トレーニングのし過ぎは身体に悪い?

Last-modified: 2012-05-06 (日) 20:58:50

何事も、「過ぎたるは及ばざるが如し」と言います。
もちろん、トレーニングに於いて、狭義の意味では正解と言えるでしょう。
しかし、「トレーニングのし過ぎは身体に良くない」と発言する人で「トレーニングの本質」を理解している人に出会ったことはありません。


では、「トレーニングの本質」とは何を指すのでしょうか?
答えは、[トレーニング対象の能力を上げる」ことです。
トレーニング対象の能力を上げることが身体に悪いでしょうか?答えはNoです。
では、なぜ表題の様な認識になるのでしょう?

トレーニングと一口に言っても、イメージトレーニング・メンタルトレーニング・筋力トレーニングなどなど、色々ありますよね。更にはサッカーなど集団を対象としたチームトレーニングと個人を対象としたトレーニングにも分類されます。
ここでは、主に個人を対象として肉体を鍛錬するトレーニングをメインに説明します。
さて、前述の「なぜ表題の様な認識になるのか?」
その発言の多くは「トレーニングとは負荷を掛けること」との誤解や認識不足から来るようです。
ではトレーニングとは何を指すのでしょう?
それは「負荷・回復・栄養の三つをもってトレーニングの三要素」と言う大原則です。

トレーニングバランス.jpg

イメージトレーニングで膝が壊れることはありません。
回復や栄養により膝が壊れることはありません。
表題の発言は概ね負荷の掛けすぎは身体に良くないと言う意味の発言なことが多いようですが。
トレーニング理論の見地から見ると、「負荷設定が適正でない」「トレーニングバランスが悪い」結果と言うことになります。
「負荷設定が適正でない」とは、例えばウエイトトレーニングに於いては「重量設定」「レップ数設定」「セット数設定」ということになります。例えばランにおいては「距離設定」「ペース設定」「インターバルやレペテーションの設定」ですね。
「トレーニングバランスが悪い」とは、「疲労に対しての回復」「負荷の質や頻度に対しての栄養」などとなります。

さて、「栄養は回復のカテゴリーでしょ」と思う人も居るかもしれません。
トレーニングにおいて栄養は負荷のための栄養もあるのです。
例えば、「マラソンにおける給水のスペシャルドリンク」「トライアスロンに代表されるカーボローディング」「パワーリフティングにおけるクレアチンスペシャルドリンク」などがそれにあたります。
また、負荷と回復の関係性としてはアクティブレストによる回復が有名ですね。
ですので、それぞれの要素は切り離されるものではなく、それぞれが互いに影響しあう関係となっているので、上図の様な形になるんですね。

ここで、スポーツ障害の原因となるトレーニングバランスの悪さによる代表的な例を軽く紹介します。
オーバーワーク:一度に激しいトレーニングを行うことによる疲労困憊のことです。負荷設定のジャンルに入る部分ですが、トレーニング時期によっては意識的にこの状態を作為することもあります。オールアウトとは近似値ですが、厳密に違います。
オーバーユース:身体の一部に長期間負荷が蓄積して起こります。ジャンパー膝やテニス肘などがこれにあたります。この症状が出た場合は負荷と回復のバランスを見直すと同時に「筋力は十分か?」「フォームに問題は無いか?」「練習後のケアは十分か?」「道具は自分に合っているか?」チェックしましょう。

オーバートレーニング:十分な回復をしないまま、又は精神的に強いストレスを与えた状態でトレーニングを長期間続けることにより生理的な疲労が回復せず慢性疲労となった状態を指します。初期には普段のトレーニングについていけないなど原因不明の競技力低下が見られ、更に進むと食欲不振・睡眠障害・集中力の欠如などの症状が出、最悪うつ状態の様な精神状態となります。一般的な人では聞いた事はありませんが、プロスポーツ選手や実業団の選手などに見られます。
※ここでは、比較的自己管理しやすいトレーニングバランスにおけるスポーツ障害の例を列挙しましたが、他にコンタクトスポーツに代表されるスポーツ外傷(捻挫・脱臼・肉離れなど)がありますが、これもトレーニングバランスや技術レベルとプレースタイルの見直しなどによりある程度予防できます。


表題の発言をする方はトレーニングの三要素や本質まで見越して発言する方は皆無です。実際その発言では曖昧すぎて何をどうすれば良いか?なんて出てきませんしね。
ですので、日頃運動をしている方は表題の発言を聞いても気にすることなく、ご自分トレーニングプランを見て「三要素のバランスは良いか」「負荷設定・負荷メニューは無理なく目的に沿っているか」「負荷の質に対して栄養は良いか」を考えるべきです。