36スレ/不器用ほむらさん

Last-modified: 2014-04-27 (日) 10:39:59
947 名前:1/5[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 03:30:56.57 ID:eL6rPj+w0
ガッツリ想いが通じ合っちゃってひかりふってるのも大変良いんですが
個人的にはギリギリ通じ合ってないくらいの位置が好きなんです。
公園のベンチでひとり読書をしているほむら。不意に、背後から抱きつかれる感触。
「ほむらちゃん! なにしてるの?」
ほむらはわずかに驚いたが、すぐに声の主を理解し、内心で苦笑する。
背中に伝わるあたたかく心地よい感触。小さな驚きはまたたく間に陶然とした気分に変わる。
ほむらは、この朗らかで小動物のように愛くるしい友人のことが大好きだった。
好き……といっても、変な意味ではなく、仲の良い友人に向けられる程度のものである…と、思う。
というのは、入院生活が長く、友人を作るきっかけに恵まれなかったほむらにとって、
はじめてできた親友と呼べる存在であり、当然、異性の友人もいないほむらには、比較のしようもないからである。
この気持ちに名前をつけるなら、…とにかく、『好き』としか言いようがないのであった。
そんな大切な友人に、なれないスキンシップをされるとどうしても心臓が高鳴ってしまう。
(ああ、嬉しい…)


948 名前:2/5[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 03:33:16.38 ID:eL6rPj+w0
しかし、気持ちに反してほむらの表情は固いままである。
「まどか…。どうしたの、なにか用?」
言いながら、いつも自分のそっけない口調と表情に、内心で辟易する。
もっとまどかと仲良くなりたい、自分がまどかのことを好きだいう気持ちを伝えたい…
そう思っているものの、どう表現すればいいのかわからないのだ。
「ううん、ちょっと見かけたから声かけただけ」
そっけないほむらにも気を悪くした風のないまどか。
「ジャマしてごめんね。じゃあね!」
ぱっと離れて、無邪気に笑いながら去っていく。
この時だけ、一人の時には感じなかった寂しさを感じるのだった。


949 名前:3/5[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 03:35:28.84 ID:eL6rPj+w0
まどかと遊んでいると、嬉しくて、楽しくて、心が満たされる。
しかし同時に、一抹の不安も感じる。自分の仏頂面に、いつか愛想を尽かされてしまうのではないかと。
ほむらは思案する。
(どうにかしてまどかに親愛の気持ちを示したいわね…)
登校中。
「かわいい奴め、まどかは私の嫁になるのだぁ~!」
「うぇひひ、も~やめてよぉ、さやかちゃん!」
さやかとまどかがじゃれあっている。
もはや見慣れた光景を、ほむらはいつものように澄ました顔で見ているが、内心は違う。
(そう、友達ならこれくらいの冗談を言ったり、ハグしたりするのが普通よね……よし)
(さやかに倣うのはちょっぴり癪だけど、このネタなら冗談だとわかりやすいでしょうし)
(でも、『嫁』はちょっと言いすぎよね。そうね…『恋人』くらいにしておこうかしら)


950 名前:4/5[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 03:37:31.61 ID:eL6rPj+w0
教室内。
HR前だが、すでに多くの生徒が登校しており、思い思いに過ごしている。
ほむらは秘めたる計画を胸に、おもむろにまどかの席に近づく。
「あ、あのね、まどか…」
「どうしたの、ほむらちゃん?」
さやかと仁美とおしゃべりしていたまどかが顔を上げる。
先ほどから何度も脳内でシミュレートしたはずなのに、いざとなるとなかなか体が動かない。
さやかと仁美も怪訝そうにほむらを見やる。
(なんだ? ほむらのやつ、珍しく緊張なんかしちゃって…)
(暁美さん…。お顔が赤いですわ…。これは、まさか…。いえ、でも…!)
「ほ、ほむらちゃん、どうかしたのかなって」
まどかもほむらの緊張を感じ取り、少し不安げな様子を見せる。


951 名前:5/5[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 03:39:54.86 ID:eL6rPj+w0
当のほむらはまったく気づかない。
(ここでハグしながら……。ああ、だめ! やっぱりできない! 仕方ないから手を握りましょう)
ほむらは両手でそっとまどかの手を包む。
スキンシップに慣れていないほむらの手は、緊張から微かに震えていた。
そして、眼を見つめながら言い放った。
「ま、まどか、可愛いわ……。わたしの……こ、恋人になるのよ……!!」
(やった…! 冗談が言えたわ! まどか、笑ってくれるかしら?)
しかし、その瞬間…。ほむらの思惑とは裏腹に、教室内は水を打ったように静まり返っていた。
やがてあちこちから、どよめきの声が上がりはじめる。
さやかはあんぐりと口を開け、仁美はなぜかウットリとしており…
当のまどかは顔を真っ赤にして俯いてしまったのでした。
(あれ…? こんなはずでは…)
時すでに遅し。
この日、才色兼備の完璧超人である転校生に、新たな二つ名がもたらされたことは言うまでもない。
おわり

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