10章
悪文
■日本語版 10章 p.240
次の日、ハリーとロンが疲れた様子で、でも上機嫌で、まだホグワーツにいるのを見てマルフォイは自分の目を疑った。
■UK版 p.120
Malfoy couldn't believe his eyes when he saw that Harry and Ron were still at Hogwarts next day, looking tired but perfectly cheerful.
■試訳
- 次の日、ハリーとロンがまだホグワーツにいるのを見てマルフォイは目を疑った。二人は疲れているように見えたが、上機嫌だった。
■備考
- 英語の長文を一文のまま日本語に訳してしまうと読み辛くなるので、コンマの箇所で一旦区切るべき。
それが正解だった
■日本語版 10章 p.241
ハリーは急いで手紙を開けた。それが正解だった。
■UK版 p.121
Harry ripped open the letter first, which was lucky,
■試訳
- ハリーは急いで手紙を開けた。先に手紙を開けて正解だった。
■備考
- ハリーがその場で空けてはいけない包みを開ける前に手紙を開けるシーン。
- 「それ」だと何が正解だったのか分からない。
キーキー声
■日本語版 10章 p.242
先生がキーキー声で言った。
■UK版 p.122
he squeaked.
■試訳
- 先生が甲高い声で言った。
■備考
- 地の文で「キーキー声」という言葉を使うのは変。
- 一部の英和辞典でsqueakを調べると「キーキー声で言う」という意味が出てくるので、それをそのまま使ったのだろう。
辞書に載っている単語をそのまま当てはめないでほしい。
クラスが終わった時
■日本語版 10章 p.251
クラスが終わった時、ロンは最悪の機嫌だった。
■UK版 p.127
Ron was in a very bad temper by the end of the class.
■試訳
- 授業が終わった時、ロンの機嫌はかなり悪かった。
■備考
- ここのclassは授業という意味。
ノックアウトされた
■日本語版 10章 p.258
「いや、ノックアウトされただけだと思う」
■UK版 p.130
‘I don’t think so,’ said Harry. ‘I think it’s just been knocked out.’
■試訳
- 「いや、気絶しただけだと思う」
■備考
- この文の「been knocked out」を直訳すると「気絶させられた」。
「気絶させられた」を自然な日本語にするなら「気絶した」になる。
11章
灰色に凍りつき
■日本語版 11章 p.264
学校を囲む山々は灰色に凍りつき、
■UK版 p.133
The mountains around the school became icy gray
■試訳
- 学校の周りの山は氷のように白くなり、
■備考
- 灰色よりも白の方が日本語として自然。
- 国によって色の見え方・感じ方が違う事を考慮しなかった結果か?
どでかいブーツ
■日本語版 11章 p.264
丈長のモールスキン・コートにくるまり、うさぎの毛の手袋をはめ、ビーバー皮のどでかいブーツをはいていた。
■UK版 p.133
(略)bundled up in a long moleskin overcoat, rabbit-fur gloves and enormous beaverskin boots.
■備考
- 「どでかい」が地の文としては口語的で砕けすぎている。
「巨大な」などとするべきでは。
一人で大丈夫?
■日本語版 11章 p.266
「一人で大丈夫?」
■UK版 p.136
‘Rather you than me,’
■試訳
- 「それはかわいそう」
- 「がんばって」
■備考
- ハリーがスネイプに没収された本を返して貰いに行く事をロンとハーマイオニーに言うシーン。
- ‘Rather you than me,’の訳が「一人で大丈夫?」になってるけど、これどういう事?
rather you than meは調べた所、「自分がそれをする立場になくてよかった」「可哀想に」というちょっと冷たい表現のはずなんだけど
12章
ヨレヨレ
■日本語版 12章 p.291
ロンのチェスは古くてヨレヨレだった。
■試訳
- ロンのチェスは古くてボロボロだった。
■備考
- ヨレヨレは古くなった衣類・紙などに対して使う言葉で、普通の物に対して使う言葉ではないのでは?
お下がりなのだが
■日本語版 12章 p.291
ロンの持ち物はみんな家族の誰かのお下がりなのだが、チェスはおじいさんのお古だった。
■試訳
- ロンの持ち物はすべて家族の誰かのお下がりであり、チェスは祖父のお古だった。
■備考
- 「だが」は前に述べた事とは逆の内容を述べる時に使う接続詞。
- 「みんな」は基本的に人に対して使う言葉。物に対して使う場合は「すべて」や「全部」を使うべき。
クリスマスプレゼント
■日本語版 12章 p.292
「ねえ、これ見てくれる?プレゼントがある」
「ほかに何があるっていうの。大根なんて置いてあったってしょうがないだろ」
■UK版 p.147
"Will you look at this? I've got some presents!"
"What did you expect, turnips?"
■試訳
- 「これ見てくれよ。僕プレゼントをもらっちゃったんだ!」
「当たり前じゃないか。カブなんかもらってもしょうがないからな」 - 「これ見てくれよ。僕プレゼントをもらっちゃったんだ!」
「他に何があるっていうんだ、カブかよ?」
■備考
- 何故カブ→大根?というのは置いといて。
- 原書ではまともにクリスマスプレゼントを貰った事がないので感激しているハリーと冷めてるロンの対比がすごく面白い場面。
ハリーのセリフの最後の「!」を取ってしまったのは何故だろう?
原文に溢れているハリーの気持ち、初めてまともなクリスマスプレゼントを貰ったハリーの感激が全く表現出来ていない。 - turnipには俗語でばかという意味がある。(参考)
モッコリした包み
■日本語版 12章 p.293
ロンが少し顔を赤らめて、大きなモッコリした包みを指さした。
■UK版 p.147
said Ron, going a bit pink and pointing to a very lumpy parcel.
■試訳
- ひどくかさばった包み
- でこぼこした包み
- いびつな形の包み
- 不格好な包み
■備考
- クリスマスの朝の出来事。
「a very lumpy parcel」はウィーズリー夫人が送ってくれたクリスマスプレゼントのセーターの事。
- lumpy parcel=でこぼこの包みなのにわざわざ「モッコリ」にしてる。
顔も赤らめてるので余計に変な笑いを誘うし。 - 箱に入れずに直接包装紙にセーターをおいて包んだから形がきちっとしていない、
でこぼこのプレゼントになってる訳で。
もっこり膨らんでいる訳じゃないのにな。
辞書のままで正しい時に限って変な脚色をする。
- 「ひどくかさばった包み」や「でこぼこした包み」が適切だと思われる。
- 全年齢を対象にするなら「いびつな形の包み」、子供向けなら「不格好な包み」でどうだろう?
13章
ぬぐいさる
■日本語版 13章 p.321
「(略)僕たちが勝って、連中の顔から笑いを拭い去ってやる」
「グラウンドに落ちたあなたを、わたしたちが拭い去るようなハメにならなければね」
■UK版 p.162
"(略)it'll really wipe the smiles off their faces if we win."
"Just as long as we're not wiping you off the pitch,"
■試訳
- 「(略)僕たちが勝って、連中を落ち込ませてやる」
「あなたがピッチに落ちなきゃね」
■備考
- クィディッチの試合についての3人の会話。
- ハリーをグラウンドからぬぐいさるというのは日本語として不自然。
両者の会話にwipe offが使われていて訳すのが難しいとこだがもう少し自然な日本語にしてほしい。 - 「wipe the smile off one's face」は悔しがらせる、落ち込ませるみたいな意味の慣用句(らしい)。
心臓が宙返り
■日本語版 13章 p.324
ハリーは心臓が宙返りした。
■UK版 p.163
Harry’s heart did a somersault.
■試訳
ハリーは心臓が飛び出しそうになった。
■備考
- 直訳すぎて自然な日本語になっていない。
- ロングマン英和辞典によると「somebody’s heart does a somersault」は「心臓が飛び出しそうになる」という意味。(参考)
ヒョコヒョコ歩き
1巻における代表的な誤訳を参照。
14章
忘れな草色のブルー
■日本語版 14章 p.335
空は忘れな草色のブルーに澄みわたり、(略)
■UK版 p.168
The sky was a clear, forget-me-not blue,(略)
■試訳
- 空は忘れな草色に澄みわたり、(略)
■備考
- 「forget-me-not」を「忘れな草色」と訳したのはいいが、
「blue」の部分を「ブルー」にしてしまっている。
ガンとして
■日本語版 14章 p.342
(略)ハーマイオニーがガンとして受けつけない。
■試訳
- (略)頑として(略)
■備考
- ガンの部分は、普通カタカナにせず漢字かひらがなで書くと思う。
コメント欄
・情報提供、検証、議論、誤字脱字の指摘など様々な用途にお使いください。
・コメントの先頭にあるラジオボタンを選択すると、そのコメントにぶら下がる形で返信できます。
・スパムや荒らしコメントが投稿された際は、削除にご協力ください(「編集」から削除できます)。
・任意ですが、書き込みの際はできるだけお名前(HN)を入力してください。
- ハーマイオニーが取り残されていることに気付いた際の「ロンが唇を噛んだ」p253 について。唇を噛むという日本語の意味は悔しがる、怒りをこらえる、なのですが場面に合っていないように思います。 -- 2020-10-28 (水) 20:07:39
- US版で原文を確認したら「Ron bit his lip.」だった -- 2020-10-30 (金) 23:22:13
- 調べたらbite one's lip で怒りや感情を抑えるという意味があるようですね。ここで抑えているのは怒りではなく焦りとか不安とかいった類の気持ちだと思うのですが。 -- 2021-11-30 (火) 08:34:54
- 日本人でもマズいことがあったときに下唇を噛む人はいる。アチャー…ってときとか、マズったな…ってときとかにやってるのを見たことある。向こうの人はなおさらめんたまグルングルンやったりくちをアオアオやったり顔面ジェスチャー?豊富だからこういうのは別に気にしなくていいんじゃないかな? -- 2021-11-30 (火) 08:53:57
- US版で原文を確認したら「Ron bit his lip.」だった -- 2020-10-30 (金) 23:22:13
- さすがにモッコリはないわ -- 2022-04-28 (木) 16:24:07
- もうちょい上手く訳してほしかったわ -- 2023-02-25 (土) 12:22:46
- 原文だとそこまで下品じゃないんだっけか -- 2023-09-29 (金) 12:28:28
- ためになる知識がいっぱいだ -- 2024-03-24 (日) 16:00:06