推薦図書/その他/書籍類/あ行

Last-modified: 2024-04-02 (火) 17:33:52
  • アリュージョニスト以外のネタバレに注意
  • サイバーカラテを実践しよう (知ってる作品があったら、説明を追記しよう)
  • 最下部のコメントボックスで作品紹介を書き込むと、誰かが追加してくれるかもしれません
  • 多分図書じゃなくてもいいと思うよ
  • 参照と類似は呪力です。高めよう。
  • ほんの少しでも推薦図書に見えたのならそれが推薦図書です(邪視)。追加しましょう。五十音順に並んでいます。
  • 編集カラテ入門
    • 発勁用意! 次の2行をコピペして、自分の文章で書き換えます。ここは、Webブラウザ以外のアプリでやるのがオススメ。

      ** タイトル

      -説明1

  • NOKOTTA! 文章が出来たら、Webブラウザに戻り、画面の一番上の「編集」を押します。
  • GOOD! 編集ボックスが出てくるので、1で作った文章をコピペします。場所は、根性で探してください。
  • COMBO! 「プレビュー」を押して、うまくいってるか確認します。まだこの段階では、誰にも見られません。
  • EXCELLENT! 「ページの更新」を押せば、完成です!!

推薦図書/その他/書籍類

あ行

アートプレイスとパブリック・リレーションズ 川北眞紀子 薗部靖史

  • 企業による芸術支援について、そのメリットや実情などをまとめた学術書
  • 太字や要約などがあり、かなり要点をつかみやすい本
  • 『刀剣乱舞』展の話も少し出てくる
  • 企業が芸術を支援する目的には、自社の広告宣伝や社会貢献などがある
  • 更に企業は、芸術から「真正性」(オーセンティシティ)どれだけ「本物であるか」という概念、本物感を受け取る
    • 現代では、性能によって市場で競い合うことは難しくなった
    • ブランドがそうであるように、「ほんもの」であるほど、商品は高価値になるのだ
  • 芸術支援は、企業文化という資産ともなる
  • また、企業は、課題解決やイノベーションのためにアートやデザイナーの思考プロセスを借りることが出来るし、
    • 劇場などのアートプレイスで、地域や外部とのつながりを獲得・維持することが出来る
    • そのつながりで、多様な価値観を持つ人々との相互作用を得ることが出来れば
      • 世間の認識とのズレを修正し、不祥事を防ぐ「倫理センサー」を獲得することも可能なのだ
      • そして、そのセンサーは、新事業のヒントを得るきっかけとも成りうる
        →外力
        電子化◯

愛されたい!なら日本史に聞こう 白駒妃登美

  • 戦国から幕末にかけての偉人に学ぶ愛され方
  • トリシューラ向け
  • 信頼され、愛される条件は「相手の自己重要感を満たすこと」
  • 著者の名前に反して、意外とキラキラはしてなかった
    電子化×

アイドル国富論 聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く 境真良

  • 経済史から、アイドルの社会における価値や役割を分析している本
  • 2014年出版なので、将来の予測や期待については外れがちだが、
    • 一貫した理論は存在するし、こまめにまとめがあって読みやすく分かりやすい内容
    • 主に「アイドルを作り出しているシステム」に焦点を当てている
  • 著者は、新自由主義・グローバル市場主義を「マッチョ」、それについていけない傾向を「ヘタレ」と分類し、
    • 日本のアイドルは、マッチョなエリートとヘタレな中産階級を融和するアイコンであり、
    • 世界中のヘタレた人々の心に希望を与え、グローバル市場主義を破綻から救うことに、少しだけ貢献する存在
    • つまり、少しだけ世界の平和を救う存在ではないか、と提唱している
  • ただ、アイドルの「効能」を説いてはいるが、提唱している肝心の国家目標、日本があるべき「ヘタレマッチョの国」を実現するためには、他に経済政策が必要であるともしている
    • 所得や職位の再配分、社会的支援の整備、競争と自己責任という言葉を国民を煽るスローガンとしてではなく、この世の無常を表す呪いの言葉としてまっすぐに受け止めるべきだというのだ
  • 日本経済の変化が「アイドル」の興亡を引き起こしている
    • アイドルと日本経済の歴史と現在を繋げることで、むしろ「変わらなかったもの」、つまり「日本経済が求めている経済と社会のかたち」を考えてみたい
  • イデオロギーの核心は、実行することで人々が目をそらしたい事実にこそある
    • 表に現れない部分を評価する企業の評価軸である日本の努力主義も、淘汰を恐れる日本人の恐怖から作られたものでは?(←→成果を出せない者を、情け容赦なく淘汰する成果主義)
    • アベノミクスの円安政策や製造業優遇こそが、日本政治におけるイデオロギーであったのではないか
    • 優勝劣敗原理を日本が受け入れ、経済が好調で勝利を信じられる「ホンモノ」の時代では、アイドルは衰退
  • アイドルとファンの共犯関係は、現実の市場・企業社会のエミュレートでありカリカチュア
    • 「推しメン」戦略のの非対称な関係は、市場における商品と購入者の関係に一致
      →『零落』
    • だが、これを「推す」という「支持関係」と読み替えることで、隠蔽する効果も
    • 本来はメンバー間の抗争であるAKBのモデルを、ファン主導のゲームに移行したり、主催者に強制されたゲームでやむなく争うなどのドラマツルギーを挿入することで、
      • 殺伐とした空気が漂わないようにマイルドにしていく仕組み
    • こうした基本構造があるゆえに、逆説的に「闘争的個性」をもったメンバーも歓迎され、むしろ「さわやかな闘争心」を映し出してくれる
    • 代理戦争としてファンも参加気分を味わえる、リアリティーゲームや多人数参加型ゲームのネット実況鑑賞と同じ構造
    • アイドルをアイドルたらしめているのは、消費者自身の認識力、創造力なのではないか
      →『邪視』?『呪文』?グレンデルヒの市場資本主義のアップデート版?
  • 広義の「スター」にはコミュニケーションを活性化するための「記号」としての機能があり、
    • それがあるから、「スター」の地位が保たれる
    • 「貨幣」に似た循環構造
      →『杖』的な『呪文?』
  • 「欠けていること」そのものが商品性としての「優れているところ」となるアイドルの逆説性
    • 「より完全に近いものがよいものだ」という、近代的価値観に対する強烈な疑義の提示
    • 日本が提示する国家と国民のあり方の「可能性」を提示している
    • 世界から尊敬される国、恐れられず、親しまれ、愛される国
    • 「アイドルの国」としての日本
      →第五階層としてのシナモリアキラの目指すべき可能性?
  • 主体性回復装置としてのアイドル
    • 経済と同時に生じたデジタル化の「流動性」が「寂しさ」を 中間組織の解体で所属欲求が満たされなくなり、誠実返答義務も、通信機器の発達によるコミュニケーションコストの減少で弱まった
    • アイドルも、自分を何処かにどこかにつなぎ止め、孤独でないことを確認するための装置の一つとして、もう一度召喚されたのではないか
      電子化◯

アイドル・スタディーズ 研究のための視点、問い、方法 編集:田島悠来

  • 見下されがちなアイドル研究を、学術的なものとして高めようとしている論考集
  • その扱う範囲は広いだけでなく、ステレオタイプを揺るがす現象への注目など、実態を冷静に分析しようとする姿勢があって素晴らしい
    • また、アイドル同人誌「ZIN」や台湾の日本アイドルファン、果ては台湾社会運動リーダーのアイドル化など、珍しい対象を取り上げているのも良いし、
    • 「労働」としてのアイドルにおける「やりがい搾取」という、重要な論点もきちんと抑えている
    • その研究はまだまだ途上の感があるが、
    • それでも「アイドルを通して、アイドルが存在する社会を問う」という、アイドル研究の意義は確かに実現可能であることを感じさせてくれる
  • アと関連ある分野としては、ジェンダーやステレオタイプ、感情労働に関わりある論考がある
    • 「疑似恋愛」の対象ではない「アイドル」とファンの関係性や、日韓合同番組でのオーディションの話は、
      • ステレオタイプになりがちな既存イメージが揺るがされる例があることを教えてくれるし、
    • 「男装アイドル」の分析は、ひとくちに「男装」と言っても、その実態・理由や自己認識が多様であることを示している
      →クレイとミヒトネッセ
    • 感情労働についても、ファンの感情労働や「推し事」についても触れており、
      • こういった研究の中でも珍しい、貴重な内容であると思われる
        →【E・E】
        電子化◯

アイドルになりたい! 中森明夫

  • アイドルのなりかたや、その実態を解説している子供向けの新書
  • 高校中退後、アイドル評論家として生きてきた筆者だけに、その執筆姿勢は真摯で誠実
    • 「アイドルは究極の客商売」「人生は不公平で不平等だが、それでもそこを生きるのが芸能界だ」など厳しい話も多くしている
    • これは著者が、アイドル岡田有希子の毎年の命日に、必ず彼女が自殺した場所で黙祷を捧げているファンの一人であるからだろう
    • しかし最後には、自ら読者のファンになることを約束している
    • 著者の姿勢の根底には、アイドル志願者を応援する強い意志があるようだ
  • 特筆すべきは、現代的なアイドルのなりかたとして、配信やアイドル部の設立を提案していること
    • 成功するかはともかく、比較的に低いリスクで挑戦が可能なルートであることだけは間違いない
  • 「アイドルとは、好きになってもらう仕事」
  • 「アイドルとは、アイドルとファンとの共同作業」
    • 誰一人、アイドルとして認めていなければ、その人はアイドルではない
      →『使い魔』
  • 「アイドルとは、受け継がれるべき文化」
    →『呪文』
  • 「アイドルの未来は、君の瞳の中にある」
    →『邪視』、盲目の瞳の中に星空を持つクレイ
    電子化◯

アイドルにっぽん 中森明夫

  • アイドル評論家中森明夫が二十五年にわたって書いてきた文章を、彼自ら厳選したもの
  • 序文から天皇はアイドルであるという比喩(アナロジー)「にっぽんよ、アイドルたれ!!」という呼びかけから始まるなど、
  • 写真家・篠山紀信などに提供してきたその文章は、しっかりとした分析に裏付けられてはいるものの、幻想的かつ自己陶酔的で、現代から見るとたまに痛々しいほど古くてダサい
    • それはやがて単なる評論やエッセイというより幻想小説の粋にまで到達するが、だがそれもまた、当然のことかもしれない
    • 何しろ、高校中退の家出少年だったという彼が、時代を代表するアイドルたちや最高と評されるスペシャリストと仕事をするようになり、己が筆一本で飯を食ってきたのだ
    • 舞い上がるのは当然であるし、そんな重責、酔わねばとてもこなしてはていけなかっただろう
  • 少女「首輪」誘拐事件犯人Kへの公開書簡など、悪趣味と紙一重の自虐と韜晦が見え隠れするのも仕方ないのかもしれない
    • 美を捉えるため、女性を拘束し監禁し写真物語集を作った彼の志向は、合法的な仕事とはいえ犯人とベクトルが近いということは否定できないのだから
    • 三島由紀夫の比喩の通り、犯罪と芸術は、人間性という業火の焼き加減が違うだけの同じ餅に過ぎないのだろう
    • とはいえ、筆者の筆は、常に自分以外の誰かを褒め称えており、己の論が乗り越えられる希望すらも語っているので、その悪趣味さにも一線の限度は感じられはするのだが
  • 彼の文章は、アイドル論としてだけでなく、少女論としてもきちんとまとまっている
    • 過ぎ去りゆき変質を免れない存在でありながら、写真にその一瞬を捉えられて永遠となる彼女たちは、あるいは筆者がギリシャ神話を引用するまでもなく、永遠の神的な存在なのかもしれない
    • だが、筆者の文章は少女たちを神格化すると共に、その等身大の幼さや反抗心もしっかりと伝えている
    • 筋の通らない大人に反抗していた後藤久美子、彼女と宮沢りえの友情の場面は、神話化される幻想の中でもリアルで当たり前な思い出の記録となって残り続けているのだ
  • 抜粋・要約
  • 誘拐犯Kが少女を監禁したのは、僕たちの時代に「神様がいない」から
  • 神様を絶対的価値、大きな物語と呼び替えてもいい
  • Kは、少女を支配することで、神=絶対者に成り代わろうとしたのではないか?
    • 寺山修司:奴婢訓:スウィフトの同名譚に着想。召使いが王と奴隷を交互に演じる
    • 君はメイドカフェにでも行くべきだったが、しかし君はその関係を永続的に強要することは出来ない
    • バイト時間を終えたメイド嬢がどこかの店に入れば、そこで彼女は王になり、今度は店員が奴隷としてかしづく
    • 主人の留守に「王と奴隷を交互に演じる」こと、それが僕たちの社会だ
    • 「神なき時代」に生きる者としての最低限の倫理綱領なのだ
      →四章・断章編のオルヴァなど?
  • Kくん、願わくば、先人(サド)にならい(更生とは言うまい)牢に鍛えられることによって、君のファンタジー(妄想)がもはや現実世界では決して叶うことのない、
    • はるか想像力の高みの次元へと昇華されんことを
    • その時、君自身が本当の「想像力の王子」として戴冠を果たされんことを……心より、祈っている
  • 終わりなき写真家
    • 篠山紀信は、もはや写真が写真ではない時代に生きる者であり、にも拘らずなお写真を撮り続ける写真家である
  • 連続用女優回殺害事件の被告Mが撮った死体写真は、「最後の写真」などではない
    • それは単に見る者の妄念に満ちた一つの静物写真であるにすぎない
  • 写真家(篠山)の写真群は「世界を拒絶する少女」だった
    • 彼女たちの瞳は、見る者の救済となるため、自ら供犠となる直前の拒絶の瞳――そのような神話的かつ物語的な種類のものでは断じてない
    • そこにあるのは救済とはまったく反対の「殺意」の如きものだ
    • 僕らが少女を見るのではない、少女によって僕らは見られるのだ
    • そこでは写真における見る者の見られる者に対する圧倒的な優位、
    • ことに少女というこの世でもっとも無垢であり美しい(と幻想される)絶対の干渉物への優位ーーがあっさりと覆されてしまう
    • 少女を殺すなんて甘い、この世に真の救済があるとするならば、それは少女によって殺されることなのだと
    • ここではあの青年の行為が、法的かつ道義的にばかりでなく、いわば写真的に断罪されたのだ
      電子化×

アイドル、やめました AKB48のセカンドキャリア 大木亜希子

  • 元SDN48のフリーライターである著者が、AKB48グループやその関係者だった女性たちの「その後」を取材したノンフィクション
  • それぞれの章には、各女性たちの写真が何枚もあり、彼女たちの今を鮮明に写し出している
  • また、著者の文章も良質であり、
    • 簡潔でありながら毎回工夫が凝らされていて分かりやすく、時折、元アイドルならではの視点やツッコミも入る読みやすいものとなっている
  • 特に、取材対象ごとに情報の出し方を変えているあたり、このままTV番組に出来そうなクオリティである
  • 内容としては、アイドルをやめてからだけでなく、アイドルになるまでやアイドル時代の苦労や努力もしっかりまとめられているのが良い
    • それが、アイドル時代に得たものをその後にどう活かしたのか、彼女たちが今どう生きているのかをしっかりと伝えるエピソードとしてのまとまりを出しているのである
      →四章学園編ラスト、新しい舞台での活躍
  • また、彼女たちが語っている応援してくれた人への思いも印象的
    • 夢破れて実家に帰るところを、副業だったバーで正社員として就職した女性(仕事は男性並みにキツかったらしい)
    • 母の一言で、夢を諦められたエピソード
    • 取り柄が無いと思いこんでいたが、スタッフに指摘された特技によって強みが増え
      • そこから自分も何かをプロデュースしたいと新しい夢へとつなげた話もあったりする
        →外力
        電子化◯

青の歴史 ミシェル・パストゥロー

  • 異界と死者の象徴として忌まれ無視されてきた青が、世界中で最も好かれる色となるまでの歴史
  • イェツィラー

悪について誰もが知るべき10の事実 ジュリア・ショウ

  • 悪について、刑事事件の専門家である心理学者が、特に訴えたいテーマをまとめた本
  • 感情のバランスをとるため可愛いと感じたものを傷つけたくなる「キュートアグレッション」など、さまざまな側面からの研究の成果があるし、読みやすくて面白い
  • 筆者自身がバイセクシャルであることもあり、性的指向や不気味な印象を受けやすい人間のタイプなどについても、まとめられている
  • 悪も有益な行動も、同じ人間の性質から生まれる
  • 私の手を借りて、悪に共感できるようになってほしい
    • レッテルを貼ること、心理学でいう「他者化」するのは、共感と理解の妨げになるだけ
    • あなたが悪と考える集団とあなた自身との類似点を深く掘り下げ、それを批判的に眺めながら理解を試みる手助けをしたい
  • ひとつだけお願いがある
    • どうか、人やおこないや出来事を「邪悪」と呼ぶのは止めてほしい
    • それでは、その裏に潜むものの重要な意味を無視することになってしまう
    • それより、考えにくいことを考え、話しにくいことを話し、説明しにくいことを説明して欲しい
    • なぜなら、そうすることでのみ、防ぐのは無理だと他の人たちが考えてきたことを防ぐことができるようになるのだから
    • さあ、悪について考え直そう
  • 性犯罪者と小児性愛者は、同義ではない
  • 小児性犯罪の犯行には環境要因が関わるが、子どもに性的魅力を感じるかどうかは生まれつきで、その欲望を矯正することはおそらくできない(ソース不明瞭)
  • セックスドールなどが与える影響についての研究は、まだ不完全
    • これまでの研究から、児童ポルノ鑑賞が子どもに対する接触犯罪の危険因子であることだけは、確認されている
    • 適切な治療のために、この問題に対する調査を早急に行う必要がある
    • 私たちが焦点を合わせるべきは現実の被害の減少であり、単なる刑罰ではない
  • 私たちが、子供に性的関心を持つ人たちへの対応を話し合うこのプロセスでしてはならないのは、恐怖に駆られることだ
    • 小児・思春期性愛者たちは、人間社会につねに存在し、その数は私たちの想像より多く、身近な存在であったりする
    • それを認めれば、きっと被害を減らす取り組みを続けていけるだろうーそれは加害者になる大人を確実に少なくする取り組みでもあるのだから
    • 大勢の人が小児・思春期性愛者の行動は邪悪だと言ったとしても、彼(女)らはモンスターではない。彼(女)らは人間だ。
    • 容認できない性的傾向を持って生まれてきたが、それを自分で選んだわけではない
    • これと逆のことを示唆する考え方、性悪、治療はもう終わりにしよう
  • 性的嗜好が普通ではないというレッテルを貼るときには、慎重さが必要になる
    • 普通ではないと思われるファンタジーを抱く人たちは、そうでない人たちよりも性的に満足している可能性がある
    • 現在のところ、性的指向を変えられる薬は存在しない

悪魔の文化史 ジョルジュ・ミノワ

  • 悪魔の歴史
  • キリスト教的な神の対立者から、民衆の道化師、ロマン派にとっての「反逆の英雄」まで幅広い悪魔像をカバーしている
  • エロい告白して、自分から魔女として裁かれようとした老婆の話なども載っている
  • ルベール・ミュッシャンブレ『悪魔の歴史12~20世紀』も悪魔イメージの変遷には詳しい
    →アキラくんも「異界の悪魔」扱いされているらしいので、参考図書にどうぞ。

『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡 斎藤貴男

  • 『夕やけを見ていた男 評伝 梶原一騎』に加筆修正したもの
  • 最も有名な漫画原作者の一人であり、子どものような純粋さと暴力性を併せ持っていた男、梶原一騎
  • これは、不器用ながらも人の心に残った、彼の生きざまの物語
  • 彼の作品は、現実の格闘技界と重なって栄光をもたらし、そして破滅させた
  • そう、彼自身さえも
    電子化◯

集まる場所が必要だ 孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学 エリック・クリネンバーグ

  • 人々が交流し、分断に対抗し、心身の健康をも維持出来る物理的な場所=社会的インフラの構築を推奨している本
    • 公園、市民農園、そして図書館など、さまざまなインフラとそのメリット、そして現状の問題点が紹介されている
    • ただ、肝心のインフラ構築については、読者に話し合い集合知の動員を呼びかけるだけで、具体性がないのが残念
  • 1995年7月シカゴを熱波が襲った
    • 孤立から熱中症などで死亡した者も多かったが、社会的インフラがあった地域では驚くほど死亡率が低かった
  • 空き地を整備すると犯罪が減る
    • 「割れ窓理論」も、本来は「増えた空き地の害」を語るものだった
    • 政治は、犯罪の処罰より、空き地を公演にするなど場所の改善に力を注ぐべき
    • 緑化された団地では、住民の攻撃性が減るという研究成果もある
  • 大都会シカゴのオーガニックな都市農場「ウッドストリート・アーバンファーム」
    • 「ホームレスのためのシカゴ連合」が、農業を中心とする都市職業訓練を実施
    • 市民農園で、シカゴの「食の砂漠を食の調達地に」
    • ギャングでさえ、新鮮な野菜をもたらす農場は、地域に貢献するリソースであることに気づくようになった
  • 図書館は、家や宗教施設や学校と違って理想像を利用者に押し付けないし、逆にやりたいことを後押ししてくれた
    →第五階層(シナモリアキラ)が目指すべき方向性?
  • 老人ホーム同士の遠隔ボウリングゲームなど、ゲームやネットの効力についても少しだけ触れている
    電子化◯

あなたは何で食べてますか? 有北雅彦

  • 千差万別な人生の先輩たちに聞く、仕事インタビュー集
  • パワフルで個性的な人ばかりで楽しい
  • 誰かの人生を聞いて、それをひとつの物語にする「物語屋」や顧客の表面的なニーズを破壊して、真の願望を叶えるものをデザインする「デストロイヤー」など、アを思わせるようなものすらある面白い職業もある

あの人と和解する――仲直りの心理学 井上孝代

  • 対立や矛盾から超越して、新しい解決を創造的に探し出す和解法、〈トランセンド(Transcend)法〉=(超越法)による争いの解決を説いている新書
  • ピースボートらしき船での異文化摩擦や、伝統文化における例、身近な場面での具体的使用例も記載されていて、読みやすく分かりやすい
  • トランセンド法とは、第三者が両者の考え・言い分を十分に聞き対話することによって、対立する二者の目標・ゴールを乗り越えたところに、新たな解決法を見出そうというもの
    • 重要なのは、対立する両者が自分の価値観にこだわらず、互いに共有できる新しい価値観を発見するということ
    • その解決は、人間の豊かな想像力によって様々な方法が考えられるものであり、単なる両者の妥協ではない
  • もめごとには、実はあなた自身のこころの奥底にある葛藤が無意識のうちに形を変えて表面化している、というケースも多い
    • つまり、和解する相手は他者ではなく、自分自身であったという気づきも、和解の重要な視点である
  • コンフリクト:二つ以上のゴール(目標)が、両立、共存しない状況
    • 紛争が定訳だが、日常の人間関係における争いや、個人のなかにある感情の矛盾や対立も含むさまざまなレベルで生じているもの
    • 人間社会につきものの現象であり、それ自体に善悪はなく、関係を見直したり新しい自分を発見する一つのきっかけである
  • 和解法の理念や実例については、弁護士広田尚久さんの本などもオススメ
  • 話し合いは、相手を分かると言うより、人と自分を分けて、違いを明らかにするために重要
    • わかるは「分ける」=わかるということは「違いを分けて、明らかにするということ」
    • 自分を分かるということは、自分を分けるということ。
      • 自分というのは結構複雑な存在で、そんな自分を一つ一つ分けて検証していくと、認めたくなかった自分や、隠しておきたかった自分がひょいと顔を出していくものです。
      • 過去現在強気弱気、どの自分もみんな違う
    • 話し合って「違いに気づく」ことを、恐れてはいけない
    • 自分と考え方や感情のあり方が違っても、「人はそれぞれみんな固有の存在なのだ」と相手を尊重し、受け入れていくこと。
      • それが共感するということなのだ

アフターマン ドゥーガル・ディクソン

  • 人類(と大半の大型哺乳類が)滅亡した後、その文明に駆逐されずに生き残った生物達が、さらに進化し、絶滅で空いた生態的地位を埋めて新たな生態系を構築する姿を描いた本
  • 現在の我々から見ると奇怪な生物の姿を見ることが出来て、楽しい
  • 様々な形で進化し環境に適応したポストヒューマンたちを描いた『マンアフターマン』もあるが、日本語版は絶版

危ない精神分析 矢幡洋

  • 1980年代後半から90年代に流行した「記憶回復療法」の害悪について説いている本
  • ジュディス・L・ハーマンたちカウンセラーが、患者に思い出させた「抑圧された記憶」は、ニセモノであり、彼女たちが作り上げた「物語」=【呪文】だった
  • トラウマの記憶を追い求めた「記憶回復療法」に、大きな問題があったのだ
  • いかなる記憶にも再構成のプロセスが存在しており、また記憶は「他者による暗示や誘導」をすごく受けやすい
  • そもそも精神分析だけでなく、現代社会自体に、問題を機械の故障に見立てるような「直線的因果論・原因強迫」が染み込んでいるのだ
  • しかし、機械的な修理モデルを適用するためには、対象が閉鎖的な系であり、メカニズムを配線図のようなフローで表現できる、故障の位置を限定できる、修理する比較的確実な手段が存在するという条件が必要
  • それに、我々は日常そうした「原因究明型」の問題解決法ではなく「軌道修正ーフィードバック連鎖型解決法」を使っており、原因を探すより、とっさにやり方を変えて成功する方が多い
  • 日本社会が精神分析を受け入れたのは、精神分析の持つ「相手が何者なのかを決めつける」という権威性を欲したからではないだろうか?

アフリカ音楽学の挑戦 伝統と変容の音楽民族誌 塚田健一

  • 多様なものがあるアフリカ音楽を、これまた様々な面から分析した本
  • 儀式の音楽、宮廷音楽、軍楽、そして西洋音楽に無断利用されてる著作権問題もピックアップされていて、内容は充実している
  • 歌詞や楽譜も載っている
  • また、全く対象的な二つの方法論による二つの民族誌が併置されている本でもあるようだ

アフリカ潜在力シリーズ 総編集・太田至

  • アフリカのさまざまな民族の生活を研究している本
  • 多くの民族や問題に触れているため、一つ一つの記述は少ないが、カバーしている範囲は広い。
  • 『1 紛争をおさめる文化』:対面する相手との相互行為のなかで、相手の語りや行為に呼応しつつ関係を構築する文化の存在
  • 他者の操作が不可能であるとして、他者とその場で相互の行為を接続しつつ、ある種の秩序を創出する他者と共在する姿勢
  • ×他者を先取する姿勢は、区切るもの
  • 後者の姿勢は、他民族にレッテルを貼るため、個々人の具体性が捨象されてしまう
  • 『4 争わないための生業実践』:環境や多民族の共生能力が描かれている
  • 関係論的なプロセス、日常の営みそのもね共生的関係を創造的に維持していく
  • 結果的平等を志向する文化である「平準化」:食べ物ない隣人に仕事頼み食べ物あげるなどだが、うまくいかないことも
    電子化×

アフリカの老人 老いの制度と力をめぐる民族誌 編:田川 玄・慶田勝彦・花渕馨也

  • アフリカ社会における「老いの力」を知ることにより、日本社会における老いの否定性を相対化し、老いることの可能性を広げようとしている文化人類学の研究書
    • また、人間の普遍的な現象である老いが、どのように作り出され意味づけられてきたのか、人間社会の本質を考えようとしている本でもある
  • 「老いの力」=老いることによって獲得され、老人であるからこそ社会に及ぼすことが出来る何がしかの力
  • 学術書であるため、異民族の文化に興味がない人間には向いていない本ではあるが、
    • 掲載されている写真には、人々が生き生きとしている姿が写されていてこれだけでも、楽しめそうである
    • また、紹介される社会制度は、地位のシステムが男女別だったり家父長制であるものばかりでもあるが、
    • 同時に、結婚式の準備で男たちがいない間に、女たちが花嫁のところに押し寄せて多くの男たちとの不倫を推奨するような歌を歌う
      • 「サイアレケア」の風俗があったり、一夫多妻制度であぶれた男性が老後に愛人になるケースが紹介されていたりと、
      • 一方的に男性が有利とは限らないような、アフリカ社会の多層性を示してもいるのだ
  • ただ、肝心の「老いの力」については、それほど画期的な情報はない
    • 呪術が存在する社会において、老人に祝福の力が求められたり、呪詛に正当性が問われたりすることについては日本と異なるが、
      • 基本的には、あまり日本とは変わらない印象である
  • どちらかというと、あとがきで補足されている「長老や賢人としての社会的役割、ではない老人たちの姿」
    • 頑固じじいや意地悪ばあさん、すけべな冗談を言いタバコをせびる不良老人、聞くたびに違うことを言う認知症の老人たちなどこそが、
      • 日本に老いの肯定的なイメージをもたらすために、必要な存在なのかもしれない
  • 編者たちが言うように、「老いの力」の研究はまだ途上なのであろう
  • ア関連では、経済の発展や社会の変化によって、「老い」の社会制度にも大きな影響が出ていることが興味深い
    • 「成人」の階梯に昇るために必要な「大結婚式」にかかる費用が競争的な蕩尽でふくれあがった結果、
      • 老いても「子ども」から成長出来ない人々が増えたり、
    • 民族の聖地が世界遺産に指定され、そこを管理する長老たちの権威が増大したため、
      • 長老たちには、グローバルな資金の流入や必要以上の力の独占の疑いがかけられるようになり、
      • 権威を政治的に利用したり伝統を商品化する「いかさま師」として追放されたり、
      • 更には「妖術師」として殺害される事件まで発生したりと、
    • 社会の変化が、伝統的な社会システムに負の影響をもたらしているのだ
      • 本来、「妖術師」の判定や刑罰には、専用の「神判」など時間のかかる手続きが必要であるにも関わらず、
      • 近年は、疑惑から衝動的な殺害に直結している点も、こうした負の影響を裏付けている
    • 世代のサイクルの裏付け、人びとの生き生きとした生の土台となってきた伝統文化の「成長と老いのシステム」と現代社会の共生もまた、
  • その他ア関連要素の引用・要約
  • 現代文明は一元化と画一化を推し進めるので、私たちは、自分たちを客観的に観るための鏡、
    • 自分たちとは異なる生き方をする他者との対話、温故知新を必要としているのだ
  • 妖術の想像力はときに暴走するが、その想像力を解きほぐす試みも常に並行してなされている
    • それは社会の中に組み込まれ人びとのハビトゥスにすらなっているような笑い、からかい、ユーモアの感覚に満ちた言動や振る舞い
      • 妖術師として殺された「長老」の葬式でも、その後継者が死者の生前のユーモラスな振る舞いを模倣し、参列者たちと死者のイメージを共有していた
        →肉体言語呪文など、再演
  • 老いることは社会的な知識や能力、権威の獲得のプロセスであり、老人とは人生において達成しなくてはならない社会的な地位である(能動的に地位を獲得しなければならない)
    • 人々は、祖先から現在までの系譜を木の枝葉のメタファーで語る
      • これは、年長であるということが多くの人びとと結びつくことを意味する
      • この結びつきは、系譜的な関係に限定されず、それどころか同じ年齢という同質性によって特定の社会を越える
      • このため、ときとして老人は隣接社会との紛争調停において重要な役割を果たす
    • つまり、「老いる」とは社会的に時間的深度と空間的広がりを持つことなのである
      スーリウムの時間樹に似て非なる『使い魔』?アルラウネ断章?
  • 老いるとは、身心を浄化して他人を祝福したり呪詛したりする力を身につけることに他ならない
    • それはまた、次第に死者に近づき、世俗の(共同体の)秩序の周縁に身を移す過程でもある
    • それによって老人は、半分社会秩序の外部からの眼で共同体を観ることが出来るようになる
      →死者の眼、彼岸からこちら(此岸)を観る死の『邪視』?ルウテトの『生存』?
  • 居眠りしているように見えながらも、家族を見守る老人
    • 居眠りは、社会的な活動や責任からの解放や社会の第一線との距離感
    • だが同時に、かつてとは異なるかたちの深い関心を持っている
    • 表層意識が半分眠り、深層意識が活発になる半覚醒状態特有の観察眼
    • 「見守る」ことで、相手の生命力を高める
    • 天皇の「国見」のような、人々の生活を活性化させる力
      →霊媒のようなトランス?『邪視』?
  • 年齢集団、自然と文化の統合
    • 老いの客観的な特性や内的経験を表現すると同時にそれを社会に役立たせる方向で洗練されている
    • 人生の各段階の独自性を尊重すると同時に、それを孤立させず、たとえば老年を少青壮との関連で捉え、
    • それらとの類似や対比や補完関係に注目して社会的な役割を与える、対立と連携のバランスが貫かれている
    • 隣接する世代が対立してきびしく批判しあい、一つ離れた世代が連携する
    • それぞれが体現する価値を互いに拮抗関係に置くことで、それらを強化し深める
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あなたを見つけるこころの世界地図 ルイス・ファン・スヴァーイ&ジーン・クレアー

  • 感情や概念という地形が描かれている、人生を旅するための空想の地図帳
  • 人生に迷ったときや気晴らしにオススメ
  • 探しているものは、全部うちにあるかも(オズの魔法使い)
  • 完璧な楽園では、人間は満足できない
  • 罪と苦しみに満ち、獣も崇高な理想も存在し、無限に広がる飛散で壮大なすべてを。そこにいたほうが、死んだように平凡な平地にいるより果てしなく希望があり、助けも望めるだろう
  • 私たちは崇高な理想を「幸福」を求めているつもりでいる。しかし、ひとたびたどりついてみると、ぜったいに満足出来ない
  • ロバート・ルイス・スティーブンソン「希望を抱いて旅することは、目的地に着くことにまさる。そして真の成功とは、目的に向かって努力すること」
  • 求めているのは奮闘であり、懸命な努力という刺激だ。たえず、驚き挑むことが必要なのだ
    →【杖】の方向性?
  • 蘭を探していると、ひな菊を見落としてしまう。
  • 「未来」や「新しいこと」「大事なこと」「価値のあること」ばかりに焦点を当てるのに慣れすぎて、ありきたりで自然なことに気づかない。

アンダークラス化する若者たち 生活保障をどう立て直すか 宮本みち子ほか

  • さまざな団体の活動や、問題解決を模索する論考が集められた書籍
    • わずかだが、コロナ禍による変化に触れた箇所もある
  • 若者のアンダークラス(下層階級)問題への対処を、過酷な現実をしっかりと見つめながらも、決して希望を失わずに取り組んでいる
    • 特に、求職者や元引きこもりが互いに助け合うようなシステムや、そんな彼らを包摂する共同体が作られているケースが興味深い
  • ほぼ専門書で素人には読みにくいが、丁寧に書かれているので要点などは比較的わかりやすい
    • データや支援の体験談が豊富にあるのもいい
  • 青少年就労支援ネットワーク静岡:場(居場所)をもたず、地域を居場所と考える支援組織
    • 南方熊楠の萃点(すいてん)、南方曼荼羅の概念を参考にした「ごちゃまぜの場」
    • うちそとへ開かれており、絶えず出入りが起きており、地域の人間関係を絶えず編み直して(リ・オーガナイズ)している
    • 物理的な場所をそこから偶発的に伴走が始まる交差点として位置づけている
      →これからの第五階層のあるべき姿?
  • コミュニティ・オーガナイジング:異質なアクター間の連帯を可能にする技術
    • 一対一の対話を通じて、人々の自己利益を探り当て、その共通部分を軸に、多様な人々や集団の間で関係性を作り出すこと
    • そして、関係性を基盤に構築したパワーによって、抽象的な問題を具体的で解決可能な問題へと分解し、当該の社会問題に関する影響力を持つ人々とそのステークホルダーにはたらきかけて、社会変革を達成すること
    • 関係性を作り出すために自己利益に注目する
    • サポーターの寄付や補助によって、独り立ちや必要な事務手続きをこなせるように
      →トリシューラとアキラくんの自己利益へのこだわり?
  • 伴走型支援:本人の好きなもの、好きなこと、好きな人に導かれて、ある時点で働けていない人が、他の人を助ける相互扶助
    • 若者支援だが、42歳知的障害女性や38歳男性も支援した実績アリ
  • K2インターナショナルグループ:元引きこもりのスタッフが働いている
  • ベーシック・アセット:アメリカのシンクタンク未来研究所(IFTF)考案の概念。アセットとは、ひとかたまりの有益な資源のこと
    • 資源として重要になるのは、支援サービス、現金給付、そして帰属先のコミュニティ
    • これは資源の最も有効な活用方法
    • 地域密着型の社会的投資によって、当事者や家族などとの協議も経て、当事者が社会とつながるために最適なサービスと現金給付を絞り込む
    • ベーシックインカムやベーシックサービスと違って、無駄になる資源がない
    • 若者を含めて人々が社会と繋がり続けること、多様な形で力を発揮する条件を形成すること、そのための最低限であっても必要な給付を行うこと
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アンドロイド基本原則 誰が漱石を甦らせる権利をもつのか? 編:漱石アンドロイド共同研究プロジェクト

  • 死者そっくりのアンドロイド(再生ロボット)の運用原則について、議論しまとめている本
    • アンドロイドの制作過程や運用情報その他研究などが、分かりやすく記録されている
    • また、アンドロイドを使った演劇の脚本(一部改訂)も載せられている
      • そしてそのアンドロイド演劇では、男性の正岡子規を女優が演じている、
      • また、その劇は実在する「手紙」の朗読を通して、「メッセージ」やその「誤配」「すれ違い」などを題材としており、
      • さまざまなことを考えさせる内容である
        →再演、言葉
  • ただし、その原則を定めたのは、肝心のアンドロイドを作った後のことである
  • その運用方針は、死者やその遺族の尊厳を傷つけないことを重視したきわめて「常識的」で穏当なものではあるが、
    • そもそも前述のように、アンドロイドの是非を考えたりルールを検討する以前に、まず作ってしまっているがゆえに、
    • 泥棒が「もう盗みはやめるべきだ」と訴えているような、違和感が残る
      • 文字通りの泥縄である
  • 制作者たちがそのようなスタンスであるため、本としては遺族の権利や死者の尊厳などを尊重しつつも、
    • 全体的にアンドロイド肯定、その研究をなるべく優先したいという主張で貫かれている
  • 要約
  • 漱石アンドロイド計画は、二松学舎大学創立140周年の記念式典において、
    • ある一人の漱石ファンの理事が、強く主張したその鶴の一声で始まった
  • 漱石アンドロイドは、漱石研究の知識を統一的に集積する母体として期待されている
  • 著名な有名人をアンドロイドにする場合は、なるべく多くの人のイメージを損なわないデザインを考える必要がある
  • アンドロイドは、偉人の集合記憶の形成と継承の実態という、「人間の存在」そのものに対する哲学的な問いの探求に役立つ?
  • 人には、社会的人格と個人的人格(明確な定義なし)があるが、社会的人格中心の運用をする場合でも、
    • たまに個人的人格を覗かせないとリアリティが無い
    • しかし、その再現は難しい
  • アンドロイド化は社会的には永遠の命であり、「人は(偉業を成し遂げ)アンドロイドになるために生きている」と言ってもいいのかもしれない
  • おそらくアンドロイドの価値は、ユーザーの「体験」にある
    →死者の代弁、六王などの再演・転生
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アンネの日記 アンネ・フランク

  • ホロコースト(ショア)
  • 日記を親友と仮定することで、日々の記述をやりやすくする試み
    →振る舞いの中にだけ存在する少女
  • 最新の版である増補改訂版が、オススメ
    • 父親の編集によっていったん削除された「性の目覚め」や同居者への悪口なども含まれている

イヴァナ・チャバックの演技術 俳優力で勝つための12段階式メソッド イヴァナ・チャバック

  • 「スターのコーチ」「ハリウッドの秘密兵器」の異名を持つというアクティングコーチ(演技指導者)の演技指導書
  • 独特の専門用語を用いて、俳優が、そしてキャラクターが勝利(愛、権力、正しさの証明などのゴール)を獲得する方法を教えている
  • 特に、俳優が自らの個人的トラウマから、インスピレーションを引き出すことを奨励している点が独特である
    →再演?『邪視』系演技スキル?
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「生き方」の値段 エドアルド・ポーター

  • 「生命」「幸福」「無料」「文化」「信仰」「未来」など様々なものの値段を調べた本
  • 単に事例をまとめただけではなく、値段の水面下に隠れている価値や、値段の歴史の記述もある
  • ただ、あくまで軽いまとめに過ぎないので、たぶんあまり生き方の参考にはならないだろう
  • それでも、値づけの失敗や住宅バブルについても触れている点は、評価されるべきだと思う

生きのびるための「失敗」入門 雨宮処凛

  • いじめで死ぬほどつらかった子供の頃に「美談にならない大人の失敗談」=それでも生き抜いてこれるという実証を聞きたかった著者が、そうした話を集めたインタビュー集
    • 筆者の合いの手が、話をさらに引き出している
      →今死ぬほどつらい誰かのための「外力」となるべく書かれた本
  • 元醜形恐怖症の人から、作家のあさのあつこさんや〈弱いロボット〉の研究者、オタク女性ユニット、元野宿のおじさんの座談会まで、その顔ぶれは多様
  • 全体的に失敗を許容する雰囲気があり、非難と炎上だらけの不寛容な日本を批判している
  • なかでも、探検家・角幡唯介の「見通しが甘く、根拠もないのに楽観的」という点が、逆に長所だという話などが面白い
    • かつては「失敗は若者の特権」であったように、失敗を許容する文化や空気こそが、逆に挑戦者や成功をうながすといった一面もあるのではないだろうか?
  • 他にも、炎上やあおり運転の背景に、社会に対する絶望感や日頃の生活の苦しさがあるのでは、という話や、
    • 2018年タイの洞窟で少年たちが閉じ込められた事故では、日本と真逆で非難の言葉がなく、政府高官から擁護されるほどだったという話などもある
  • 抜粋/引用など
    • インクルーシブ教育、障害を持った子どもたちと一緒に生活すると、周りの子供達が自然と優しくなったり障害を持った子の弱さが周りの強みをうまく引き出したり、
      お互いの弱いところを補いながら、強いところを引き出し合う
    • 自殺願望や通り魔願望は、表現物にできる
      • 場合によっては自分と社会との接点にもなるし、誰かとつながるツールにもなる
        →言理の妖精?
    • 「こわれ者の祭典」
    • ひきこもり、摂食障害などさまざまな経験を持つ人同士が病気でどう苦しみ、そこからどう回復したかをテーマにトークヤパフォーマンスを繰り広げるイベント
      →「場」としてのシナモリアキラ?
  • オタク女性ユニット「劇団雌猫」
    • オタク女子の多様な恋愛関係を本にして出版『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』
  • 失敗しない人生なんてつまらない
  • 全部「正解」を選んでいく人生なら、別に自分が送らなくてもいい
  • 正解や失敗は時代ごとに変わる
  • やりたいこと「真実」をやればいい
  • 自分をSFの主人公に例える
    • メタ視点と将来から見ると、このルートでないと出会えなかった仕事や推しなどが無限に出てくるので、
    • 現時点で単発で失敗だと思うことにそこまで意味はない
      →ルウテトのこれから?
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生き延びるための世界文学 都甲幸治

  • 和訳の有無に関わらず、著者が好きな本を紹介している本
  • 異なる言語を使う書き手の発した言葉でも、それが真実を捉えているとき、僕たちはそこに自分を見る
  • 文学の言葉とは、暗闇の中で差し出された手のようなもの
  • 人生がうまくいかない人々、ただ眠るためだけに親父のタイプライターを叩く自伝的作品、母語ではない言葉でしか作品を書けない作家、美の権力構造、復讐の連鎖、人種差別、黄泉返った妻の帰還、とアリュージョニストに通じる題材の作品が、多く紹介されている
  • 合い間に挟まる筆者の人生回顧エッセイはともかく、ジュノ・ディアスの短編「モンストロ」は軽妙な語り口で結構面白い、

生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 岡田尊司

  • サイバーカラテユーザー向けの本
  • 回避性愛着障害についても、軽く触れている
  • エピソード中心で具体的なハウツーは無いが、読んで気が休まるかも
  • サイバーカラテを愛用しそうな歴史上の偉人が、色々出てくる

いくつもの日本 編:赤坂憲雄 中村生雄 原田信男 三浦佑之

  • 柳田国男が描こうとした古い民俗学「一つの日本」とは異なる象を浮かび上がらせようとするシリーズ
  • 『Ⅵ女の領域・男の領域』
  • 一つ一つの論文の考察と文量は浅いが、内容は多彩
  • 特に大和朝廷に滅ぼされた「土蜘蛛」など、古代日本には多くの女性の指導者がいたのではないかという話が面白い
  • アと関係あるところでは、「ワイセツ」という定義によって「性の民俗学」が誕生したという話や、アイヌにおいて子孫を守護する動物や病気の神などがある
  • 前近代における出産では、男女神仏の力全てが合わせられることが必要とされた
  • 穢れ観は、地域や生業によって濃淡がある
  • 男のシャーマンも結構居た
  • 女人禁制と現代
    • 女人禁制は女性の両義的な意味付けという大きな現象の一部であり、単純に考えることの出来ない複雑さを持っている
    • 女性の生殖能力は、劣位にもなり優位にもなる
    • 生殖能力ゆえの穢れとして仕事から排除されることもあれば、逆に生殖能力を生産に結びつけて神霊の加護を得ることも
    • 古代には、女性が祭祀の中核におり、「穢れ」の忌避はなかった
    • 伝統という言説は、近代との対比で浮かび上がった再構築された過去であり
      • 意図的にせよ無意図的にせよ作り変えられ、絶えず解釈し直されて現在の記憶の中に凝縮されている
    • 女人禁制を弁護する際に持ち出される信仰にしても、かつては生活の中に埋め込まれていた名付け得ぬものを信仰として表現し、近代への対抗言説としたと言っても良い
    • 女人禁制の維持や解禁に伴う言説は、伝統が、近代化の過程で発見されたことを如実に示している
    • 伝統は変わらないものではなく、政治や社会や経済の変動によって微妙なかたちで変わり続けている
    • 伝統のゆらぎや伝統への問いかけを通じて、近代を再考し人間の生き方の質を問うという課題が鋭く提起されているのである
    • 祇園祭:多くの山鉾では、女性の参加を徐々に緩和する傾向
    • 雨乞いには、女人禁制の禁忌を侵すことで神霊を怒らせて降雨を願う行事も含まれている
    • 山には、女性への空間制限だけでなく男性への時間の制限も
    • 女人結界と女人禁制を安易に同一視するべきでもない
  • 穢れや不浄の問題は極めて微妙で、柔軟で多様な視点による考察が必要であり、現代ではそれに代わる言説として伝統や仕来りが持ち出される傾向が顕著である
  • 大峯山の女人結界などは、物言いがついて移動している
  • アイヌの双系:男子は家紋を女子は下帯(観念上の貞操帯)を受け継ぐ
  • ヲナリ神:ヲナリ=エケリ(男の兄弟)から見た姉妹
    • ヲナリがエケリに対して生得的に霊的に優位にあり、守護神としての霊力を備えている存在であることを示している語
    • 琉球のシャーマンであるノロも間切(村や町に当たる行政単位)の支配者のヲナリにあたる存在である
    • ヲナリに関わる風習は地方によって違うが、漁に出る兄弟を霊的に守護するものが多い
    • 琉球の村に多い兄弟始祖神話との関係性は不明
  • 性の越境
    • 語り物芸能幸若舞の常磐問答:牛若丸の母が、僧を論破して女人結界を破る
    • 男巫(おとこみこ)
    • 新蔵人物語:男装して帝の子を妊娠するが、慢心して威張り散らしたために、人気が堕ちて自分から身を引いた
    • 『招提千歳伝記』教円という比丘が突然降臨した帝釈天の力によって性転換、姉を出家させた(尼を導くには既に持戒した尼が必要だったが、当時日本には居なかった)
  • 「堕胎・間引きから水子供養まで」:歴史やブームの実態を詳細に分析し、関連書籍の内容もまとめている
    • 当事者(筆者)の認識:寺側の意図に反して、大量の地蔵が中絶に対しての一種の肯定もしくは安堵のメッセージとして作用しているように感じられた
    • 中絶の大量経験世代には、中絶をセざるを得なかった自分や胎児への憐憫の情はあったかもしれない
    • だが、行為そのものを許し難い悪とみなす感覚は必ずしも強くなかったのではなかろうか
    • 供養という行為は、たんに罪を懺悔するだけのものではない
    • 日本では現在でも、針やウナギから使用済みブラジャーまでが「供養」の対象となっているという
    • それはたんに使って(殺して)ごめんなさいと謝るだけでなく、もうけさせてもらったことへのお礼と、これからもよろしくという祈願でもある
    • 水子寺の奉納絵馬でも、水子を悩みを打ち明け、見守ってほしいと語りかける「守護霊」的に捉えている文面が多く見られた
    • ヒトとヒト以外の生き物、生き物とモノとの境界は、日本では現在もなおたぶんに流動的である
    • 中絶された胎児も、一方では人格化され呼びかけられながら、同時にウナギやカミソリとさして変わらぬ「私たちの幸福のためのやむをえぬ犠牲」として、
      • 中絶が正当化され、許容されていく、そうした納得の回路として水子供養は役立っているのではないだろうか
    • おんだ祭、各地にある男女の営みを模したパフォーマンスの見られる儀礼の一つ
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生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相 渡邊博史

  • 脅迫状と共に毒物などを各所に送り、人気マンガの関連イベントなどを中止させようとした「黒子のバスケ」脅迫事件
  • その犯人が、自らの犯行の経緯や動機などを詳しく語った自伝
  • いじめや両親による虐待、そして劣等感と妄想でひたすら空回りしている著者の記述が痛々しい
  • けれど、その文章は分かりやすく、自己を俯瞰したその分析には一見の価値がある
  • また、著者本人が「社会批判ではなく自己分析をしただけ」だと述べてはいるものの、その(システムへの不満をそらそうとするネオリベ社会への)批判にも、一考の価値はあるかもしれない
  • 著者がそれまでの発言を最終意見陳述で撤回したりしていることもあるし、彼の意見の概要を知りただけなら、後半部分を読むだけで良い
  • 著者は、親の虐待( child abuse/子どもの乱用)によって安心感や規範を持つことが出来なかった
  • そのため、社会とのつながりや「努力する発想」すら持つことが出来ず、暴走に至ってしまったのだと自己の犯罪を分析している
  • 自分の事件を適切に表現する言葉は「欲望欠如型犯罪」です
    • これは「人生で正常かつ適正な欲望を持つことすらできなかった人間が、最後に目に入った相手に不幸や損害をばらまくだけの行動に出る」という犯罪類型です
  • 現在の日本の国境は「努力教」ではないのか?
    • その教義は「全ては努力の思し召しのまま」=この世のあらゆる出来事と結果は全て当人の努力の総量のみに帰する
  • しかし、日本人の中には「努力すれば報われる可能性がある」という世界観を持っていない人間=「埒外の民」もいるのだ
  • また、著者は「無敵の人」を自称したことでも有名だが、当人には、そういったマジックワード(バズワード)で人をひとくくりにすることに否定的なところもあったりする
  • 「無敵の人」になってしまうまでの過程は人それぞれです
    • 全ての「無敵の人」に対して、普遍的に通用する言葉など存在するはずがありません
    • その人物が「無敵の人」になってしまった過程を個別具体的に検証し、それぞれに合った手当てを施すことこそが必要
    • 「無敵の人」というキーワードだけ抽出して取り上げることは有害無益です
      →『無敵の人』概念破壊?
  • 著者なりの「無敵の人」に対処する方法
    • 「無敵の人」は、それだけでは無害な存在です
    • 罪を犯すことに心理的抵抗のないことと、実際に実行することには大きな隔たりがあります
    • 問題は、「無敵の人」の中に「埒外の民」が混じっていること
    • そうした社会とのつながりを持てなかった「浮遊霊」(埒外の民)は、何かのきっかけで他社に害をなす「生霊」になってしまう
    • そうした人物への対処法は、「無敵の人」が抱く対人恐怖や対社会恐怖を除去し「無敵の人」がそうなってしまった原因を究明して本人に納得させ、自己物語を肯定的なものに再編集させた上で生き直しを図らせること
    • これは、「無敵の人」が抱えた茫漠たる怨念を除去し慰撫する作業です
    • もちろん、マニュアル的にどの「無敵の人」にも通用するような方法論など存在しません
    • 各個人に合わせた方法が必要です
  • 生ける屍(埒外の民/浮遊霊):自分の存在感が希薄なので、自分の感情や意志や希望を持てず、自分の人生に関心を持つことが出来ない人
    • 自立に必要な親の保護を受けられなかった
    • そのため対価のない義務感に追われ、疲れ果てている
    • つねに虚しさを抱え、心から喜んだり楽しんだり出来ない
    • 根拠のない自責の念や自罰感情を持つ
  • 社会とのつながりの完全喪失の危機を前にすると、人間は思考力がなくなります
    • するとそのタイミングでたまたま頭に浮かんだことを視野狭窄的に実行してしまうのです
    • 著者が殺人を冒さなかったのは、幸運だっただけ
  • 著者の罪を現在の日本の社会構造の中で位置づけてみたいと思います
  • 現在の日本が採用するネオリベ的な経済・社会政策は、すなわち強者への富の傾斜配分システムです
    • この政策は、同時に希望や意欲や知識や人間関係も強者に傾斜配分します
    • こうして物心両面における格差が拡大し、搾取されている状態の人間が急増します
    • 搾取されている人間は主観的に不幸になり、不満を持つ可能性があります
    • そして、その不満をシステムにぶつけてくる可能性があるのです
  • そこでシステムは、搾取されている人間の無害化を図ります
  • 無害化には三種類の方法があります
    • 1 客観的には搾取されているが、主観的には幸福な人間にする=オタク。パンとサーカスな生き方をしている人間全般も
    • 2 客観的に搾取されていて不満も持っているが、その不満をシステム以外の場所にぶつける人間=ネトウヨ。システム指定のゴミ捨て場にぶつけているだけであり、システムに悪影響がなければ対象は誰でもどの国でも良い
    • 3 客観的に搾取されていて不満も持っているが、ただひたすら自分を責める人間=「努力教信者」、すなわち潜在的な自殺志願者
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いじめの正体 現場から提起する真のいじめ対策 和田慎市

  • 高校の教頭経験者が書いた、いじめの実態といじめに対する政策の誤り、そして実際にいじめに対処した経験をまとめた本
  • いじめをコレステロールのように捉える筆者のたとえには賛否両論がありそうだが、いじめの曖昧さやいじめを根絶しようとする方針が生み出す軋轢の指摘など、有用な部分が多い本である
  • 「自分が嫌ならいじめ」という捉え方だと、被害妄想でもいじめになってしまう
  • 加害者を罰することも必要だが、加害者の保護者との間にいじめに対する認識の齟齬がある場合、トラブルになってしまう
    →【邪視】
  • 教師も全能ではない
  • 子供の自殺=いじめとは限らない。貧困や複合的理由、そもそも遺族が理由を探られたくない場合も多い
  • 第三者や分かりやすい結論を求めるメディアの認識と異なり、現実のいじめは、被害者が加害者を兼ねていたり誤解やすれちがいと凶悪犯罪が一緒に語られていたりと曖昧で複雑
    →いじめは、ラクルラール推奨の【使い魔】呪術

イスラームは特殊か 西アジアの宗教と政治の系譜 柴田大輔 中町信孝

  • 「イスラームは異質な他者であり、政教一致の特殊な社会」だとする西欧由来の捉え方を批判し、それとは異なる眼差しのあり方を追求している本
  • その試みはまだまだ途上だが、イスラーム支配下で他の宗教がどのような社会を築いていたのか・イスラームに受け継がれた西アジアの政教関係の伝統、そして「宗教」概念の見直しなどの着眼点は、重要だろう
  • ただ、肝心の政教一致については「古代ユダヤも祭政一致だった。分離していた部分や時代もあったようだし、エジプトの歴史だと扱いはまちまち」ぐらいしか情報はないのが残念
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依存メンタルを力に変えるレッスン バク@精神科医

  • 「適切な依存」を行うことで、深刻な依存症などを防ぐ心得を説いている本
  • そのノウハウは、ほぼ「複数の依存先を持つこと」ぐらいでしかないが、
    • 脳内物質など医学的な解説もきちんとあって、その効力はしっかり保証されている
      →外力
  • また、他人からの依存を防ぐための心得もちゃんと記載されているのが、良い
  • 依存の原因は、手軽に大量のドーパミンを得られるから
  • 同時にドーパミンは、生命が生き残るうえでどうしても外せない作用のひとつである「敵を倒す」という感情の大きく関わる
    • 「自分が傷つけられた」と感じるとドーパミンが分泌され、
    • それに加えて、怒りを相手にぶつけたり、指摘したりして相手の行動が自分の好ましい方向に変化すると「相手が過ちを認めて行動を改善した」と感じて、更にドーパミンが出る
      • 人間は、これらの反応を「達成感」として認識する
  • 他人が原因で怒ることは、さまざまな面であなたにとって不利益です
    • 脳の中で何が起こっているかを知り、ムダな怒りを手放す練習をしましょう
  • 怒りや復讐心を持ち続けるストレスは、自分の体にも悪影響を及ぼします
    →百億の怒り
  • 人生という登山を歩き続けるために、道中で使う杖(=いい依存)を自分で選んで考える必要があると思います
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いつか別れる。でもそれは今日ではない F

  • Twitterで有名になった人(@No_001_Bxtxh)の持論がつづられた恋愛系エッセイ
  • 高校最後の授業、現国の先生の言葉「私の授業も私のこともすべて忘れてくれて結構なのですが」
    • 「死にたくなったら、とりあえず寝なさい。眠れなければ散歩して、夜明けを見に行きなさい」
  • 先輩の台詞「死にそうなほど退屈したら、カメラを持って、街を歩け」
    • 外の世界に対する感度を、意識的にでもいいから自力で引き上げて完成を守るべきだと教えてくれた
    • 自分の周りに起こる全部をできるだけ逃したくないと五感をフル稼働させることなんて、確かにカメラを持って歩くときくらいしかない
      →外部からエネルギーをもらう方法論
      電子化◯

「いつでも転職できる」を武器にする 松本利明

  • 著者が、ホリエモンやキングコングの西野亮廣を尊敬している以外は、わりと使えそうな転職ノウハウ本
  • 過去・現在・未来の三点で、自分が対象企業に提供できる価値の根拠を語るストーリーを作るやり方は、就職サポート組織が実際に用いているものと同じなのでそれなりに信用できると思う
    →『呪文』?
  • ただ、転職用としては、関係者のコネの重要性の記述やスキルや人生目標の深掘りサポートがあるリチャード・ボウルズの『あなたのパラシュートは何色?』など、他にもっと良い情報源がありそう
    電子化○ kindleunlimitedで0円

居場所がほしい 不登校生だったボクの今 浅見直輝

  • 自分が不登校から復帰した経験や、不登校になった友人に電話して助けることが出来た経験から、不登校生やその親を助ける活動をするようになった男性の手記
  • 各国の若者が集まる「One Young World」で「困難やつらさは世界中にあるけれど、それが人と人を繋げてもいくし、勇気や元気にも、そして次の一歩になっていく!」と実感した
    • 「つらさ」の中身や、それが生じる背景は違うけれど、「つらさ」は誰もがもっている世界共通の感情なのです
      →共感
  • 頭ごなしに説教したり学校へ行くことだけを話題にすると、不登校生の心を閉ざしてしまう
    • 心を開くのは、生徒自身が興味を持っている分野に一緒になって興味をいだいて話しかけたとき
  • 子どもは「伝えたい」親は「わかってあげたい」と思っているけど、コミュニケーションが上手くいかなくて、親子で一緒に落ち込んでしまうことも多い

居場所の社会学 生きづらさを超えて 阿部真大

  • 居場所作り3つのアプローチ
  • 1 周囲とのコンフリクトの解決で居場所作り:自分を出すが、しっかり相手の話を聞いて落とし所も見つける
  • 2 孤独感を感じない働き方をする:バイク便などの1人で出来る仕事で、なるべく他人と関わらない
  • 3 複数の命綱:家族・友人など複数のつながりで、居場所を作る
  • 過剰適応はよくない。無理をしても、いつか反動が来る
  • 誰かと一緒にいるからといって、居場所があるわけではない
  • 自分だけですることがあるなど「理由がある一人」は、負の属性を帯びない

移民が紡ぐ日本 交錯する文化のはざまで 編:河原典史・木下昭

  • 「日本から海外への」移民をめぐる文化的影響についての研究をまとめた本
  • 日系移民を研究する立命館大学の「日系文化研究会」をルーツに持つ歴史学や地理学中心「立命館大学国際言語文化研究所」と文化中心の「マイグレーション研究会」の二つの研究会が、協力して出した論文集
  • わりと「自分の研究は重要だから、これからもっと支援されるべき」で終わっている性が多く、内容浅めだが、独特で多様な内容が面白い
    • 日本人がアメリカでブラウンマンと呼ばれていた理由、日系人強制収容所、海を渡った日本庭園から、アメリカの在日コリアン組織の立ち上げや、韓国に取り入れられオリジナルの芸術となったいけ花「コッコジ」の話もある
  • 特に、多人種・他宗教交流の橋渡しをしたり、現地の文化に合わせて盆踊りを改造し、新しい意味を付与した洗心寺の話が良い
    • アフリカ系と韓国系の対立を背景に、1992年4月に発生した暴動
    • 洗心寺にも暴徒が火をつけようとしたが、近所のアフリカ系女性たちがたしなめ、事なきを得たという
    • 寺に日系人だけでなくさまざまな非白人の人々が出入りしていたことが、寺の近隣からの孤立を防ぐことに役立った
    • 暴動の後、寺はより一層近隣住民とのつながりを強化し、毎年彼らを盆踊りなどの行事に招待するようになった
    • 同時多発テロ発生時に、寺の開教師がイスラム教徒の子どもたちを心配したことをきっかけに、イスラム教徒コミュニティとの交流を深めたりもしている
    • フュージョンではなく対話する音楽の盆踊り
    • 日系とメキシコ系の音楽を交互に演奏
    • センターステージでも三種の踊りをそれぞれの指導者が踊り、人びとはそれを観てマネながら、一緒に輪になって踊る
    • 洗心寺の日本人/日系人性(ジャパニーズネスは、厳しい差別や強制収容を体験するなかで、日系人がアメリカの主流文化から見た異教性を抑えるためにキリスト教化/アメリカ化された行事を、ふたたび仏教式にすることでエスニシティを強調するものであった
      • しかしそれは、日本人との血の繋がりや精神的均一性を前提とした、民族的ナショナリズムに基づいたものではない
      • 洗心寺の開教師小谷政雄「私たちは日本の日本人とも違うし、アメリカ人らしいアメリカ人でもなく、その両方の良いところを併せた存在でもない」
      • そこには、独自に宗教性を追及する面と同時に政治性も垣間見える
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移民棄民遺民 安田峰俊

  • 『境界の民 難民、遺民、抵抗者、国と国の境界線に立つ人々』を加筆修正のうえ、文庫化したノンフィクション
  • 普通の女子高生にしか見えなかったり過剰に日本に同化しようとするあまり「在日特権」に反対する「ネット右翼」となったベトナム難民、日本人が喜ぶように「愚かで遅れた」姿を日本メディアに演出されていないナマの中国人、服装を否定されて日本での就職をあきらめざるを得なかった若者など「かわいそう」だけでない彼女たちの実態をしっかりと取材している
  • 日本国内で生まれ育ったマイノリティたちは、一般の日本人から常に「あなたは何者か」「なぜここにいるのか」を常に問われ続ける人生を運命づけられている
  • テレビのドキュメンタリー番組やノンフィクション書籍では、しばしばマジョリティ(多数派)の視点からマイノリティ(少数派)を切り取っていく
    • そこでは、対象がいかに「特殊」で「大変」で「弱く」て「かわいそう」かを強調する手法が取られがちだ
    • 人が傷つくことを過剰に恐れれば報道は成り立たないが、読者や視聴者のステレオタイプな認識を再確認する(無難に制作する)ためだけに、答えの分かりきった質問を投げかけて当事者を傷つける行為は、はたして許されるのか
  • 日本でウイグルを支援した組織のメンバーは、大きく三つの「派」に分類できる
    • 「情念派」は、金と人脈と政治活動歴はあるが、右翼的で反知性主義者であり、ウイグル問題を日本のために利用しようとした
    • 「知識派」は、豊富な知識を持っていたが、変わり者で世知に長けないところがあり、さらに知識を誇るだけに「無知」を憎み、「自分の考えだけを正しいと思っている」「高飛車でわがまま」とみられがちだった 
  • そしてウイグル支援の新たな勢力として登場した「ネット派」は善人であったが、結果的に支援組織の独裁と私物化を助長してしまった
    • 彼らは元一般人のために語学力や人文系リテラシーを持っておらず、また人間関係やコネもなかったため、「助けるべきウイグル人」が身近にいた一人だけに絞られてしまったのだ
    • そのウイグル人は、守るべき「絶対的弱者」を体現する現人神として扱われ、その言動は、異論を差し挟めない神聖不可侵の権威を持つようになったのである
    • たとえ全体的な方向性が明らかに間違っていると感じても、個人の価値判断を棚上げして目の前の仕事に全力で取り組む
    • 一方、その仕事がもたらす社会的な影響に対して、当事者としての責任を負う意識はほとんど持たない
    • 「ネット派」の姿はさながら、日本で社会問題化している「ブラック企業」で働く社員たちによく似ていた
    • ある意味で、実に日本人らしく健気で誠実な(ただし「無責任な」)思考と行動様式を持つ人々だったのだ
  • 現代は、従来は「境界」の場所に置かれていた人々による、ルールの書き換え要求が強まる時代になった
    • そんな世界で、私たちが幸福な未来を生きるためには、身近な境界の民たちの存在を認識することが必要だ、と言っておきたい
    • 「親日」と「かわいそう」の視点だけで彼らを分かったような気にならず、彼らが本当に大事にしているものは何かをちゃんと理解することが、今後は従来以上に必要とされてくるはずだからだ
    • なぜなら、国家への尊重と自民族中心主義を混同してしまう危ない考え――すなわち「傲慢」な要素を持つナショナリズムの広がりを防ぐ処方箋は、日本国家の「エラー部分」に住んでいる人たちの存在をしっかりと知ることでこそ生まれてくるからだ
    • 琉球人やアイヌの例を挙げるまでもなく、現代の世界の「動揺」と同じ構図を持つ問題は、日本のなかにも数多く隠れている
    • 私たちが境界の民の存在を知ることは、そんな現在の日本で生きていくからこそ重要なのだ

癒やしと和解への旅 犯罪被害者と死刑囚の家族たち 坂上香

  • 「ジャーニー・オブ・ホープ」――殺人事件の被害者遺族と死刑囚の家族が、ともに旅をし、語り合い、みずからの体験を共有する旅について書かれたノンフィクション
  • 正確には「癒やしと和解の難しさ」としたほうが良いくらい、関係者の心の痛みに重点が置かれた内容となっている
  • ただ、性的虐待を含むひどい虐待やわかり合えない対立のことも書かれているので、人によっては読むのがきつい内容かもしれない
  • 「ジャーニー」の中にも、怒りに燃える被害者に唐突にゆるしの呼びかけをしたり、許したと語る人もそのために十年以上時間かかってたりと事情は単純ではない
  • 「犯罪を犯す人は、人生のある時点では皆被害者だった」
    • 言い換えると、被害者に対する社会的なサポートが行き届き、被害者が回復しやすい状況を整えることこそが、犯罪の防止につながるのだと思う
    • ただ印象論を語るだけではなく、具体的な調査が行われるべきだし、情報も(人権を十分に考慮した上で)積極的に公開されるべきだ
  • 死刑や犯罪の背後には、人種差別、貧困、それらからの薬物やアルコール依存による現実からの逃避の問題もあり、深刻
    • 笑いながら殺人の事を語る死刑囚ジョンも、実は、胎児性アルコール症候群(Fetal Alchol Syndrome,FAS)という先天性のアルコール障害を抱えていた
  • 死刑は、嫌なことや辛さをいっぺんに吹き飛ばすことが出来るような、魔法の杖ではない
    • 死刑は、被害者の問題を何も解決できない
    • 遺族の多くは死刑の執行を見届けることで、事件に幕を下ろすことが出来ると信じている
    • でも、執行が終わったからといって、悲しみや苦悩が消え去るわけではない
    • いままで「犯人が死刑にされること」にしがみついて生きてきた人々は、急に生きる目的を失ってしまう
    • そして今度は、「もっと苦しめる方法があったはずだ」と一種の幻想を抱くことになり、その幻想にしがみついて生きるしかなくなるのだ
  • 被害者が感情をぶつけることの出来る場や機会は、この社会に十分にあるといえるだろうか?
    • 「死刑はなくせない」と社会が主張するとき、私たちは被害者が癒やされるための支援を放棄し、被害者にかたくなに心を閉ざして生きることを、無意識に強要しているに過ぎないのではないだろうか
    • 被害者遺族は、ありのままの感情を否定せず、みずから感情をそのまま受け止め、そしてそれをまわりに受け止められて、はじめて先へ進むことが出来るようになるのだと思う
    • 社会は、被害者の声を固定観念的な「被害者」という枠に押し込めて見るべきではない
    • その(時間敵変化や環境の影響も含めた)多様さや幅を、そのまま、まず受け入れる努力こそが必要とされているのではないだろうか?
  • 「ジャーニー」を開催したMVFR(和解のための殺人被害者遺族の会」
    • 死刑囚の家族も被害者遺族と捉えており、被害者遺族と死刑囚の家族という、一般的な考え方では相容れない者同士が出会う場を提供した
    • 「被害者の権利」にも反対:社会を単純に、被害者と加害者、すなわち良いものと悪いものという二極構造におとしいれてしまう危険があるから
    • ただ、そのメンバーの許しに対するスタンスもさまざま
  • カリフォルニア州サンディエゴのドノバン刑務所・NGOアミティ(友愛)の試み:心理療法で「被害者」であったことを受け入れ、それによってはじめて「加害者」としての自分と向き合えるようになっていく
  • 死刑をテーマにしたソシオドラマ(社会劇):サイコドラマ(心理劇)の一種。みずから参加する劇を通じて、人種的偏見などを解決しようとする集団心理療法
  • 感情のおもむくままに行動するとすれば、正義なんて成立しない
    • もし僕の行った殺人が倫理に欠けていると言うなら、そういう僕を殺し返すことは、僕の犯した過ちと変わらないのではないだろうか?
  • 長い時間をかけて問題と向き合う中、死者の声やお告げを効いて、恨むのをやめたという人々も
    →イマジナリーフレンド的な現象?
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インドネシアのムスリムファッション なぜイスラームの女性たちのヴェールはカラフルになったのか 野中葉

  • インドネシアにおける女性のヴェールとその周辺言説をまとめている本
  • 現地女性の多くの声に加え、ヴェール普及に大きな役割を果たした女性向けイスラーム短編小説が丸ごとひとつ収録されており、現地の実情がよく伝わってくる
  • 特にこの本では、女性たちが、自ら主体的に受け容れるものとしてのファッションや宗教的実践としての面が強く打ち出されており、
    • ヴェール着用のきっかけとして、個々の信仰に基づいた霊感(インスピレーション)である「ヒダーヤ」が挙げられたり、画一的ではない、個々人による多様な服装が写真付きで載せられている
  • また、(明言はされていないが)インドネシアでヴェールおよびイスラム教の熱心な信仰が広まった背景には、スハルト政権に対抗できる存在としてイスラーム教徒たちの運動が存在していたことや
    • 国際化とグローバリズムによって、インドネシア人が、もともと約9割がイスラム教徒であるという、自国のアイデンティティーをかえって意識するようになったことがあるようだ
  • イスラム教で女性が着用すべきものであるヴェールについては、実はコーラン(クルアーン)では詳細な記述がない
  • そのため、実践においては様々な解釈がなされてきた
  • さらに、インドネシアでは、伝統的に宗教権威は一枚岩ではなく、様々な主張が受け容れられる土壌があった
    • 現在の社会においても、特定の解釈に基づく「公定」のイスラームだけが「正しい」とされ、それに従うことを強要されたりような状況ではない
    • それが、ヴェールの多様な実践が行われたり、政府がムスリムファッションの経済的な効果に期待して後押しするような状況を生み出しているのだ
  • ヴェールの着用が主体的なものであることを示す例としては、女性たちによるヴェールの名称の呼び替えがある
    • 必ずしもイスラーム的な意味を持たないクルドゥンから、イスラーム信仰とのつながりを強調する「ジルバブ」へ
    • そして、現代的なおしゃれと信仰の両立を示し、穏健でオープンなイスラームのイメージを付与して「ヒジャーブ」へと、女性たちは自らヴェールの位置づけを変えていったのだ
      →『呪文』
  • ほかに現代エジプトのヴェールについての書籍としては、後藤絵美『神のためにまとうヴェール』
  • 中等などのムスリム女性の実情と抑圧については、読売新聞中東特派員『ルポルタージュ イスラムに生まれて』などがある
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インナーマザーは支配する 侵入する「お母さん」は危ない 齋藤学

  • アダルトチルドレンについて心理学者が書いた本
  • 著者は、「こうするしかない」「これしかない」という教義(ドグマ)に支配され、選択ができない息苦しい人生を送っている人を助けようとしている
  • 定型的で理論の要素が強い内容ではあるが、問題をしっかり分析しているのは確か
  • インナーマザー(内なる母):実際の親とは少し違い、「世間様」といったほうが合っている。親はたいてい「世間様」にひれふしている
    • 親の恐怖や不安を取り入れてしまい、「世間様」にひれふすように生きてしまう子供がいる
    • その支配を筆者はカルト宗教にたとえ「親教」と呼んでいる
  • インナーチャイルド・ワーク:欲求不満のまま取り残されている子供の頃の自分を呼び出し、対話する方法
    • 心の傷が深くて大きい場合は、インナーチャイルドが強い復讐心や攻撃心をもたらす可能性もあるので、信頼のおける専門家の立ち会いが必要となる
  • 家系図づくり:ジェノグラムで家系に繰り返す問題のパターンを見つけ出すと、袋小路からの出口が見えてくる
  • 現実の親とインナーマザーを区別する必要もある
  • 自己肯定は、トレーニングで伸ばせる:セルフ・アファーメーション
    • 自分の全てに共感し、自分を受け入れる
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隠喩としての病い エイズとその隠喩 スーザン・ソンタグ

  • 神話と隠喩は、人を殺す
  • 病気の患者に押し付けられるメタファー(イメージ/スティグマ)と、その逆に、メタファーとして病気を用いることへの批判
  • 癌や結核についても触れており、この本のおかげで病気の扱いが改善されたらしい

右傾化に魅せられた人々 山本賢蔵

  • 2002年「ルペンショック」の頃のフランスの移民問題を取材したノンフィクション
  • 悪いところも含めて、移民と「国民」側の両方をしっかり描いているのが、特に良い
    • 独立国のように郊外の団地に閉じこもる移民たちの姿も、「向こう側」から見ると同じ事実でも全く違って見える
    • グローバリズムによる変化と「異国」での暮らし、「差別が禁じられている」はずなのに現実に感じられる差別への苛立ち、そして就職できず不安定な生活への不安・・・
    • 真逆のはずの国民戦線側と移民側の両者が、双子のように良く似ている点があることが見えてくるのだ
  • フランスの過去は、日本の未来、いや現在の姿なのかもしれない…

右脳思考 内田和成

  • 論理(左脳)的なロジカルシンキングの限界を、右脳による直観と勘で打ち破ろうと主張している本
    →左右の義手が、お互いを補い合うシナモリアキラ?相互参照姉妹?
  • 内容は言ってみれば当たり前のことばかり
  • だが、そんな中にも、「反対理由の裏に感情的な理由があるかもしれない」など、改めてチェックしておくべき点もそれなりにあることは間違いないであろう
    電子化◯

海と生きる作法 漁師から学ぶ災害観 川島秀一

  • 東北地方の三陸沿岸は、東日本大震災で大きな被害を受けた
  • これは、その復活を「海とともに生きる」三陸の文化の面から考えている、民俗学系の考察書である
  • 当然、その内容は民俗学の門外漢には分かりにくいところもあるが、
    • 津波関連の伝承や、海に関わる文化・習俗の多文化との比較や類似点の指摘など、
    • 三陸の海の民たちを理解するためには欠かせないであろう多くのエピソードが記述されていて、面白い
  • これを読めば、ゼネコン同様に現地の生活感覚や歴史認識を無視した「復興」を行おうとすることが、
    • どれだけ無意味なことなのかを、良く理解することが出来るだろう
  • 海と生きる「漁師の知恵」
    • 海という自然を信じ、自らの内なる自然の声にも耳を傾け、それを全体として捉える生き方が、
    • ときに海難や災害にめぐりあったとしても、いつかは大漁の喜びに恵まれ、そこに生きる意味を見出しているのである
  • 水死体を「シビ」や「エビス」と呼んで、漁の成功の約束を代弁してから引き上げる風習
    →死者の代弁
    • また、沖縄県の池間島ではそのような漂流遺体をムラの神=サトゥガン(里神)として祀る
    • これは、中国の神フナクスヌカン(船越の神・文化伝来の神)と同じく、祟らないように鎮める神であり、
    • 荒神・異人=海上・漁業・商業などの守護神である
    • 三宅島では、水死体を「ムエン様」とも言う
      →異獣?シナモリアキラ的?
  • 巫女に憑いて不漁の原因を託宣する海の神、龍神
    • 海に金物を落とすと龍神に嫌われるので、落とした金物を絵馬に描いて「奉納した」ことにして祟りを避ける
      →『呪文』的過去改変
  • むしろ、巫女と漁師とは、相互に現世とは別な他界の情報を与え合っており、
    • 漁師も、沖の海という他界で遭遇した不思議な体験を巫女に占ってもらうことで、
    • 双方から独自な世界観を創ってきたものと思われる
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裏切力 ガブリエッラ・トゥルナトゥーリ

  • 裏切りについて小説などの事例を引いて考察しているエッセイ集
    • 引用されている作品の中には、和訳されていないものも多いのがちょっと殘念
  • 「裏切りには信頼が必要」
  • 「知り合いの知らない一面や秘密の暴露も、裏切りとして認識される」
  • といった、「裏切り」という現象の分析が深い
  • その他の要約/引用
  • 「(結束を前提としている)仲間や共同体自体の中に裏切りの要因がすでに含まれている」
  • 「互いへの無知が誤解や取り違えを生じさせ、裏切りとして認知される」
  • 「裏切りには認識が必要。裏切りを認め、呼び起こすことが出来るのは裏切られる人と裏切る人だけ」
  • 「わたしたち」の外へ出ること、グループの秘密を暴露することも、関係を否認する破壊行為であり裏切り
  • 新しい所属集団への中性を示すために、秘密の暴露を要求されることも
  • 現代的な裏切り行為「プライバシーの侵害」
  • ペテロの裏切り、イエスを知らないと三度の否認
    • 一時的に「わたしたち」という集合主体の外に身を置く、帰属関係から離れた
    • 人間は複雑であり、つねに裏切られる可能性と裏切り者になる可能性がある
    • 他者と出会って自分がどのように変わるか、他者と共に何を作り出していくかは誰にも分からない
      →『使い魔』
  • 「あらゆるコミュニケーションには、解釈が無限であるというあいまいさがあり、それは裏切りの可能性でもある」
  • 「相手の言動を裏切りだと認識することにより、それまでの互いの関係すべてを裏切りという観点から書き直し、語りなおすことになる」
    →『呪文』
  • 「裏切りは人間関係や集団の存続をおびやかし、人に対する信頼と自分自身に対する信頼を同時におびやかすことにより、
    アイデンティティの危機をもたらすトラウマ経験」
  • 「良い生まれ、高い地位と良い育ちが保証する貴人の『誠実』が、社会秩序を維持するために必要とされた主情主義の時代から法を重視する法治の時代に変わり、『裏切り』の位置づけも変化した」
    • 「近代以前の世界では、裏切りは道徳基準に対する違反であり、行動規範や儀礼に対する違反だったが、近代では裏切りは個人的な人間関係におけるルール違反となり、良心の問題になった」
  • 「ユダの裏切りの動機よりむしろその性質について調べるべき」
    • 「彼が属していた共同体のどんな契約や暗黙のルールを破ったのか」
    • 「ユダは新秩序の樹立、新しい王の誕生という秘密を明かしてしまった」
    • 「ユダは心の底からイエスを信じ、彼を真の救世主だと確信していたからこそ、裏切り行為へと導かれた」
    • 「ユダは、司祭たちにイエスの危険性の情報を渡してしまった」
      ユディーア
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〈裏〉日本音楽史 異形の近代 齋藤桂

  • 近代日本の音楽史にまつわる奇妙な考えや出来事をまとめた本
    • それは街の裏通りのように、街を知るためには触れることが不可欠なものである
  • 人が論理では割り切れないものを抱えているように、音楽は非合理なものを引き寄せる力を持っている
  • 不謹慎だから地震の原因とまで言われた流行歌、機械が弾いてもピアノのタッチは変わらないという「ピアニスト不要論」、トゥラン運動・ムー大陸や大東亜共栄圏、外部のまなざしに翻弄された手毬唄(わりと歴史浅い)など、けっこうアと関係ある話題が多い
  • 姥捨ての話である『楢山節考』だが、その作者の深沢七郎は、指摘されるまでそれを残酷だと考えたことはなかった

運は操れる メンタリストDaiGo

  • (数学的な確率はまだしも)世間一般で言う「運」なら、考え方次第で操ることが出来るとするセルフヘルプ系の本
  • 書いてあるのは、運に対する思い込みを正すべきということと、成功するための心得というビジネス書によくある内容ではあるが、
    • 自分の運の悪さを信じ込んでい落ち込んでいる人間には、適しているかもしれない
    • もちろん、それはその人物が、「運の悪さ」というネガティブな思い込みや自己イメージより、
      • この本にある科学的研究や、著者の権威に裏付けされたハウツーを信じる場合に限るのだろうけれど
        →ゼオーティアによる未来を能動的に決定する行為としての占い、運命竜クルエクローキなど
  • 違う選択をゲーム化する
    • 自分で自分にルールを課すことで、自ずと動き出さざるを得ない状況を作った
    • 例:パーティでの会話が苦手でも、青い服の人を見かけたら必ず話しかけることにする
      →コルセスカの『浄界』
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AKB48とブラック企業 坂倉昇平

  • アイドル・AKB48グループ(以下48G)のオリジナルソングの歌詞とその背景を、日本の労働環境と照らし合わせ、
    • その両者への理解を深めようとしている新書(2014年刊行)
  • AKBか成立するまでの芸能の流れや、その時々の事情などをていねいに解説することで、AKBを知らない人にも分かりやすい本となっている
  • また、AKB正メンバーと研究生の関係を、正社員の組織でしかない労働組合と非正規雇用の関係になぞらえるなど、
    • 過酷な労働としてのアイドル業務だけでなく、日本の労働環境や労働史にもきっちり触れているのも良い
  • 著者は、複数の要因により、AKB48は、現代の「ワークソング」(労働歌)の見本市となっていると主張している
  • その歌詞というのが、総合プロデューサーである秋元康氏によるものであり、
    • それはその時々に発生している問題や、運営側がアイドルたちに期待する姿・あり方が込められたもの
    • そうした歌詞は、アイドルたちの不満や批判の代弁であると同時に、そうした想いを運営側に都合よく解釈し、
    • 「商品」としてアイドルのパフォーマンスに変えていくものでもあった
    • 著者はそれでもそこに、アイドルやファンの批判の声が団結することで、運営を変える可能性を見る
  • そしてそれは、日本企業、そして社会においても同様なのだという
    • 48Gが単にそこで「夢を見る」だけの場所ではなく、それぞれのアイドルの「夢を叶える」場所にならねばならないように、
    • 日本社会の「規制緩和」も、社外で通用するスキルを身につける職業訓練やセーフティーネットを用意し、
    • 「雇用の流動化」を単なるリストラ政策に終わらせないようにさせなければならない
    • 日本も、EU諸国のように会社側にルールを守らせ、命令を限定する改革がまず必要であり、
    • それには、(会社が可能な)命令が限定されるノンエリートの働き方の追求や、労働者が集団的に経営者に働きかける力を身につけることが必要である、というのだ
  • そして著者は、AKB48が社会に影響を与え返し、変えていくことにも期待している
    • 彼女たちが、競争をしないノンエリートとしての生き方を確立していくという、荒野にレールを敷くような在り方を魅せれば、
    • それは感動をもたらし、社会を変えていくであろう、と
    • そしてそれが叶うかどうかは、この本の影響力や、メンバー、そして彼女らを応援するファンのこれからにかかっているのだ、としているのだ
  • 抜粋・要約
  • 日本には、労働を正面から扱ったワークソングが欠乏していたが、
    • 気づけばその空席に座していたのが、労働そのものを積極的に見世物にしてしまった48Gであった
    • そして秋元康も、消費のニーズに特化したために、他の追随を許さない労働の歌を量産してきた
  • AKB48は、労働問題に対する現実の歯止めの欠如ゆえに生まれたが、
    • 彼女たちは、逆説的に最もリアルな労働の描写に肉薄し、一つの到達点を示してしまったのだ
  • 労働歌としての48Gソングの要因は三つのレイヤーに分かれる
    • 1、日本社会に対する特定の労働観を共有しているファンの欲望を想定した「居場所型」
      • 「自由」を求めた「管理」に対する「抵抗」
    • 2、48G自体が日本社会の労働の縮図となり、その物語を歌うことが日本社会の労働のメタファーとなった
       その中にも、対抗の契機は生まれた「自己言及型」
    • 3、日本社会の労働問題が広範に受け入れられるようになったことを背景に、より直接的に日本社会の労働歌となった歌もある「最大公約数型」
  • 「恋するフォーチュンクッキー」
    • ネットによってファン以外を広く巻き込む参加型ダンスという手法の媒介
  • 「理不尽ボール」
    • ネットの声、つまり消費者と労働者が手を組んで経営者に対抗するという、新しい社会運動のテストケース
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ADHDの正体 その診断は正しいのか 岡田尊司

  • ADHDと診断されるものの多くは、じつは誤診であるとする筆者の説と、より善い治療法について述べている本
  • 症例からADHD概念や現在の主流な治療法が確立されるまでの歴史まで、くわしくそして分かりやすく書かれているのが良いし、ちゃんと誤診かどうか判断する基準についての記載もある
  • 特に、治療のために主に必要な「愛着の改善」の責任や負担を、母親だけに押し付けようとしていないところが良い
    • 自分の親からも安定した愛着を与えられなかった母親や、わが子に共感的な関心や優しさをもてなかったり、発達の問題を抱えている親も存在するのだ
    • まず、親自身が安全基地となる存在に受け止めてもらったり、子育てに周囲のサポートを受ける必要があるのである
    • 子どもに敵意を抱くような親も、自分自身の親との関係を客観視出来るようになれば、それから自由になることも出来るという
      電子化○

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 原田実

  • 「創られた伝統」という【呪文】の正体を解説し、類似例を挙げている本

エスニックジョーク 自己を嗤い、他者を笑う クリスティ・デイビス

  • 世界で語り継がれてきたエスニックジョークを、様々な角度から分析した本
  • 自尊の裏返しである自嘲、アイデンティティ確立の手段、コミュニケーションの潤滑油、心の成熟度を測るものさしなども、多様な側面を伝えている
  • エスニックジョークは、民族集団の多様性を垣間見るチャンスを提供してくれると同時に、集団に付与されたステレオタイプなイメージでその集団や個人を判断することの危険性も教える
    • ステレオタイプ的に決めつけるエスニックジョークをたくさん耳にしたりすると、人はそのような見方に対してかえって懐疑的になることがあるもので、そこからステレオタイプを再考するきっかけが生まれる
  • エスニックジョークは、社会のなかで起きていることを測り、記録し、かつ世に知らしめる「社会の温度計(social thermometer)である
    • 人間の行動を規制・形成する「社会の温度調節器」的な力は、エスニックジョークにはない=温度計を砕いても高い気温は下がらない

エリクソンの人生 アイデンティティの探求者 L、J、フリードマン

  • 自らに「自分の息子」=エリク・ソンという姓を命名し、自分自身の父となった精神分析家の伝記
  • 『アイエンティティ』の概念を提唱した学者自身、父親が不明で自分のアイデンティティに悩む存在であった
  • 研究書であり、小説のように読んで面白い本ではないが、彼について詳しく知りたいなら必読
  • 存在が隠された彼のダウン症の息子、ニール・エリクソンと代表作『子ども期と社会』への関わりも少し書いてあるので、昔のダウン症児童の扱われ方の資料として使えなくもないだろう
    →クレイ

応援の人類学 編著:丹羽典生

  • 「応援」について、文化人類学を中心に研究している論考集
  • 大学応援団の女子部門の役割変化、参加型スポーツイベント、プロ野球の私設応援団からの暴力団排除など多くのことを扱い、
    • 主に、時系列ごとの変化などを中心にまとめられている
  • フーリガンの正体などまだ途上の研究もあるが、バラエティ豊かな内容であり、応援に少しでも興味があれば楽しめそう
  • 特にア関連では、ヲタ芸がアイドル親衛隊からいかに生まれてきたかの系譜や、
    • 歌舞伎の掛け声の源流が、静岡などの「花祭」のような民俗芸能にあるという話などが出てくる
      • 花祭の神楽は、土地の「精霊が神に屈服を誓う形」であり、
      • そこでは、定型的な褒め言葉をかける役割である神楽を「見せようとしている見物」と、悪態をつく役割の「勝手に割り込んでくる見物」の二種類の観客が存在する
      • 折口信夫の説によれば、前者の正体は「神々に屈服した精霊」を演じる人々であり、それに対し後者は「招かられざる反抗的な精霊」を演じている(折口信夫全集第十八巻およびノート編第五巻)
      • こうした「悪態祭り」では、後者を言い負かすと厄災の除去や五穀豊穣などの祈願が実現し、
      • 逆に敗北してしまうと、相手の厄災などを引き受けなければならない
    • 神楽は神の芸で、逆らうのは「もどき」であるが、
      • 結局は、そうした悪態をついて上演の邪魔をする精霊も神々に敗れ、服従してほめ言葉をたてまつるのが通常の祭りの流れとなっているようだ
      • あるいはこうした伝統からすると、上演内容にあらかじめニコニコのコメントの存在を組み込んでいる「超歌舞伎」や応援上映なども、それほど異質な試みではないのかもしれない
  • キリバス人とバナバ人、文化ほぼ同じ
    • バナバ人の苦難を訴える創作歴史歌劇と、キリバス人の平穏な日常風景としての踊り
    • 観衆に共感経由の内省を迫るものと、踊り手を中心に応援者が一体化するもの
  • キリバス人
    • キリスト教文化だが、悪魔と呼ばれる精霊に踊り手が取り憑かれる忘我状態に陥る
    • その興奮は他の踊り手から観客に伝染し、人々全体が相互浸透的な感情的共振の渦に巻き込まれていく
  • また、共感をもって観客を内省に導く、バナバ人の歴史歌劇も興味深い文化である
    • バナバ人
    • イギリスによってキリバスから強制移住させられ、「民族自決」による独立を望んでいる
    • その目的のために結成されたのがバナバ舞踏団であり、
    • 彼らは独自の伝統文化と歴史経験を喧伝し、独立のための民族のオリジナリティを実証する存在である
    • その歌劇は、過去のバナバ人の悲劇的な歴史を表現するものであり、
    • バナバ人が抱える憐憫を観衆に伝染させ、同情(compassion)によって支援や補償を促す目的がある
    • また、歌劇団は、二次大戦中の日本軍による虐殺の様子などを演じた歌劇を日本で上演したこともあり、
      • その上演は、言葉が通じない日本の観客にも、共感と哀しみの伝播をもって迎えられたという
    • そして同時に、その歴史歌劇は、「バナバ人の若者」に民族的アイデンティティを形成させるものであり、
      • 親しい他者(キリバス人)との差異の主張をともなった、集団的自己の内閉化をうながすものでもある
        →『使い魔』系『呪文』
    • キリバス語で表される感情は、自己の個体性を超えて他者の身体に直接乗り移るもの
      →サピア=ウォーフの仮説系の『呪文』
  • 「感情的接合」=感情の集合的な高揚や熱狂、一体感
    • 階層文化や役割分業が進んだ社会に帰属する人々が、感情の高揚をともない儀礼的な場の中で未分化状態に戻る
    • ちょうど、体細胞が幹細胞に戻るように
      →トライデント?
    • 社会学では、「秩序の崩壊」と「統合の萌芽」両方に結び付けられる
      • デュルケーム「集合的沸騰」:「統合の萌芽」としての概念の例
      • スポーツ応援の感情的な共振は、集団を一つにする
      • ただしそれは、暴動や無秩序と紙一重である
        →四章ラフディボール編
  • 応援団員とチアリーダーの演技は、興奮した集団を制御している
    • 学ランで大声と形式的な動きの反復で観客を威圧したり、笑顔でリズミカルに踊ったりと、
    • 双方とも、潜在的暴力性を抑制し秩序を維持するために、きわめて合理的な手段を用いている
      →身体言語呪文
  • チアリーダーを、男性的な領域に参入していった存在として捉え直す論考
    • やがて、女性部員たちが、主導的役割であるリーダー部の領域を担うようにもなっていき、
      • 自らを男性とみなす様子が見て取れるようにもなったという
    • チアリーダーは、既存の役割を強化する一面を持ちながらも、既存の性役割を交渉するという別の側面も持ち合わせているのだ
      →ジェンダーに干渉して能動的に変化させた例
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横幹〈知の統合〉シリーズ 横幹〈知の統合〉シリーズ編集委員会・編

  • 通常の学問のくくりを超えた、いわゆる学際的な活動によって、人間・社会の課題を解決しようというシリーズ
  • 専門的な部分もあるが、ページ数が少なめで読みやすい
  • 科学技術を寄せ集めても、課題の本質的な解決には至らない
  • 多様な諸問題の根底にあるものを見据えるための科学、細分化された知を統合する新しい知、すなわち「統合知」が必要
  • それとともに「知を利用するための知」の確立と整備も併せて志向することが重要
    →サイバーカラテ?デルゴの書架のインターフェイスであるミラ?
  • 『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係』:カワイイのこれまでと日本独自の価値としての可能性、工学的な観測方法の模索、女児向けアーケードゲームの「なりたい自分になれる」VRな特性など
    • 「カワイイ」は「かわいそう、不憫」といったネガティブな意味とポジティブな意味の両方を持つ
    • その核となるのは、興福寺阿修羅像のような「仏に敵対する相手の心に寄り添い、その悲しみを共有する美学」ではないか?
    • 同じく興福寺四天王像に踏みつけられている邪鬼たちも「カワイイ」し、彼らへの共感を語るブログも多い
    • 醜さや悪――いわば「異質性」や「対抗性」をも愛しさの中に包み込もうとする感覚は、日本というローカリティの基層を貫く感覚と言ってよいだろう
    • 「カワイイ」という価値は、むしろ、未熟さや稚拙さをいとおしみ、醜さや敵対性をも包摂しようとする心構えの中にあるのであり、クールジャパンとは対極にあるもの
    • 「カワイイ」とは、それ自体で自律的に存在するのではない
    • 「カワイイ」が「クール」だとするなら、それはマクルーハンが語るような「クール」であり、人々がそこに主体的に関わり、コミットし、自己を投企することで、初めて生成する価値である
    • 出口弘「日常性の再構築のメディアとしての日本型コンテンツ」
      • 神々の物語に代わる物語を、我々自身が作り出すようにならなければ、「正義」や「悪」の物語からは自由になれない
      • 「正義」という判別の軸の中で、物語の包摂と過剰包摂あるいは排除が定まる世界では、「カワイイ」もまた相対性を失い、明確な権威の輪郭をまとわざるを得ない
      • だが、「日常系」は、トップダウン型で善悪二元論の「大きな正義」から、人々を自由にする
      • 名言「かわいいは正義(『苺ましまろ』)は、唯一の正義の概念をこなごなに粉砕し、それぞれの「カワイイ」が、それぞれの正義をもたらすのだと宣言したことになる
      • 「カワイイ」には、包摂も過剰包摂もなく、それぞれの「カワイイ」があるに過ぎないからである
      • 正義とは、その程度の概念にすぎないのだという相対化が、日常性のコンテクストの中で行われたのだ
      • 「日常系」は、それぞれの多様な日常・多様な価値を肯定し、その併存を可能とする
      • われわれの社会が根源的に変わり、人びとが自らの力で自らの物語を描き、既存の運命のフラグをへし折ることができるようになるためには、いま日本がたどりつつある日常性の物語の、地球規模での爆発が必要とされるのだ
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お金の不思議 貨幣の歴史学 編:国立歴史民俗博物館

  • 1997年に開催された第二四回歴博フォーラム「銭と日本人」における報告及び討論を中心に編集したもの
  • 決定的な結論のようなものは無いが、墓に納められるなど経済以外の目的で作られている貨幣があったり、死の表彰と関連していたり、境界を通り抜けて世界同士をつなぐマージナルな存在だったりと、
    • 貨幣の呪術的な側面などが、語られている
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お芝居から生まれた子どもシェルター 編集代表:坪井節子 編:東京弁護士会

  • 東京弁護士会が設立した特定非営利活動法人「カリヨン子どもセンター」と、子どもたちの権利侵害の現実と、それに対する支援の必要性を訴えるために上演された劇シリーズ『もがれた翼』の話
    • 劇を通して、子どもたちと大人たちが対等な立場で活動してきた
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「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か 久保(河合)南海子

  • 「推し」をめぐるさまざまな行動を例として、認知科学の新しい概念「プロジェクション」について解説している新書
  • また、腐女子など「推し」をめぐる「仮説/妄想」の形成過程が分かりやすく語られており、
    • 簡単な腐女子の解説としても、使いやすいマニュアルとなっている
  • また、モノマネ芸や『ルパン三世』の主演交代の話や、認知科学が人工知能の研究と「双子の学問」として扱われていることも書かれている
    • 知性に関わる情報処理について学際的なアプローチで研究する「認知科学」と、それを人工的に作ることでアプローチする「人工知能」研究は、表裏一体なのだ
  • プロジェクション:人間が作り出した意味、表彰を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の働きのこと
    • 鈴木宏明によって2015年に提唱された
  • 「推し」:とても好きで熱心に応援している対象
    • この世界のあらゆるもの全てが対象になる
    • 筆者自身も「プロジェクション」が今の推しである
    • ただのファンと違い、その対象をただ受け身的に愛好するだけでは飽き足らず、能動的になにか行動してしまう対象
    • 応援する、他の人にも勧める、グッズを集める、「推し」と同じものを身につける、「推し」をモチーフにしたネイルなどのおしゃれをする、聖地巡礼で「推し」作品の世界に浸るなど
    • 「推し」とは、自分だけでも対象だけでも成立しない、それらの「関係性」である
  • 腐女子の二次創作とは、解釈を介したコミュニティとしての共同行為でもある
    • 余白と解釈を楽しむコミュニティ
    • 余白に物語を見出した人が、二次創作をする
      →『使い魔』
    • 「身体性認知」(embodied cognition):人間の認知活動をこころと身体と環境とのダイナミックなやりとりとしてとらえる考え方のひとつ
      →『邪視』正確にはその「前身」や「基盤」の話?
      • 身体性認知の見地から行った応援についての研究
      • ペンライトを振って応援した対象が勝利すると、意識してなくても対象への好感度が上がる
      • ミラーニューロンの働き、応援している対象の成功が代理報酬に
      • 「推し」との一体感=「推しの沼」
      • 同様の循環の効果は、感想をSNSに書いたりグッズを集めたりする行為でも同じ
        →振る舞いの作用
  • ア関連では、特に二次創作と研究活動(学会)の類似性が提唱されていることが、興味深い
    • 個人の「仮説/妄想」だったアイディアが発表されることで多くの人に共有され、更に追加で複数の「仮説/妄想」を加えられてふくらんでいくその過程は、
    • まさに、神話の形成そのものであるようにも思える
  • また著者は、進化心理学者のロビン・ダンバーや『サピエンス全史』のユヴァル・ノラ・ハラリと絡めて、
    • (ドイツのホーレンシュタイン・シュターデル洞窟から出土した最古の彫刻)「ライオンマン」を、原初の「推し」行為であり宗教の萌芽、サピエンスの長所とされる「虚構を信じる能力」の象徴として取り上げている
      →獅子王?
      そもそもこの本自体、「推し」(キンプリ応援上映)によって救われたエピソードから始まるので、宗教はかなり近いところにあるのかもしれない
      →ゆらぎの神話
  • ただ、ダニエル・デネット『解明される意識』こそ出てくるが、あまり伝統的な哲学や思想の歴史などは出てこない
    • カントの「物自体」などの超越論哲学や吉本隆明の「共同幻想」、マルクス・ガブリエルの『世界はなぜ存在しないのか』などの思想、思考実験の「水槽の脳」といった既存の概念には一切触れていないのだ
    • とはいえ、そのおかげで説明される内容は一般的に分かりやすいものともなっており、かなり読みやすくなっている
  • その他のア関連要素の要約
    • 物語とは、不条理な出来事を受け入れるために、秩序を正しくしたい気持ちからできるのではないかという話も
      • 例:事故でなくなった子供の死を不条理な出来事で終わらせないために、新しい交通立法を訴える
    • わかちあう/分け与えることは、群れで生きる生き物である人間にとって、楽しみであり、
      • 大きな集団を形成・維持するには不可欠な、協力の原動力=互恵性
      • さまざまな「推し活」は、「分け与えたい」という人間が持っている本来の性質が「推し」に向けられているということ
    • 「世話をして育てる」というのは、それ自体が楽しみになる
      • 艦これやウマ娘、刀剣乱舞など、プレイヤーが手間や時間のかかる作業をして、対象を変化させていく
      • 制作者が用意した物語を単純になぞるだけでなく、プレイヤー自身の働きかけによって、自分の「推し」の物語が生まれる
        →『使い魔』系の『呪文』?
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オタクとは何か? 大泉実成

  • 自分を「非オタク」だと主張する筆者(ただし綾波レイのポエムを書いたことで有名)が、「オタク」と呼ばれた不快感をきっかけに、オタクについて実地調査したノンフィクション
  • オタクに彼女が出来る話とか、彼女との約束を振り切ってきたそのオタクとヲタ仲間でモンハンする話とか、普通に読み物として面白い
  • 「オタクは一枚岩ではない」
  • 元ネタがあるアイディアをパクリと自覚するか、天から降ってきた霊感と信じられるかが「本物のクリエイター」とパロディ世代の分かれ目
  • 十三年間の取材の結論「オタクは存在しない」=他の人間と本質的に違いがない
    • (真逆とされる)オタクとヤンキーは、本質的に同じである
    • 外面オタク内面美少女、女性オタクの内部にも男性性が見られ、反対の性を取り込む、自己実現の過程だと考えられる
    • ボクは、綾波に対してあらゆる偉大なものを投影していた
    • ヤンキーも、オタクと同じく無意識にアニマやアニムスの投影を行い、反対の性の性質を取り込む、きわめて優秀な存在
    • 強い男性を演じ男性らしいペルソナを保とうとすれば、内なるアニマを抑圧することになる
    • ヤンキーは内面を見ようとしないから、そのアニマを外部に投影するしか無い
    • 結果として、それはヤンキーに対して強力な支配力をもつようになる
  • 大塚英志と中森明夫の討論書物『Mの世代』にもある、「オタク内差別」
    • それでも、彼を守ると宮崎勤を庇護したことについては、評価したい
  • オタク差別の原因推測
    • 生身の人間以外に投影しているけど、オタクも他の人間と同じ
    • 幽霊に恋をしているようなところがあるから、おそらくそこが嫌悪の対象となる
    • 生身の人間にしか駆動してはならないという、縛りがある人にはキャラに萌えている人間は、ある種の禁忌を犯しているような不穏な対象となる
  • フェミニズムとかジェンダーという観点から萌え絵を問題視する人を見ていると、キャラに関する感受性はむしろ豊かなんじゃないかと思う
    • 萌キャラに「自分」というものを投影してしまう敏感さがある
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男おひとりさま道 上野千鶴子

  • 男性が一人で幸せに生き、一人幸せにで死ぬための本
  • 男性は老後について準備しない傾向にあるが、配偶者や友人との死別など「おひとりさま」には、誰もがなりうるのだ
  • ほぼサラリーマンの定年退職の話だが、データに基づいたしっかりした分析は、どんな人でも一定の参考にはなるだろう
  • 男性は男同士ではつるまない、ひとりひとり背を向けあって会話も少ない傾向がある
  • そんな男性が集団に溶け込むのは、女性ばかりの集団の中にひとりで参入するとき
    • ハーレム状況で、自分ひとりが「お山の大将」か「ペット」になれたら、関係は安定するようにみえる
      →アキラくん?
      • そんなふうにならないための指針・選択縁づきあい「男の七戒」もある
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大人の発達障害グレーゾーンの人たち 監修:林寧哲 OMgray事務局

  • 発達障害者とはいえないが健常でもない、その中間「グレーゾーン」の人が、より生きやすくなるための本
    →境界
  • 薄くてイラストや図解が多い本であり、すごく分かりやすい
  • 医師の意見書があればグレーゾーンでも支援を受けられることや、発達障害と重なる病気や障害の存在、当事者による「問題解決シェア会」があることなどの重要な情報がしっかり載っている
  • 加えて、発達障害「かもしれない」人に、職場の人や家族がどう対応すれば良いのかまでもカバーしているのが良い
    • 上司と部下がどちらも相手が「発達障害かもしれない」と相談しに来たが、実は話し合いが足りないだけだった例すら紹介されている
  • 社会の傾向が、グレーゾーンを生み出した面もあるのでは?
    • 現代は、ひとりの人に求めるスキルが多すぎるのではないでしょうか
    • 自分に足りない力があると思い詰めるのはやめましょう
    • 思い詰めるほど、そういう情報が気になり、自己否定しがちです
  • もう少し詳しい本として、姫野桂の新書『発達障害グレーゾーン』もある
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〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか 都留泰作

  • メアリー・ダグラス『汚穢論』(おわいろん)に依拠しているらしい本
  • 肝心の「世界観エンタメ」の定義があやふやだが、独特の視座が少し面白い
  • 作品をお金に換えられるものにするには、「送り手」の「私」を「(作品)世界」を媒介にして、他者の内的経験に接続していくこと
  • ホラー感覚とは、汚いもの・恐ろしいものを遠ざけている「境界」を感じる感覚
  • 人間は、無価値なもの、汚いもの、危険なものを「外部」へとシャットアウトし、自分たちの安心出来る領域「内側」を守ろうとする。
    • そういう認識が、人間が正気で世界と向き合うための基礎
    • その内外の区別は、文化人類学の重要なテーマでもある
      →共同体の境界、アキラくんのペット?異邦人(ゼノグラシア)の価値?

親と死別した子どもたちへ ネバーザ・セイム 悲嘆と向き合い新しい自分になる ドナ・シャーマン

  • 国際的に知られるグリーフケアの専門家がその洞察を記した著書であり、著者自身の死別と悲嘆についても語られている
  • 親の死に向き合い、回復をや早めるための行動が具体的に記されており、
    • 語りかけるような文体とチェックリストや問いかけのようなワークによって、読者の心の整理を助けようとしている
    • また、表現アートや一種の儀式など、モノを通じて感情を整理したり鎮める行動も載っている
    • しかし、悲しみで鬱状態にあるような人々が読むにはちょっと長すぎるし、学術的な傾向が強いのは欠点かもしれない
  • 類書に親の立場からの対処を説明するジョン・ジェームスほか著の『子どもの悲しみによりそう 喪失体験の適切なサポート法』もあり、
    • 「泣いてはいけない」「強くあれ」「悲しみを置き換える(喪失したら代わりのものを手に入れる)」「時間がすべてを癒す」などの神話をしっかり否定し、
    • すべての関係には独自性があるし、悲しみが必要だと訴えている
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