イベント/ストーリーイベント Reboot/ストーリー

Last-modified: 2020-01-18 (土) 23:15:45

12話(担当:ダージリンさん)

 友達3人と家で飲んだ土曜日から6日が経った。いつも通り6時半の目覚ましに目が覚め、いつも通りの出勤。会社に到着し、私はバタバタとデスクワークをこなした。そして、仕事の山を越えて落ち着いてきた頃の17時45分。あと15分乗り越えれば待ちに待った休日・・・と思っていたところであった。机の上に置いていたスマートフォンがブルブルと震え、電話がかかった画面を表示させていた。その相手が・・・。

「(お、初里か・・・またなにか呑む約束か?)」

 初里(ういさと)は前話の冒頭にて紹介した大学時代からのバイト先が一緒で、大学院を出たという例の一人だ。勤務中なので小声で話すことにした。

「もしもし、初里?どうしたんだよ、また電話なんかかけてきて。というか、まだ仕事終わってないっつうの。」
『わりぃな、ちょっとほかの連中から回ってきたんだが、今日の19時から予定空いてるか?』

 毎週休みの前の夜は駅近くのショッピングセンター内にあるゲームセンターに立ち寄り、音楽ゲームを嗜むのだが、改装工事中で行けなくなってしまったので、ここ最近はまっすぐ帰っている。しばらく週末の楽しみが無いのでせっかくなら付き合ってみようと思い、予定が空いていることを告げた。すると、

『よし・・・今日他の連中が女の子誘ってるらしいから、俺らも行こうぜ。 合 コ ン に 』

 ・・・は?

 思わず呆気にとられた声を出してしまい、他の社員の目線がこちらに集まってきたので、軽く謝罪してトイレに入った。そこで先ほどの続きを話をする。

「ちょっと待て。急に合コンなんて俺別にまだ結婚願望ないし、自分の趣味を受け入れてくれるかわかんないだろ!?」
『そんな固いこと言わずに頼むよ!趣味も合いそうな子たちばっかりだし、顔を会わせるくらいいいじゃねーか。そもそもお前、家に帰ったって暇なんだろ?一人寂しくご飯食べるんだろ?』
「うっ・・・それはそうだけど・・・」

 痛いところを突かれてしまった。そのまま帰ることになれば、誰かと食べるということもなかった。そして、そうこうしているうちに話が進み・・・

『じゃあ、決まりだな!俺らもそのままスーツで行くから、仕事終わって直接上野駅集合な!』

 私は結局合コンに足を運ぶこととなり、ため息をつきながら電話を切った。その瞬間終業のチャイムが鳴り、トイレの外から社員の声が徐々に聞こえてきた。

「やべ・・・仕事もう少し残ってたんだった・・・」

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 残っていた仕事を終わらせると、時刻は18時25分だった。まずい・・・今から会社近くの新宿駅に滑り込んだとしても、間に合うか間に合わないかのギリギリの時間だった。私は足早に新宿駅へ急ぎ、なんとか電車に乗り込み、初里には『もしかしたら遅れるかも。その時は先に行ってて。』とLINEを送った。その時に店の名前も聞いておいた。
 そしてようやく上野駅に18時54分に到着した。だが、ICカードで改札を通ろうとしていたところで不運にも残高不足でバーにせき止められてしまった。

「くそ・・・こんなときに・・・!」

 普段は中央線を使って定期代で乗り降りしているのだが、今回上野駅に行くにあたって山手線を使っており、定期圏外な上にICカードには121円しか入っていなかった。チャージ癖がついていない自分を怨みつつチャージをしようかと財布を確認すると、これまたお札が1枚たりとも入っていなかった。
 「(あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!)」と心の中で悲鳴を上げながら、駅員にICカードを渡して清算してもらおうとした。ところが、そこでも機械の不具合で読み取りに時間がかかり、結局改札を抜けた時には19時を過ぎていた。

 「(こういう時は焦ったら余計遅れてしまう・・・初里達はもう先に店に行ってるだろうから落ち着いてこうどうしないと・・・ってまずはお金降ろさないと)」

 そう思いながら早歩きで近くのコンビニに入り、キャッシュカードを財布から出そうとしていると、手が滑ってカードを落としてしまい、そのままATMの下の隙間に入り込んでしまい、思わず枯れた声で叫んでしまった。

 「(Nooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

 何故ここまで不運に見舞われなければならないのだろうか・・・そう思うと涙があふれそうになってくる。あまりのショックに絶望に暮れていと、そこに・・・

「あのぉ・・・よければこれ使ってください。」

 一人の女性が駆け寄ってきて自撮り棒を手渡された。涙声になりながら深くお礼を言い、ATMに這いつくばって隙間に自撮り棒を差しこんだ。何度か差したり引いたりして、ようやくキャッシュカードを取り戻すことができた。自撮り棒を貸してくれた女性にお礼を言った。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。お礼に何か奢りたいのですが・・・」

 と言ったところで

「すみません、この後予定があるのでお詫びは結構ですよ。こちらこそ、どういたしまして。」

 その女性はくるっと背を向けて、コンビニから出て行ってしまった。「いいお方だったなぁ・・・」とその優しさに浸っていると、突然スマートフォンがブルブル震えだした。そこで我に返り、今日合コンに遅れていることを思い出した。急いでポケットからスマートフォンを出して画面を確認すると、初里からだった。

『もしもーし、もうすぐで乾杯するけど来れそうか?』
「もしもし。すまん、いま近くのセブンイレブンでもうすぐで店につく。」

 どうやら、私が心配で電話をかけてきたらしい。もうすぐで到着することを伝えて電話を切った。急いでお金を下ろして、コンビニを後にした。

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 上野駅から徒歩3分のところにある海鮮居酒屋『寄せ屋 上野』。ここが今日の合コン会場である。カジュアルな雰囲気で、2時間で40種類ものお酒が飲み放題。「お刺身五種盛合せ」が売りであり、毎朝市場から鮮魚を仕入れているんだとか。
 そんなお店の玄関口にやってきた私は、「今日はどんな方たちがいるのだろうか」と初めての合コンに緊張しつつも、意を決した表情で入店した。

『いらっしゃいませ~!』

 板前さんだろうか。威勢のいい声が店内の入口に響き渡る。そのあと調理服を着た案内人が現れ、この店を予約した初里の名前をいうと、「ご案内致します」と言って誘導してくれた。
 
「おせーぞ!もう乾杯やっちゃうぞー!」
「全くー、何やってんだよぉ~」
「遅れてすまーん・・・ん?」

 こちらに顔を向けて呼んでいる初里達を見つけて席に向かっていると、初里の右前に座っている女性に見覚えがあった。その女性はこちらに視線を向けると、目を見開いて驚いたような顔をした。

「あっ、さっきコンビニでATMの下にキャッシュカードが入っちゃった人だ!」

 と先ほどの女性がいうと他のメンバーが声を揃えて『えーっ!?』と驚愕していた。私も慌てて席に着き、

「さ、さぁ乾杯しようk・・・」
「なになに?コイツが何か面白いことでもやってたのか!?」

 誤魔化すように乾杯の音頭を取ろうとしたとこで、隣に座っていた初里に遮られてしまった。しかもさっきの出来事が何か気になるようで、傍から見ても黒い笑みを浮かべているのが分かる。

「さっきこの人が、コンビニのATMの前で跪いててですね・・・」
「や~~~~~め~~~~~ろ~~~~~!!!!!」
「「「あはははは(爆笑)」」」

 早速恥ずかしい一面を見せてしまい赤面してしまった。そして、みんなの笑いが落ち着いたところで、ビールグラスを掲げて改めて私は乾杯の音頭をとることに。

「えー、では皆様・・・今回はこの合同コンパにお集まりいただき、誠にありがとうございまs・・・」
「かんぱーーーーーーーーい!!!」

 横槍で入ってきた初里に言葉を奪われ、『カチーン』と音を豪快に響かせて乾杯が始まってしまった。

「まだ言い終わってないんだが!?」
「堅苦しいゾ!もうちょいゆる~くいかないと!ほら、乾杯!」

 うやむやになってしまったが、一応全員とグラスを当てて回り、ごくごくとビールを喉に流し込んだ。そして、時間を置いた後にそれぞれの自己紹介が始まった。最初に男性陣が自己紹介をはじめ、自分の誇れることをアピールしていた。
 私は、とりあえず『気ままに旅に出ることが好きなこと』、『遠くまで行って、そこで食べられる美味しいグルメを食べること』、『音楽ゲームが趣味ということ』を紹介した。その内容に、男性陣は「うんうん」っと頷き、女性陣は「いいね~」「楽しそう!」など良い印象を与えていたようだ。
 女性陣の自己紹介もスムーズに進み、最後に、コンビニで会ったあの女性の番が回ってきた。

「私の名前は、"鷺沢凛(さぎさわ りん)"と申します。あの鷺沢文香の姉です」

 その言葉を聞いた瞬間、思わず立ち上がってしまった。それは以前にその妹さんと会ったことがあったからだ。周りから注目を浴びながらも恐る恐る声を発した。

 「あ、あの・・・妹さんにお話ししたことがあります。その時、オススメの本を教えていただいたのですが・・・」

 と話を続けようとしていたところに、最初のお通しが運ばれてきたところで思考が停止し、「す・・・すいません」と苦笑いで座り直した。彼女の自己紹介も途中で切れてしまい、気持ちがちぐはぐなまま合コンは進行。すぐさま私は孤立してしまい、美味しいはずの料理も、味が分からなくなっていった。
 それから、どんどん料理が運ばれてくると、他の男性陣は思い思いの楽しみ方で女性陣と食事を口に運んだ。そんな私は、鷺沢凛の顔から目を逸らしながら黙々と料理を食べていた。いろんなことが頭の中でぐるぐる彷徨っていると、彼女の方から口が開いた。

「あの・・・もしよければ連絡先交換しませんか・・・?」

 まさか連絡先を聞かれるとは思っていなかった。「いいんですか!?」と興奮気味になりながらも、彼女のLINEと電話番号を交換した。やがて私は酒に酔ってしまったのか、いつの間にか彼女の向かいの席で眠ってしまった───。

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 長い夢を見ていた気がする。いや、夢じゃないと思う。瞼を開くと、白い天井を見上げていた。ここはどこなのだろうか、居酒屋で連絡先の交換をしたところまでは覚えている・・・そんなことを思っていると、ささやかれるような甘く高い声が聴こえた。

「おはよう」

 その目の前には、鷺沢凛が私を正座して見下ろしていた。

「り、凛さん!こ、ここはどこなんですか!・・・うぐっ!?」

 私は顔を赤らめて慌てて起き上がろうとしたが、鈍い頭痛が襲ってきて、再び横になってしまった。・・・二日酔いだ。
 鷺沢凛は、私が目を覚ますのを確認すると、彼女は顔を逸らしながら言葉を発した。

「ここは・・・ホテルですよ。あなたが居酒屋さんで眠ってしまったので、ここのホテルまで私も付き添いでタクシーで運んでもらったんですけど、この部屋に寝かしつけようとしたら・・・わ、私まで隣で眠ってしまって・・・」

 最後の方は顔を真っ赤にして手で隠しながら声が小さくなっていた。というか・・・私はホテルに連れてこられて不本意ながら彼女と二人きりで眠っていたのか・・・そうと思うとこっちも目を合わせられなかった。そして彼女は静かにベッドから降りると、自分の荷物を持って部屋から出ようとした。その去り際。

「ここのホテル代は私が出しておきますね・・・あと、昨日はありがとうございました。とても楽しい合コンでしたよ。またお会いできるといいですね」

 そういうと、部屋から出て行ってしまった。一人残された私はゆっくり起き上がり、ドアを見つめたまま茫然としていた。しばらくして我に返り、さっきの出来事を振り払うかのように洗面所に向かう。そして、身支度を済ませて、荷物を持ち、チェックアウトを済ませた。
 外は既に日が高く昇っており、私に向かって照りつけている。

「このままどこかに行こうか・・・」

 そう思いながら上野駅に足を進ませた。

11話(担当:こいさなさん)

「うんうん、今週末の土曜、わかった。じゃあねー」
や っ て し ま っ た 。


大学の頃からバイト先が同じだった3人の友達と私。
そのうちの一人が大学院を修了して以来、毎年年末に家飲みをするようになり数年が経った。
話を肴に少しの酒を飲んだり、ゲームをプレイしたり、去年はあのスマブラで盛り上がったのを思い出した。
しかし何故こうも「一人の時間が充実し始めた」この時期に、よりによって私の家が開催地なのだろうか。
まあ今まで一度も受けて来なかった私が悪いのだが。


というか今日月曜日でしょ...?4日後じゃん.........
ほんとにいけんのか4日後?仕事側もクソ忙しいぞ??
去年の記憶を頼りにしながら、土曜日に向けての準備を進めていく予定...
だったが、25時の眠気に負け考える暇もなく眠ってしまった。おやさな~


ビールを用意する前に、料理を振る舞えるか考えた。
通退勤の時間帯は相当な寒さで、毎日のように温かいものが欲しくなるから温かいものに絞る、
その中で上手に振る舞えそうなものは...わかった、鍋だ。
思えば相撲を観に行ってからというもの、鍋のようなものは一度も食べていない。
慣れていないので作る体力や時間もなければ、冷え込んだときはラーメンに逃げてしまうことが多く
未だ食べられていなかった。
こんな時こそ活用するのはSNS。「鍋をするならどんな具材が良いと思いますか」という趣旨の投稿を済ませ、他の仕事を進めよう。


年末の繁忙期に入ったうちの会社のことなので、私も含め社員全員がピリピリしながら業務をこなしている。
この時期は例年のごとく忙しくなりそうだ。
そんな合間を縫って休憩しつつ一年の思い出を喋るのが当初のこの集まりの目的だった。
そんな意味では忘年会と同じことをしているのだろう。けっこう有意義かもしれない。
溜まっていく忙しい仕事のこと。最近楽しみなプライベートのこと。
一つ一つ丁寧にこなしているハズなのに
何故だろう、タスクが右肩上がりに増えていくと錯覚してしまう。


メンバーに鍋のことを伝えると
「じゃあ好きなものを持って行って良いんだな」としきりに騒ぎ立てられた。
それじゃあ闇鍋じゃん...
変な心配をしながらではあるが手始めに万能なイメージの白菜や大根を手に取り
結局は一通りの野菜と豚肉を購入し、同時に缶ビールも買うことにした。
あとは何が足りない?


そういえば、家にはおそらく人数分のコップが無い。
あるとすれば愛用のガラスコップと、広島に行った時に不便だったため買ったマグカップ。そして...
「こけしコップ...買ったなあ、そういえば。」
何かの土産で買ったこけしならあった。
裏返すと空洞になっていて、コップとしても使えそうだと思い購入したものだった。
去年は紙コップだったのでどちらにせよ今年もそれで良いかとは思ったが、
ホコリを被る前にいつかこけしも使ってやろう。




「着いたよ、歩かせてごめんね~」


「「お邪魔しまーす」」
「結構綺麗な部屋だね」


「鍋だよね、久し振りだなあ」
「そっか、ポン酢ってある?」「あ、ごめん!忘れてた...」
「大丈夫だよ、味噌持ってきたから!(ドヤ)」
「えっお鍋に味噌入れるの?」
「だめかなあ、ポン酢の代わりに...」


「あ、これけっこう美味しいね」
「結構いろんな野菜が入ってて良い感じだね~」
「味噌汁みたいになってるけど。」
「てかこのお肉、もしかして、"しゃぶしゃぶ"出来るんじゃない?」
「いいね、やってみる?しっかりしゃぶってね


「私の差し入れはこちらです~」
「「スマブラ!」」
「これはスマブラ鍋かな?」
「イカの出汁がでそうだよね」
「最後また少しプレイしようよ」


「お鍋に会う音楽ってあるの?」
「音楽ねー、最近はゲーム系とかしか聴かないからなあ。」
「けど軽めのジャズとか結構合うと思うよ、あとはボサノバとか。」
「ボサノバ?」
「私が初めて買った削除さんのアルバム、食べ物に合っていい感じだから聞いてみてよ」


「今年は何か大きな何かあった?」
「私は特にはなかったかな~。そいや旅好きになったって言ってなかったっけ?誰かと結ばれたりした?」
「質問が多い!そういう『運命のどうこう~』みたいなのはやっぱりなくて、気楽に一人で旅してる感じ。
例えば草津温泉の方に行ったり、広島に研修に行ったり、その帰りに京都で観光したり...」
「すげえなあ。」「だって何処か行くのって面倒じゃない?どう?」
「面倒かあ。,,,まあそう思えばそうだけど、いろんなことがあって楽しいよ?
ついこの前は鷺沢さんを見かけてさ,」
「えっ!?いいなあ~」「それは羨ましい~」


「いやー旅とかしっかり楽しんでんじゃん、リア充だなー」
「だってこいつ何処へでも行くし(?)さ、料理も読書もゲームも(?)出来て、仕事もこなせるんだよね?
この人優良物件だよ!優良物件!」
「いや仕事大変だしこれ以上は厳しいかなぁ,,,
そっちはどうなのさ、誰かと結婚とかしないの?」
「あっ...ブラック害虫会社のせいで無理w。」「「わかるわ~」」


「ちょっと早いけどスマブラやりたいな~」
「テレビとかないけどいけるの?」
「ポータブルなんだよね、だから画面小さいけど多分いけるよ」


「あーマジかー、また負けたわ~」
「ホウオウつよいなあ、避けれない」


「去年撮ったあの面白い試合見ていい?」リプレイポチー
封印、完?」
『Three!! Two!!(何もしていないのにクッパが落ちる) One-GAMESET』
「クッパwwwwwwwwww」
「ヤバwwwwwwwww」
「なんだこれwwウケるwwwwwww」
「ちょっと待ってwwもっかいwもっかい見ようよこれw」


『Three!! Two!!(何もしていないのにクッパが落ちる)』
「「wwwwwwwwww」」
「いやヤバwwwwwwwww」
「これwwwwこれwwwwおもろwwwwww」
「えーもうおもろすぎるww」
「ちょっと次3回目なんだけど」
『Three!! Two!!(クッパが落ちる)』
「「「「wwwwwwwwww」」」」



「まだ早いけどなんか暗いし、駅まで送ってくね。」
「ありがとね~」




ただただ楽しかった。
目の前の散らかったテーブルがいかに私が楽しんだか示しているようで、
何故だか今まで味わうことのなかった強い虚無感にとらわれた。


「どんどん厳しくなるから休めないなあ~」という話を、帰りがけに少しだけした。
部長に「今から3カ月くらいまでなら特に忙しくはないから、休暇を取っても恨まれまい」などと言われてから
散々使っていった休暇も、自分の中では役立っているのかもしれない。
一人の大人として当然仕事を二の次にすることは出来ないが、趣味の枠を大きく広げることは
自分にとっての大きな利になり得ると感じた。


さて、今日は疲れたし酒も飲んだし、明日しないといけない仕事もいくつかあるから、早寝してそれに備えようかな。
最近忙しさで開けていなかったソシャゲを起動し、後片付けを始めることにした。


「あいつらもどこかに連れてってあげたら、喜ぶかなあ。」

10話(担当:JACKEYさん)

ある朝、高らかに鳴り響くアラームを止めた
「んっ…って今日は休みじゃないか…」
カレンダーを確認すると、珍しく入っていた平日の休みだった。
しかし休みという事をすっかり忘れてしまっていたので、やる事がない…
「ちょっと街にでも行って見るかな…」
そう思い立ちいつも通りの朝食を摂り、着替えをし、街へ出掛けることにした。
いつも通っている駅から定期をかざしホームへ向かう。通勤ラッシュの時間帯を過ぎた駅のホームは意外と人の数がまばらになっている。
電車が来た、すぐさまに乗り込む。
電車の中はホームとは違い意外と混んでいるようだ。
私は空いていた席へ座り込んだ。
するとどうだろう視界が狭くなっていく。
そうだ、私は昨日仕事が思いの外長引いてしまい遅く帰った。食事を摂ってからすぐさま寝たが、まだ疲れが抜けきっていなかったようだ。
そううとうとしているとどうだろう。アナウンスから聴きなれない駅名が聞こえてきた。
普段降りている駅からかなり寝過ごしてしまったのだ。
私は慌ててその駅で降りた。しかし次の電車までは45分以上ある。さてどう時間を潰そうか…
私は駅から降りて周辺を回ってみることにした。駅の広場からは多くの民家や商店が見渡せた。
さて、ここには何があるだろう、そう思い駅周辺のマップを確認しに行った。
意外と時間を潰せそうなところはありそうだ。
上にある時計を見ると12:45を指していた。
「そうか、もう昼なのか…」
私はそう思い周辺をふらついた。
すると遠くに『お食事処』と書かれた暖簾に、『営業中』の札が見えた。
私は「しめた」と思い、その食堂へ入っていった。

「はーいらっしゃーい!」という店主の声が店内に響いた。
客はスーツを着たビジネスマンが2人カウンターに座っていた。
その食堂は広さはごく何処にでもあるような食堂と同じ感じろ広さでカウンター4席、テーブルが二つありそこに椅子が4席づつあった。
私はカウンター席に座りメニューを見た。
一番人気メニューだと言う日替わり定食を頼むことにした。
私は注文を聞きに来た店員のおばちゃんに日替わり定食をお願いすると、「はーいまいどありー」と気前よく聴き受けてくれた。

おばちゃんの「はーいお待ちどうさまー」と声と共にやってきた定食は、大ぶりのアジフライに大盛りキャベツが盛られたものにご飯と味噌汁というとても食欲をそそるものであった。
「いただきます」と呟いてアジフライにソースサッとかけかぶりついた。
「うまい…」一口食べればサクサクの衣に脂の乗ったアジが共に絶妙なハーモニーを奏でているこれはとてもうまいと言わざると得ない状況だ…
そしてこのキャベツもシャキシャキで新鮮でうまい。
このアジフライのハーモニーと重なり合い見事なまでの三重奏(アンサンブル)を奏でている…
そこにご飯を頬張る。あぁなんて幸せなんだろう…
そういう想いで頭いっぱいにしつつ定食を平らげた。
「ごちそうさま」というとおばちゃんが「ありがとねー」と微笑んでくれた。
わたしは勘定を済ませ店を後にした。
腹も一杯だしあの笑顔で胸も一杯になった。

さて時刻は2時、もうすぐ電車が来る頃だろうと思い駅へ向かった…

9話(担当:鷺沢文庫さん)

 明くる週の土曜日。
午前中に出来る仕事を手早く済ませ、私はとある場所へ向かうための荷造りをしていた。
着替えにタオルに軽食、あとはモバイルバッテリー。
ほとんど荷物がいらないのが今回の行き先の利点だ。
準備を済ませ、戸締りを確認し、履きなれた靴を履き「行ってきます」と小声で部屋に向かって言い残し自宅を後にする。

普段会社へ向かうために歩き慣れたこの街も、目的が違うと不思議と違った景色に見えてくる。
急いでいる訳ではないので、いつも以上に周りのことがよく見えているからだろう。
他愛のない話で盛り上がる女子学生、腕時計を気にしながら駆け足でどこかに向かうサラリーマン、客がつかまらず暇そうなタクシードライバー…人間観察もしてみるとこれはこれで面白いと感じた。

そうこうしているうちに目的地が近づいてきたわけだが、その前に腹ごしらえをしなければ。どこかいい店はないだろうか…
散々悩んだ挙句、結局いつもの蒙古タンメンにすることにした。
寒くなってきたこの時期、身体の芯から温まる唐辛子は非常にありがたく、また癖になる辛さで食欲も一段と増すのだった。

店に入ると、同じように暖を求めて足を運んだであろう客が何人か見受けられた。
昼時から少しずれた時間だったおかげか、そこまで混んではなくスムーズに入店できた。
食券機でド定番の『蒙古タンメン』を購入。王道なこの味が絶品だ。
「いただきます」とまずは一口。うーん、辛い。でもこれが美味しい。
汗をかきながら麺を頬張る。タオルを多めに持ってきておいて正解だった。
ものの十分程度で完食。すっかりこの辛さにも慣れてしまっているので完全に病み付きだ。

「ごちそうさまでした」
店を後にし、外に出るとヒューと冷たい風が吹きつける。
唐辛子のおかげで身体が芯から温まっているので、逆にこの風がとても心地いい。

15時半過ぎ、今回の旅(というほどの距離でもないが)の目的地に着く。
『BOOK AND BED TOKYO SHINJUKU』という、巷で話題の『泊まれる本屋』だ。
何故急に泊まれる本屋に泊まりに来たかというのも、先日同僚のYが「お前、最近旅が趣味になってるんだって?だったら、近所に泊まるってのはどうだ。旅って言うと遠出のイメージがあるかもしれないが、意外と近所でも知らないスポットがあるかもしれないだろ」と言ってきたのが始まりだった。
なるほど、確かに近場で面白いところを探してみるのも悪くない。あまり疲れないし、仕事との切り替えも幾分楽になりそうだ。
という経緯があり、あまり観ないテレビをつけ何かないかと探していた時に、とある情報番組で偶然紹介されていたのがこの『泊まれる本屋』だった。
私自身、本を読むのは嫌いではない(どちらかと言えば好きなほうだ)ので即決でここに泊まることにした。
シングルで1泊5,300円。決して安いとは言えないが好きな時間まで本が読み放題、ということを考えると妥当なのかもしれない。

チェックインを済ませて自分の部屋(?)へ向かう。
本棚の中にぽっかりと穴を開けたようなその部屋は、幼い時の秘密基地の様なものを思わせる、ワクワク感があった。

 早速何か本でも読もうか、と自分の部屋近辺の本棚を見まわし始めた時、複数人がこの『泊まれる本屋』を訪れるのが見えた。
大きい何かを持っている人たちが入ってきたようだ。ここで何をするのだろうか…
すると、大きい何かを持った男たちが、何かをする準備を始めた。
目を凝らしてよく見てみると、それはカメラだった。これから撮影でもあるのだろうか。
しばらくすると、奥から一人の女性が入ってきた。長い前髪の奥に光るコバルトブルーの瞳が特徴的だった。
その女性が本を持ったり、棚にもたれかかったりしているところを、カメラマンが撮っていく。生の撮影の仕事を初めて見れた私はラッキーだと内心テンションが上がっていた。

 撮影も終わったらしく、プロデューサーらしき人物がカメラマンと話をしている。
それを横目に、撮影が終わった彼女は一目散に本棚を眺め、しばらくして一冊を手に取り椅子に座って読み始めた。
本を読む彼女のその姿はまるでどこかの絵画のようで、ただただ美しかった。自分が本を読みに来たことを完全に忘れるほど、彼女に魅入っていた。

 しばらく彼女を眺めていると、彼女がこちらに視線を向ける。
ま、まずい。ずっと眺めていたので完全に変な奴に思われたに違いない。
すると、彼女は立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。
緊張でガチガチになった私の前に彼女が立ち、口を開く。
「あ、あの…もしかしてこの本が気になられたのでしょうか…」
…想定外だった。彼女はどうやら自分ではなく本に興味があると思ったらしい。
しかしながら「貴女のことを見ていました」という訳にもいかない。返答に困り言葉に詰まっていると、彼女の方からまた話し始めた。
「突然お声掛けしてすみません、驚かれましたよね…私、鷺沢文香と申します。」
サギサワさん。どこかで聞いたことのあるような無いような…必死に記憶を遡る。
あっ、そうか、サギサワさんってあの…
「もしかして、アイドルの…」
「はい…一応、アイドルをやらせていただいております」
そうだ。彼女はうちの会社でも人気の読書系アイドル、鷺沢文香さんだ。
話に聞く程度しか知らなかったが、とても穏やかな雰囲気で初対面ながら意外と緊張しきることなく話ができる。
「今日は撮影のお仕事だったのですか」思い切って聞いてみる。
「はい。どうしてもここで撮影をしたいと、お願いして来たんです」
流石、テレビの特集でも『インスタ映え間違いなし!!』と言われているだけある。
夜はオレンジの明かりが店内を優しく照らし、幻想的な雰囲気を醸し出す。
読書アイドルの彼女からすれば、最高の撮影スポットだ。
「…本当は、撮影の後に本を読みたくてここにしたんですけどね」
読書アイドル、抜かりなし。撮影後の事もきっちりと考えられていた。いや、むしろ撮影後がメインか。

数十分した頃、プロデューサーに呼ばれたようで彼女は本を少々名残惜しそうに元の場所にしまった。
「悪かったね、本を読む時間を奪ってしまって」立ち話に誘って読書の時間を奪ってしまったことを悔いる。
「いえ…こちらこそ読書の時間を削ってしまい失礼しました」
どこまで出来た娘なのだろう。他の同僚と同じように、自分も彼女のファンになろうと決めた。
「あ、最後に聞きたい事が」
「? なんでしょうか…?」
どうしても尋ねたいことがあって引き留めてしまった。
「オススメの本って、何かありますか…?」
そう聞くと、少し考えてから彼女は本棚から数冊を引き出し、私に手渡した。
「この作品は如何でしょうか。読みやすくて、それでいて読みごたえがあると思いますよ」
それは本をさほど読まない私でも名前を知っている、直木賞作家の冒険活劇だった。
「ありがとう、早速読ませてもらうよ」
そう言うと、彼女は少し微笑み、こちらにお辞儀をして店を後にした。

 彼女の姿が見えなくなるのを見送った後、さっそくその本を読むことにした。
一人の男が突き付けられた非情な現実に抗っていく、王道な展開だ。
しかし流石は直木賞作家といったところか。
言葉のつなぎ方が非常にスムーズでつっかえることなくスラスラと読める。どちらかと言えば読むのが遅い私にとってとてもありがたい作りだった。
シリーズものであったため、読み終わっては次、読み終わっては次、となかなか手が止まらない。

 そうこうしているうちに時刻は深夜の0時を回っていた。長編なのでまだまだ続きがある。
だんだん眠気が強くなってきた気がする。もう少しだけ…あと数ページ…重たい瞼を必死に持ち上げて読み進めようとしたが、力尽き私は夢の中に落ちていった。

 翌朝9時。心地よい目覚めだ。自宅では味わえない寝起きの本のインクの香りが良い。
部屋を出てみると他の宿泊客が既に本を読んだりしていた。
私も昨日の続きを読むことにした。たまには読書だけに没頭するのもアリだな、と感じる。
粗方読み終えた私は朝食を食べることにした。
この『泊まれる本屋』にはカフェがある。そこで軽く済ませようと初めから決めていた。
この新宿店は初のカフェ併設店らしく、黒がテーマになっている。
人気商品の『ダークラテ』と『ダークBTトースト』を注文する。
まずはダークラテを一口飲む。甘さが控えめで苦みが強い、だが苦すぎず丁度いい。
次にダークBTトーストを一口。ベーコンとトマトの相性は抜群で、バターのしみ込んだパンも絶品だ。
私は朝食を食べながら先程の続きをまた読んだ。夢中になるあまりラテが冷めてしまったが、またこれもここならではの楽しみ方なのかもしれない。

チェックアウトを済ませ、近所の銭湯で風呂を済ませた後、私は自宅への帰路にたった。
帰り道、何の気なしにラジオを聴いているとDJの口から放たれた聞きなれた言葉が耳に響いてくる。
『__はい、という訳で!今回はアイドルソング特集と銘打って様々なアイドルソングを紹介していきたいと思います!次のナンバーはイチゴパスタさんからのリクエストで、「Near to You」です!えー、こちらは346プロのjewelries!というプロジェクトの第三弾メンバーによる曲でして、第7回シンデレラガール総選挙で5位を獲得した鷺沢文香さんもメンバーの一人なんですよね~』
これも何かの偶然なのか、鷺沢さんの参加している曲がタイミングよく流れ始めた。
明るいメロにノリの良いリズム。癖になりそうだ。
そしてこの曲を聴きながらまた心の奥で彼女の今後の活躍を祈るのだった。

丁度曲を聴き終わったと同時に自宅に到着した。
「ただいま」小さく住み慣れた部屋に呟く。
近場ではあったが非常に充実した時間であった。それに本物の鷺沢さんにも会えたことだし、会社のみんなに自慢してやろう。…いじられるんだろうなぁ。
そんなことを考えながら、はやくも次の休みにどこに行こうかと思った。
すっかり旅行癖がついてしまっている。出費には気を付けなければ…

8話(担当:WIZARD1)

土曜・朝6時半。勿論いつも通りの時間に目覚ましは鳴る。
すぐに朝飯も食べてトイレ・着替え…仕事でやる一連の事をいつもと変わりなくこなす。
今日は水曜日でもないが2日前に炊いたご飯を食べきりたかったので
おにぎりにして食べて済ませた。おにぎりの具って王道は何でも行けるよね。

「さて…行きますかー」
2ヶ月間の広島での研修生活が終わり、この自宅からは離れることになった。
木曜で最後の勤務が終了し、次ぐ金曜日は自宅に帰る為の荷づくり日。
夕方にはすべての荷物をバッグに収めきり、夕飯は名物・カキ料理を食べた。
広島でやりたかったことはすべてやり切った私は、それとなく今日までお世話に
なった自宅にちょっとお辞儀して去って行った。ありがとうね。

自宅からほど近い最寄りの駅から電車に乗る。この電車・山陽本線も今日が最後だ。
今思ってみれば本当に工場の空気も悪さなど致命的だったが、
広島での暮らしは人も少なすぎず・多すぎずでそう悪いものでもなかった。
あれ?でも自分の好きな音ゲーとかはあまり遊べてなかったか。それは残念。
色々と思いを巡らせるうちに電車は宮島口駅を発車する。反対側のホームには今日も
朝早くから厳島神社への参拝・観光の人たちがあわただしく溢れかえっている。
そこそこ近所ではあったが厳島には1回行ったきり、しかも時間が無かった為
満足に観光できなかった場所でもあった。呉はしっかり遊べたんだけどなあ…。
次は後輩Sと一緒に休みを取ってゆっくり広島観光でもするかあ、と考えながら
のどかにも都会にも見える広島の街を眺めていた。

そうこうしている間に電車は広島駅。これでここの電車ともお別れ。
キャリーバックを転がしつつ新幹線の券売機で広島から東京行きを…

「…あれ?もしかしてだけど」
ふと私の中に変なアイデアが浮かんできた。
今日これから帰っていくと国分寺の自宅には夕方前には着ける。
しかし、万が一があるとマズかったので私はまだまだ大量に残っていた有給を
数日使わせてもらい東京に戻ってからの勤務は火曜日にしたのだ。
ここで帰ったところで家でやる事と言えばゴロゴロと周回、おまけに好きな
スマホのゲームや音ゲーはやっておきたいイベントも無い。しかも3日。
そして今いるところは広島。途中では当然神戸・大阪・京都・名古屋と大きな都市を
新幹線で通る上、かつて別の場所に研修に行ったときに先輩から
「乗車券だけはその日だけ有効の切符にはならない」というような話を聞いた気がするのだ。


「せっかくのチャンスなら…やるしかないか」
悩みに悩み…複雑になりそうだったのを察した私は券売機で買うのを辞め、
窓口で新幹線の切符を買う事にした。
昔のように仕事でだけ満足していた自分とは似ても似つかない、
なんだか違う人みたいな気分だった。

12時、京都駅。
「…来ちゃったなあ」
キャリーバッグを預け身軽になった私は気分も良く駅を出る。
中学・高校で来たことはあったが社会人になってから純粋な観光でここに来たのは初。
帰り道で通るとはいえ、まさかその道中で京都観光をするなんて
少し前はおろか昨日までの私じゃ思いつきもしなかっただろう。
しかし世界有数の魅力的観光地と言われるだけある京都、そんなのんびりとした町ではない。
駅を抜けた私が目の前で見たのはバス待ちをする大量の人、人、人。
およそ一般的な京都のイメージとはかけ離れたとても現代的で巨大な駅とこの駅前広場とで
物凄い数の人が行き来している。東京より多いんじゃないかなあ…?
私もその人だかりに混じり、京都では今まで見たことが無く駅からも近い
三十三間堂をまずは目指してフリーパスを購入して進んでいった。


三十三間堂は1000体もの千手観音の仏像が置いてあることで有名なお寺であり
その並びは実際にも圧巻な見た目だった。
やや薄暗めの堂内に仏像が隙間なく置かれる光景はいわゆる「荘厳」とでも言うのか、
国宝指定されるだけのとても美しい光景だった。
そしてよく見るとそれぞれの仏像は1個1個が手作りでちょっとずつ違っているらしく
私のような知識が無い人でも見て分かるほどの違いがあるものもあるようだ。
中学・高校の時はやはり金閣寺や伏見稲荷といった派手さのある建造物が
印象にはっきりと残っていたのだが、今見てみるとこういった静かな雰囲気のものも
良いように思える。いやむしろ今だったらこっちの方が好きかも。
堂中央にて頂ける御朱印も無事頂き、私は三十三間堂を出た。

とても充実している場所に違いないが、折角の京都だから一箇所にとどまってる訳にもいかない。
急いでバス停に戻り次の場所に向かう。次は…あれ?
よく考えたらバスの便を考えてなかった。
市バスの地図を見てここから行けそうな場所を探ってみると「平安神宮」があるようだ。
ちょうどバスが来る。このバスは行ける物らしい。ラッキー。
大混雑のバスだったが私は迷わず飛び乗って行った。


混んではいるが外の景色は一応見えるので私はそこから京都の街並みを楽しむ。
楽しむと言ってもこの辺は京都で有名な建物の外観を特に厳しく
取り締まっているエリア…と言う訳では無いようで、普通の中小規模の会社や
住宅が立ち並んでいるところをバスは走っていく。
逆に言うと普通の街並みの中でいきなり有名な観光地がドーーン、と出てくる
ような感じになっているようだ。そりゃ良いのか悪いのか。
さらに言えばバスの中も想像していたのとはかなり違う。半分くらい、いやそれ以上は
外国の人のようで車内は最早何語かもわからないくらいレベルの状況で
会話が飛び交っている。日本語を聴くと安心するレベルだ。
そんなことを考えているうちに、バスは平安神宮の入り口に到着したようで
私はそのまま外国の人に混じりながらバスを降りた。


平安神宮。昔京都に合った平安京の建物を「再現」して作られたという
神社であり、降りた時点から分かる極めて大きなスケールの場所だ。
これでも実際昔にあった平安京よりは縮小しているらしいが、それにしたって
見る物を圧倒するほどの凄まじい大きさだ。
中の広間は白砂が敷き詰められており、広さも相まって一種の
神々しさすら感じるほどだった。
当然奥の参拝場所まではかなり歩くのだが、この石がなんだか砂浜みたいに
見えてきて退屈も感じることなく参拝を済ませた。
看板などにある神社の説明を見てみると「約20000坪の半数近く、約10000坪は
日本庭園『平安神宮神苑』が占めている」とある。い、一万…。
とても一日程度では満喫しきることは出来ないほどの規模に私はあっけにとられた。
この平安神宮が今回私の京都旅では一番印象に残った場所だった。このあまりにも圧倒的な
美しさ・広さを持った名所のインパクトはしばらく忘れられそうにない。

横にあるお土産屋では後輩Sをはじめ、会社の人たちに渡すための土産を買った。
さっき京都で旅行することをSNSで言ったところ後輩が「八つ橋かってきてください!!」と
熱烈なアピールをしてきたのでほとんどお土産は八つ橋で固めた。
しかし八つ橋と言えば焼いたものと生のもの両方あるがどっちの事を指してるのかは
後輩のメッセージでは分からなかった。両方買っとくだけのお金があって良かったと安心の私。
時間を見ると午後3時。そろそろホテルの予約とかに動かないと京都駅に預けているだけの
荷物を持って行く際にとてもあわただしくやらなくちゃいけなくなりそうな気がする。
折角の京都の2日間、余裕を持って色々と楽しんでいこう。
空いているビジネスホテルを探しながらそう思った。




日曜日・21時。
「つ…疲れたあ…」
4時間近い旅程を経てついに私は東京・国分寺の家に帰ってきた。
あの後金閣寺でスマホを一回無くして彷徨ったりバスを完璧に乗り間違えて
ホテルのチェックイン時間に遅れたりと色々なアクシデントには見舞われたものの、
今日の帰り道の新幹線は特に問題も無く順調に生還(??)することができた。
夕飯も国分寺駅すぐ近くのカレーで済ませているのであとはもう風呂と寝ることしかやることは。
疲れていても私は面倒事をさっさと終わらせたいタイプなので風呂場にさっさと向かう。


「後輩、お土産喜ぶだろうなあ…」
八つ橋アピールをあれだけしてきた後輩だったのだ。これで喜ばなきゃ怒ってやる。
風呂に入りながらニヤニヤしつつ仕事場の事を考える私だったが、同時にこんなことも考えた。


「…次、どんなところを行こうかな…?」
しばらくは仕事とその近場しか行けない日常生活しか送れないにも関わらず、
私は既に次の旅が楽しみになっていたようだった。

7話(担当:さえずりさん)

あまり広いとは言えない部屋に、喧ましいアラーム音が鳴り響く。
「う、うるさ…」
まだ寝起きだというのに、こんな音を聞かされて不快な気分だ。
思わず目覚まし時計を投げてしまったが、毛布に落ちたため壊れずに済んだ。
まぁ、私の力では壊すなんてことは不可能だろうけども。
それにしても、この目覚まし時計のアラーム音はあまりにも煩すぎる。
昨日、雑貨屋で一目惚れして買ったが、これは失敗だった。
次からは、きちんと性能も確かめて買うようにしよう。
そんなことを考えながら目覚まし時計を見ると、時計の針は12と6を示している。
せっかくの休日だというのに早起きをしてしまい、何だか残念な気分だ。
二度寝しようとも思ったが、何だか寝る気分にもなれない。
こればかりは仕方ないし、今日は何処かに出かけるとしよう。

歯磨きと洗顔を終わらせ、朝食を食べることにした。
チーズ入り卵焼きに、キャベツと胡瓜に胡麻ドレッシングをかけたサラダ、
ハーフサイズのトーストに、ぶとう3粒と、カフェオレ。
休日ということで、いつもの朝食よりも品数を増やしてみたのだ。
通常より拘ることができるのが休日のいい点だろう。
休日に感謝しながら、朝食を食べることにした。

「いただきます」
自分が作ったので美味しいと誇れるほどではないが、
自分の中では成功したと勝手に思っている。
特に、チーズ入り卵焼きは作るのが難しいのだが、
型崩れせず綺麗にできたので、個人的には満足な出来栄えだ。

「ごちそうさまでした」
食事というのは毎日、単調に繰り返されるものだが、
少しアレンジをするだけで、退屈な食事にも楽しみが生まれる。
これから休日は、朝食にこだわってみようかな。
そう心中で宣言をしながら、後片付けを終わらせたのだった。

「…食べすぎたかもしれない」
シャワーを浴びた後、メイクをし着替えた私は、駅に向かって歩いていた。
広島市内で遊ぶ予定だったが、このままだとお腹が苦しくて、遊ぶどころではない。
やはり、私の朝ご飯にしては少々多かったのかもしれない…。
どうせなら、いつものコーヒーとパンとフルーツで済ませるべきだったかな。
そんなことを考えながら、ようやく駅に着くことができた。
ICOCAを1000円分チャージした後、改札口にICOCAを通し、
ホームのベンチに腰を掛けスマホで時刻を確認すると、8:37を示していた。
電車の到着時刻まで5分弱はあるようで、安心した。

「まもなく、電車が参ります」
今日の予定を確認していると、列車が到着したようだ。
休日の8時台ということもあってか、車内に居る人数は疎らだ。
前の居住地は、常時人が多かったため新鮮に感じる。
この町は田舎で不便だが、人口が少ないというのは悪い事ではないのかもしれない。

列車に乗り込むと、電車はすぐに出発した。
私は、窓際の席に座り、景色を眺めることにした。
つい1か月ほど前、転勤で引っ越してきたばかりのこの県は、
慣れない事ばかりで、新鮮で目新しさに満ちている。
窓の風景は、光に反射する瀬戸内海と島がちな地形を映し、
田舎ならではの、穏やかさを描いている。
列車が少し進むと、牡蠣筏と僅かな砂浜が見え始め、
牡蠣の生産が盛んであることが、伝わってくる。
その先には、宮島に繋がる駅があり、観光客で賑わいを見せている。
最初は、田舎にも程がある風景が続いていたのだが、
駅が進むたびに、少しずつ街中へと入っていく。
また、駅の間隔も狭くなり、人数も段々と増えていく。
そして、私の降りる駅が、広島県の最大の駅・広島駅だ。
この駅では、たくさんの乗客が一斉に下車をする。
この先にも駅はあるのだが、需要はそこまで無いのかもしれない。

改札口を通り、西口の階段を降りると、広島駅の表に着くことができた。
蔦屋家電と言う意識高い系の家電量販店などの商業施設があり、
観光都市だからと慢心しているかと思えば、割と頑張っている印象を受ける。
西口を降りた目と鼻の先に、路面電車の乗り場がある。
色々と雑然としていていまいち分かりにくく、あまり観光客向けとは言えないだろう。
私も実質観光客みたいなものなので、綿密に表示を見ないといけない。

「えーと、本通行きはこれかな」
混乱しながらも、目的の場所に行くと思われる乗り場を見つけた。
周りを見渡していると、意外と待っている人が多く、驚いた。
路面電車は結構小さいので、座れるかどうか心配になる。
そんな心配をしていると、本通を経由する路面電車が到着したみたいだ。
車内を見てみると、乗客は殆どいないようで、安心した。
それを確認してから座席に座り、発車までを待つことにした。
路面電車の場合、発車までの時間にかなりの余裕がある。
私は普段使わないので、詳しくは分からないが、
地域密着型ということもあるのか、結構待ってくれる。
現在時点で、駆け込み乗車をしている人を待っているのだ。
普通なら、もうとっくに出発している所だろう。
その人が乗り込むと同時に、路面電車は発車した。

発車してから数十分、本通に着いた。
ここの駅では、かなりの人が下車をするようだ。
私も人の波に飲まれながら、本通に降りた。
路面電車の厄介な点として、交通状況にかなり左右されてしまう点だ。
今、信号が赤になっているせいで駅から離れることができない。
普通の駅なら、そんなこと気にする必要がないというのに…。
なんとなく苛立ちを覚えながら、青になった横断歩道を渡った。

歩くこと数分、私はPARCOの目の前にいた。
全くと言っていいほど土地勘がない上、軽度の方向音痴なので、
それなりに彷徨ったが、何とか無事に辿り着くことができた。
明確な目的は無いが、馴染みのある施設なので買い物しやすいのだ。
私は、新館と呼ばれる方の扉を開け、入っていった。

悩んだ末、この先の寒さを考えて、アランセーター風のカーディガンを買った。
スマホで時刻を確認すると、1時間程度経っていたようだ。
私は、重度の優柔不断なので、どれを買うか長時間彷徨ってしまう。
体力がない癖に、歩き回るので足が棒のようだ。
けれども、1時間というのは別段長くはないと思う。
女子の友達とショッピングに行くと、普通に3時間は過ぎている。
逆に、唯一の男子の友達とショッピングに行ったとき、
僅か10分で服を決めていたのが衝撃的だった。
まぁ、彼はガサツで無頓着なので、実は違うのかもしれないが…。

「次は、雑貨でも見ようかな」
私の趣味の1つに、雑貨屋さん巡りが入っている。
なぜなら、見ているだけで楽しめる場所というのは少ないからだ。
様々な小物が並び、色とりどりに主張する。
そんな光景に高揚感を高めながら、目的の場所へ向かった。

歩くこと十数分、私はPENCILという雑貨屋に辿り着いた。
主に、家具や照明など、インテリア系統の雑貨を取り扱うお店だ。
流石に、家具を気軽に買うことはできないが、
コップなどの小物は気軽に誰でも買うことができる。
私は、可愛らしくレイアウトされた商品を眺めながら、
ちょっとした充実感を味わうのだった。
1時間ぐらい見た末、私は新しいコーヒーカップを購入した。
岐阜県のトビカンナという技法で作られたらしく、
その一つ一つに拘りが感じられる温かいコーヒーカップだ。

もうすでにお昼時になっており、お腹の隙間も感じられる。
せっかくだし、食ベ口グで見つけたお店にでも行ってみよう。
目的のお店は、ここから角を曲がった直ぐみたいだ。
もう足という概念が崩壊しそうなので、早め行くとしよう。
角を曲がって少し歩いた先に見える雑居ビル。
そのビルの4階に位置するのが、HACONIWAというお店だ。
開始時間は11:30と遅めなものの、
夜は22:00まで営業しており、夜型のお店だろう。
ランチとカフェとディナーの3つに分かれており、
私は今回、ランチタイムに訪問してみることにしたのだ。
エレベーターで4階に昇り、目の前がHACONIWAだ。
ウッド調の店内は、落ち着いたカフェの雰囲気が表現されており、
植物や小物、家具などがとてもお洒落なのだ。
その雰囲気に見惚れながら、私は椅子に座った。

「確か、これがお勧めだったような…」
食べ口グ情報によると、このお店はワンプレートランチが人気みたいだ。
初めてなので、定番が一番だろうとそれを注文した。
待っている間は、長く感じるが本でも読めばすぐ過ぎるだろう。

「お待たせしました」
店内に置かれていた本を読んでいると、料理が運ばれてきた。
色彩豊かなワンプレートに、お味噌汁とご飯。
ご飯は少なくできるようなので、少なめにしてもらった。
にしても、美味しそうな見た目だ。
料理というのは、見栄えというのがとても重要だと思う。
スマホで写真に収め、食べ始めることにした。

「ごちそうさまでした」
完食し、一番最初に思ったことは「暖かいって重要だな」という感想だ。
揚げたてのチキンカツに、湯気の立つお味噌汁とご飯。
味はそこまででもなくても、暖かさが料理の質を上げてくれるのだ。
また、食感も重要なポイントと言えるだろう。
サクッとした食感は、肉の品質が普通でも、美味しく感じることができる。
はんぺんは、マヨネーズと合わさって意外にも美味しかった。
ポテトサラダは、コーンがもう少し少なければ、良くなると思われる。
全体的に、温かみに溢れたランチで、途轍もなく
美味しいというわけでもないが、満足感のあるランチだった。
次も、来てみたいと思う素敵なお店だった。
ただ、ランチについてくるコーヒーだけは改善したほうが良いかもしれない。

お腹が満たされた私は、目の前の公園のベンチで休んでいた。
子供たちが元気に遊び回り、鳩たちは暢気に日向ぼっこをしている。
都会の真ん中で、落ち着くことができる数少ない場所だ。
…このまま居ると、陽射しの優しさで寝てしまいそうになる。
本屋さんにでも行ってみようかな。

フ夕バ図書で適当に時間を潰していると、14時半を過ぎていた。
一日の中でも特に好きな時間、それが15時のコーヒーブレイクだ。
美味しいスイーツに、それを引き立てるコーヒーや紅茶。
それらが奏でる円舞曲は、私に数少ない幸せを与えてくれるのだ。
その幸せを享受するために行こうと思っていたお店は、八丁堀付近にあるらしい。
私は、本通駅から広島駅行きに乗り、八丁堀駅で降りた。
しかし、肝心のお店が全く見つからない。20分は歩いた気がする。
本当にこんな所にあるのかと疑問に思っていると、古びたビルを見つけた。
カフェどころか、中身が存在すらしなさそうなビルだが、
よく見ると「抱 le four」という文字が見える。
どうやら、今日の目的のお店で合っているようだ。
にしても本当に、こんなところにカフェなんてあるんだろうか?。
疑心暗鬼になりながら、ひたすら階段を上る。
いつになったら辿り着くのだろうか。疲れ果てようとしてた時、
この建物に似つかわしくないお洒落な扉が現れた。

「多分、此処でいいのかな?」
不安になりながら扉を開けると、そこにはお洒落な空間が広がっていた。
店内こそ狭いものの、とても落ち着く雰囲気だ。
あの古びた外見からは想像できない、素敵な内装だ。
適当な椅子に座り、注文をすることにする。

「…」
フランスのお茶を扱っているお店なのだが、
紅茶とは違うもので、あまり馴染みがないものばかりだ。
悩んでいると、店主さんが話しかけて下さった。
入店時、顔と声を確認していなかったのでわからなかったのだが、
若い女性かと思っていたら、真面目そうな男性で驚いた。
これもまた、ギャップの一つなのだろうか。

「こんな香りがあるんですよ」
店主さんは、私に様々なお茶の匂いを確かめさせてくれた。
どれも良さそうだったが、その中からブケドフルールというお茶を選んだ。
花の香りがとても良く、癒されるお茶だ。
デザートは、アールグレイとミルクチョコのケーキを選んだ。
私の好きなチョコと紅茶の組み合わせだとは、なんて幸せなのだろうか。


フ夕バ図書で買った本を読んでいると、注文した物が運ばれてきた。
見た目と匂いからしてとても美味しそうだ。

「いただきます」
まずは、ブケドフルールというお茶から。
喉に通した瞬間、鼻へと通る花の良い香り。すっきりしていて飲みやすい。
次に、アールグレイとミルクチョコのケーキを食べてみる。
小さめだが、完成度がとても高く、とにかく美味しい。
紅茶の風味とチョコの甘さが合わさって、仕上がっているのだ。
どうやったらこんな繊細なお菓子が作れるようになるのか知りたい。

「ごちそうさまでした」
今日一番の充実した時間を味わう事の出来た私は、会計を終えお店を後にした。
壁に貼ってある張り紙を読んでみると、ここのお店ではお菓子教室もしているらしい。
次来てみたいとも思ったが、もう来る機会は無いのだった。
何となく寂寥感を覚えながら、階段を下っていった。
雑居ビルから出た私は、この後どうするかを悩んでいた。
が、このまま遊び続けても仕方ないので、潔く帰宅をすることにした。
来たルートを路面電車で戻り、横川駅に着くと、
そこから1番線へと乗り換えて、岩国行きの電車に飛び乗った。


目が覚めると、もうすでに自宅の最寄り駅に着いていた。
多分、宮島口駅ぐらいから寝ていたのかもしれない。
少し頭がぼんやりとするが、意識を何とか保ちながら家に着いた。

「ただいまー」
というものの誰もいない。一人暮らしだし当然と言えば当然なのだが…。
それよりも眠気が酷いので、シャワーを浴びることにした。
普段ならお湯を必ず張るのだが、今日はなんだかそんな気分にはなれない。
さっきのお店での癒し効果が強すぎて、寝てしまいそうなのだ。
化粧を落とし、シャワーを浴びて着替えた私は、冷蔵庫の中を見ていた。
今日は夕ご飯をどうしようか悩んだが、特にお腹もすいてないので食べないことにした。
一応、緊急時のためにレトルトの食事も置いているのだが、ほぼ食べる事が無い。
いつかは消費しないといけないなんて思いつつ、歯を磨くことにした、

歯を磨き終えた私は、ちょっとした感傷に浸っていた。
1か月前に転勤として引っ越してきた広島県にある田舎町。
不便な癖に工場のせいで空気も良くないので、正直存在価値はあるのだろうかと思う。
しかし、広島県自体はそこまで悪くないとは思えた。
東京よりも広いが人口は少なく、広々として意外と過ごしやすかった。
この市以外なら、もう少し充実した生活だったかもしれない。
そんなことを考えられるのも後1か月の間までた。
1か月後にはまた、元の居住地である国分寺へと戻ることになっている。
最初は嫌なことしかなかったが、今となれば愛着も湧いたかもしれないかな。
置き時計を見るとまだ18:00だ。就寝予定の23:00までは後5時間もある。
コーヒーでも飲みながら、のんびり映画でも見ることにしよう。

気付けばもう24時になっていた。そろそろ寝ないといけない。
ベットに潜り込んだ私は、中々寝付けずに困っていた。
寝る前になると、突然、漠然とした不安に襲われるのだ。
将来への心配や、自分の能力や環境の不遇さなど考えるだけで辛くなる。
そんな苦しみを振り切れるよう、私は力強く目を閉じた。


「おやすみなさい」

6話(担当:くさってるさん)

私にはこれといった趣味はない。
学生のころから家でもただ勉強したり、テレビをみたり、その頃の流行をただ楽しんでいた。
何かに特別興味が沸いたりしたことはほとんどなかった。
今もただ働いて、家ではテレビを見るかパソコンをいじるくらいである。
いままで有給を使わなかったのもそういうことなんだろうか。

今日もいつものように仕事をこなす。
最近は大きな仕事があるわけでもなく、軽くリラックスしながらでもできる。
作業しながらなんとなく昔を思い出していた。

思えば子供のころから出かけるのは好きだったな。
家族と出かけるときはいつもわくわくしてた、中高生のころからは一人で出かけることもあった。
友達を誘って旅行に行ったこともあったっけな。
就職してからはあまり出かけたりすることはなかったから、この前の有給が久々の旅行だったんだな...

そんなことを考えながら作業をすすめる。
よほど考えていたのか気付いたらもう昼であった。
昼、たまたま後輩と一緒に昼食をとることになった。
なんとなく気になって趣味のことを聞いてみたが、特に考えたこともないとのこと。

昼食を終え、仕事に戻る。
いつものように作業をするが、ついつい趣味のことを考えてしまう。
仕事が楽でなければ集中できなかったかもしれない。
今日はゆっくり考えながらでも大丈夫そうでよかった。

そもそもなぜこんなに趣味について考えこんでいるかというと、前に部長に進められて取った有給以来、
自分も趣味を持ったほうがいいのかと思い始めているのだ。
やはりただ仕事に打ち込むより何か趣味があったほうが長く続けられるんじゃないか、
と思っているからである。

よく考えれば昔から当たり前のこととして家事や読書なんかはしていたな。
一人暮らしを始めてからはご飯はコンビニや外食で済ませる人もいるかもしれないが、
私は料理もなかなか好きなので、基本的には自炊している。
自慢じゃないが、過去に友人からなかなかの評価をもらっている。

読書も嫌いじゃない。漫画やライトノベルのような読みやすいものは今でもよく読むし、
ちょっと有名な小説や文学作品もある程度学生のころに読んでいた。
文書を書くのも嫌いじゃないし、
今度はブログでもはじめてみるのもいいかもな。

ゲームも好きだな、仕事を始めてから家庭用機は手を出しづらくなったが、
スマホゲームや携帯機なら通勤中なんかもできるので重宝している。
ゲームセンターに行くこともあるし、
レトロゲームなんかも見かけたらついやりたくなってしまう。

家では最近はパソコンにはまっている。
何の意味もないような動画をただ眺めたりするだけでもなんとなく面白い。
パソコンでもゲームはいくらかあるし、今は太鼓さん次郎というソフトにはまっている。
とある音楽ゲームのシミュレータなんだが、曲さえあれば自分で譜面を作り、
それを再生、プレイすることができるというある意味夢のようなソフトだ。
ちょっとばかりプログラミングのような感覚でできるので、
私としてはうれしい限りである。

自分ができることはいくらかある。
でも趣味といえそうなもの...もとい続けられそうなものは少ないかな...
私としては...なんというか心の支えになるようなことを趣味にしたい。
仕事の疲れをいやしてくれるような、楽しみになるようなこと...
この間行った有給の時みたいに...

そんなこと考えてるうちに時は過ぎ、いつものように退勤時間を迎える。
一通りの作業は終わらせていたため、軽く片づけをして退社した。

旅行か...今度は誰かを誘って行きたいな...。

5話(担当:WIZARD1)

伊香保・草津から何週間か経った水曜。6時10分。
いつも通りの面倒な仕事の1日がはじまる。
昨日はソシャゲの周回も無く気持ちのいい朝を迎えられた…のだが最近冷え込んできて肌寒い今日この頃。
水曜日は必ず朝ご飯はおにぎりにすると決めている私。いつもの通りにおかかと梅干しの小さめおにぎりで朝食を済ませた。ウマい。
朝食の片付け・トイレ・着替えなどを一通り済ませて家を出る。
一人小さな声で「行ってきます」。私の一日の始まりの合図だ。


7時10分、国分寺駅に到着。いつもよりちょっと早かったかな?
国分寺駅は駅舎の中にそれなりの規模のショッピングセンターが入っており中々大きい。
この辺には他にも府中・調布・小金井と言ったそれなりの規模の街があるものの、買い物をとても
頻繁にする私にとっては駅周辺に買い物場所が集まっている国分寺は最適の場所だったのだ。
とは言ってもこんな朝早くからはどこの店もシャッターが下りていて通勤客以外まともにいない。
あ、でも売店のおばちゃんはいつも通りやってるか。お疲れ様ですホント。


ここから30分、いつも通り中央線で地獄の通勤が始まる。
普段はトイレの心配だったりで普通の快速を選ぶ私だけども、今日は早く来れたのを無駄にせず
さっさと会社に着くために「通勤特快」にあえて乗った。
通勤特快は国分寺でドアが閉まったが最後、新宿まで30分弱もの間一切途中の駅でドアが開かないという
ある意味とんでもない電車なのだ。のろいけど。
もちろんいつも通り人並みは凄い…が、そこは私も他の客も慣れたもの。当然の如く乗り切って
電車は国分寺駅をいつもの通りに発車した。
新宿に着いたらいつも通りに作業をこなしていく、私の仕事の一日。
これが私にとっての当たり前な「いつも通り」、それがまた始まる。


…はずだった。


「…いきなり会社が休み、とか言われてもねえ…」
8時。新宿に着いた途端私の仕事は唐突に休みになってしまった。
なんでも昨日会社の近くだけで降ったゲリラ豪雨の時の雷で会社のサーバーがイカれたらしく、
今日出勤しても何にもすることがない…という事らしい。
勿論サーバー担当のエンジニアたちはヒーヒー言っているのだが、私はそこら辺の
業務には携わってなく幸いにも(?)社長判断で有給と言う事になった、というのが上司の談。
しかも乗った直後の上司からのメールでこの事を知った。なんで通勤特快の日に限ってそうなるかなあ…。
「…どうしよう」
朝8時の新宿駅、サラリーマンが民族大移動のごとく大量に歩く中で
通路端の私は一人「いつも通り」の埋め合わせにどうするか頭を悩ませる。
考えろ私。何かいい感じの場所がどこかにあるはず…。


10時。武蔵境駅。
「へぇ~、ここが武蔵境…ねえ」
中央線で通勤している関係上、国分寺から新宿までの全部の駅は定期で自由に乗り降りができる。
私はそれを使って吉祥寺・荻窪・中野と言った街を散歩したことがあるが、唯一この武蔵境だけは
タイミングも無く降りたことが無かったのだった。祝・定期区間の駅全下車。
隣には府中の端の方に行く西武線もあるようだ。…小さいけど。
駅の雰囲気は武蔵小金井に結構似ているだろうか?駅ナカとかそっくりだ。
南口のすぐ近くに某大型スーパーがあるところまで同じ…あれ!?
「えっ2つ!?」
よく見たらそのスーパーは東館・西館に分かれていた。片方には私の好きな雑貨屋まで入っているらしい。
暇な一日を過ごすには苦労はしなさそうだ。私は足取りも軽くスーパーに向かった。


11時半。流石に6時の朝ごはんでは腹がこの辺で減り切ってしまう。
駅横にはハンバーガーショップがあったりしたもののどうも肉は気分が乗らない。
スーパーでかなり見て回っていたので北口の方は見てなかったのでそっちで探してみることにした。


北口の商店街に来た私は驚いた。
チェーン店でハンバーグ・唐揚げの居酒屋・家系ラーメン…と、本当に色々な種類の店がある!
それこそここで働いている人はランチタイムは店選び放題じゃなかろうか。羨ましい限り。
…と言っても今の私にとってはどれもイマイチ。さっきの通り肉は気分が乗らず家系ラーメンは脂がきつい。
と考えている私の目にまた食事の店が一軒。
「海鮮丼?」
回転寿司の店らしいがランチタイム限定の海鮮丼をやっているようだ。
肉じゃないし脂っこさもない。何より値段が500円では入らない理由がない。いただきます。


日替わり丼を頼んだ私はこれまた驚く。
海鮮丼と言っても2~3種類だろう、と内心思っていたのだがまぐろ・サーモンのみならず
穴子・イカなど豪華てんこ盛り。寿司屋のどんぶりすごい。
これで500円なんて太っ腹…どころかなんか申し訳ない気がしてきてしまった私は
思わずサーモンを一皿追加で注文してしまった。それでも650円。安い!
大満足のまま私は店を後にした。ごちそうさまでした。


13時半。駅周辺は殆ど歩いてしまった私は武蔵境を経つことにした。
折角時間の取れる日なのだ、こんな日こそソシャゲの周回をぶん回すのに丁度いい。うん。
適当に理由を付けてSNSのやりとりを楽しみつつ駅の改札をくぐり中央線に乗る。
あとは家に帰ってゴロゴロするだけ…ん?


『この電車は、中央線 快速、東京行きです』
「…あ」
よそ見をしていた私は逆方向の電車に間違えて乗ってしまったのだった。やらかした。


「ただいまー」
当然自宅には誰もいないが出発の時と同じく合図の挨拶。
今日はとても充実した休みになったと自分でも感じている。初めての駅でスーパー巡りに美味しい海鮮丼。
最後だけちょっとやらかしたけれどもそれはそれ。朝じゃなくて良かった。
「いつも通り」とはまた違った体験もたまには良いものだと今日は身に染みて感じた。
「さてイベントイベント…」
手洗いなどを一通り済ませた私はベッドにごろ寝してソシャゲの周回に手を付けた。
何と言っても今回のイベントは私の好きなキャラが報酬にいるのだ。なんとしても取らねば。


次はどこで、何をしよう?


私は周回という「いつも通り」の休みの日を送りながら、昔の自分じゃ考えもしなかったことを楽しそうに考えるのだった。

4話(担当:なんきょくさん)

ノートパソコンを広げ、ネットへ入り、「群馬 観光地」と入力する。
フム、伊香保温泉か。
ちょうどここから一時間だし、ちょっくら行ってくるか。
途中のコンビニで鮭おにぎりを買っていった。
海苔がめちゃくちゃパリパリで上手い。コンビニだけど。

伊香保温泉に着いた時、私は目を丸くしたのが自分で分かった。
そこに待ち構えていたのは最上段が見えないくらいの石段街だった。
どうやらこの上に温泉があるようだ。
おっさんにはキツいって...
私はそのオッサンキラーとも言える石段を登り始めた。

途中周りを見ると、まんじゅうや群馬名物こんにゃくなど、たくさんの店がある。何か買って行こうか。
左を見ると、TV取材も来たという玉こんにゃく屋があった。竹串に玉状のこんにゃくが三つ刺さっているらしい。
子供にも人気のようだ。
「熱いから気をつけてくださいね」という店員の言葉が聞こえず、そのままかぶり付いた。
熱い。思わず声が出た。店員と子供から変な眼で見られてしまった。やめて。見ないで。

恥ずかしい思いをしたまま階段を上っていくと「レトロゲーム」と書かれた旗が見えた。
中にテトリスや射的が見えたので、衝動的に入ってしまった。

中を見ると、外から見たとおりAC版テトリスなど私の心を揺さぶられるようなゲームがあった。
財布に手を突っ込み、100円を出し、入れる。
あぁこの起動の遅さも懐かしい...

そして今のACゲーとは比べ物にならない起動がようやく終わり俺はボタンを押した。
はぁ~、懐かしい。まるで子供の頃へタイムスリップしたようだ。
子供の頃は自由だったなぁ...
なんて事を思いながら私は縦4列同時消しを成功させた。

実際、ここに来たのはレトロな町並みを楽しむ為である。ネットにも書いてあったけど。
なんて事を思いながら私はまた縦4列同時消しを成功させる。
お、クリアだ。

一気にタイムスリップしたように思える私は子供のように石段を駆け上がった。
あっと言う間に頂上へついてしまった。
うーん、空気も美味しいし景色もとてもいい。最高だ。
記念に写真を撮っていった。
それにしても腹が減った。腕時計を見るともう1時を回っていた。

キョロキョロ見回しているとそば屋を見つけた。丁度いい。ここで食べてくか。

基本的に私は大根おろしをつゆに落して食べる。まず最初の方はつゆだけで...
少し味に飽きてきたら大根おろしを追加。
大根おろしだけで大体は間に合うがつゆが多めだったらネギを足すのもオススメだ。
ん?私は今誰に喋ってるんだ?

腹も満たされたので温泉にでも入るかな。

おぉ~こちらは草津とは違う疲れがとれる感じだ。
またこっちもいい。

石段...また下るのか。
まぁまたテトリスできるしいっか。

縦4列同時消し2連続ゥ~!
この瞬間が一番気持ちいい。
おっと、ハマっている間に4時になってしまった。
車に戻るか。

さぁ、もう行くところはないか...
群馬には尾瀬という沼地もあるらしいが、ここから遠いし沼地にはあまり興味がないので、帰ることにした。

帰宅してすぐパソコンに行き、SNSを見ると...
ん?次郎のイベント...か?
なるほど...他の人に評価してもらえるのか...
評価して貰うのは初めてだし、この際参加してみよう。
私は参加表明をした。

さて。
イベント用の作譜を進めたいが、私は曲を選ぶのが猛烈に下手だ。
SNSで質問してみよう。

『次郎で曲が見つからなくなってしまったのですが、オススメの曲などあるでしょうか...』
返信はすぐに来た。
『自分の好きな曲はありますか?それを作ればいいと思います』
なるほど、自分の好きな曲...
おっそうだ
この前ゲーセンに行った時隣のオンゲキでめっちゃいい曲を聴いて曲名をチラ見したのだ。
記憶に残っていてよかった...
私は少し急ぎで作譜を始めた。

3話(担当:KTRさん)

また憂鬱な月曜日がやってきた。
6時起床。昨日は夜中までソシャゲの周回をしていたので少々眠い。
朝食は昨日の残り物だ。温め過ぎて、舌を少し火傷した。
身支度を済ませ、出勤。最寄りの国分寺駅から勤務地の新宿へ向かう。
8時半に会社に到着。そのまま自分のブースに向かう。
机の上には、後輩からの土産物が幾つかあった。そうだ、忘れてた。自分も藺武陀で購入したお土産を渡さなければ。
昼休みになった。私は初めにいつも可愛がっている後輩Sへお土産を渡した。Sはとても喜んでいた。
次に、同期の女子の中では最も可愛いTに渡した。Tは御礼に手作りしたらしいクッキーをくれた。美味しかった。
18時になり、私は家路へ向かうことにした。上司からの食事の誘いをそれとなく断り、会社を後にした。
途中、秋葉原へ寄り道し漫画の新刊を購入した。ゲーセンにも寄って、音ゲーをやった。
一汗かいたところで、秋葉原を後にし、家へ帰った。
居間へ入り、PCの電源をつける。その間に今朝作り置きしておいた今日の夕飯を食した。
PCが立ち上がり、すぐさまChromeと太鼓さん次郎を起動する。
次郎で作譜した後、ネットサーフィンをすることにした。
と、私はネットニュースで気になる記事を見つけた。群馬の草津温泉の記事だ。
私はその記事を見た。ネットニュースにしてはよく書けている記事で、私も見入ってしまった。
不意に、私は、何の前触れもなく温泉に行きたい衝動に駆られた。
スーパー銭湯なら車で30分もかからない場所にあるが、そういうのではなく、温泉街へと行きたくなった。
近所のコンビニへ行き、口座の残額を見た。余裕はある。決めた。今度の土日は草津まで車で行くことにしよう。
早速、私は旅の計画を立てることにした。
ふと気づいて時計を見ると、もう0時を過ぎていた。私は深夜アニメをリアタイ視聴した後、寝床に就いた。
催眠音声を聞いていたので、すぐ眠ることができた。
平日の嫌気が差すような業務を終え、待ちに待った土曜日が来た。
曇天だが、雨が降らないことを祈っている。
運よく月曜日に有休をもらうことができ、草津温泉だけでなく、3日間色々な場所へ旅行することにした。
旅行鞄を車へ放り込み、国分寺の自宅を後にした。
府中から高速に乗り、群馬へと向かった。途中に休憩や寄り道を挟み、15時に草津に到着した。
町は硫黄の匂いが漂っており、私は鼻をつまんだ。その後慣れはしたが、あの匂いは当分鼻から離れないだろう。
足湯があったので、入ってみた。これだけでも疲れが取れていくような気がした。
今日泊まるホテルにチェックインし、荷物を置く。ベッドにダイブしたくなるのは、若気の至りだろうか。
町を散策し、ついでに夕飯を探すことにした。
夕飯は偶々見つけたラーメン屋にした。
頼んだチャーシューメンと餃子を平らげた。東京のそれとはまた違った美味しさだった。
これではまだ物足りなかったので、私は何軒かハシゴすることにした。
19時、夕飯を食べ終え、ホテルに戻った。
部屋に戻り、持参してきたノートパソコンを広げ、会社の業務をこなすことにした。
上司は「月曜に有休はいいけど、それじゃあこの仕事もやってね~」みたいな軽いノリで私にこの仕事を押し付けてきた。結果的に休みは取れたものの、こんな上司では会社をやめたくなる。
仕事が一段落ついたので、待ちに待った宿の温泉に入ることにした。
更衣室で着替え、浴場へと入る。体を洗った後、湯船に浸かった。
非常に気持ちいい。一週間どころか、この一年間で蓄積した全ての疲れが消滅するような気がした。
やばい、気持ちよすぎる。今まで入ってきた温泉とは格が違う。これは片道5時間かけて行く価値がある。
このままずっと入っていたかったが、流石にのぼせそうなのであがることにした。
浴衣に着替え、宿の土産物屋を覗くことにした。
温泉地に来たので、定番の温泉饅頭を買うことにした。会社で分け合うことにしよう。
そうこうしてるうちに、夜も更けてきたので寝ることにする。
実は私は、2日目以降は「自由行動」として計画を立てていたので、どこに行くか全く決めていなかった。まあ明日決めることにしよう。
テレビとノーパソの電源を落とし、部屋の電気を消した。
私は布団をかぶって眠りについた。
2日目。1日目とは違い、晴天だった。
私はホテルのチェックアウトを済ませ、車に乗り込んだ。
さて今日はどこへ行こうか。

2話(担当:鹿児島の壊れたハーモニカさん)

二連休二日目。やはりやる事は無い。
とりあえずテレビを付けると、仮面ライダーが怪人相手に戦っていた。私はそんなテレビを遠目に、ご飯の用意をする。
トースターから食パンを取り出し、半熟の目玉焼きを乗せ、パセリやら黒胡椒やらをふりかけ、インスタントのスープにお湯を注ぎ、簡単な朝食を作った。
私はリモコンを手に持ち、近年はワイドショーとの差が無くなりつつあるニュースにチャンネルを変える。
退屈な芸能ニュースが終わり、CMに差し掛かる。いつもならスルーするCMだが、私はついそのCMで目を見張った。

『レイクサイド藺武陀 本日グランドオープン!』

―レイクサイド藺武陀。去年の春から藺武陀湖の湖岸に建設されていた大型商業施設。
完成したら行きたいと思っていたが、まさかグランドオープン日が休みと被るとは思わなかった。
人混みは激しいだろうけど、どうせ今日の予定も無かったのだからちょうどいい。速く準備をしなければ。
私は何かを忘れたように、急いでパンにかじりついた。
「あっつ...」
半熟の黄身の事を忘れていた。

高速を経由して30分ほどで到着したレイクサイド藺武陀。6車線道路をはさみ、二つの建物が立ち並ぶ。それは道路の上のいくつかの連絡通路により行き来可能となっていた。
奇跡的に立体駐車場が開いていた...がただ単にガラガラなだけだった。
私は車を止め、連絡通路を通り中に入る。
中は思っていたより混んではいなかった。私はもっと、人でごった返してロクに前に進めないというのを想像していたのだが...宣伝が足りなかったのだろうか?

雑貨店を見てまわる。様々な小物が立ち並ぶ。これだけでも中々楽しいものだ。
しばらく見てみると、何やら変わったものを見つける。
何やら頭が角ばってて、それに比べ体が大きいこけしらしきものだ。
値札を見ると、『こけし型コップ』との事。裏返してみると、たしかに体の中は空洞となっていた。
780円とそれなりに安かったため購入。ガラスのコップが割れたときの予備として使う。それまではどこかに飾っておこう。

お腹が空いてきた。ここには飲食に関して特筆すべきところがある。
実はこの商業施設、道路を挟んで山側のここ第一棟にはレストランやフードコートがない。自販機は当然あちこちにあるし、スーパーマーケットもあるから別に飲食が出来ないわけではないが。
レストランはほぼ全て湖側の第二棟に存在している。ちなみにそちらには雑貨屋や衣料品店なんかは無い。どちらにもあるのはゲーセンなどの娯楽施設などだ。
私は3階の連絡通路を通り、第二棟に入る。よくある郊外型な感じの第一棟とは異なり、こちらは俗にいうマリーナといった感じとなっている。
人が増えてきた通路を歩いていると、何やらいい感じの店を見つけた。どうやら洋食レストランのようだ。
ドリンクバー無料・スープ飲み放題とそれ以外も中々豪勢である。その分少し料理の値段は高めだが...
今日の昼食はここで取る事にした。

ここは魚介類を使った料理を主に提供しているようだ。
パエリアでも頼もうかと思ったが、あいにく材料のジャバニカ米が渋滞により届いていない、と注文の時に店員さんに言われた。
というわけで、ブイヤベースとフィッシュアンドチップスを頼む事にした。どちらも大変美味であった。
外を見ると、桟橋にいくつものボートが停泊していた。
食べ終わったらあれに乗ろう。そう思いながら食べていたら、いつもよりも速く食べ終わった気がする。

ボートは池1周300円。手こきボートかペダルボートか選べるが、迷わずペダルボートを選んだ。
こうやっているだけで何か楽しい...のだが、人が結構多く、他者とぶつかる事が何回かあった。こればかりはしょうがない。
ボートから降りた後は第一棟に戻り、洋服やカーペットを物色した。
最近カレーうどんを食べた時、汁がはねてしみになってしまったのだ。
カーペットにシミがつく事はよくあるが、そろそろ無視できないレベルの汚れになってきており、洗っても落ちなかったため買い替えを決断したのだ。
洋服は薄いピンク色の洋服を買った。すべすべとした肌触りが心地いい。
カーペットは小一時間ほど悩んだが、曲線を基調としたモダンな感じのカーペットを選んだ。

最後にはラーメンを食べた後観覧車に乗り、藺武陀湖を眺めて帰った。
今日はとても充実した一日だった。明日からは再び仕事だ。

1話(担当:ラバーさん)

 ___地響きがした、と思っていただきたい。
                                 ・・
幸運なことに私は会場の一階に席を取ることが出来た。しかし、大迫力の戦士達と
負けずの大歓声に圧倒され、少しくらっとしてしまった。
会場の熱気、衝突を繰り返す二つの肉体、お互いの矜持をかけた一騎打ちの真剣勝負___。
             ・・・                 ・・
ただでさえ広いとはいえない闘技場の中で、巨大な大男同士が自慢の肉体のみを武器に競い合う。
防御は己の躰に任せ、ノーガード戦法ともいわんばかりの超絶インファイター。
そう、ここは_____。
「右足で踏み込んだっ! 八咫関の勝ちィ!!」
___相撲場であった。

 相撲場を出た私は、暫くの間心地よい酩酊感に身を委ねていた。
今まで相撲など微塵も興味がなかったが、なるほどこうして生で見るとまた違った感想を抱くものだ。
百聞は一見に如かず、とはよく言ったものだ。
折角の機会だ、今日の夕食にちゃんこ鍋でも食べようか。
そう思い、私は近くの店をスマートフォンで探してみた。ところが、
なんと一番近いところは先ほどの相撲場内にあるちゃんこ鍋店であった。
このまま来た道を引き返すのは少し億劫だ。 そう思った私であったが、ふと目に入った看板に、
「本日オープン! ちゃんこ鍋 藤白
一人前 \2,500より 団体様大歓迎(ご予約ください)
800m先の信号を左折! あの人気急上昇中「八咫関」の弟子が監修!
8/31迄 『広告を見た』と一言言ってくれればさらに割引!」
渡りに船、私はそう思った。 歩くにしては少し遠いが、これを見逃す手もない。

 今日は好い日だった。 と、私はそう思った。 食事、とりわけ夕食には何か特別な力でもあるのだろうか。
あの後行ったちゃんこ鍋屋は、今日八咫関が名勝負を繰り広げたからか、かなり繁盛している様子だった。
辺りのテーブル席では、そこかしこで感想を言い合う大勢の相撲ファンが見受けられた。
生憎私は語り合う人と一緒に来た訳では無かった為、カウンター席でテレビを見ながら独り味に酔いしれるのであxtu
た。
初めて食べるちゃんこであったが、充分満足できる量、味に加え、栄養価のバランスも良いときた。
力士が好んで食べるのもよく分かるというものだ。 鍛えていない私にも體に活力が滾った感触が解るほどなのだから。
普段家で食べる料理といえば、炒め物やカレー、パスタやグラタンがせいぜいといったところ。
こうして鍋をつついて食べたのは何時振りであろうか、と私はレパートリーの少ない
家庭料理を顧み、僅かながらの反省と、家で似た料理を楽に作れないかという議題に思いを馳せた。

 今日は急遽生まれた土日休の前半戦であった。というのも、
先週まで1カ月半続いた繁忙期が一昨日終わり、少し軽やかな気持ちで出勤したところ、日本文化好きの部長から直接、
「明日見に行きたい相撲の試合があったんだけれど、急用で見に行けなくなった。
代わりに見に行ってはくれないか あぁそうだ。 折角の機会だ、休暇を使って少しリラックスしてくるといい。
繁忙期働き詰めであっただろうし、何より、今まで一度たりとも有給を消費していないではないか。
今から3カ月くらいまでなら、この部署も特に忙しくはないから、休暇を取っても恨まれまい。」
と唐突に言われたからだ。

確かに現在私の手元には59日分の休暇が溜まっていたが、働くこと自体は嫌ではない為使う気があまり起きなかった。
何より病気や事故などのトラブルに休暇を回せなくなるのは少し辛いところだ。
しかしここで断る事は部長の気遣いを無為にしてしまうことになる。何より、態々部長が出向いたということは、
私が休暇を消費していないことにある程度以上の問題点を孕んでいるのだろう。
休暇申請がやけにあっさりと通ったのには驚かされたが、そういうものだと思って
私はとりあえず1日分の休暇を使い、今日を休みにしたのであった。

あっという間に一日が終わってしまった。折角の二連休だというのに、後半戦の予定が何も決まっていないからお笑い種だ。
しかし私はそれでも構わない、と思った。 今日のように散歩しながら目に入った看板や広告に飛びつくのも乙なものだろう。
何時間もかけて、味を極限まで追求した料理を作ってみるというのもアリだろう。
それとも、思い切って電車で遠くまで出かけて、絶景や温泉でも巡ってみるか。
あるいは、部長のように何か一つ嗜む文化を見つけてみようか。
さあ、明日は何をしようか。