1章
眠たげな静寂
■日本語版 1章 p.10
鉄砲でも撃ったようなバシッという大きな音が、眠たげな静寂を破って鳴り響いた。
■UK版 p.9
A loud, echoing crack broke the sleepy silence like a gunshot;
■試訳
銃声のような大きな音が、眠気を誘う静寂を破って鳴り響いた。
■備考
- sleepy silence=眠気を誘う静寂
- 鉄砲はバシッという音は出さないと思う。
ゴロゴロ
■日本語版 1章 p.20
低くゴロゴロと聞こえる車の音
■UK版 p.15
the low grumble of traffic on the road
■備考
- 車の音はゴロゴロではないと思う。
胃が引っくり返った
■日本語版 1章 p.31
胃が引っくり返った。
■UK版 p.21
His stomach turned over.
■試訳
ハリーは吐き気を覚えた。
■備考
- イディオムにturn one's stomachというのがあり怒りや焦り、ショックでムカムカする(気分が悪くなる)事。
overついても同じ。
ジェットコースターで振り回されても気分が悪くなるでしょ。 - こういう身体の一部を使った言い回しは、言語毎に独特のものがあるから
胃がひっくり返ったと直訳しても意味が分からないわな。 - その箇所はディメンターの姿を確認した所だから、
『ハリーは吐き気を覚えた』とか素直に訳してもショックの大きさが分かってきて良いかもね。
2章
手を揉みしだいた
■日本語版 2章 p.36
フィッグばあさんは手を揉みしだいた。
■UK版 p.24
Mrs Figg, wringing her hands.
■試訳
怒って両手に拳を握りしめた。
盆に返らず
■日本語版 2章 p.42
こぼれた魔法薬、盆に帰らずってとこか
■UK版 p.27
it's no good crying over spilt potion, I suppose ...
■試訳
「こぼれた魔法薬を嘆いても仕方がない…か」
■備考
- フィッグばあさんのセリフ。
覆水、盆に返らず。
- 中途半端に日英諺コラボなんてしないで英語版でも十分通じるのでは?
- 「こぼれたミルク~」に相当する諺は確かに「覆水~」だが。実際に比較してみると
「嘆いてもしょうがない(前向き)」と「元には戻らない(未練たらたら)」とニュアンスに違いを感じる。 - その後、アンブリッジの罰則で傷ついた手を癒す為に、ハーマイオニーがマートラップ液を作ってくれたが、
ハリーが癇癪を起こしてそれを割ってしまって後悔するというシーンがあるので一種の伏線か?
坊主
■日本語版 2章 p.44
「坊主、どうした?(略)」
■日本語版 2章 p.44
「坊主、誰にやられた?(略)」
■日本語版 2章 p.52
「坊主、続けるんだ」
■日本語版 2章 p.53
「坊主、どうして転んだりした?」
■日本語版 2章 p.59
「追っ払ったんだな? え、坊主?」
■UK版 p.28
‘What is it, son?(略)’
■UK版 p.28
‘Who did it, son?(略)’
■UK版 p.32
‘Go on, son,’
■UK版 p.33
‘How come you fell over, son?’
■UK版 p.36
‘Fought'em off, did you, son?’
■備考
- ダドリーがディメンターに襲われた所のセリフ。
- 全部バーノンからダドリーへの台詞なんだけど、
親バカの親が自分の息子の事を「坊主」と呼ぶものだろうか?
「腕白小僧」とか「悪戯小僧」とかいう言い方はするけど…。 - ちなみにハリーのことは「小僧」(原書ではboy)。
途中でどっちを指しているのか分からなくなって、邦訳は読んでいて少し混乱した。
気配は微塵も見せない
■日本語版 2章 p.63
ハリーの両親の殺害が、辛い話題だろうなどという気配は微塵も見せない。
■UK版 p.38
without the slightest sign that the murder of Harry’s parents might be a painful topic to anybody.
■試訳
(略)気遣いは微塵も見せない。
■備考
- 「気配」じゃなくて「気遣い」では?
最後のあれ
■日本語版 2章 p.68
「私の最後のあれを思い出せ。ペチュニア」
■UK版 p.41
‘Remember my last, Petunia.’
■備考
- 原作の厳格なイメージぶち壊し。
- ダンブルドアからの手紙なのに「私」…
- 作者のFAQによると「my last」は「my(Dumbledore's) last letter」という意味で、
ハリーをダーズリー家に預けた時に携えた手紙の事らしい。 - またlastには「最後の」という意味の他に「この前の」という意味があり、「my last」は「この前の手紙」と訳すのが適切。
3章
ショック状態
■日本語版 3章 p.79
ハリーはショック状態だったが、
■UK版 p.47
despite his state of shock.
■試訳
ハリーは呆然としていたが、
■備考
- 魔法界の人々の突然の登場にとても驚いているシーン。
- 「ショック状態」は命の危機にあると想像する。
ハート型の顔
■日本語版 3章 p.79
色白のハート型の顔、キラキラ光る黒い瞳、髪は短く、強烈な紫で、つんつん突っ立っている。
■UK版 p.47
she had a pale heart-shaped face, dark twinkling eyes, and short spiky hair that was a violent shade of violet.
■試訳
- しっかりとした額にふくよかな頬、すらりと通った顎を持つ色白の丸顔だ。瞳はきらきらと黒く輝いている。つんつんと突っ立たせたショートヘアは、強烈な紫色をしていた。
- 逆三角形の顔で、瞳はきらきらと黒く輝いている。つんつんと突っ立たせたショートヘアは、強烈な紫色をしていた。
■備考
- ハリーを迎えにきた闇払い達。その面々を描写しているシーンにて、トンクスの容姿についての文。
- 幾ら何でもheart-shaped faceを「ハート型の顔」とは強引過ぎる直訳。
- キャラクターの外見の描写は、物語文学において読み手のイメージを膨らませる重要なもの。
「ハート型の顔」では、どういった容姿なのか全く分からない。 - そして無理に一文で容姿を説明しようとしている為に、読点がやたらと続く読み難い文となっている。
- 「キラキラ」がカタカナなのに、同じオノマトペの「つんつん」がひらがなである。
文章に統一性がないのがよく分かる。
- heart-shaped face(ハート形の顔)は、日本語で言う「逆三角形の顔」の事。
(「自分のことを英語で伝える! 基本フレーズ80」より)
ヘフハ
■日本語版 3章 p.81
「ラッキー?ヘ!フ!ハッ!」
■UK版 p.48
‘Lucky, ha!’
■備考
- 迎えに来た騎士団メンバーに「ダーズリー達が出かけててラッキーだった」と言ったハリーに
トンクスが返したセリフ。
- 日本の子供達の間ではきっと明るくてオモロイネーチャンと認定された事だろう。
- 「ha!」はバカにした様な「ケッ!」というか「フン!」。
- 谷川俊太郎訳の「ピーナッツ(スヌーピーの原作)」ではそのまま「ハ!」
- 「へ!」と「フ!」をどうして入れようと思ったのか…
4章
声を低く
■日本語版 4章 p.102-103
「(略)それと、ホールでは声を低くしてね」
■UK版 p.60
“(略) And keep your voice down in the hall,”
■試訳
「(略)それと、ホールでは静かにしてね」
■備考
- “Keep your voice down.”は「ちょっと声が大きいよ」や「静かにして」と注意する時によく使う表現。
- 「声を低くしてね」だと、低い声なら大声でもOKになってしまう。
ふくろうが途中で傍受される
■日本語版 4章 p.108
「(略)あの人は、ふくろうが途中で傍受されるかもしれないって言った」
■UK版 p.63
’(略)he said the owls might be intercepted.’
■試訳
「(略)先生がふくろうは途中で捕まるかもしれないって言ってた」
■備考
- "intercept"には途中で捕らえる・(電波を)傍受するという意味があるが、
この場合可能なのはふくろうを捕獲して連絡内容を調べる事である。 - そもそも、傍受は電波に用いる語なので日本語として間違っている。
いかれぽんち
■日本語版 4章 p.126
「いかれぽんちさ。あんなの見たことない」
(略)
「いかれぽんちなんかじゃないわ、ロン」
■UK版 p.72
“Nutter. Never met one like him.”
(略)
“He’s not a nutter, Ron -”
■備考
- いかれぽんちとは、軽薄で頭が悪い間抜けな男性の事。
1950年前後の流行語で昭和時代にはよく使われたが、年々使われる事が少なくなっている。
(日本語俗語辞書より) - こんな言葉をロンとハーマイオニーに言わせるな。
老女
■日本語版 4章 p.128
窓の向こうに黒い帽子を被った老女がいて、叫んでいる。まるで拷問を受けているかのような叫びだ
■日本語版 4章 p.128
老女は涎を垂らし、白目を剥き、叫んでいるせいで、黄ばんだ顔の皮膚が引き攣っている。
■日本語版 4章 p.129(※原文は改行無し)
ルーピンとウィーズリーおばさんが飛び出して、カーテンを引き老女を閉め込もうとした。
しかしカーテンは閉まらず、老女はますます鋭い叫びを上げて、(省略)
■日本語版 4章 p.129
老女の顔が血の気を失った。
■日本語版 4章 p.130
老女の叫びが消え、しーんと沈黙が広がった。
■UK版 p.74(※原文は改行無し)
a window behind which an old woman in a black cap was screaming and screaming
as though she were being tortured
■UK版 p.74(※原文は改行無し)
The old woman was drooling, her eyes were rolling,
the yellowing skin of her face stretched taut as she screamed
■UK版 p.74(※原文は改行無し)
Lupin and Mrs Weasley darted forward and tried to tug the curtains shut over
the old woman, but they would not close and she screeched louder than ever,
■UK版 p.74
The old woman's face blanched.
■UK版 p.75
The old woman's screeches died and an echoing silence fell.
■備考
- シリウスの母親の表現、老女のシーン。
- 彼女が死んだのは1985年で、5巻の10年前。(シリウスが25歳位の時)
肖像画が年を取るかどうかは良く分からないけど、校長達の肖像画が白髭まみれになっていない所を見ると、
たぶん死んだ時から変わらないんじゃないかと思う。 - ここでは口語表現の「おふくろ」や「女主人」、「年配の女性」の意味ではないだろうか?
5章
お言葉だが
■日本語版 5章 p.147
「お言葉だが、モリー、わたしは、この子が誰か、はっきりわかっているつもりだ」
■UK版 p.84
‘I'm perfectly clear who he is, thanks, Molly,’
■試訳
「この子が誰かなんてことはよく分かっていますよ、お言葉ありがとうモリー」
■備考
- あの嫌味ったらしい「ありがとう」はシリウスの性格を表す大事なセリフだと思う。
自分を転覆させようとしている
■日本語版 5章 p.156
「(略)ダンブルドアが嘘をついて、自分を転覆させようとしていると信じ込むほうが、どんなに楽かしれない」
■UK版 p.89
“(略) It’s so much more comfortable to convince himself Dumbledore’s lying to destabilize him.”
■試訳
(略)失脚させようとしている(略)
■備考
- ここの「自分」はファッジの事。
- それを言うなら「失脚させようと」だろ。
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- 最後のあれについて。作者発言によると赤ん坊のハリーをダーズリー家に預ける時の手紙のこと。「最後の」と書いたのはそれ以前にもペチュニアに手紙を送ったことがあることを示す伏線。なので普通に「最後の手紙」と訳すのがよいかと思われます。 -- ヘキサ 2019-02-27 (水) 23:03:36
- 遅レスですが、「最後の手紙」と訳すくらいなら「最後のあれ」のほうがまだ正確だと思います。原文でもLetterとは書いておらず、「最後の…なんだろう?」と思うシーンのはず。英語話者でもQ&Aサイトで「Remember my lastってどういう意味なの」という投稿がけっこうあります。 -- nevi 2019-07-06 (土) 00:34:43
- そうですか。以前にペチュニアに手紙を送ったという部分が大事なのかと思って「最後の手紙」にしたほうがよいのではと書いたのですが、ぼかしてあることに意味があるなら不適切ですね。物語の整合性まで考えていなかったようです。すみません。 -- ヘキサ 2019-07-12 (金) 20:35:03
- 日本語版4章 p.130、「二人がかりの金剛力で」の意味がわからず、辞書を検索してしまった。ここのサイトを検索すると、「金剛力」は頻出の単語なのですね。 -- 2023-12-09 (土) 11:22:18
- イギリスの雰囲気にそぐわないよねぇ -- 2024-04-09 (火) 21:52:06
- ずっと違和感を感じながら読んできて、ようやくこのサイトと巡り会えました。早速ですが、不死鳥の騎士団第一章p.7の『フルーツ・ン・ブラン』朝食用シリアルの名前とのことでしたが、こちらはフルーツアンドブランではいけないのでしょうか?アンドをンって訳すものなのでしょうか… -- AB3? 2022-07-31 (日) 22:24:59
- ごめんなさい、こちらは炎のゴブレットのページでしたね…本当にすみません。間違えて書き込んでしまいました。 -- AB3? 2022-07-31 (日) 22:26:53
- 原文はFruit 'n' Bran。「エッグスンシングス(Eggs 'n Things)」や「ロックンロール(Rock 'n' Roll)」の例もあるので、'n'を「ン」とするのはおかしくない -- op2chスレ主 2022-08-02 (火) 22:13:47
- 今更だが正しい場所に移しといた -- 2024-03-08 (金) 10:52:05
- 「ハート型の顔」のとこを読んでた時、ベティーブープを連想した(頭の下半分の形は違うが) -- 2024-03-26 (火) 11:19:45
- 上半分だけ見ればハート型に見えなくもない -- 2024-03-30 (土) 04:28:35