サルベージ5

Last-modified: 2020-04-06 (月) 22:48:48

geocities
ここがヘンだよハリーポッター日本語版



大好きだからもっと知りたい、知ってほしい---本当の「Harry Potter」を。
大好きだから、どうにかしたい---日本の「ハリー・ポッター」を。


ここは、ハリー・ポッター日本語版のさまざまな問題点(誤訳・珍訳・不適切な日本語・キャラクターの脚色等)を憂慮し、改善を申し入れるために問題点を集積している場(通称「まとめサイト」)への「入り口」サイトです。
 まとめサイトへ行く前に、こちらでこの動きの概要を知っておいていただけるように、と設置しました。

 どんな翻訳書にも誤訳、不適切訳があるのは当然で、パーフェクトはありえません。 1冊に数箇所なら許容範囲でしょう。そして、よほど重大な誤訳であるとか、全体が読みにくくなっているとかでないなら、とりたてて問題視することはないでしょう。

 ところが、ハリー・ポッター日本語版には、問題点があまりにも多いのです。一つ一つは小さなことに見え、重箱の隅つつきに思えるものもあるかもしれません。
 でも、それがあまりにも多くて、スムーズに読み進めなくなっているというのは、残念ながら許容範囲を超えていると言わざるをえないのです。

 私たちDAが望んでいるのは、翻訳者を誹謗することや、翻訳権をどうにかさせるなどといったことではありません。

 文学作品の翻訳家(通訳ではなく)をスタッフに加えた翻訳の見直しと、プロによる日本語の校正を加えた、全面改訂版を出していただきたいということなのです。

 年齢も性別も、住んでいる国もさまざまな私たちは、皆ただのポッタリアンです。このような要望を出すことで、金銭的な利益を受けることはありません。

 原作の持つ魅力-----世界中で大人読者をも魅了している緻密な構成、ふくらみのあるキャラクターたち、英国の香り…それらを日本語で読みたい。
 友人に胸を張って勧められ、子ども達に残せるハリー・ポッターが欲しい。願いはただそれだけなのです。


ある投稿より。

学生の頃、授業の一環で翻訳をしてみたことがある。
その時に先生が 力説していた。

「あきらかな誤訳や文法の間違いはもってのほかだが、
 何より大事なのは訳文が日本語として適切か、
 すんなりその世界に入っていける文章になっているか
 原文の雰囲気や世界観を壊したり、勝手な脚色をつけていないかだ」

since 2006.2.

last update;
2009.01.17

by DA
"dounikashitai army"

玄関サイト管理者 : lumos

当サイトとそのリンク先は、著作物の批評と研究を目的としているため、
内容には著作物からの引用と原書の試訳を含みます。
正当な引用における慣行に則り、著作物の引用元などは明記してあります。
小説ハリー・ポッターシリーズからの引用文と試訳のすべての著作権は
原作者のJ.K.ローリング氏に、同翻訳からの引用文の著作権は松岡佑子氏と静山社に帰属します。
なお、各引用部分には、基本的にUK版及び邦訳ハードカバーにおける
掲載ページノンブルを記載しています。
また試訳はあくまで一つの案にすぎないことをご了解下さい。


サイトができるに至った経緯

 思い起こせば、日本語版(邦訳と表記することもあります)1巻の発売当初から、翻訳に対する疑問あるいは不満の声はありました。誤訳、本の世界に入り込むのを邪魔してしまう奇妙に古臭い感覚の日本語、文法的な面での違和感など。
 原作が長くなるにつれ、スムーズに読みづらい日本語版は「つまらない、途中で飽きた」と投げ出す人も増え、それは作品(原作)が冗漫になっているせいなのだと思われもしました。

 疑問や不満の声は、巻を追うごとに高まっていたにもかかわらず、多くの人が「こうなったら、がんばって原書を読もう」という方向に流れたためか、きちんとした形で表に出ることは少なかったように思われます。
 ただし巨大掲示板ではハリー・ポッター珍訳スレッドが立っていたほどで、決して鎮静化していたわけではありませんでした。

 日本未発売の6巻を原書で読んだ人たちが集うスレッド(ハリポタネタバレスレ)でも、5巻までの誤訳珍訳についての書き込みは慢性的に続いている状況でしたが、そんな時、6巻のタイトルが「ハリー・ポッターと混血のプリンス」(原題:HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE )から「ハリー・ポッターと謎のプリンス」に変更になったとのニュースが飛び込んできました。
 「謎のプリンス!まるで幼児向けの漫画だ」という猛反発の意見が続出し、そのうちに「“俺様”をはじめ、訳語が幼稚。ストーリーは面白いのに、恥ずかしくて大人に勧められない」、「だから日本ではいつまでも子供向けの本扱いなんだ。原作は全く違う」、「日本語がおかしくて大人にも子供にも理解できない部分がたくさんある」、「日本語で、本物のハリポタが読みたい」という声が上がり、翻訳についての意見や疑問を扱う別スレッドが独立しました。

 そのスレッドが立ってみたら、出るわ出るわの誤訳珍訳の指摘。英語が堪能な人からの書き込みに対しては、それを読んで「そのシーンの意味を誤解していた」「そこの意味が初めてわかった、ありがとう!」と驚く日本語版読者の声も続出しました。

 高額な本を購入しても、文章が疑問だらけで、インターネットでやっと疑問が解決する。こんなことでいいはずがありません。ここは日本。日本語版できちんと読めるのが当然です。改訂版を出してほしい。原作から乖離した、脚色版ハリー・ポッターではなく、作者ローリングが作り上げている世界を、もっとリアルに感じたいのです。

 指摘がある程度まとまったら、出版元(静山社)にきちんと申し入れようじゃないか。英国の版元にも「日本のファンがこんな運動をしている」と伝えようじゃないか。そのためには、スレッドを書き込みを整理して、サイトに残そうじゃないか。「ロード・オブ・ザ・リング(原作:指輪物語)」の映画字幕だって、ファンの力で改訂されたんだ。ハリポタファンも頑張ろうよ!

 まとめサイトや、この玄関サイトを作っている個人が発起人なのではありません。大きな流れ、うねりが、これを作ったのです。

 ここを入り口とするサイトは、こんな経緯で生まれました。


「原書」って、どんな雰囲気?

*恐ろしくリアルな原書のハリポタ世界*

 時々、日本語版しか知らない方から「原書でもこうなんだと思ってました」という声を聞きます。変なしゃべり方をするキャラクター、古くさい言い回し…。

 でも、ローリング女史の描くハリポタ世界は、魔法というエキスを除けば、まるで現実のイギリス社会のようにリアルで、それが欧米での、多くの大人ファンをも含むハリポタ人気の基本にあります。
 ロンドンの街を歩けば、「マグルの自分には見えないけど、このへんにパブ漏れ鍋があるのかもしれないな」、スコットランドのハイランド地方を旅行すれば、「あの山かげにホグワーツが隠れてるのかもしれないな」……そんなことを思わされてしまうぐらい、ローリング女史の描く原書ハリー・ポッターはとてもリアルな世界なのです。

 そして、そこに出てくる登場人物たちも、現実の現代イギリスに住んでいるイギリス人たちとなんら変わりのないしゃべり方をしています。
 もちろん読者層に若い子供たちも多い小説ですし、原作者が言葉をとても大切にする方ですから、耳障りな流行語や、汚いののしり言葉などは使わないよう、細心の注意が払われています。長く読み継がれるべき文学作品としては当然の配慮でしょう。

 でも、それ以外は現実の現代イギリス人同様、普通の話し言葉による会話が交わされているのが原書版のハリー・ポッターです。
 現実のイギリス社会同様、それぞれの出身地や育ってきた環境などによって多少の訛りや方言が使われたり、使用する語彙が違ったり、というバリエーションは多少ありますが、それも現実にある訛りや表現方法となんら変わることはありません。
 ハリポタに出てくる登場人物のほとんど(!)誰もが、自分の周りに実際にいてもおかしくないような現実味のある人間たちなのです。もちろん「魔法」を使える、という要素は除いてですが(笑)。

 だから、登場人物たちが現実の人間たちのように生き生きと息づいている。
 それゆえに、読者たちはそういったリアルな登場人物の感じる喜びや怒り、悲しみ、葛藤などに自分の心を重ね合わせながら物語の世界に入ってゆくことができるのです。
 さらに、読者を物語の中にどんどん引き込み、また何度も何度も読み返したくなるほどの巧みなローリング女史の文章。これが英語圏の国で「ハリー・ポッターは単なるファンタジー小説ではない」と高い評価を得、多くの成人ファンたちに支持されている理由です。

 ところが、日本語版に出てくるキャラクターたちの話し方はどうでしょう。
 あなたの周りに、自分のことを真面目に「俺様」、「我輩」と呼ぶ人が一人でもいますか?
 「ざんす」「ざーます」などという言葉を使う女性に会ったことありますか?
 「驚き、桃の木」「おったまげー」などという言葉を普通の会話の中で使ってるティーンエイジャーの男の子を知っていますか?
 「おやおや」「後生だから」などという古めかしい言い方をする若い女の子が周りにいますか?

 そのように、現実ではありえないような話し方をする登場人物がいたるところに出てくる小説。そんな風に書かれた本を読みながら、あなたはその世界に入り込むことができますか?これが、原書と日本語版の大きな違いだと思うのです。

*原書は大人をも魅了する*

 ご存知のようにイギリスでは大人版ハリー・ポッターが通常版とは別の表紙で出版されていますが、これは出版社の「これは大人にも売れそうだ」という商魂から始まったわけではありません。

 原書出版社である英ブルームスベリー社は、はじめ「児童文学」のつもりでハリー・ポッターを出版しました。
 イギリスの家庭では夜、子供たちがベッドに入ると、お父さんやお母さんが本を読み聞かせたり、あるいは自分で本を読める年齢の子供なら、その子が音読するのを親が聞いてあげるのが習慣です。
 そうやって子供と一緒にハリー・ポッターの世界に出会った親たちが、自分の子供同様、人によっては子供以上にローリング女史の描く世界に夢中になりました。
 そんな親たちが、自分の同僚や友人といった他の大人たちに「この本、すごく面白いから読んでごらん」と薦めたことがきっかけで、イギリスでは大人たちの間でもハリー・ポッターは静かなブームを引き起こしました。

 一時は「通勤電車の中で児童書を読む大人たち」の様子が珍現象としてマスコミに何度もとりあげられたぐらい、成人層へのハリー・ポッター人気の浸透が急速に進み、そうした大人ファンたちから「いかにも児童書っぽい表紙の本を人前で広げるのはやはり恥ずかしい。表紙だけ大人向けデザインのを出してくれ」という要望がブルームスベリー社に多く寄せられたことから、イギリスでも前代未聞の通常版・大人版の二種類表紙発行(中身は全く同じ)が始まりました。出版社による販売促進方針ではなく、あくまでも「消費者主導」の動きだったのです。

 そして、そうした多くの大人ファンたちが、さまざまなファンサイトのフォーラムでいろいろ検証を繰り返しながら謎解きや登場人物分析を楽しんだり、知り合いの子供たちにハリー・ポッターを薦めたりする……。
 そんなことを繰り返しているのが、英語圏諸国でハリー・ポッターが根強い人気を保ち続けている大きな原因だと思います。
 イギリスでもアメリカでも親子2代、3代でハリポタ・ファンという人がたくさんいるのです。原書版のハリポタはそれほどに「大人にとっても充分読み応えある」作品なのです。

 でも、日本語版のハリー・ポッターを読んで「おっ、これはただの子供向け小説ではないな」と思う大人がどれだけいるでしょうか?
 周りの大人の人たちに、「自分はハリポタ・ファンなんだ」と恥ずかしがらず、胸をはって言える成人ファンはどれだけいるでしょうか?
 大人であるあなたは邦訳版ハリー・ポッターを人前で堂々と広げて読み、大人の友人に勧めることが出来ますか?
 もし「いや、うーん…」と思ってしまったなら、それはなぜなのでしょうか?

寄稿 : DAメンバー(イギリス在住)


あなたにできること、してほしいこと

●日本語版しか知らない方へ

 「私は英語が不得手だから、指摘なんてできない」ということはありません。むしろ逆なのです。「日本語版」は、日本語でしか読まない(読めない)人にとって、スムーズに読めるものでなくてはおかしいはずです。そのために日本語版が出版され、私たちはお金を払ってそれを買うのですから。

 ですから、日本語版のみの読者にお願いします。「物語の世界に素直に入っていける日本語で書かれているか」ということを考えながら、もう一度お手元の本を読み返してみてください。

 *スムーズに読めず、つかえてしまったところはありませんか?
 *情景がすっと頭に浮かんできますか?もしも、書かれている情景が想像できなかったとしたら、描写の訳が適切でないということが考えられます。
 *誰のセリフかわかりますか?セリフに違和感はありませんか?
 *原語でなんと書かれているか知らなくても、日本語としてヘンだなあと思ったところはありませんか?
 *舞台がつい最近、1990年代の英国であることが伝わってきますか?
 映画をご覧になったことがある方は、映画のイメージを忘れて、本だけでイメージを結んでみてくださいね。
 もしも疑問が湧いたら、ざっとまとめサイトをご覧の上、どうぞ投稿してください。新指摘かもしれません。

●英語ができる方へ

 原書と日本語版をぜひ読み比べてみてください。

 *誤訳ではないかと思うことはありませんか?
 *誤訳でないまでも、不適切な訳語だと感じたところはありませんか?
 *1990年代の英国を舞台とした原作の世界が、日本語でも表現されており、英国を知らない読者にイメージ豊かに伝わるだろうと感じましたか?
 もしも疑問が湧いたら、ざっとまとめサイトをご覧の上、どうぞ投稿してください。新指摘かもしれません。

●すべての方へ

 あなたが「ハリー・ポッター・シリーズ」のファンならば、「誰かがやるだろう」ではなく、少しでも動いてみてください。誰にでもできることがあります。

・静山社に手紙やメールを出しましょう
 あくまでも冷静に、丁寧に「日本語がわかりにくい」「こんな一人称はイメージが違う」など、思ったことを述べ、「原作と同じように、大人がのめりこみ、子供に長く伝えたいと感じるようなハリポタ」を、改訂版として世に出してくれるよう、要望しましょう。 

・ウェブ日記、ブログをお持ちの方は、話題のひとつとして、この件の感想、自分の意見を書いてみませんか。きっと「そういえば」「私も思ってた」という人が現れ、輪が広がっていくと思います。

ご紹介・リンク、転載について

●ご紹介してくださること、リンクについて

 ご紹介はありがたいのですが、闇雲に「このサイトを見て下さい」と紹介されることは、ご遠慮くださいますよう、お願いします。
 あなたの日記・ブログや、あなたがよく行く、雰囲気のわかった掲示板でのご紹介でしたら大歓迎です。
 でもマルチポストはネチケット違反ですし、場の雰囲気がわからないところへの書き込みは危険(一途に「日本語版は素晴らしい!」と主張する人もいるでしょうから)でもありますので、冷静なご判断をよろしくお願いいたします。

●転載について

 当「入り口サイト」及び「まとめサイト」からの内容の転載は、基本的にお断りいたします。
 ご用の節は「新まとめサイト」にBBSが設置してありますので、ご利用下さい。BBS管理人は「まとめ人」さんです。 

(nevi注:ここまで貼って転載お断りの文字を発見。この「まとめ人」さんには許可いただいているので、セフセフ?問題あったらこのページ『サルベージ5』は削除しますのでご連絡くださいm(_ _)m)


まとめサイトへの入り口 & 5分で知る、主な問題点

「まとめサイト」をすぐに読みたい方は、こちら → → → ◆

一体どんな問題点が指摘されているのか、とりあえず5分(ムリか?)で知りたい方はこちら。
代表的な問題をいくつかピックアップしましたので、見てみてください。↓↓↓

たとえばこんなこと、知ってますか?気になりませんか?

 「まとめサイト」に挙がった大量の指摘の、ほんの一部です

【1】誤訳・不適切な訳語

(例1)
邦訳:毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左(1巻16章P418)
原文:You will always find some on nettle wine's left side;(UK版 P206-207)
試訳:イラクサ酒の左にはいつも毒入り瓶がある(毒はいつもイラクサ酒の隣)

 スネイプが仕掛けた頭脳パズル。
イラクサ酒は2本、毒酒は3本。「毒瓶が常にイラクサ酒の左にある」ならイラクサ酒も3本なければいけない。
 必ずしも毒瓶の右にイラクサ酒がある必要はないということで 「イラクサ酒の左にはいつも毒入り瓶がある」が正しいと思われます。
 さらに原文は「rounded bottle 丸い瓶」なのに、邦版では「大きな」という形容詞を入れてしまっているため、その前のヒントにでてくる「巨人の瓶」と混乱します。
 ハーマイオニーが飲んだのは大きな瓶の薬ではなく、単なる丸い瓶の薬。 こうすると、パズルはきちんと解けます。
 「頭脳パズルとして成立していない。やっぱり子供向けの本にすぎない」という批判が昔からありましたが、これは訳によるもので、原文ではパズルは成立しているのです。
 また、これは誤訳ではないかという、公式サイトでのファンからの指摘は否定されました。なお、このパズルの解き方が載っている数学教授のサイトがあり、そこでも誤訳が指摘されています。

(例2)
邦訳:「消え去った巨人たちも呼び戻そう…」(4巻33章P449)
原文:"we will recall the banished giants..."(UK版 P564)
試訳:「追放された巨人たちも呼び戻そう…」

 ヴォルデモートの台詞。 banished 「追放された」と、vanish「消える」の初歩的な誤訳。
 他にも、初歩的な誤訳は散見されます。たとえば、camp out(仮住まいすること。この場合、意訳しても「転がり込む」が相応)を「キャンプした」とか、booming barks(犬が吠えているシーン)を「犬がブーンとうなるように吠え」。犬は「ブーン」とは、うなりも吠えもしません…。

(例3)
邦訳:妖精の魔法(ハードカバー1,2巻)、妖精の呪文(携帯版1,2巻)
原文:Charms
試訳:呪文学

 チャームは単なる「呪文」で、教科名としては「呪文学」が相応。小さな先生を訳者が妖精だと決めつけたのか、あるいはチャーム=魅力=妖精という連想なのか、いずれにしても全く意味不明の教科名になってしまいました。
 3巻からは「呪文学」に変更された(これはこれでまた読者は混乱した)が、携帯版の1・2では「妖精の呪文」という、また別の語に変更。妖精は全く関係ありません!

(例4)
邦訳:「オーケー、やめ!」「やめ!やめだよ!」「なかなかよかった」(5巻18章P620)
原文:"OK, Stop!" "Stop! STOP!" "That wasn't bad,"(UK版 P349)
試訳:「OK、ストップ!」「ストップ!ストップ!」「悪くなかったと思うよ」

 DAの練習シーン。この場の間中、ハリーの言葉使いが偉そうです。
 5巻のハリーは、感情の起伏が激しかったけれど、原作のこのシーンでは、皆を気遣いながら、優しく丁寧に、少しも偉ぶることなく、非常に謙虚な態度で指導しています。既巻の中で何度も示唆されていた、ハリーの生来の他人に対する優しさや謙虚さが、人を教える立場になって、まさに開花しているようでもあり、またハリーの精神的成長を示すとてもいいシーンでもあるのに残念です。
 言語的誤訳ではないけれど、イメージを改竄してるという点では、やはり大きな問題でしょう。

(例5)
姉妹問題
 ペチュニアとリリーはどちらが年上なのか、ころころ変わっています。

1巻。リリー妹、ペチュニア姉
3巻で突然リリー姉に変更
4巻ふくろう通信で訳者が「作者がリリー姉と言った」 と明記、以降はリリー姉で統一
7巻原書でリリー妹、ペチュニア姉と判明
中国では1巻~7巻すべてリリー妹で統一されている(訳者が作者に事前確認したのか?)

(例6)
godfatherの訳語問題
 確かに「名づけ親」という意味もありますが、この物語では「後見人」が適当と思われます。
 ハリーとシリウスの関係はまだしも、ルーピンが「(息子を)テッドと名づけた、君が名付け親になってくれるか」と言うシーンでは、既に命名されている子に名付け?と、ルーピンの錯乱を疑った人も多数いました。
 このように、適切な訳語を選ばず、ただ真っ先に浮かんだ語を安易に使っているように感じられます。

 

 その他、「彼」が誰を指しているのかを取り違えているような訳、誰に向かって話しているのかわからないシーン、誤訳とは言えないまでも、「ここは心情的に、こういう言葉・口調ではないはず」と引っかかる部分もたくさんあります。
 さらに、英国の生活を知っていればわかるはずの言葉をご存知ないことが、訳の端々から見て取れます。

【2】日本語自体に問題

(例1)
邦訳:「いまや、わしが『死喰い人』ではないと同じように、スネイプも『死喰い人』ではないぞ」 (4巻下P363)
原文:"He is now no more a Death Eater than I am."(UK版P513)
試訳:「わしが『死喰い人』でないと同じように、いまやスネイプも『死喰い人』ではないぞ」

 「いまや」の位置のために、校長は元死喰い人だと思った読者もいました。「いまや」の後ろに句読点があるので誤りではありませんが、わかりにくい文章です。このような、語順整理の不備による読みづらさは山ほど出てきます。

(例2)
邦訳:「目にこびりついて離れない」 2巻14章p.383
試訳:「目に焼きついて離れない」

 ハリーが、石にされたハーマイオニーを見た時。この場合、「頭にこびりついて離れない」か、「目に焼きついて離れない」 のいずれかであり、この表現は日本語として誤っています。
 このような「使い方を間違っている日本語」が多数でてきます。たとえば「猫なで声」「チンケ」「人っ子ひとりいない」「がっぽり」等は、誤った意味で使われています。読んでいて引っかかるだけでなく、子供が誤った用法を覚えてしまう恐れがあります。事実「ストーリーは面白いが、子どもには読ませたくない」という母親の意見も・・・。残念すぎます!

(例3)
邦訳:クモを探すことさえ簡単にはできなかったのだから、ましてや先生の目を盗んで、 女子トイレに潜り込むなど、特に、最初の犠牲者が出た場所の、 すぐ脇の女子トイレだし、とても無理だった。(16章P418)

原文:It had been hard enough trying to look for spiders. Escaping their teachers long enough to snake into a girls'bathroom, the girls' bathroom, moreover, right next to the scene of the first attack, was going to be almost impossible.(UK P210)

試訳:クモを探すことさえ容易ではなかったのだ。先生の目を盗んで女子トイレに ― それも 最初の犠牲者が出た場所のすぐ脇のトイレに ― に忍び込むなどということは ほとんど不可能に近いだろう。

 邦訳は二つの文を一つにした上、読点の使いすぎで、日本語の文としても著しく自然さに欠け、読みにくいものになっています。 試訳が完璧とは言いませんが、どちらが読みやすく、わかりやすいですか?

(例4)
邦訳:スネイプときたら、たった今、誰かが大ビーカーになみなみと「骨生え薬」を飲ませたばかりという顔をしていた。(13章P351)
原文:Snape looked as though someone had just fed him a large beaker of Skele-Gro.(US版P236)
試訳:スネイプは、大きなビーカー一杯の『骨生え薬』を誰かに飲まされたかのような顔をしていた。

 …ビーカー「に」飲ませてどうするんでしょう。こういうおかしな文が数多く出てきます。

 その他、「主語と述語がつながっていない」「文がつながっていない」「主語が2つある」「疑問形で始まって肯定形で終わっている」などが、多数指摘されています。
 「最後の2回」(最後は1回しかありません)とか「3番目の弟(3兄弟の末っ子を指して)」「半純血」など、ありえない日本語も数々。
 7巻では、「ヴォルデモートの名を口にすることが、自分の所在を知らせることになって危険」という設定があるにもかかわらず、heをヴォルの名前にして表記しているという大ミスもあります。1年もかけて(どの国よりも遅いのです)訳し、こんなにも内容を理解していないなんて、考えられません…。
 また、音読するとよくわかるのですが、原文はとてもリズムが良いのに、わが母国語の方は引っかかりつっかかりして疲れ、そのうちに意味すらつかめなくなってしまいます。
 スムーズに読み下せない日本語が多すぎて、途中で放り出してしまう読者が多くいます。また、情景をしっかり想像しながら読む習慣のある本好きの人には、それがうまくできなくて楽しめないと言われます。

【3】人称、語尾、口調の脚色
    ~原作とは違うキャラクターが“作られて”しまっている!

(例1)
 あまりにも巨大な問題点が、奇妙な一人称です。
 冷酷そのもののヴォルデモートの一人称は、なんと「俺様」です。現代日本で「俺様」を使うのは、幼児向けの漫画や戦隊物のコミカルな悪役だけであり、その一人称からゾッとするような静かな恐怖は、とても感じることができません。
 英国では、4巻最後の復活のシーンで、恐怖のあまり引いてしまった子供がたくさんいたそうですが、日本語版にそんな恐怖感があるでしょうか?
 そしてスネイプの一人称の「我輩」。これも現代日本ではギャグ的にしか使われません。最終巻まで謎を引きずる、最も深いキャラクターの一人が、このような不適切な一人称でしゃべっているのを読むのは、
読者として本当につらいことです。(そして最後のせりふが、さすがに「我輩を見ろ」にはできなくなり…)

(例2)
 リータの「ざんす」という語尾も、昭和40年代頃の漫画のようで違和感。
 さらにひどいのがルナの「~なんだぁ」「~だもン」。この口調から、ルーナは知的障がいでいじめを受けているのだと思っていた子供の読者が実際にいました。実際のルーナはユニークですが頭の切れる、かっこいい女の子です。
 俺様、我輩、ざんす…あなたの身近にこんな言葉使いの人がいますか?ハリポタは現代の話なのです。原作では皆(出身地方や階級による訛りを除いては)普通に話しています。

(例3)
 年齢や立場に不相応の口調や言葉づかいが多く、強い違和感があります。
 ティーンなのに「おやおや」5巻上16章P522)、「後生だから」(5巻下32章P490)と、老婆のような口調。
 かと思えば13歳にもなって「僕、見たよ。(略)僕、父さんだと思った。」(3巻P532)、「いっつもおんなじ帽子。たかーくて、てっぺんにハゲタカの剥製がついてるの。それに、ながーいドレス」」(3巻P178)と幼児口調になったり。7巻で18歳のハーマイオニーが「猿股」と叫んだのには、ひっくり返った読者も多いようです。
 シリウスが、恐れているはずもないヴォルデモートを「あの人」と呼び、ウィーズリー夫妻は妙に距離感のある会話をする…。枚挙に暇がありません。

(例4)
 映画のイメージはひとまず忘れて、日本語版に描かれたスネイプを思い出してみてください。このスネイプは、やたらと唇をめくりあげ、ヒョコヒョコ歩くのです。原書の、口をゆがめる冷笑と、音を立てずに歩くさまが、こんなにも変わっています。
 また、恰幅のよいはずのファッジは「チンケ」に、ルーピンのライトブラウンの髪は鳶色(赤みを帯びた濃茶)に、「ハート型の顔」と訳されたトンクスは漫画のベジータのイメージになってしまいました。
 セリフからのイメージのみならず、外見もこんなに違ってしまっているのです。
 読者は、描かれた文字だけから、色も形も何もかもを頭に思い描きながら物語を読み進み、その中に入っていきます。それが読書の楽しさです。外見の誤訳は、それを大きくねじまげてしまいます。

 このようなことが積み重なり、原作と日本語版とでキャラクター像が大きく違ってきています。

【4】長く読み継がれる本に使ってほしくない言葉
   ~流行語、汚い言葉

 超狂ってる プッツンキレた マジで チンケ メチャ~した 糞(クソ) ゲロ 胸糞が悪い ガキ ジャリ(子どものこと) おたんちん(この語は遊郭発祥で、短い男性器を馬鹿にしたものという説があります。いずれにせよ古臭い罵倒語です) 他多数

【5】死語寸前の流行語、不必要に時代がかった言葉
   ~しかもムードは一気に日本的

 俺様 我輩 驚き桃の木 おったまげー なーるへそ おっどろきー 奇妙キテレツ びっくり仰天 変てこ 金剛力 なきみそ ひょっとこ イカレポンチ 敷居をまたぐ がってん承知 うっちゃり 伏魔殿 庭番(庭師のこと。忍者にあらず) 翁 厨(くりや) 竈(かまど) 旅籠 手水場 下手人 文机(ふづくえ) おたんちん  他多数

 ちなみに「文机」の原語はwriting desk。文机(畳に置き、正座して使う低い机)ではボガートが入る場所はないでしょう。キッチンが厨、料理ストーヴが竈、トイレが手水場、江戸時代ですか…。何度も言いますが、舞台は1990年代の英国です。

【6】固有名詞のカタカナ表記がおかしく、しかも一貫性がない

 英語読みに統一もされていなければ、他の法則も見当たりません。外国語を正確にカタカナに写すことはできませんが、それにしても英国人の名をフランス風に読むなど、適当すぎます。

 また、同じ人・物などを指し示す固有名詞が、その時々、違ったカタカナ表記になっているケースもよくあり、読者を混乱させます。

【7】呪文の名称、呪文の言葉、薬の名称などが極端に幼稚

 「うっちゃりの呪い」「元気が出る呪文」「太らせ魔法」「扉よくっつけ」「ぺしゃんこ薬」「元気爆発薬」など、幼児向けの言葉が並びます。
 最近は小学校低学年の子供でも、ゲームなどでかなり難しい言葉に慣れていますし、難しいくらいの方が神秘的で憧れも持てると思うのですが。

 また、原文では呪文のあとに英訳はついていません。呪文は大半がラテン語由来であり、英語圏の読者にもストレートに理解できないものもありますが、ローリングは「英訳」はつけていません。
 日本語版ではいちいち「ステューピファイ! 麻痺せよ!」「レダクト! 粉々!」のように、あとに訳がついており、リズムを損なうこと甚だしいのです。せめてルビならよかったのですが。

 なんでもかんでも訳してしまうのも、幼稚で読みづらくなっていることの一因です。ハウスエルフ(屋敷しもべ妖精)、ゴブリン(小鬼)など、カタカナのままでじゅうぶんだと思いませんか。
 そのくせ、「蒲柳の質」等、非常に難解な単語を使ったり、「パロミノ」「アトリウム」といった、大半の人に馴染みが薄いであろう言葉がカタカナのまま使われています。

【8】物語に入り込むのを妨げる、過度のフォント遊びや飾り枠、イラスト

 原書では、「強調したい箇所はイタリックで、大きな音・声を表わすためには大文字を使用」という、英文筆記のごく通常の習慣を踏襲しているだけ(作者の独創ではない)で、日本語版のようにいろいろな種類のフォントを使ったり、大文字や太字を使ったり、といった技法は一切使われていません。他の普通の小説となんら変わらない書き方がされています。

 またイギリス版には手紙や告知を表す飾り枠、イラスト等も一切ありません。日本語版の墓のイラストにいたっては、カマボコ墓とじゃがバタ墓など、皮肉たっぷりに笑いものになっていますし、特異な風貌に描かれたルーナは、語調の訳がおかしいこともあって、知的障がいだと勘違いした人がいました。

【9】地文と会話文のメリハリがなく、地文に不相応な口語や擬音・擬態語が多すぎる

 「丸まるっちい→小太りの」「もっこりした→かさばった」「~じゃない」→「~ではない」など、いくらでも言い換えの効く日本語があるのに、地文(会話ではない普通の文章)にふさわしくない、くだけた言葉が多く使われています。小説の翻訳では地文と台詞の書き分けは必須のはずです。
 また、地文に擬音(バーン、ドスッなど音を伴う)、擬態語(イライラ、ゴワゴワなど様子をあらわす)が極端に多く、幼稚で読みづらい上に読者がイメージを結ぶ妨げになっています。これらも、「バーンと→大きな音を立てて」のように、言い換えはいくらでもできるはずです。

【10】翻訳者の立場を全うするどころか、逸脱した言動

 最終巻の巻頭に原作者が掲げたエピグラフを全く翻訳せず「原作者がしなくていいといった。私も余計だと思った」と発言したり、本来原作者や原作の背景について解説するべき「あとがき」では、自分の苦労話に終始。あげくにこの翻訳を「一生分の厄介」と表現。あまりにも失礼ではないでしょうか。
 翻訳者は黒子です。ベストセラー作家なのは原作者だけです。

さて、そろそろ「まとめサイト」に行きましょうか。  こちら → → → ◆


まとめサイトへ行く前に…(しつこくてごめんなさい)

●もう一度申し上げます

 誤訳珍訳の指摘は、決して「目標」ではありません。目標は、原作の世界を表現した、きちんとした日本語版の改訂出版です。

 明らかな誤訳や翻訳者の脚色によって、原作と全く違うキャラクターやシーンを思い描いている読者が多勢いるのは大問題です。
 しかし、まとめサイトを読んでいると、大問題ばかりではなく、小さな指摘も多いと思われるかもしれません。重箱の隅をつついていると感じられるかもしれません。
 けれど、問題はその量なのです。

 誰かが「ハリポタの日本語版を読むのは、あちこちの釘にぶつかりながら、やっと穴に入るパチンコ玉になった気分」と書き込んだことがありましたが、小さな釘にぶつかりぶつかりして、すっと読めなくなっている(物語の世界になかなか入れない・しかも誤解したまま読み進む)というのが問題なのです。
 これらことを、ご理解いただきたいと思います。
 「文句があるんなら読むな。原書読んでろ」という人もいます。逆です。何のために翻訳書があるのか?日本語でちゃんと読みたいから、私たちは嘆いているし、行動しているのです。

●まとめサイトの大元は、巨大掲示板の書き込みです

 基本的に無記名の掲示板ですから、いろいろな人が書き込みます。「続まとめサイト」以後、まとめサイトを作る際に、ただの煽り・訳者への誹謗と判断されるものは排除してありますが、多少の皮肉やきつめの言い回しが残っている場合もあります。
 まとめる者も、他者の書き込みをまとめるため、どの程度言い回しに手を加えてよいか迷う部分もあります。
 私たちの目標はあくまでも「よりよいハリポタ日本語版を求めること」です。どうぞご了承の上でご覧下さい。

●まとめサイトは完成品ではありません。しかも3つに分かれててごめんなさい! 

*初代まとめサイトは管理人と連絡が取れないため、修正追加はありません。最初のものでしたので、大きな問題がたくさん指摘されています。
(nevi注:サルベージサルベージ2サルベージ3サルベージ4のことです。)
*続まとめサイトは、初代の更新が止まってから暫定的にその続きを作ったものです。指摘内容は少量です。いずれ「新」に吸収され消滅します。
(nevi注:まだ)
*新まとめサイトは、「初代」と「続」の分を含め整理して下さっている途中です。だいぶまとまってきました!
(nevi注:アドレスは生きていますが現在サイト工事中です。)

●携帯版では何気なく変更されている箇所もあります。しかし、高額で図書館などにも収蔵されるハードカバーは、一部の差別用語を除いて、修正されないまま版を重ねています。ですので、たとえ携帯版で変えてあっても、こちらでは指摘を残しています。

↓では、ごゆっくりお読み下さい↓

←初代まとめサイト

すごい内容量です。
大きな問題をたくさん指摘しています。
しかし「新」へ少しずつ移行中です。

管理者は掲示板メンバーの誰か(不明、連絡不能)です。

←続まとめサイト

初代サイトがクローズした後に出た指摘をまとめています。ほぼ「新」に移行されましたが、しばらくこのままにしておきます。見なくても大丈夫っす^^;
管理者は、この玄関サイトと同じlumosです。

←新まとめサイト
(誤訳珍訳改善研究室)

「初代」と「続」の分を含めてきちんとしたものを作ってくださっている途中です。
かなり出来上がってきました。更新も続いています。
最終的には、全てがここにまとまるのですが、新しい指摘も次々に上がっている現状なので「完成」ということは、きっとないのでしょう…。
管理者は、「まとめ人」さんです。

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