいませ。半月ほど前に領土巡視のお仕事をお願いしましたが、そちらの進捗はいかがでしょうか?」
「あっ、帰ってきて早々仕事のことについて聞くのは不躾でしたね。ではいつものように…ご飯になさいますか?お風呂になさいますか?それとも…」
「何が『いつものように』よ!そんな古い出迎えの台詞、今まで言ったことないくせに。」
私の返事を聞いて、赤と白の服を着た人物が微笑みながらこう言う。「だって貴方が元気なさそうにしていたんですもの。では、私は料理の続きをしてきます。今日は貴方の大好きなカニのバター添えですよ!」
「やったー!カニのバター添え!」

私、雷電将軍がもっともよく使う言葉は「やったー!」である。もっとも多く食べた料理はカニのバター添え、もっともよく会う人は…いえ、大雑把に言ってしまえば、私の生活には二種類の者しかない――一方は道行く通行人、もう一方は耳のモフモフした優雅な声の持ち主だ。
八重政子、神鳴大社*の宮司であり、狐の血統を継ぐ者。「永遠」の眷属であり、その友人…その肩書きは覚えきれないほど多い。稲光の民からすれば私と同じように近寄りがたく、計り知れない存在だろう。

そんな八重政子は、今か今かとカニのバター添えが焼きあがるのを見ている。
そう、より分かりやすい言葉でまとめると――私、雷電将軍は、宮司である八重政子に養われている。

いつからか、もうこんな生活に慣れてしまっていた。
たとえ刀を適当に数回振っただけでも、彼女は嬉しそうに拍手しながら「凄い凄い」と言ってくれる。『雷電将軍に転生したら、天下無敵になった』を読みながら何か食べたいと思った時も、すぐに美味しいミルクティーとケーキを用意してくれる。彼女はまるで永遠を守るかのように、悩みにつながるすべての可能性を徹底的に排除してくれる。私にとって、彼女はまるで伝説の仙狐と同じで、どんな願いも叶えてくれる存在なのだ。
「カニのバター添えが完成しました~!召し上がっていただく前に、やはり領土巡視のお仕事について…」

政子は振り返り、カニのバター添えを私のところまで運ぶ。その香ばしい匂いは、まるで部屋全体を包み込むかのようだ。ただ、私は彼女の質問に答えることができずにいた。なぜなら、その件こそが、今日の私の気分が最悪である理由だからだ。
先程も言ったように、私の世界には、政子とそれ以外しかない。
政子を除く他の者は、私を見ると全員同じ反応をする――すぐ地に伏して「将軍様」と口にし、私が遠くまで行ったのを確認した後、ほっと息を吐いて立ち上がるのだ。
その者の身分が何であろうと関係ない。誰かの妻子、誰かの父親、誰かの恋人、誰かの英雄、誰かの上司、そして誰かの下僕…どんな者であろうと、私の前ではみな同じ顔をする。そう、将軍様への尊重と畏敬に満ちた顔だ。
しかし彼らは、私がそのような顔に恐怖感を抱いていることを知らない。誰だって怖いだろう…何百人、何千人もの人々が、同じ顔を向けてくるのだから。

だからこそ、私は政子に依存している。
だからこそ…私は政子の頼みを断れない。たとえ果たすことのできない仕事でも、彼女に頼まれれば私は引き受ける。
ただ、現実的に言えば、それら何千万という同じ顔とどう向き合えばいいのか、私には分からないのだ。いや向き合いたくないし、向き合うべきではないのだろう。その者たちと接触さえしなければ、たとえポンコツ将軍と呼ばれようとも、私にとってはどうでもいいことなのだ。
しかし、自分から進んでそんなポンコツ将軍になっていても、政子の問詰からは逃れられない。
「どうして黙っているのですか、将軍様?まさか…今日も同じように、天守閣の門を出てから、夕方になるまでずっと何もせず帰ってきたのですか?」政子の声に否定的な感情は一切なかったが、それだけに余計どう答えればいいのか分からなかった。
「分かりました、ではきちんと休んでください。私はまだやるべき事が残っていますので、これで失礼いたします。カニのバター添えも忘れずに全部食べてくださいね。」政子は振り返り、部屋を出ていった。

なぜだろう、今日のカニのバター添えは、まったく味がしない。
だが、すぐに答えは分かった。
将軍様は天下無敵の存在だ。しかし、そんな無敵の将軍様でも、風邪にやられてしまうことがある。
カニのバター添えを食べてすぐ、私は寝床の上に倒れた。頭が痛い。だがそんなことよりも、私にとってもっと残酷と言える事態が発生していた。
普段であれば、政子の膝枕の上で、彼女の歌声を聴きながら眠る。
だが今日は政子がいない。凍てつく御殿、焼けつくような額。そして、そばに誰もいない寝台。

彼女には、自分の用事がある。彼女は私だけの仙狐ではなく、神社の宮司でもあるのだ。
彼女はいま怒っているかもしれないし、疑っているかもしれない。毎日「やったー」としか言わない私に、そのような精力を注ぎ込む価値があるのだろうか、と。
そんな不安を抱きながら、私は眠りについた。

夢を見た。夢の中の政子は、彼女らしい笑顔を浮かべながら、茶碗を手にしていた。
「これは私が特別に調合した飲み物で、『紫苑雲霓』と言うものです。先ほど離島へ行って、モンドのドドリアンを買ってきました。それにミントを加えています。これを飲めば、風邪がよくなりますよ。」
夢を見ているせいか、体を起こす力が出ない。
「あら、将軍様はいま起き上がれないのですね。では、失礼いたします。」彼女は、私が夢にも思わない方法で、「紫苑雲霓」を私に飲ませた。
驚いて夢から覚めた。先程の情景は私の想像を遥かに超えるものだった。なぜなら政子は今頃、また私が政事を疎かにしていたことを怒っているはずだから。

ただ…どうして口元が甘いのだろうか…?

出発! ドドコ

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「『ドドコ』もいつか風と海流に乗って、もっと広い世界を冒険するのよ。」と、ある優しくて美しい母がそう言った。
彼女の預言した通り、親友のクレーが雷の国へ冒険の旅に出ると聞いて、私たちのドドコは大喜びした。
クレーと一緒にレストラン「鹿狩り」でおいしいものを満喫したり、吟遊詩人の詩を聞いたりすることは、ドドコにとって一番嬉しいことだけど…
でも、それ以上に嬉しいのは、クレーと一緒に星を数えたり、野に咲く花で花冠を作ったりすること。
だって、すべての「ドドコ」は風と海流に乗って冒険したがっているから。

遠く離れた雷の国を目指すには、荒れ狂う海を越え、恐ろしい雷に耐えないといけない。
ドドコは強い風を恐れない。なぜなら、ドドコは元々風の神の祝福だから。
ドドコは押し寄せる波も心配しない。なぜなら、ドドコは勇敢な子だから。
ゴロゴロと鳴り響く雷に対して、「ふふん」と笑い、どんな挑戦にも平然と立ち向かう――これがたくましい「ドドコ」一族のあるべき姿!
けど、ドドコはクレーをそのような危険にさらしたくない。
だって、ドドコはクレーの最高の友達。友達はお互いを守らなきゃいけない。
それから、ドドコはクレーと離れたくないみたい。
クレーがいないと、すべての冒険は花の咲かないスイートフラワーみたいになる。寂しくて悲しいものになってしまうのだ。
たとえテイワットの隅々まで歩き、すべての小川を乗り越えたとしても、それでは意味のないこと。
だから迷わず、ドドコは最高の友達であるクレーと一緒に、船に乗って冒険に出た!
船に乗ると、風の中を自由に飛ぶことができなくなる。海で気持ちよく泳ぐこともできない。
だけど、クレーの笑顔やアルベドお兄ちゃんの物語を手に入れることはできる。
これも悪くないよね。

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雷の国である稲妻は花も草も、魚も鳥も、すべてが紫色。
それをすべて描くとなると、アルベドお兄ちゃんが持ってる紫色の絵の具は足りなくなるよね。
けど残念なことに、アルベドお兄ちゃんはクレーやドドコと一緒に絵を描く時間がないみたい。
アルベドお兄ちゃんは大人だから、時折、「大人」としてやるべきことがある。
それでも、ドドコの隣にはクレーがいるから大丈夫!
クレーはいつだって楽しいことを見つけられる。だから、ドドコはクレーと一緒にいれば退屈しないの。

クレーには稲妻にたくさんの友達がいる。栄誉騎士のお兄ちゃん、パイモンちゃん、それから宵宮お姉ちゃん。
みんな、ドドコと一緒に稲妻でとっても楽しい大冒険をした。
ヤッホ~!大冒険万歳!

栄誉騎士のお兄ちゃんは、ドドコを連れて影向山に登った。どっても高いお山。
登り切ると、疲れてそのまま神櫻の下で横になって寝てしまった。
目が覚めると、みんな天狗と同じ翼が生えていた。
クレーの翼は赤色で、宵宮お姉ちゃんの翼は金色、栄誉騎士のお兄ちゃんの翼は青色。
パイモンちゃんは翼がなくても飛べるから、そのまんま。
みんなの翼が一斉に開いて、強い風を巻き起こした。
「ふふっ――」、巫女お姉さんの髪が風に吹かれて乱れた。
いけない、巫女お姉さんが怒る前に飛んでいかないと。

大冒険はほんとうに楽しいな。でも…「ぐぅぅ」、クレーのお腹が鳴った。
うぅ、これを忘ちゃいけないよね。おいしい菓子は大冒険に必要不可欠だもん。
「もぐもぐ…」、みんなでおいしい団子を買って、楽しく分けて食べた。
ドドコとクレーは自分の分をすぐに食べ終わった。お腹いっぱいになったドドコは、クレーの笑顔を見てこう思った――
クレーと出会えたこと、みんなと知り合えたことは、ドドコが思いつく中で一番嬉しいこと!

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あっ、一つ大事なことを伝え忘れてた。真面目な話、ここまで読んでくれたあなたは、間違いなく大冒険をした一員。
一緒に冒険して一緒に笑って、一緒においしいものを分け合ったら、もうみんなの友達なんだ。
それじゃ、宵宮お姉ちゃんが打ち上げる花火をあなたも見に来てね。

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みんなが花火を楽しんでいる時、宵宮お姉ちゃんが口を開いた。
「想像力が枯渇せえへん限り、心は何よりも自由や。」
クレーも自然と言葉が漏れる――「みんな、これから先もずっと一緒!最高の友達だよね。」
ほら見て、親友と一緒にいる時のドドコは幸せそう。
あなたも今、ドドコと友達になった。親友たちと一緒に、楽しくて最高の冒険の旅を満喫しよう!

得体の知れない紙切れ 其の一

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誰かが書いた手記…


手紙一: 伯陽さんから紙と筆を借り、家の者に手紙を送ろうとしたが、何を書けばいいのか分からない…故郷にいる皆が元気ならいいんだが。ああ、娘に会いたい。

得体の知れない紙切れ 其の二

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誰かが書いた手記…


手紙二: 虎蘭さんの手紙を代筆する。彼の家族も元気であることを祈ろう。こんな目に遭っていなければ、また海灯祭に参加したかった。

得体の知れない紙切れ 其の三

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誰かが書いた手記…


手紙三: 伯陽や浮舎たちとはぐれてから、十日以上は経ったはずだ。だが、隣にいる仲間はまだ三日しか経っていないと言った…誰が正しいのか、誰が間違っているのか分からない。そんなことで言い争う気力もない。帰りたい、でも帰れない。

得体の知れない紙切れ 其の四

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誰かが書いた手記…


手紙四:
仲間たちと見回りに出てから、どれほど歩いたかもう分からない。
ただ、俺たちが偵察で得た情報では、凶獣たちはすべて行動不能となり、ほとんどが姿を消したようだ。
俺たちは勝ったのだ。だが…誰も家に帰れはしない。

虎蘭さんの娘は今年で二歳になり、清明さんのおばあさんは既に高齢だという。みんな、家族のことを心配しているようだ。しかし、俺は一人ぼっち…
家に帰りたくない人なんていない。でも、ここに残っている人たちも、みんな家族みたいなもの。

この場所はとても不思議だ。俺たちが故郷を懐かしんでいるからなのか、それとも元々ここはこういう場所なのかは分からないが…見回りをしていると、故郷でしか見られない景色を目にすることがある。
璃月人が山に入って採掘することは、少なくとも何百年も歴史があることだと、以前お年寄りから聞いた。しかし、ここはまるで鉱区のようには見えない。
たぶん、鉱区周辺で育った俺が故郷を懐かしむあまり、ここをこんな風に変えたのかもしれない。

ああ、家に帰りたい…

太威儀盤に残されていた記録(仮称)

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(注:この項目は正確には任務アイテムでは無く、任務中に表示された本文内容です)


誰かが書いた手記…


書き置き一:
俺の名は伯陽。後世の人がこの文章を読み、俺が経験したことを知ってもらえるよう、俺の知るすべてをここに書き記す。

書き置き二:
七星の命を受けた俺と弟の戎昭は太威儀盤を持って、千岩軍の将士を支援するために層岩巨淵へと赴いた。だが、ここの凶獣はあまりにも恐ろしく、我々の隊は甚大な被害を受けた。夜叉の助けがなければ、俺も弟もその場で命を落とすことになっていただろう。

書き置き三:
その夜叉は腕が四本もあり、狂気に満ちた姿をしていた。彼は自分の名前すらも覚えていない。気が触れると、いつも周りの者を「金鵬」 や 「弥怒」 といった称号で呼んでいた。彼は雷の力を操り、果敢で勇猛。彼からは、世に名を残すような偉大な将軍の姿が見えた。俺たちは夜叉の後を追って凶獣と十数日あまり戦い、やっと血路を切り開いた。

書き置き四:
蛇には七寸があるように、凶獣にも弱点がある。夜叉はそのことに気付き、その弱点を突くための戦略を練った。前の戦いにより層岩の地面は崩れ、その底に巨大な謎の地下宮殿が現れた。
観察の結果、凶獣はその宮殿に近づくと弱体化するようだ。地下にはカーンルイアの凶獣を抑制する何かしらの力があるのかもしれないと、俺たちはそう推測した。

書き置き五:
…亡くなった人があまりにも多い。戦争を一日も早く終わらせなければ。戎昭と話し合った結果、俺が太威儀盤を持ち、一部の千岩軍の将士を率いて、夜叉と共に地下宮殿へと降りることになった。俺たちが凶獣を引き付け、やつらを宮殿の最深部へと追いやるのだ。
…俺と夜叉は協力して内側から封印を施し、戎昭は外側から援護する。封印を確実に成功させるためには、この方法しかない。もしこの作戦が成功すれば、層岩の戦線を守れる。ただ俺と夜叉、そしてこの作戦に参加した千岩軍の将士たちは、地下宮殿に取り残される…だが、それがもたらす利益はあまりにも大きい。試す価値があるだろう。

書き置き六:
将士たちが昼夜問わず調べたところ、地下宮殿に入った凶獣たちは何かの力で腐蝕されたかのように、大きな制限を受けているようだ。
…戦いで負傷した将士たちの中には、犠牲になった者もいれば、恍惚とした状態となり本隊からはぐれ、二度と戻ってこなかった者もいる…凶獣は、本当にこのまま 消えてくれるのだろうか?

書き置き七:
地下宮殿の中はとても不気味だ。 璃月側で生き残ったのは、俺と夜叉だけになった
…何日経ったか分からない。ただ、夜叉は重傷を負っている上に、狂気に苛まれている。おそらく、長くは生きられないだろう。俺はまだ理性を保っているが、得も言えぬ恍惚を感じている。
地下にどれくらいいるのかもう分からない…夜叉は個々から離れて地上に戻るよう言ってきた。ここに残るのは俺たちの使命であることを、彼は忘れてしまったようだ。

書き置き八:
この地下宮殿はまるで生き物のようだ。 最初、地面に裂け目ができ、俺たちはそこから飛び降りて、戦略的な行動を取った。だが、俺はあのとき気付いていたのだ──裂け目が、静かに閉じていっていることに。しかし、それを口にはできなかった。なぜなら、これが唯一の方法だったからだ。
…衝撃を与えても、割れた空間の裂け目はゆっくりと元に戻っていく。回復の速さはまちまちで判断できない。そういえば、戦闘中に地面が崩れたのも、この地下宮殿が外殻を破ったからなのではないか? 俺たちは巨大な生き物の腹の中に入ってしまったのかもしれない。きっと、このまま呑み込まれていくのだろう。

書き置き九:
凶獣たちはすべて死んだようだ。やっとだ、俺たちはやつらより長く生きることができた…俺はいくつも道を調べたが、外に通じるものは見つからなかった…夜叉はもう死に、俺だけが残されている。
…家族を見た、妻と子供を見た…彼らは俺のほうに近寄ってくると、俺の中を通り抜け、消えてしまった…俺も狂気に堕ちてしまったのかもしれない! そうでなければ、璃月港にいる家族が見えるはずもない…家に帰りたい…俺は、外に出られるのだろうか?

書き置き:
…戎昭、俺は時々恨んでしまうんだ──なぜここに残って、ひどい目に遭っているのがお前じゃないのかと…でも、戎昭…兄として、俺は嬉しくもある、お前が生きていることを。…俺は疲れた…もう頭が真っ白だ…

工事現場の記録

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本日特になし。

本日特になし。

給料日。

三人の新人が来た。まさかこんな時に来る新人がいるとは…

そのうちの一人が技術に長けていて、班長に選ばれた。

本日特になし。

荒瀧極上盛世豪鼓大祭典!

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ガーッハッハッハッ!ダチ公よ、層岩巨淵で別れた後、たまには俺様のことを思い出してくれてたか?
かくいう俺様は、いつだってお前のことを考えてやってたぜ! それにほら、今回だって真っ先にお前のことが思い浮かんだ!
忍が無事に卒業できたことを祝って、それから、ついでに俺ら荒瀧派の名を上げるために、離島のすんげえ良いとこに場所を借りて盛大な祭りをやることにした!
祭りの名は、荒瀧極上盛世豪鼓大祭典! ! どうよ? 驚いたか?
祭りの規模はあの容彩祭よりもデカイ。それに、海灯祭以上に価値があるもんだと俺様が保証する。この祭りを開催すりゃあ、俺ら荒瀧派の栄光はきっと稲妻の隅々にまで広がるはずだ!
こんな素晴らしい祭り、ダチ公であるお前には絶対に参加してほしい!
共に楽しみ、歌い、虫相撲で勝負して、スミレウリを焼こうぜ! 祭りを楽しもうじゃねえか!
どうだ、ワクワクしてきただろ? だから、早く離島に来い! この俺様が待ってんぜ!
ガーッハッハッハッ――
あっ…待った忍、やっぱスミレウリを焼くところは書かなくていい、派手さに欠けるからな…
ん? 書かなくていいって言っただろ!
おいおいおい、今喋ってるのまで書くんじゃねえ! !

法医室の研究日誌のぺージ

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夕暮れの実から抽出した酸性の栄養物質を、肝油からの抽出物と混ぜ合わせて精製すると、微量の白い霜のような物質を得られる。

それを摂取させられたイノシシは1週間後、皮膚や粘膜が次々と壊れて腐食したために呼吸不全に陥り、やがて死に至った。

夕暮れの実を濃縮果汁に、肝油を高濃度の肝油膠嚢に置き換え、二つの混合物を繰り返して精製すると、大量の白い霜のような物質を得られた。

この量の物質をイノシシに与えると、死亡までの時間が数時間に短縮された。

致死量解析の詳細については裏面に添付する。

研究者――城山

『異郷人喧嘩旅~金髪武士に吹く死の風~』台本

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(注:この項目は正確には任務アイテムでは無く、任務中に表示された本文内容です)


プロローグ
舞台装置、静かなる郊外
生い茂る鳴神の野に、春と笹野が背中合わせに立ち、二人とも目を閉じて語る。
笹野:風が訪れる。
春:何処から吹いてきたの?
笹野:風向きなど気にしなくとも、その人に向かって吹いてるということだけ分かればいいんだ。
春:あの人は何処?
笹野:あの異郷人か?すでに、死への道を歩んでしまった。
笹野は目を開け、春の手を握って遠くへ行った。

第一幕、第二場
舞台装置、静かなる郊外
異郷人一行三人は敵に囲まれ、傷つきながらもなんとか郊外に逃げ込んだ。(異郷人は血を流してはいない)
笹野:ダメだ、このままではやつらに抵抗できない。
春:この身を犠牲にするしかなさそうね。
二人は画面の外に飛び出した。
異郷人:どうしてこんなことに…
異郷人は苦々しい顔を浮かべたが、すぐに決心を固めた。
異郷人:でも、負けるわけにはいかない。(クローズアップ)
異郷人:なめるなよ、この覚悟を!
異郷人は身を翻し、敵陣へ赴いた。画面が真っ暗になり、次の場に移る。

第一幕、第三場
舞台装置、敵本陣
腹をくくった異郷人は、敵本陣に乗り込んだ。
春:私たちに構わないで!(絶望的に)
笹野:さっさと行け。(大声で、少し焦りが見える)
異郷人は回転しながら武器を振り回し続けた。無限の回転で、この戦士は金色の旋風へと姿を変えた!舞台の隅々まで覆い尽くしている。
金色の旋風に襲われ続けた敵は、虫歯の100万倍も恐ろしい痛みを感じたという!
金色の旋風は場内のすべての敵を遠方に向かって猛スピードで投げ飛ばし、敵を地面に激しく打ち据えた!
異郷人はやっと笹野と春のところに辿り着き、二人を救出できた。

『無生忍』台本

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(注:任務の進行により内容が、第一幕のみから、第二幕、第三幕が順次追記されていきます)


第一幕
登場人物:黒谷勢至丸(旅人)、若山敬助(笹野)、矢野町子(春)
舞台装置、勢至丸と敬助がよく行く料亭

若山敬助:勢至丸、久しぶりだな。
若山敬助:聞いた話によると、黒谷家は今あなたが取り仕切っているようだが。
若山敬助:どうやら、屋敷の件は落ち着いたみたいだな。
若山敬助:旦那様も奥様も、もういない。
若山敬助:長男であるあなたが責任を持って、公務に専念してくれれば…
若山敬助:旦那様と奥様も喜ぶと思うよ。
黒谷勢至丸:まだ仇もとっていないのに、落ち着いたって?
若山敬助:あなたは…仇を打つつもりなのか?
若山敬助:もう子供じゃないだろうに、どうして未だにそう衝動的なんだ?
若山敬助:はぁ…黒谷の旦那様の才能からして、調査に落ち度があったわけがない。
若山敬助:旦那様も過ちを認め、自ら刑の執行を受けた。
若山敬助:上の方々が定めた刑は確かに重かった…
若山敬助:だが、黒谷の旦那様ご自身が要求されたとはいえ、中には公表されていないことがあったかもしれないと俺は思ってる。
若山敬助:それに、黒谷と若山は権威ある氏族。
若山敬助:家の名を背負っている以上、あなたは主君に仕える武士だ――放浪する野伏や浪人とは違うんだ。
若山敬助:だから、どんなに腹が立っても、耐え忍べ。決して復讐などに身を委ねるな。
黒谷勢至丸:お偉方の手下が怪しいんだ!
黒谷勢至丸:父上が亡くなって、やつらは清々したという顔をしていた。
若山敬助:怒りに任せて、無関係な人に八つ当たりしているだけだ。落ち着いてくれ!
勢至丸が扉の外を見る。
黒谷勢至丸:そこで盗み聞きしている者――入りなさい。
若山敬助:何者だ?誰に命令された?
町子が登場する。
矢野町子:お侍様、わ…私は、茶を売っている者で、ま、町子と申します。
矢野町子:わざと盗み聞きをしたわけではありません。
矢野町子:昨日、勢至丸様が私の命を救ってくれました。でも、彼は米やお金を受け取ってくれなかったんです。
矢野町子:私は怪しい者じゃありません。ただ、彼に恩を返し、茶を売りに行きたかっただけなんです。
敬助は勢至丸に目配せし、勢至丸は頷く。
若山敬助:ふむ…まあ、茶を売る小娘ならば、礼儀を知らないのも無理はない。
若山敬助:この勢至丸というお方の姓は黒谷と云う。今後は黒谷様と呼ぶように。
若山敬助:黒谷家は今、人手不足なんだ。これはお前にとっても良い機会かもしれないぞ。
若山敬助:茶を売るのはやめて、黒谷様につきなさい。
矢野町子:彼のことを黒谷様と呼ぶのは嫌です。だって勢至丸様のほうが、響きがいいでしょう。
矢野町子:お腹を満たせるのなら…へへっ!勢至丸様につくのも悪くありませんね。
若山敬助:…好きにしろ。勢至丸、黒谷の旦那様が亡くなった今…
若山敬助:あなたが当主なんだ。バカな事をするなよ。
若山敬助:好き勝手したりしたら…はぁ…とにかく、重要なのは一族の名だ。決してそれを途絶えさせるな。
黒谷勢至丸:ふん、君の養父母が死んだわけじゃないからね。
若山敬助:この石頭!話を全く聞いてなかったな?
若山敬助:問うが、本当に一族を危険にさらしてまで、お偉方の手下に手を出すと言うのか?
若山敬助:主に恥をかかせ、一族に災難をもたらすつもりか?
勢至丸は沈黙する。
若山敬助:あい分かった、どうやらあなたが恨みを晴らさない限り、誰も安らぎを得られないらしい。
若山敬助:苦心してあなたを説き伏せようとしたが、まったく無意味だった。ならば、真実を話そう。
若山敬助:俺、若山敬助は、先代が亡くなって以来、若山家の当主を務めてきた。
若山敬助:そして、黒谷の旦那様が死罪になったとき、処刑人を務めたのが先代だった。
若山敬助:俺は、先代が黒谷一族に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだったことを知っている。それに、俺たち自体の関係だって浅くはなかった…
若山敬助:刑を執行するというのは公の事…私情は挟めないとはいえ、できる限りあなたの家族を世話してあげたいと思っていた…
若山敬助:あなたがどれだけ復讐したくても、俺の父親はすでに亡くなっている。
若山敬助:だから、復讐したければ、俺に復讐すればいい。あなたにその覚悟はあるのか?
若山敬助:どうした?友人だからと躊躇しているのか?
若山敬助:あなたの意気込みはその程度だったのか?まったく、心の準備ができていなかったらしい!
黒谷勢至丸:元々母上の元に生まれたわけじゃない…一族の名は俺にとって何の意味もない。
黒谷勢至丸:それだけじゃない。黒谷というたったの二文字が、俺の両親の命よりも重要だって言うの?
黒谷勢至丸:俺の覚悟を見せてやる…刀を取ってきて!
黒谷勢至丸:刀と、机の隣にある手まり、この二つを机に置いて。
勢至丸が目を閉じる。
黒谷勢至丸:俺は目を閉じて君が置くのを待つ。置いたら、俺はどちらかを指差す。
黒谷勢至丸:刀を指せば、俺たちは敵対する。手まりを指せば、俺たちの情を断ち切る。
黒谷勢至丸:すべてを天に任せよう。
若山敬助:フン、置いたよ。
刀は勢至丸の左側、手まりは勢至丸の右側に置かれた。勢至丸は目を閉じて、左側を指差す。そして、目を開ける。
黒谷勢至丸:どうやら、これが天啓みたいだね。俺は一生をかけて、君に復讐する――どちらかが死ぬまで。
若山敬助:あなたがそう決めたのなら、俺も男気を見せよう。
若山敬助:さっき言った言葉は最後まで貫くと誓うよ。俺は、あなたが復讐しにくるのを待っている。
若山敬助がはける。

第二幕
登場人物:黒谷勢至丸(旅人)、矢野町子(春)、野伏衆数名(端役)
舞台装置、雑草の生えている野外

勢至丸は野伏衆と戦い、勝利を収めた。
山田一二三:財布を出せと言ったんだが、聞こえなかったかァ?野郎ども、かかれ!
田中:へへっ、自業自得だ。
山本:こいつ、やるぞ…!一二三の兄貴、お…俺は勝てない。

矢野町子:勢至丸様、勢至丸様。おにぎりを買いに行ってるだけの間に、なんでまたケンカしてるんですか。
矢野町子:私にやってほしいことがあれば遠慮なく言ってくれたらいいですから。斬り合うのはやめてください!
山田一二三:俺たちが悪かった、お侍様。お前のお金は盗らねぇから、もう勘弁してくれ。
矢野町子:ねえ、やめましょう。よそんちの米を盗んで捕まった私のような人間にも、あなたは手を差し伸べてくれた…
矢野町子:あなたは、人の命を軽々しく奪うような人ではないでしょう。

第三幕、第一場
登場人物:黒谷勢至丸(旅人)、矢野町子(春)、若山小十郎(笹野)
舞台装置、雑草の生えている野外

矢野町子:勢至丸様、若山家の人を見つけました。
矢野町子:でも、敬助様はすでに…亡くなっていました。もう、諦めましょう…

若山小十郎:フン…黒谷、敬助兄さんに復讐しに来たんだな。
若山小十郎:お前との愚かな約束のせいで、敬助兄さんはこの一年間、毎日苦労してきて…
若山小十郎:ようやく家の事情を落ち着かせたっていうのに、その時にはもう体に影響が出てきてしまっていた。
黒谷勢至丸:あいつ――もういないんだね?
若山小十郎:処刑人ばかりを責めたてる弱虫め!
若山小十郎:処刑を行った者に復讐することはもうできないぜ。
若山小十郎:なぜなら、俺と敬助兄さんの父親はもう亡くなったんだから。
若山小十郎:黒谷、お前は自分の養父母を殺した処刑人に復讐することができず、親切に諭してくれた敬助兄さんまで傷つけたんだ。
若山小十郎:そんなお前に、武士と呼ばれる資格はない。
若山小十郎:他人を罰するのなら、報復を覚悟しなければならないと兄さんは言ってた。
若山小十郎:それしきの気概すらないんだったら、戦場で他人の命を奪う資格だってない。
若山小十郎:兄さんがいなくなった今…若山敬助の弟であるこの若山小十郎が、お前の復讐を受けて立つぜ。
黒谷勢至丸:ごめん、俺は…
若山小十郎:今更逃げたって手遅れだ。お前が兄さんを過労死させた。絶対に許しはしない!
小十郎が槍を構えれば、勢至丸は応じざるを得なかった。

第二場

小十郎は勢至丸を相手に奮戦したが――結果は、勢至丸の圧勝だった。
若山小十郎:敬助兄さんのために!
矢野町子:大変、またケンカになってしまいました。あなたたちは分別のある大人なのに、どうしてこんな子供じみたことをするんですか?

第三場

小十郎は戦いに敗れ、力も使い果たした。
若山小十郎:俺を殺さない限り、どっちかが死ぬまで、一生かけてお前に復讐するぞ。
黒谷勢至丸:俺も似たようなことを言ってた。
矢野町子:死者が出なくてよかったです。お侍様たち、もうやめましょう。
矢野町子:お互い怒りに任せて…
矢野町子:家族やら、復讐やら、何ともかんともいえないことに悩んでどうするんです?
矢野町子:町子はただのお茶売りですから、お腹を満たして幸せでいられるのなら、矢野だの黒谷だの若山だの、関係ありません。
矢野町子:その、うまく説明できませんけど…
矢野町子:雨水が湖に落ちても、湖の水が空に還って、また空から雨が降ってくるでしょう。
矢野町子:凍った雨水も、かまどの火にかけたら、また甘いお茶を淹れられますよね。
矢野町子:だけど、茶屋で飲んだお茶は空から来たのか、湖から来たのか、それとも鍋から来たのか、誰も深く考えないでしょう?
矢野町子:うぅ…あんまりあんまり理屈は通ってないですけど…
矢野町子:とにかく、町子の言う通りに、お侍様たちも、もう騒がないでくださいな。家に帰ってご飯でも食べましょう。
黒谷勢至丸:町子、俺はそんな君が好きだよ。
矢野町子:えっ?こんな時に何を仰るんですか。照れちゃうじゃないですか。
矢野町子:まあ…一応あなたが若山様と斬り合うことをやめれ*くれたってことで良しとしましょう。
矢野町子:彼が動けないうちに、引き返しましょう。
黒谷勢至丸:俺は雨のように生まれ、茶のように滅びる…生死がすべて水のようなものなら、もう執着を持つ必要もない。
矢野町子:ええ、そういうことです!
黒谷勢至丸:天から降る雨は地上を厄災から救えるという…だったら俺にもできるはず。
勢至丸が崖から飛び降りた。
矢野町子:勢至丸様!
若山小十郎:黒谷!
最後の場面:崖に残された手まり。
終わり。

謎の手紙

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(注:この項目は正確には任務アイテムでは無く、任務中に表示された本文内容です)


尊き幽夜浄土・断罪の皇女殿下ヘ
私はテイワッ卜を旅する魔女。
突然の手紙でごめんなさいね。私の幼い娘から聞いた話なんだけど、あなたは不幸にも崩壊してしまった、自分の偉大なるお国を救うチャンスを探しているらしいね。
ここから遠く離れた海域に「金リンゴ群島」って島があるの。
この主なき土地が、幽夜浄土降臨計画の力になればいいんだけど!

航路の覚え書き

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群島に残していったものたち…一緒に戻って取り返すと約束したが、もう二度と戻ることはないだろう…
まあ、それもいい。宝というのは、一番最初に見つけた人のものだからな!
いいか、晴れた夜にこの岩礁から出発するんだ。ちゃんと空を見上げるんだぞ、ははっ。
天の河に沿って前に進み、星の様子を眺めたら渦巻のところに行け。
宝を手に入れる四つの手がかりの一つをそこに残したぞ!

順路の覚え書き・其の一

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左右の山が紅き樹に覆われた時、東から島に登ると、壊れた橋が見える。
その橋から山の間を渡り、また左へ進む…
求めるものは紅葉した樹の下にある。

順路の覚え書き・其の二

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葉が赤と黄色になったとき、西から島に登ると塔が見える。
桟道に沿って上を目指せ。求めるものは、桟道の尽きるところにある。

赤穂秘宝の在所・其の一

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この図を残したのは、海賊赤穂百目鬼の一味である。
秘宝が隠されている場所の秘密は…四ヵ所にある。それぞれ、四つの大きな島の岩礁だ。ここは其の一。
この地を中心に、大きな船十八隻分の長さを半径として、円を描く…
四つの円が交わる処に、秘宝は隠されている。

赤穂秘宝の在所・其の二

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この図を残したのは、海賊赤穂百目鬼の一味である。
秘宝が隠されている場所の秘密は…四ヵ所にある。それぞれ、四つの大きな島の岩礁だ。ここは其の二。
この地を中心に、大きな船二十二隻分の長さを半径として、円を描く…
四つの円が交わる処に、秘宝は隠されている。

赤穂秘宝の在所・其の三

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この図を残したのは、海賊赤穂百目鬼の一味である。
秘宝が隠されている場所の秘密は…四ヵ所にある。それぞれ、四つの大きな島の岩礁だ。ここは其の三。
この地を中心に、大きな船十六隻分の長さを半径として円を描く…
四つの円が交わる処に、秘宝は隠されている。

赤穂秘宝の在所・其の四

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この図を残したのは、海賊赤穂百目鬼の一味である。
秘宝が隠されている場所の秘密は…四ヵ所にある。それぞれ、四つの大きな島の岩礁だ。ここは其の四。
この地を中心に、大きな船七隻分の長さを半径として円を描く…
四つの円が交わる処に、秘宝は隠されている。

暮夜劇団団長の手稿

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プロローグ
(とても煌びやかな王宮。すごく豪華なセット。偉大なる国王陛下、勇敢な姫、そして忠実な侍従が台上でスタンバイしている。)
傍白: 人の夢は黄金に値する。そう聞いた悪龍が夢を食い尽くすため王国にやってきた。
傍白: 夕餉は青物か肉か? ちょうど王と姫は言い争っていた。
傍白: 両方とも召し上がればいいのにと、姫の最も忠実な侍従は考える。
傍白: しかし所詮、無名の者。誰も彼の考えなど気にしない。

(悪龍は登場する前に、上空で三回ほど旋回して火を噴く。舞台セットや観衆に火がつかないよう、注意! )
悪龍: 黄金の夢…一体どんな味がするんじゃ?

(悪龍が降下してくると、舞台が揺れる。迫力とインパクトが必要! ただし、揺れすぎるとセットが崩れてしまうかもしれないので要注意。)
悪龍: おっと。王宮の地面は凸凹じゃ、危うく着地に失敗するところじゃった。
悪龍: おお…よいぞ! たまらん! 小さき人に、大きな夢! 満腹の予感じゃ!

(国王が前に出て、悪龍と対面する。堂々とした振る舞い。)
国王: 悪龍! なにゆえこの地へ!?
悪龍: 悪龍? 礼儀がなっとらんな。

(悪龍が翼を広げ、舞台上のライトを半分以上遮る。)
悪龍: ワシのように先見の明を持つ龍は、「善龍」と呼ぶべし!
悪龍: 同族は財宝に目がないが、それよりも価値あるものを見つけた。すなわち、人の夢じゃ!
悪龍: 空腹だろうとなかろうと、人は心に夢を作り続ける。実に不思議じゃ。
悪龍: 夢は黄金よりも価値あるものだと、人は言う。
悪龍: (貪欲に)「黄金よりも価値あるもの」がワシを満腹にできるかどうか、一日かけて見極めよう。
悪龍: (強欲に)空腹のせいで、目つきが悪くなる。はよ食わせい。
悪龍: 小さき王、汝と家族の命が惜しくば、定刻通りに犠牲を捧げよ!
国王: 凶星の如きその目は、腰抜けと勇士も見分けられぬ、飾り玉か?
国王: 気高さと夢は余が一生をかけて追求するもの。これしきの脅威のためには捨てぬ。
国王: 去れ、悪龍よ! 渡すものなど微塵もないわ!
悪龍: なかなかの勇気じゃが、よく考えてから発言したほうがよいぞ。
悪龍: 犠牲と滅亡を天秤にかけて、また決断を下すがよい。
悪龍: ふぁ?、ワシは郊外で眠るとしよう。日没までに佳き肴を捧げよ。
悪龍: なければ、直々にゆく。ただしその時、正殿は石窯となり、王宮は食堂となる!
(悪龍が耳をつんざくような咆哮を上げる。この迫力を表現するため、舞台も揺らす。こちらもやりすぎに注意するか、背景をロープなどで固定したほうがいいかも。悪龍が舞台を去る際については、火を噴く必要なし。経費はこの後の大きなシーンで使うべき。)

傍白: 悪龍は王宮を去った。郊外で一休みしながら、王の晩餐を待つのだ。
傍白: 威厳ある王は屈することなく、部隊を作り悪龍を倒そうとしていた。

姫: (姫様が登場するとき、必ずスポットライトを当てること!)王国を守るため、夢喰いの悪龍を私が打ち砕きます。
国王: 娘よ!己の身分を弁えなさい!
国王: 姫なのだぞ、わがままは通らぬ。
国王: 戦場はぬしの居場所ではない、王宮の寝室にいよ。
姫: 陛下の教えなのに――気高さと夢を諦めぬことを忘れたのですか!
姫: 私は姫であり、戦士でもある。王国の民と苦楽を分かち合わねば!
姫: 悪龍が迫る中、高みの見物をしていられませぬ。
国王: 戦士である前に、姫であろう。
国王: 娘を危険な目に遭わせる父親はどこにもおらぬ。
国王: それにほんの数年前まで、ぬしはまだ…
忠実な侍従: (スポットライトは必要なし)コホン! 陛下、ご安心を! 必ず姫様を守り抜いて見せます!
国王: 功績も名声もないぬしの言に、どうして安心できようか?
(国王がレオンを下がらせる)
国王: 仕方ない、王国の名高き勇者たちを姫に同行させるとしよう。

傍白:王国の名高き勇者は、三名とも腕利きで武勇に優れていた。
傍白: 彼らは城外で、順番に殿上の時を待っていた。
(三人の勇者が登場するシーンでは、全員にスポットライトを当てること。一緒に鳥の羽根を舞わせてもいいかもしれない。)

傍白: 偉業の作り手、武勇に名高き英傑――勇者甲。
傍白: 数ある功績と、冒険譚は万人に謳われている。
傍白: ろう者を除けば、王国に彼の名を知らぬ者はいない。
(勇者甲が剣を持って歩を進め、観衆の方を向く。声量は、他の登場人物よりも三割以上大きくすること。)
勇者甲: 友よ! 俺の功績を知らない? じゃ、耳を澄ましてよく聞けよ!

傍白: 優柔不断で慎重すぎる策士――勇者乙。
傍白: しかし彼は、幾度も危難を乗り越えてきた。
傍白: 及び腰との批判もあれば、思慮深いとの賞賛もある。
(勇者乙が前に出て、同じように観衆の方を向く。)
勇者乙: さ…策略で勝てるなら、正攻法など無駄。良計は、一朝一夕には成せない…
勇者乙: お…恐れているだと? わ、私だって、百戦錬磨の勇者なんだぞ!

傍白: 経験豊富な龍殺しの宗匠――勇者丙。
傍白: 「龍殺しなんか野菜を切るより簡単だよな…って、俺だけ?」
傍白: 彼は過去の戦利品を並べながら、その伝説を詳しく語る。
(勇者丙が前に出て、箱からマントを取り出し、観衆に見せつける。)
勇者内: 見ろ、この貴重なマントには長い物語がある…

傍白: 勇者たちはみな、闘志満々の様子である。
姫: 凝った肩書きね。一体どんなこだわりなのかしら?
忠実な侍従: 最近は、本の中の肩書きで名を彩るのが流行りのようです。
姫:へえ、知らなかったわ! 私の見識不足ね。
国王: よく来たな、勇者たちよ! 困難と危険に満ちた旅になるが、武運を祈る!

(勇者全員にスポットライトを当て、観衆に姿を見せる。)
勇者甲: 過去の勝利に誓って、今日も必ず、成功を姫様に捧げよう!
勇者甲: 俺がいれば心配いらない。悪龍ごとき、朝飯前だ!
勇者乙: …あ、悪龍など恐るるに足らず!
勇者乙: 策を立てれば、悪龍は長居を恐れてすぐ立ち去るでしょう。
勇者丙: どっちも一理あるけど、お手並み拝見のチャンスはないかもな。
勇者丙: 俺が無数の龍を殺してきたのは有名だろ。悪龍も、恐れてとっくに逃げたんじゃないか。
傍白: こうして姫は忠実な侍従を連れて…
傍白: 三人の武勇名高き勇者と共に、すぐさま悪龍討伐に赴いた。
(全員退場。その際、明るい未来を暗示して、ライトで役者たちの進む方向を照らすのもいいかもしれない。ただし、観衆にライトが当たらないよう気をつけること。クレームが来てしまったら困るので。)

インタールード・其の一
(郊外、湖畔の森。遠くの丘に城が見える。木々のセットはリアルに。事前に舞台上に落ち葉などを敷いて、悪龍が上空を飛ぶときに巻き上がるようにすれば、よりリアルさを強調できる!)

傍白: 郊外にあるとっておきの湖畔。そよ風と緑の前には、心まで爽やかになる。
傍白:悪龍はここへ降り立ち、一休みすることにした。
(悪龍が遠くから飛んで来て、舞台の周りを三周飛ぶ。それ以上飛んでも問題はないが、セットを燃やさないためにも火は噴かないこと。)

悪龍: 遠くの城は、木にとまる小鳥のようじゃな。小人は晩餐を用意してくれたじゃろうか?
悪龍: 真昼の地面は熱すぎる。日陰に移ったほうが良さそうじゃの。
(悪龍が木の陰に降り立ち、体を丸めて休む。その際、背景を倒さないよう、しっぽに注意すること。)

悪龍: (疲れた感じで)美食のためにはるばるやってきたが、用事を言いつけたら腹が減ってしまったわい。
悪龍: もしやつが応じなければ、堪忍袋の緒も切れてしまうやもしれんな。

傍白: こうして木陰で休んでいると、向こうから商人のような男が慌ただしくやってきた。
(商人登場。早歩きで悪龍のそばを通り過ぎる。)
商人: (怒りながら)クソッ、騒がしいやつのせいで、大して商売しないうちに店じまいだ!
商人: 行商人とはいえ、長い道のりを生きてきたんだ。なのに、あれがこの国のおもてなしってわけか?
商人: あの大声のやつ、とんでもないぜ。長年商売をやってきて、あんな理不尽な買い手は初めて見た。
商人: 値段が高けりゃ涙ながらに「たかられた」、値段を安くすりゃ「商品の品質が悪い」ときた。
商人: どこかの目利きかと思って値切ってやったが、結局弄ばれただけじゃないか!
商人: 物を買う気なんか最初からなくて、買い物って「挑戦」にただ負けたくなかったんだ!

傍白: 商人が毒突いていると、またご立腹の人がやってきた。
(冒険者登場。商人とすれ違う。)
冒険者: ツイてない! 悪龍を追いかけなきゃなのに、訳の分からんやつの相手をする暇はないんだ。
冒険者: 冒険者として悪龍を放っておけない。あいつ…思い出しただけで腹が立つ!
冒険者: やつの肩書きを知らないと言ったら、大きな過ちかのようにしつこく言ってきて。
冒険者: その上、悪龍を追っても無駄だ、勝ちたいだけかなんて言って、僕を侮辱したんだ。
勇者甲: (舞台裏)悪龍、出てこい! 無意味な抵抗はやめろ!
商人: この声! やつだ!
冒険者: きっとやつだ!
(商人と冒険者がいきり立ちながら周囲を見回し、勇者甲の姿を探す。ここで幕が下りる。心情をよりリアルに表すため、舞台に上がる前に、役者たちには彼らの夕食が勇者甲に盗まれたと想像してもらおう。)

悪龍: 騒がしい小人じゃ。姿も見んうちに、気分を害されるとはの。
傍白: 猛暑にも負けぬ勢いで悪龍を追いかけてきたのは、武勇に名高き英傑であった。
(勇者甲が剣を持って登場。意気揚々と、得意げな感じ。スポットライトを彼に当てること。)
勇者甲: ハッ! 俺は随分有名みたいだ。悪龍でさえ、怯んで魂が抜けたらしい。
悪龍: 小人のくせに大口を叩きおる。善龍も放っておけんのう。
勇者甲: やっと現れたな悪龍! 探す手間が省けたぜ!(勇者甲が剣を抜いて悪龍に立ち向かい、攻撃しようとする。)
悪龍: 意気揚々じゃが、汝の夢はいかなるものか、垣間見てやろう。
悪龍: ふむ――(勇者甲を観察し、感慨深い表情を浮かべる。)
勇者甲:悪龍、なぜ黙る? さては、俺の夢が偉大すぎて、呑み込めないんだな。

傍白: 名高き英傑と悪龍が対峙していると、心配した姫様一行がようやく辿り着いた。
傍白: 無名の侍従も戦場に目を光らせ、英傑の言葉に闘志を掻き立てられていた。(レオン登場。勇者甲を見ながら、セリフを言う。)

忠実な侍従: 恐れなどないようで、羨ましい。私にも勇気を示せる機会があれば…

勇者: おい、悪龍!話すのも怖いのか? この期に及んで怖気付いたか!
悪龍: この夢は大きく見えるが空虚じゃ。心配せずとも、悪…善龍であるワシは、食すかどうか迷っておるだけじゃ。
勇者甲: 口さがないやつめ! 敵に回っただけで、よくも俺を貶してくれたな!
勇者甲: 尊敬できる相手だと思っていたのに、こんなに陰険な策に出るとは。
勇者甲: 英傑である俺は、決してお前の好智に屈しない。悪龍よ、恥を知れ!(勇者甲が前に進み、悪龍と交戦しようとする。悪龍は疲れたようにあくびをする。)

傍白: 彼の熱弁に、姫も今まで押し殺してきた心の炎を抑えられなくなった。
(勇敢な姫様が登場! このシーンでは彼女の輝かしい印象を強調していないが、それでもスポットライトは必要。また、「心の炎を抑えられない」というのはあくまでも比喩なので、実際に舞台を燃やさないように。ところで、ライトの色を赤にする方法はないだろうか? ふむ、ヴァルベリーの果汁を塗ってみるか…)
姫: 平和な寝室にはとうに飽いた。いつになれば、最前線で共に戦えるの?

悪龍: 反論が面倒だっただけじゃが、善龍たるワシは追い詰められんとしている。
悪龍: 前菜を食べ過ぎると食欲が減るが、こだわらずともよいじゃろう。
傍白: そう言って悪龍は英傑の夢を丸呑みにし、みなを驚愕させた。
(漆黒の光が勇者甲の鎧から放たれる。悪龍は翼を高く広げて身をかがめ、黒の光を喰らいつくす! 勇者甲は地面に倒れ、宝剣を投げ捨てて呆然とする。倒れるとき、動作はなるべく軽く、背景を倒さないように――何しろ、勇者甲は鎧を着ているため。)

悪龍: 思った通り、サクサクとして、食感だけは最高じゃ。
(悪龍は満足げに唇を舐め、場外へ飛んでいく。)」
姫: 英傑があっさり倒されるなんて。彼は本物でなく、ただ演説に秀でた者だったのね。
忠実な侍従: 名声に見合う実力を持っていなかったようです。虚勢を張れば、いずれ辛酸を舐める。
傍白: 悪龍の腹は満たされず――一行はただ彼の飛び去って行く姿を見送った。
(ここで幕を下ろす。観衆に姫様の勇姿を見せるため、幕が完全に下りるまで、姫は舞台の中央に立ち続けること!)

インタールード・其の二
(王城。城門のところ、旗が風にはためいて音を鳴らし、威厳と壮大さを醸し出す。悪龍は窓から劇場に飛び入り、城門の前に着地して周囲を見渡す。城壁に着地したほうがよりいい表現になるが、舞台セットが悪龍の重さに耐えきれないかもしれないので、やはり城門の前に着地で!)

傍白: 飛び去った悪龍は、城門近くで休むことにした。
悪龍: 昼間なのに、守衛がおらん。死を恐れたんじゃろうか。
傍白: 悪龍が堂々とここで休んでいると、すぐに姫様一行が追いついてきた。
傍白: 最初に悪龍を見つけたのは、最前列で道を切り開く忠実な騎士だ。
(レオンが登場し、セリフを観客に向かって発する。)
忠実な侍従: (決意)なんて傲慢な悪龍だ。姫様に近づけないと、私は陛下に約束した!
忠実な侍従: (やや心配)旅立ちの時、自信満々だった策士なら、良い手があるかもしれない。
忠実な侍従: 何せ、どんな困難や危機も、無事に乗り超えてきたらしい。
忠実な侍従: 無謀な者は無謀ゆえに損失を受けた。お考えの深い策士こそ、知恵を持つはずだ。
忠実な侍従: 万全な策がないまま、悪龍に挑むべきじゃない。
傍白: 忠実な侍従は気を抜かず、見た情報を他の者に囁いた。
傍白: 「悪龍が休んでいるうちに、じっくり策を練りましょう」。
傍白: すると、姫は悪龍を起こさないよう、そっと近づいた。

(姫登場。レオンの前に立ち、観客の方へセリフ。)

姫: 策士の言はもっともね。 無謀な戦いをしてはいけない。
姫: あなたが悪龍に気づいたおかげで、主導権を握れるわ。
忠実な侍従: もったいないお言葉です。責務を全うしただけですから。
姫: いいえ、賞罰を公平に与えるのは当然のこと。名誉を謙遜する必要はないわ。
姫: 策士が着いてきませんね。よろよろと歩いて、何か困りごとかしら?
忠実な侍従: 悪龍の災いを鎮める、いい案があるそうです。良策が多すぎて迷っているのやも。
傍白: しかし何を言っても慎重な策士は無言のままで、冴えない表情をしていた。
(勇者乙が登場。怖がっており、緊張している。)
勇者乙: ……
忠実な侍従: 勇者さま、悪龍はすぐそこ。どうか妙策をご教示ください。
勇者乙: …み、妙策? よ、予想した状況とかけ離れていて、策の修正に時間がかかりそうだ…
悪龍: ははっ!構やせん、夕方まで、策を練るには十分な時間じゃろう。
(城門の前で匍匐していた悪龍が突然頭を上げて、空に向かって火を噴く! ただし、旗を燃やさないように注意。舞台セットに耐火性はないから、本当に燃えてしまったら面倒だ。)

姫: 悪龍が喋った? 狸寝入りで、私たちが引っかかるのを待っていたのね!
勇者乙: あっ!」
(勇者乙が真っ青になって舞台から逃げ出す。人々は呆然とした表情。)
傍白: 勇者乙はすっかり怯えて、慈悲を乞うように地面に突っ伏した。
傍白: そして「ごめんなさい」と呟くと、躊躇なく城門へと逃げて行った。
傍白: 姫と忠実な侍従は慌てて後を追い、残された悪龍は失笑してしまった。
悪龍: (さげすむ)国王ときたら、散々抵抗しおると思ったが、なんとも愉快で腹いっぱいじゃ。

傍白: 忠実な侍従に逃げた策士を探させ、姫は悪龍の監視に戻った。
(セリフはないが、姫にスポットライトを当てる。)
姫: (観客の方を向いて独白する)まさか策士は口だけで、役立つ策なんて出せないの? ならどうやって国の平和を守れば…
姫: 奇襲で討伐できたはずが、今はあちらが鋭気を養って待ち伏せている。
姫: 策士が逃げたせいで、私の侍従も後を追っているわ。
姫: 守衛のいない城の門は開け放たれて、無防備な姿を晒している。

傍白: 遅れて来た老練な守衛は酔っていたが、足取りはしっかりしていた。
(老練な守衛が登場する)」
老練な守衛: …ヒック。酒池肉林に女、平和な時代は実に良かった。
老練な守衛: 裕福な家の偉いやつらは、俺たち小者の苦労なんざ知る由もない。
老練な守衛:何が悪龍で策士だ、でたらめに過ぎんさ。
老練な守衛:目も耳も衰えて、手は震えるし腰も痛い。絶対に俺の出る幕じゃないよな?

傍白: 若い守衛が小さな「教え」を受けたが、王国を守りたい気持ちは変わらなかった。
(若い守衛が登場する。)
若い守衛: 姫様のために! あの悪龍を許さない!
若い守衛: 策士は尻尾を巻いて逃げ出すし、酔っぱらいの先輩も信用できない。僕しかいない!
若い守衛: 前線に立って、危機に瀕した王国を救い出し、貪欲な悪龍を駆除するんだ!
若い守衛: (剣を抜いて前に立つ)悪龍よ! 遺言があるなら、今のうちだぞ?
悪龍: (愉快な)よいぞ!その腕、善龍たるワシに見せてみよ!
(悪龍が再び空に舞い上がり、若い守衛を見下ろす。守衛は一瞬の躊躇いもなく弓矢を手に取り、空に浮かぶ悪龍に向かって射る。ただ、本当に矢を放つのは危険であるため、人に当たらないよう、動きだけ真似するように!)

傍白: 激戦の幕が切られたところに、忠実な侍従がやっと戻って来た。
(レオンがさっと登場する。この時、観客たちには若い守衛と悪龍に注目してもらうため、一応スポットライトを当てておこう。)
忠実な侍従: 策士が見つからず…血気盛んな若者が不覚をとっていませんように。
忠実な侍従: あっ、一歩遅かった! 私は姫様を守らねばならないのに!
傍白: 嘆いても遅い。すでに悪龍は彼に興味を持ってしまっていた。
(悪龍は疾風迅雷の勢いで若い守衛に向かって急降下する。守衛は慌てて弓を捨て、剣を抜いて応戦するが、激しい競り合いの末、若い守衛はとうてい悪龍には敵わず、吹き飛ばされてしまう。悪龍がそれを追いかけ、勝ちに乗じて守衛の鎧から溢れ出す黒い光を満足気に飲み込む。この戦闘には凄いエフェクトを使う! 例えば、守衛の刃と悪龍の鋭い爪がぶつかった時、悪龍にこっそり火を噴かせて火花が散るような効果とか…)

傍白: 無謀な行動に出た守衛の夢を、悪龍はいとも簡単に呑み込んだ。
若い守衛: うう…普段から自分の力を見極めていれば、こんな結果には…

悪龍: 腹を満たすほどではないが、満足できる前菜じゃ。
悪龍: 量は寂しいが、味は称賛に値する。
悪龍: 食前の楽しみがこれほどあれば、晩餐はさらに美味になるじゃろう。
傍白: 悪龍はみなの叫びに耳も貸さず、舌鼓を打って城門から飛び去っていく。
(悪龍が舞台を飛び去っていく。人々は呆然と悪龍の消えていった姿を眺める。閉幕。)

インタールード・其の三
(郊外、村。開幕前に舞台裏で薪を燃やせば、煙で雰囲気を作っておけそうだ。)

傍白: 姫様一行は悪龍の追討を誓い、郊外にやってきた。
傍白: 忠実な侍従が先頭で、文句も言わず宗匠の荷物を運ぶ。
傍白: 自称、百戦錬磨の「龍殺しの宗匠」は彼を見下すが、侍従はそれを受け流す。
(レオンは華麗に飾り立てられた重い宝箱を担ぎ上げ、苦労して舞台に上がる。)
忠実な侍従: 無数の龍を殺めてきた彼に対し、私は無名の侍従。荷運びくらいしかできません。
忠実な侍従: 石の中のこの剣は秘宝中の秘宝。選ばれし英雄にしか操れません。
忠実な侍従: 百戦錬磨の龍殺しの宗匠が、剣で悪龍をどう裁くのか、実に見物です。

(悪龍は遠方から飛んできて、咆哮しながら炎を噴く。舞台上にある装飾用の日暮れセットを燃やす。日暮れの隣に防火パネルが設置してあるかどうか、事前に確認すること。事故防止のため、また観客からの苦情を避けるため、防火パネルが設置していなかった場合、日暮れを省略する必要あり。)
傍白: その時、村で一休みしようと悪龍が舞い降りて来た。
悪龍: どれどれ、黄金の夢はどこじゃろうな?

(勇者丙が登場。レオンの後ろを手ぶらでついてくる。)
勇者丙: 悪龍よ。俺の肩書きを知るならば、さっさと去るがいい!
悪龍: 使い古された決まり文句じゃの、笑ってしまうわ。
勇者丙: 俺は見識があるから、大目に見てやる。だが、気を付けろ。
勇者丙: 俺が真の力を見せた時、後悔しても遅いからな。
悪龍:ははっ、実力もないくせに、大口を叩きおる。
悪龍: 真の実力があるならば、善龍たるワシに見せてみよ。

傍白: そこへ、尊いお方も足跡を辿ってやってきた。
(スポットライトが舞台を端から一周なぞり、最後に姫を照らす。勇敢なる姫様の再登場だ!)
姫: 悪龍を王国から追い出すのは、私の役目。
勇者丙: 尊い姫様よ、悪龍に挑む許可をくれ。
勇者丙: 幾度も戦い、宝を手にしてきた俺にとっちゃ、お安いご用だ。

姫: 許します。凶暴ですから、どうか気を付けて。
勇者丙: 谷に潜む毒龍を倒したときの財宝から、一番貴重なのを選んできた。(マントをなびかせる)
勇者丙: このマントがあれば、誰にも俺が見えまい。
(観客がマントに注目した瞬間、勇者丙が突然姿をくらます!)

勇者丙: 人混みの中から、奇襲されようとしてるとは思わねぇだろ!

悪龍: 強いのかと思いきや、無意味な潜伏とは。
悪龍: もしやこれは茶番か? 臆病者が逃げようとしておるだけやもしれん。

傍白: 透明マントで隠れた彼を――誰が慧眼で見つけられるのか?
勇者丙: よくも俺の名声を汚してくれた。熟練者に、恐れるものなし!
勇者丙: 立ち去るよう促したのに、好意を無にするとは…流石悪龍だ。立ち去るよう促したのに、好意を無にするとは…流石悪龍だ。
勇者丙: 奥の手を使わせて、後悔しても遅いぞ。
悪龍: 無駄に頭を絞らずとも、見せるものがあるならばさっさと見せろ。
勇者丙: こ、ここじゃ不便だ。向こうでな!
傍白: 悪龍は何も言わず、笑ったのか、笑わないのか――ともかく、彼に同意した。
(閉幕。幕が下りてから、舞台のセットを少し変える。日暮れセットの火を消すのを忘れないで!)

傍白: 悪龍はすぐに、宗匠が指定した場所へ降り立つ。
傍白: 姫様とその忠実な侍従も、小走りで後を駆けてきた。
傍白: 宗匠は逡巡する…何か、策を練っているらしい。

(勇者丙登場。石に刺さった剣の周囲をうろうろするが、剣を抜こうとはしない。)
勇者丙: …悪龍よ、見せてやろう。龍殺しのやり方を!
勇者丙: 氷原を越え、山を登り、秘境に潜り、強欲な龍を討ち…
勇者丙: 俺は、真の英雄にしか握れない唯一の宝剣を手に入れた。
勇者丙: 察するならばこの場を去れ。さもないと、鋭利な宝剣は龍の鱗をも貫くぞ。
悪龍:ははははっ、小賢しい真似を。小人よ、無駄な努力はやめい。
悪龍: ワシは探さんし避けんぞ。剣を抜いて、思う存分斬ればよい。

傍白: 野次馬の村人たちは珍しがった。腕が鳴り、正体を確かめんとする者もいた。
傍白: 立ち向かう農民――農具に慣れた手は、果たして剣の柄を握れるだろうか?
(農夫登場。農具を投げ捨てて、剣の傍に。)
農夫: 体力と気力なら、王宮のやつらに必ずしも劣らない。
(農夫は渾身の力で剣を抜こうとするが、びくともしない。)
農夫: はっ!ダメだ、力には自信があったが、こいつは無理だ。
傍白: 渾身の力を込めても、石の中の剣は微動だにしなかった。
傍白: 姫様と忠実な侍従はそれぞれの理由で、挑戦を見送った。
傍白: 黙って見てきた悪龍も、遂に我慢の限界に達す。
悪龍: (退屈そうに)はぁ、口争いにはもう飽いた。いつになれば、真の腕を見せてくれるんじゃ?
悪龍: 先延ばしせずに、今すぐ剣を抜くがよい!
勇者丙: りゅ…龍殺しの宗匠は、言いなりになどならない。
悪龍: 熟練の龍殺しなんぞ、どこにおる? 口だけは確かに他より回るがの。
悪龍: 宗匠などと笑わせおって。そこな子供に聞けばよい。汝のことを見抜いておるわ。

傍白: 悪龍の言う通り、小人の小人も、鎧の下の本心を見抜くのだろうか?
(子供登場。悪龍を見て、勇者丙を眺める。)
子供: 歌の中の悪龍だ! 思ったより大きい! ….でも怖くないよ!
子供: ピカピカの鎧、なんで震えてるの? そんなに口を開けてるのに、何も話さないの?

悪龍: 間食は本意ではないが、せっかく届いた菓子に手を付けん道理はないのう。
傍白: 悪龍は大口を開けて、龍殺しの宗匠の夢を呑み込んだ。
(勇者丙はその場に立ちつくす。恐怖のあまり身動きができない。悪龍は高く舞い上がり、少なくとも50メートルほど行ったところで急降下し、舞台を揺るがすほどの大きな咆哮を上げ、勇者丙の鎧から漏れる黒い光を呑み込む。勇者丙はじっと動かず、石の中の剣は彼自身の手によって投げ捨てられてしまっている。投げるときには舞台道具を傷つけないよう、そっと投げるように。)

悪龍: チッ、思った通り、腐り果てた夢は理想的な食べ物とは言えぬ。
悪龍: こやつの夢は腐ったリンゴ、喰うても歯が浮くだけじゃ。
(悪龍は少し嫌そうな顔で牙を綺麗にし、村を飛び去っていく。忠実な侍従と観衆は唖然とし、姫は軽くため息をつく。)
忠実な侍従: あっ! 宗匠が負けてしまいました。
姫: 戦いの話はただの自慢だったのね。饒舌は彼を救わなかった。
傍白: 夢を失った、無力な「龍殺しの宗匠」だけを残して、悪龍は飛び去った。
(幕が閉じる。観客の注意が姫に向かわないよう、悪龍が去るのを待ってから幕を閉じるように。)

フィナーレ
(王都の郊外。姫と忠実な侍従が悪龍の眠る洞窟にやってくる。)

姫: 西に太陽が沈み、東に弦月が昇ろうとしている。
姫: 期限が迫る中、私はまだ旅の目的をなし終えていない。
姫: 名高き勇者たちは、ついに現状を変えることはできなかった。
姫: 出発前、私は自ら悪龍を討伐すると誓った…
姫: なのに今になって、この誓いが人に笑われないか心配している…
忠実な侍従: 姫様が役目に悩んでおられる。忠実な侍従として、悩みを分かち合わねば。
忠実な侍従: 私は肩書きすらありません。王宮にいられたのは、姫様の重用のおかげです。
忠実な侍従: 勇者についてはともかく、姫様のお人柄や勤勉さはよく存じ上げています。
忠実な侍従: 姫様、どうかご自分を軽蔑しないでください。これを機に、「勇者」たちの過ちを考えましょう。
姫: その言葉、一理あるわ。彼らの言動を思い出してみましょう。

傍白: 中身のない身の程知らず…口ばかりで結果も出せなかった者…姫は思い出した。
(勇者甲登場。気落ちし、肩を落として観客の方を向く。スポットライトが彼に当たる。)
勇者甲: 俺は英傑を自称していたが、実はただの身の程知らずで――それを見抜かれた。
勇者甲: 強敵に対峙できる実力などない。だが、脆い沽券も捨てがたかった。
勇者甲: 口が悪い? ただ、他人に舐められるのを怖がっていただけだ。
(スポットライトが姫にあたる。)
姫: 悪龍の言う通り、英傑の夢は見掛け倒しだったわ。
姫: 度胸はあったけれど、見合う実力を持たなかった。

傍白: 万全の策があると誓っておきながら、戦いで逃げたしたのは誰か? 姫は思い出した。
(勇者乙登場。怯えた様子で観客と向き合う。スポットライトが彼に当たる。)
勇者乙: 保身のために役目を他人に投げ、逃げることしか考えてなかった。
勇者乙: 妙策が思い付くと思ったが、「どうやったら逃げられるか」しか考えられなかった。
勇者乙: 危機を乗り越えてきた? …毎回、恥知らずにも仲間を見捨ててきたことをみな知らなかっただけだ。
(ここでもスポットライト!)
姫: 策士の彼に、策は一つもなかったわ。危機を前に、責任を全うできなかった。
姫: 慎重さは大切だけど、責務を放棄し、危ない橋は他人に渡らせるなんて…言葉にできないわ。

傍白: 大口は叩くが現実を恐れ、過去の栄光を披露するばかりであったのは誰か? 姫は思い出した。
(勇者丙登場。恥ずかしそうに観客の方を向く。スポットライトが彼に当たる。)
勇者丙: 歴戦の収穫は、俺が本物だと証明してくれる。実力差の大きいやつと戦いたくなかっただけだ。
勇者丙: リスクを避けて利をとるのは本能だろ。もう功績は上げたし、国に命を捧げる理由なんかない。
(スポットライトが姫にあたり、勇者三名退場。)
姫: 彼の経歴が本物かどうかはさておき、過去の栄光に縋るのは褒められないわ。
姫: 彼の精神はとうに腐り…気高さと夢を忘れてしまった。さらに彼はその忘失さえも誇った。

(姫は、手にした細身の剣をそっと撫でながら、顔を上げて遠くの空を眺める。)
姫: ああっ、彼らは使命を果たせなかったかもしれないけど、私こそ…
姫: 決心とこの細剣のみで、どうやって悪龍に立ち向かうと言うのでしょう?
(レオンは姫の方へ歩いていく。決心を見せるため、かすかに頷く。)
忠実な侍従: 私は、姫様のお傍にいた傍観者に過ぎませんが。
忠実な侍従: 高みの見物を決め込む、志だけのお方ではない。
忠実な侍従: 仲間を危機にさらす、薄情者でもありません。
忠実な侍従: 姫様の前向きさと勤勉さ、そして黄金の夢は、私にもはっきり見えます。
忠実な侍従: 私の尊い姫よ、どうかご自分を軽蔑なさらないで。自分を、自分の夢を信じましょう。
忠実な侍従: あなたならきっと、悪龍を討ち倒せます!
(幕を下ろす。再び幕が上がると、悪龍は動揺した様子で洞窟に佇んでいる。悪龍が登場するとき、くれぐれも幕を切り裂かせないように注意! )

傍白: 約束の時間はもうすぐだ。悪龍は待ちきれず、「餓龍」と成り果てていた。
悪龍: 昼間に「間食」をたくさんしたが、正餐の代わりにはならぬ。
悪龍: おやつはあくまでもおやつ。味が違おうとも、腹をひととき満たせるに過ぎん。
悪龍: それに、美味いとも言えんかった――むしろ吐くくらいのもんじゃ。
悪龍: もう黄金の夢しか、ワシを満たすことはできんじゃろう。

(レオンは足音を立てないようそっと舞台に戻る。悪龍は腹を撫でており、気付かない。)
傍白: 侍従は悪龍を観察するため、そっと近づいた。敬愛するお方のためなら、恐れることなどない。
忠実な侍従: これは王様との約束のためだけじゃない…
忠実な侍従: ただ彼女の夢が叶うことを祈っているから。今の状況では難しいかもしれないが…
忠実な侍従: あれ? 悪龍の様子がおかしい。胸を塞いで…何かを呟いている? どれどれ…
悪龍: (独り言)食欲に抗うべきじゃった。それに、小人を侮りすぎた…
悪龍: 胃の中が狂ったようにもたれて、小人に構う余裕などありはせん。

傍白: 忠実な侍従は、大喜びでその情報を姫に伝えた。
(続いて剣を持った姫が登場。スポットライトは姫にあたり、姫は剣を突き付けて悪龍と向き合う。)

姫: 今、心は勇気に満ち溢れ、誇りを持って細剣を振り上げられるわ。
忠実な侍従: (悪龍の胸元を指しながら)胸元です! 硬い皮のない、唯一の弱点があります!
忠実な侍従: この機を逃さず、弱った今こそ討つべきです!
姫: 悪龍よ! 王国の平和のため、あなたに挑戦を挑む! はっ!
(姫は高く跳躍し、悪龍の心臓にとどめの一突きを見舞う。悪龍は立ち上がり、翼を広げて防ごうとするが、姫は悪龍の巨体を飛び越え、悪龍の心臓に剣が命中する!)
悪龍: くっ…! 卑怯な小人め!
傍白: こうして姫様の渾身の一撃は、悪龍を討った。
(悪龍はバタンと倒れる。「バタン」は効果音だけでよし! 本当にバタンと倒れたら舞台が崩壊するので! )

姫: 気高さと夢を諦めない限り、世界の扉は開いてくれる。
姫: 忠実な侍従よ、今まで着いてきてくれてありがとう。あなたは決して、無名の人ではないわ。
姫: 最近の流行に合わせ、このような称号が相応しいでしょう。
(姫が忠実な侍従を指差すと、侍従は漆黒の光を放つ。舞台上から沢山の羽根が舞い降りてきて、侍従は幕が閉じるとともに、ゆっくりと旋回しながら空へ飛んでいく。)

傍白: 「絶望も砕け散る漆黒の翼、聖なる裁きを下す侍従」――無名の者はついに名を手に入れた。
傍白: このように、姫は自らの手で悪龍を退治し、王国の平和を守り切ったのであった。
傍白: めでたし、めでたし。

情報屋の暗号表

本文を読む

まったく甘くないハッラの実を買う——情報屋にドリーと会うことを伝える。
悼霊花を身に付けるーー缶詰知識を買う。
スメールローズを身に付ける――市場で取引可能な商品を買う。
ネズミー一客。
リシュボラン虎――マハマトラ。
物がネズミに盗られたーー物が売れた。
物がリシュボラン虎に盗られた――物がマハマトラに押収された。
スメールシティの方法で梱包——商品を少しだけ買う。
オルモス港の方法で梱包ーー商品を大量に買う。

「お客さんの腕前は非凡」――「食べると目眩や耳鳴りがするハッラの実」で答える。
「お客さんは物知り」――「食べると熱中症になるハッラの実」で答える。

署名のない紙切れ

本文を読む

…新たな貨物を半分積み、古い船は港を離れた…
…感謝する、旅人。

ボロボロな紙切れ

本文を読む

何処より来たりし歌


俺たちは身寄りのない子供、スポットライトを浴びることのない卑しい下僕だ。
故郷を守る盾を左手に、スネージナヤの極星の意志である剣を右手に、
神の摂理に反旗を翻す仮面を被り、足元には偽りの神々とその仇が横たわっている。

俺は善の中の悪、薬の中の毒、子羊の中の狼、黄金の杯にある水銀
血の繋がらない兄弟と別れ、血の繋がらない両親のために戦う。
親愛なるシュナイツェビッチとシュナイツェフナ、俺の兄弟姉妹たちよ。
もし、いつか俺が立ち止まり、白樺の下でまどろむことがあっても、歩みを止めないでくれ…

牧童と魔法の瓶

本文を読む

人々によると、君王アフマルが生きていた頃、大地をさまようジンニーと妖魔を集め、幾千の魔法の瓶に詰めたという。
人々によると、世界にはジンニーが満ちていた時代があった。強い力を持ってはいたが、よく錯迷するアフマルは砂漠の銀色の夜風と流砂の中から、予測不能な海の波紋の中から、雨林の泉の澄んだ音から彼らを掴み取り、銀色の瓶へと入れた――まるで偉そうな征服者のようであり、好奇心旺盛な子供のようであったという。

アフマルはかつて、手綱とくびきでジンニーを駆役し、その哀歌から悲惨な月と馬車の明星の前事を学び、壮大なアンフィテアトルムシティ、アイ・ハヌム――「月娘の城」を造ることで記念した。伝説によれば、これはジンニーの城であり、アフマルが月の遺民から授かった楽土である。その返礼としてジンニーは、アフマルのために彼の墓に使う巨大な門扉を鋳造した。

以上が、砂漠の歌い手が持つ独自の見解であった。それから幾千年が経った今、勇猛なサムード人の都・サレハや知者であるティナル人の国・トゥライトゥーラ、ニ十九デイズの都・オルガナのように、無数の氏族と、魔法の銀瓶に幽閉された無数のジンニーがいるアイ・ハヌムはすでに、黄砂と渦と泥に埋もれてしまった。

だが、今は不必要な考証と推測を省いて、本題に戻ろう――

それは、オルモス港が建設されてから十五年目のことである。一人の若い羊飼いがグラヴェルの唄の丘(注1)で銀瓶を手に入れた。子供じみた好奇心からか、砂漠の人が持つべきではない侮りからか、少年は瓶の底の封印を破り、月明かりの下でそれを開けた。(注2)

「騒がしい俗世のコラクス…」
ジンニーが瓶から立ち昇り(注3)、猫のように柔らかく、そして気だるそうに睡蓮のような踊り手の姿で現れた。
「コラクス…?」
愚鈍な少年はまるで理解できていない。それは鳥類のようには見えないし、騒々しくもない。
「そう、コラクス。」
ジンニーが不機嫌そうに繰り返した。
「生き急ぎ、死に急ぐ鳥、騒がしい命…『死んで初めて目が覚める』。何が理解できないと言う?」
愚鈍な少年はまた首を振り、ため息をついた。
「こうしよう、愚かな鳥。」
ジンニーが首を振り、ミルラを塗った髪が月光の下で軽く揺れた。髪の先に結んだ金の鈴が、夢を見せるような音色を奏でる。琥珀金のような瞳が短剣の輝きを見せた。

「三つ質問をしてよい。だが、代わりに三つの条件を飲んでもらおう――
一つ、我が主アフマルを誇るべからず。これはもっとも重要だ。(注4)
二つ、傲慢であるべからず。短命である者は立場を弁えねばならない。
三つ、天上と地下のことを聞くべからず。なぜなら、天上には堅強な衛士と輝く星があるからだ。
さもなくば我は夜風に乗って、夜月の三女神が軍馬に乗ったように、お前の鼻と口に入ろう。そして内蔵と魂を空っぽにし、お前の不老不死の肉体を私の新たな住処とする。」

少年が慌てて鼻と口を覆い、力強く頷く。ジンニーの条件を理解したことを示した。

「さあ、聞こう。我が主の寵愛を受けし天国の奴隷よ。」
ジンニーが軽く笑みを浮かべながら、そう告げた。白々とした明るい月光は、彼女の幾千本と編み込まれた髪に降り注ぎ、透明に近い肌の中へと溶け込むと、晶砂のような輝きを放った。
「君は誰?」
少年が質問した。
「私は空の造物であり、世界の生霊でもある。私は千古の追放者であり、主の忠実な奴隷でもある。私は生身の人間に屈しない元素の精霊であり、安寧という偽りに満足する永遠の囚人である…」
ジンニーが誇らしげに胸を張り、透き通った体へと月光を思うがまま流す。砂漠の夜風に髪をなびかせ、金の鈴を鳴らした。
「私はリルファルの跡継ぎ。私は大きくも小さくもなり、現れたり隠れたりもできる。波の中、夜風の中、死んだ荒涼とした月光の中に私の同類はいる。つまり、私は誇り高きジンニーである。」
「じゃあ、なぜこの瓶の中に?」
風情の欠片もない少年は、手元の銀色の瓶を振りながらぼんやりと尋ねた。
「我が主アフマルは、天と地を征服することを志し、山海を意のままにする者である。そしてあの方は、私たちのために魔法の瓶を銀で鍛え、自らの印を私たちに押しつけた。私たちはあの方の奴隷となり、高貴な創造と探求に従事することとなった。つまり…恥ずべき奴隷ではなく、誇りある奴隷である。
ただ、その後…」
ジンニーの琥珀金のような瞳は暗くなり、声がずっと柔らかくなった。
「私たちの主は自ら災いを招いた。私たちも何世代に渡り、忘却の罰を受けた。こうして銀瓶の中に封印され、私たちは閉じ込められたのだ。死が訪れる瞬間まで夢に溺れた。」
「さあ、三つ目の質問だ!」
ジンニーが元気よく手を振ると、手首を飾る古びた銀貨が澄んだ音を鳴らす。
「よく考えて質問するがいい。でないと、鼻と口が大変なことになる!」
「それじゃあ…」
しばらく沈黙した後、少年が最後の質問を投げかけた。
「瓶での暮らしは、どんな感じ?」

ジンニーは、そのような質問を聞いたことがないようだった。少し戸惑いながらも、ゆっくりと口を開けて答える――

「最初の世代、私は夜鶯と歌い、薔薇と話しながら暢気に宮殿で暮らしていた。素敵な時代だった、私のおかげで詩人や恋人が生まれた。当時、『月娘の城』のすべてが瓶の中に入っているかのようであり、無色無臭の泉水でさえ人を魅了した。
あの時、もし誰かが封印を破り、私を世に出していたら、その者を必ずや呪い殺そうと、胸に誓っていた。

その後の世代、風が吹き、砂埃を巻き上げ、魔物が暴れ回った。夜鶯は血に泣き、不協和音の鳴き声をあげた。薔薇は枯れ、絡みつく棘となった。詩人たちは獄死し、恋人たちは離散し、繁栄は途絶えた…すべてが永遠の崩壊の中で停滞した、恐ろしい時代だった。同様に、『月娘の城』もまるで海の中にあるかのようであった。
だから、もし誰かが封印を破り、私を世に出したら、その不公平を必ずや追及しようと、胸に誓っていた。

そして第三の世代。すべてが塵と化し、すべてが壊滅した。『月娘の城』の盛大な劇で銀色の瓶と出会った牧童と、そこは終わりを告げ、崩れた神々の仮面と廃墟と化した大劇場のみが残された。この時代、私は涙をすべて流し、金の鈴の音とヴェールの踊りさえも呪いと化した。
こうした荒廃の中で、もし誰かが封印を破り、私を世に出したら、私は復讐の悪霊と化し――世界か己を滅ぼそうと、胸に誓っていた。」

「だから…」
砂漠の冷たな風が急に強まり、少年は反射的に大きなローブで身を包み、縮こまった。

「そう。私は本来、お前を最初の復讐の標的とし…お前の骨と肉を引き裂き、お前の魂で残酷な歌を作る予定だった。」
ジンニーは夏の夜に死を告げる夜鶯のように、冗談めかして言った。
「ただ、死した月光が流砂の砂丘を、そして私を照らしていた…私はふと、この世界がとても素敵なものであることに気づいたのだ。
哀れなジンニーは、卵の殻を突き破ろうともがく雛のように、この不毛で荒れ果てた世界に、その中で蠢く万物の新生と死に、救いようもなく恋をしてしまった。かつては薔微の珍味に養われる寵児であったか、今やヒキガエルと毒蛇が這う地に恋をするとは…
こうなると思わず期待してしまう、『コラクス』が『ニュンフス』に生まれ変わった瞬間…一体どのようなものになるのか。」

「だから…?」
少年はまた体を縮めた。

「だからコラクスちゃん、物語を聞かせて欲しい。この世界のことをもっと教えてくれないだろうか。」
少年の間抜けな顔を見て、ジンニーは狡猾な笑みを浮かべた。髪先に結ばれた金の鈴が澄んだ音を鳴らす。

こうして「月娘の城」のジンニーが再び、世界を巡る旅を始めた。

脚注:
1.
「エルマイト旅団」のメンバーがよく「アジフの地」と呼ぶ砂漠地帯のこと。特定の地名ではない。なぜなら、砂丘は風のように流動するからである。
2.
プルビルニー門の留学ファラマーズは、「砂漠の人特有の無知から」という愚かな見解を主張しているが、これに関しては反論する価値もない。このような理不尽な者には、寝所に百羽の鳥が集まり、山が彼に投石することを願う!
3.
プルビルニの督学ファラマーズは、この「昇り」という言葉は不適切であり、「輝かしい煙が立ち昇る」様子を表すもっと良い言葉を使うべきだと筆者に意見している。彼の見解は、文学の面から見れば良いと認めざるを得ないが、学者がやるべきことではない。彼の腸が鉛の石のようにギザギザとなり、床屋が彼の髪を処刑人のようにすることを願う!
4.
プルビルニの督学ファラマーズは、「アフマル」はこの王が生きていた時の称号ではなく、ここで引用するのは慎重さに欠いたものだと指摘している。知恵が彼の存在を見放し、髪が薄くなり、髭が早々に白くなることを願う!

アフマルの物語

本文を読む

さまよえるジンニーが語る、知られざる古代の神王の物語。真偽のほどは定かでない。

砂漠の住民によると、大地はかつて「アフマル」と呼ばれる君王が統治していた。彼は武士、庭師、知者の王であると同時に、砂漠の吹きすさぶ風や月の光で銀をまぶされた砂丘、夜の夢や鳥の鳴き声に姿を隠す千一種のジンニーを操っている。

アフマルは、空の失われた跡継ぎだと言われている。そのため、大地四方の王でありながら、三大部族の無数の民に信仰されていた。とりとめのないジンニーに崇拝されながら、天穹を見上げるたび、空にある数多の楽園と千年前の無慈悲な仕打ちを思い出すのだ。そして高貴な頭を垂れて、無力なため息をもらす。
この時、たとえ夜鶯の鳴き声が響き、薔薇の香りが漂おうとも、王の悲しみを晴らすことはできない。

砂漠の民は知っている、懐古せし戯言は災厄の時代が到来する前兆と預言であることを。しかし、知恵を持つ者が安寧を満喫する時代であり、勇敢で丈夫な少年と少女が「狂暴な獅子」と「薔薇」のように恋する時代。災厄が近づくことを予知できる者はいなかった。
今の人々が、古代の人やジンニーを責めることなど到底できない。たとえ知恵の頂点であるヘルマヌビスでさえ、予測することはできなかっただろう――かつて龍と戦うことのできた勇士の一族が、千年後に狡猾な悪に堕ち、冒涜された栄光と骨が金色に輝く砂丘の中、永遠に埋もれることになるのを。知者の一族が今やすべての典籍を失い、砂丘を流浪する歌い手となり、ジンニーにしか理解できない歌で我らの不条理な帝王を悼むことになるのを、いかに予見できたと言うのか?
賢者の言う通り、すべての災いの根源はいつも一つの考えから生まれる――君王の隠せない憂鬱と狂想からだ。

そして、アフマルの周りにいる三名の仮臣(無数の呪いが降りかからんことを!)が、王に策を献上した。

「我々の陛下、世界の主、大地四方の王、凡人とジンニーの支配者よ――」
羊の王、首相の中の首相はこのように媚を売った…
「誠に僭越ながら、陛下もご存知のはずです。昔の夢に溺れ、哀想に酔いしれるのは長期的な解決策ではありません。大地の上の権力と知恵は限りなく広く、天国を越える数多の宮殿を築き、民に悩みのない未来を切り開くのは簡単なことです。」

「却下。」アフマルは眉間にしわを寄せながら答えた。羊の王は黙った。

「我々の陛下、空の跡継ぎ、魔神の征服者、賢者たちの頭領よ――」
鷺の王、書記の中の書記はこのように諌めた…
「数千年前、知恵と歴史は天罰によって散った。より良い未来のために、君王は過去を掌握すべきである。現在のオアシス王土には『今日』の知恵が秘められているが、『過去』を取り戻そうとするならば、早く行動しなければならない。」

「却下。」アフマルが杖で地面を叩く。鷺の王は黙った。

「我々の陛下、砂丘とオアシスの主、生者と亡者の案内人、諸元素の使い手よ――」
ワニの王、統帥の中の統帥はこのように進言した…
「失われた命を呼び起こし、失われた機会と夢を取り戻すには、これが最後の好機である。権力が高ければ高いほど、虚しさが増える。知恵が多ければ多いほど、悲しさが増える。妄想の虚しさに比べれば、底なしの後悔を補えるのは、復活した不老不死の命だけだ。」

アフマルが沈黙した。

「よかろう。」

独断の王は三人の佞臣の戯れ言を信じた。そして、百年また百年の時間が経ち、アフマルは自分の国のために巨大な迷宮を作った。暗黒の禁断の知識と凡人の体の制限を超える不思議な薬剤を求めて、迷宮の奥深くに自らを閉じ込めた。

その後の出来事は、触れるべきでない知識であり、理性的な歴史によって永遠に忘れ去られた。

砂漠の民の伝説では、一夜にして知恵と権威の王国が報復の荒波に埋没したという。
話によると、アフマールはついに骨と血から自らの知恵を抽出し、それを果てしなく続く、奥深くへ向かう曲がりくねった回廊、階段、表門、雕梁に注ぎ込んだ。
話によると、アフマルの肉体は王座の上で腐り、巨大な虫に食われた。その魂は、王都の何百万もの悲鳴を上げる魂と一体となり、永遠に吹きすさぶ末日に迷い込み、蛇のような暗い回廊を駆け抜け、底なしの深淵へと向かっていった…

こうして、幾千万の人の知恵が一つの知恵に凝集し、孤独な知恵はやがて狂気となった。
こうして、アフマルが自らの手で築き上げた王都は、自らの手で破壊されたのである。

話では、その夜が訪れた時、砂漠は激しく揺れ、アフマルの宮殿にある数多くの宝石の壁が崩れたという。千一本の柱は強風の中で震え、その上に立つ雄牛と鷲獅子は、生気のない砂丘をかつて見下していたものの、今では不服ながらも平伏し、金色に輝く懐に抱かれている。その夜、無数の住民が、賢者も患者も、英雄も臆病者も、吹き上げられた砂嵐の中に姿を消した。
生き残った人たちは、永遠の沈黙に陥った。禁断の知識の恩恵を受けた罪、その罰として彼らは盲人や唖者となってしまった。
賢者たちは言う、知識を自分のものにしようとする行為は蒙昧な愚行であり、その罰は愚かさそのものであると。

そして、歴史を失った愚者の跡継ぎとして、「エルマイト旅団」はこう口にした――

俺たちは、失われた地から帰還した。
歳月の空は、すでに俺たちに変えられた。
俺たちはもう恐怖で折れることはない。
神の言葉に耳を傾けたりもしない。
鉄のような砂利の海を横断して、
俺たちは帆を上げ、その終点に向かう。

霊光への頌歌

本文を読む

ナガルジュナよ、
万種の霊光に助けられ、私は永劫の大地に加護を与える。
淵底の泥沼が原初の王国を穢した時、
知恵の主を補佐する耀霊が万種に散った。
悲しみの川を逆らって渡り、甘露を飲む。
善霊のために道を開き、慈悲深き知恵の光を四方八方に照らす。

ナガルジュナよ、
万種の霊光に助けられ、私は花海の善霊を供養する。
見よ、霊光が現わす精魂、草木の神の末裔を。
見よ、百戦錬磨の生き残りし勇士、ディフたちの敵を。
天外の漆黒の陰りでさえ、その体を侵食することはできない。

ナガルジュナよ、
万種の霊光に助けられ、私は穢土の亡者を済度した。
罪なき者を罪から清め、悲しみや苦しみのない浄土で生まれ変わる。
大地のチャクラには、すべてのものを生み出すカルマという種がある。
世界の一瞬の盛衰は、現行の種子の幻象に過ぎない。

ナガルジュナよ、
万種の霊光に助けられ、私は高天の深淵を清めた。
淵底から溢れ出る泥沼が、ようやく引いていく。
ダーリの跡継ぎも、正法に畏服する。
千の歌が斉唱し、霖雨はしばし止む。

ナガルジュナよ、
暗い潮流が再び訪れ、黒淵が復活したら、
この賛歌を口にし、不敗の霊光を祈ろう。
永遠なる霊光は、私たちを上昇の道へと導いてくれる。