死の秘宝/34~35章

Last-modified: 2023-07-10 (月) 10:30:33


34章

生き残るはずではなかった

■日本語版 34章 p.458
ハリーはついに、自分が生き残るはずではなかったことを悟った。

■UK版 p.554
Harry understood at last that he was not supposed to survive.

■試訳

  1. ハリーはついに自分が生き残れないことになっているんだと悟った。
  2. ハリーはついに悟った――僕は生き残ってはいけないんだ。

■備考

  • 34章始まってすぐの所。
  • 中高生レベルの英文で凄く大事なとこなんだけど…何で間違うかな。
    と言うか「生き残るはずではなかった」じゃ、どう考えても流れに合わないんだが。
  • 日本語は時制の一致がないから最後しか過去形にならないっていうのは、常識。
    supposeが「はずである」っていうのも定義はそうだが、そう訳せない事も多いはず。
    結局ざっと読んで、うっかり取り違えて、何も考えずフィーリングで訳したかの様な文だな。
  • これのthat以下の"he was not supposed to survive"は
    「生き残れないことになっている」「生き残ってはいけない」という意味。
    「そもそもダンブルドアの計画で生き残れないことになっているんだ」って事。
    was使って過去形になっているのは英語では時制の一致が鉄則だから。
  • 日本語は時制の一致にこだわらないので、
    1.生き残れないことになっているんだと悟った。
    2.生き残れないことになっていたんだと悟った。
    どっちでも良い場合もあるが、だいたい過去形は最後だけにするもの。
    この場合も2.もすると、もっと前に死ぬはずだったみたいで分かり難い。
  • suppose toは「~のはずだ」と訳せる事もあるけれど、そうは訳せない事も多い。
    ここでもハリーはダンブルドアの計画に従って自ら死を選ばないとならない訳だから、
    曖昧な憶測を言う時の「はず」は使えない。
  • ハリーの独り言みたいに訳すのもありかもね。
    『ハリーはついに悟った――僕は生き残ってはいけないんだ。』
    要するにこういう事。
    読者もショックで涙目にならないといけない所だよ。

35章

晴れ舞台

■日本語版 35章 p.489
「ハリーよ、わしにはさっぱりわからぬ。これは、いわばきみの晴れ舞台じゃ」

■UK版 p.570
"My dear boy, I have no idea. This is, as they say, your party."

■試訳

  • 「おおハリー、私にはわからん。これは俗に言う『主役の君が決めること』というやつだ」

■備考

  • ハリーの質問(「先生はここがどこだと思う?」)の後のダンブルドアのセリフ。
    大勢でも名誉でも無いと思うんだけど元はどんな文章ですか?
  • 晴れ舞台(晴れの舞台):大勢の前で何かをする名誉な場面。(大辞林)
  • このyour partyに関しては、ベルトン氏の「ハリー・ポッター」Vol.7が英語で楽しく読める本 p256に解説があって
    『イギリスの若い人たちの間でよく使われるフレーズ。それはあなたのパーティなのだから
    「あなた次第」「あなたが決めることだ」と、すべての判断を相手に委ねるとき使います』との事。
  • キングズクロスはこの世とあの世の境目であり、ハリーの脳内の世界みたいでもあり…
    どう考えどのように見るかはハリー次第だよとダンブルドアは言っているのだと思う。
    「おおハリー、私にはわからん。これは俗に言う『主役の君が決めること』というやつだ」とでも訳すかね? 
  • 「晴れ舞台」は全然違うと言うか意味不明。
    たぶん「パーティ? 晴れがましい席のことかな?」位の感覚で訳したと思う。

しかも~あっぱれ

■日本語版 35章 p.497
現実が戻ってきたのじゃ。粗野で無学で、しかも、わしなどよりずっとあっぱれな弟が、それを教えてくれた。

■UK版 p.786
Reality returned, in the form of my rough, unlettered, and infinitely more admirable brother.

■試訳

  • 現実が戻ってきた。粗野で無学で、そして私よりはるかに立派な弟の姿で。

■備考

  • あっぱれは時代劇じみてて威勢の良い感じの言葉ですよね。
    話の内容が内容だけに、こんな晴れやかな言葉を用いるのはどうかと思ってしまいますね。
  • あっぱれはともかくこの文脈で「しかも」って言うのは凄く変だな。
  • 「粗野で無学」なのは普通は立派とは思えないからこそ
    「そして(and)」を使って「私より遙かに立派な」という言葉を繋ぐ事が
    セリフの面白味を出しているんだよね。
    これを「しかし(but)」で繋ぐとつまらないけど、「しかも」ってのも言われてみれば変な感じ。

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