95スレ/今のままで-mdhmください

Last-modified: 2014-07-07 (月) 23:31:14
41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/03/03(月) 22:20:36.41 ID:GnAbtMrn0
mdhmください。


「――というわけで、特に問題になりそうな要素は見出だせない」
「そう。ご苦労様」

 これで結構、悪魔も忙しい。
 あの子を取り巻くごく小範囲の世界さえ壊れなければそれでいいのだけれど、そんな小さな箱庭を維持するのにもそれなりに気を使う。
 至るところに存在できるインキュベーターは、手足として使うには実に有用だった。
 学校の中庭での定時報告。いつもなら、その小さな白い影は報告が終わればそそくさとその姿を消すのだが、今日は何故か黙したままでこちらの様子をうかがっている。

「…まだ、何かあるのかしら」
「…きみの支配下に置かれて以来、ランダム性が強く、無意味な思考活動の生起が多いんだ。随分と昔の話だけど、ソウルジェムを賢者の石と呼んだ魔法少女が居たことを急に思い出したんだよ」
「何よ、それ」
「その子がそう呼んだ時に、原子構造の変換程度で随分と大げさな呼び方をするものだと思ったんだけどね。…君の持つダークオーブはまさに、賢者の石と呼ぶにふさわしいのかもしれない。そう思ったんだよ」
「…あなたから無駄話を始めるなんて、初めて聞いた気が――ん」
「そうかもしれないね。鹿目まどかがこちらに向かっているようだし、ぼくはこれでお暇するよ」

 いつもの様にどこへともなく白い影が去ると同時に、角の向こうから顔が覗いた。

「ほむらちゃん、こんなところで何してるの?」
「ちょっと、外の空気が吸いたくなって」

 あいつと接触する場はいつだって、誰も足が向かないように、視線も向けられないように、操作していた。この子を除いては。
 まどかに見つけて欲しい――つまらない感傷の成せる業に、虚しさがこみ上げてくる。

「今日、少し寒いよ。校舎に戻ろう?」
「…ねえ、まどか」

 振り向いたまどかが、軽く首を傾げた。

「もし、何でも作ることが出来るなら、何を作る?」
「何でも?」
「ええ。お金でも、食べ物でも、時間でも。具体的でも、抽象的でも、何でも」
「うーん…」

 唐突な質問だというのに、まどかは素直に考え込み始める。
 通用口をくぐる頃になって、顔をこちらに向けたまどかが言った。

「私って、どんくさいし取り柄もないし、何か誰かに誇れるものがあればなあ、って思ってたんだけど…最近、このままでもいいかなって、そう思うんだ。」

 まどかは恥ずかしげに少し視線を下げて続ける。

「…今の私を、見てくれる人が居るから。それでいいって、言ってくれる人が居るから。だから、欲しいのは…今のままで過ごせる時間、かな」
「…ふふ」
「へ、変なコト言っちゃってごめんね…」
「いいえ。嬉しいのよ。私が作りたいものと、あなたの欲しいものは、全く一緒だもの」
「そうなの?」

 何も知らないあなたの言葉は免罪符にはならないけれど、きっと偽りのない本心だろうから。
 私は今日も、箱庭であなたの手を握る。


賢者の石とか言い出した子は多分マミさんと良い友達になれる。mdhmください。

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