小説/2話 「逃走と出会い」

Last-modified: 2020-06-24 (水) 21:41:52

2話「逃走と出会い」

著:百花繚乱/てつだいん 添削:学園メンバー

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 初日の放課後――
音哉「まさかあそこまでカオスだったとは…」
 そう嘆く背の高い学生にもう片方の背の低い学生は苦笑を浮かべた。

 

― 第2話 逃走と出会い ―

 

涼介「まあ、あのくらい吹っ切れてたら色々と楽だとは思うけどね」

 

どかーーーん……!!

 

 まあ、そうだけどさ、というセリフは突如目の前で起こった爆音と煙に掻き消された。そしてその煙幕が晴れると、そこには人の姿があった。

 

???「ふにゅ~ん…」

 

 とは言えど、そんな怪しさMAXな登場の仕方だったので、する事は一つ。
涼介「…靴紐の準備は良いか」
音哉「え?あ、お、おう」
涼介「よし、逃げるぞ」
???「あーっ!待つのだ!旦那様!」
 …とまあ、逃げる選択肢以外に何が浮かぶだろうか。
音哉「旦那様…!?おい、旦那様って俺たちの事かよ!」
涼介「これはどっちを旦那様だと思っているんだろうな!音哉!」
音哉「分かる訳無いだろ!」
???「待ーつーのーだーっ!」
 逃げる二人と追う一人。いくら体力に自信があろうとも、やはり愛の力には勝てないようで。
音哉「ゼェ…ハァ…いや、もうしつこいな!」
涼介「しんどい…」
 半ば諦めかけたその時、路地からにゅっと黒い腕のようなものが出てきて、二人を掴んだ。そして、飛んだ。
???「そ、それはずるいのだ!」

 

音哉「……?」
涼介「……?」
***「ちょっと手荒だったかな」
 手荒も何も、と二人とも思ったが先程までの状況と比べればまだマシな方である。
 そして周囲を見渡すと…何やらクレーンゲームやらメダルゲームやらがある場所に居るようだと気付く。
二人を黒い腕で掴んだこの男は、一体何者なのか。そしてここは…
***「ここはゲーセンだよ…」
 そう言った彼に特に声を掛ける事も無く、二人は彼の服装を一瞥した。この男の事も気になったが、それよりもゲーセンのほうが気になったのでとりあえず探索を始める事にした。
***「おい!無視かよ!」

 

 

涼介「一応ゲーセン内を一周してみるか」
 やけに落ち着いてんな涼介さんよぉ...
???「疲れたのだ...お腹空いたのだ...」
 さっきからこの緑髪低身長が付いて来る。逃げ切ったと思っていたらちゃっかり付いて来やがった。曰く同じクラスの人らしい。こんな人居たっけ?
それにメッチャ涼介に寄ってる(場所的に)。名前ぐらい聞いとくか。
音哉「君、名前は?」
???「...」
...
 無 視 か よ
 マジか、意外と心が抉られた。なんだその眼差し。やめろ。やめてくれ。俺の心が保たない。え?俺なんか変な事言ったっけ?
???「そんな事より旦那様!タコ焼きが食べたいのだ!」
涼介「そうだな、確かに腹減ったなぁ」
旦那様ってお前の方か!分かりやすいな!俺を無視して涼介に寄ってる所から見ても分かりやすいな!おい!

 
 

???「美味しかったのだ!」
 彼女の満足げな表情とは逆に俺は少し涙ぐんでいた。
涼介「おいおい大丈夫かよ!」
音哉「俺のタコ焼き...」
 そう、俺はこの緑髪の謎の"なのだ"女子に俺のタコ焼きを皿の上から奪われたのだ。結局一個しか食えなかった。

??? わりと天然、というか不思議ちゃんで、一途な面がある。特に涼介にゾッコン。口癖は「~なのだ」と「ふにゅ~ん」

ここのゲーセンは、音ゲーがたくさんあるとはいえ、照明が明るくていかにもファミリー向けという感じの、普通のゲーセンである。R○UND1とかにある暗いゲーセンという感じではない。

 
 

kou長「ご、ごごご、ごっほんw」
kou長「みなさん奇遇ですね~!ゲーセンで会うなんて...」

 
 

音哉・涼介「校長!?」

 

 

 目の前に現れたのは、他の誰でもない、校長である。
あの、入学式でconflictを歌った、kou長である。
音哉「こ、校長!? どうしてこんな所に」
kou長「いや~、校長でもゲーセンは来ますからね?」
涼介「えっそうなんですか」
kou長「これでも音ゲーは好きなんですよ」
 ふへー……。やっぱりconflict歌ってただけあるなぁ…… 校長が音ゲー好きな高校だなんて聞いた事が無い。最高じゃないか。
音哉「そ、それよりも校長、このゲーセンは何なんですか!? 俺たち今まで家に帰ろうとしてたら、謎の黒づくめの男に引っ張られて気付いたらここですよ!?」
kou長「あー、その事か。まあ、毎年みんな驚くんだけどねぇ……」

 

kou長「実は、ここは学園から遠く離れたゲーセンなんだ」
音哉・涼介「!?!?」
 音哉も涼介も、きょとんとした目で校長を見た。

 

音哉「ど、どういう事ですか?」
kou長「実はな……うちの学園には、ポータルがあってな… 学園からこの遠く離れたゲーセンにワープできるようになっているんだ」
音哉「えっ…なんじゃそりゃ…」
 どう考えても今の科学力でそれは無理だ。…でも、実際学園とは遠く離れたこの場所に連れて来られたし、本当なのか…?
 二人は校長に案内してもらい、ポータルの前へ来た。形は巨大なフラフープのような、大きな円だ…トンネルの入口のように縦に置いてある。このデザイン、どこかで見たことがあると思ったら、ル◯ージマンション2のテレ◯~タルにそっくりだ。
kou長「今、そんな事ありえる訳が無いって顔をしていたな? まあそう思うのも仕方無いか…
あまり詳しくは言えないんだが、このポータルの動力源は電気でもガスでも無い。」
音哉「(いや、ガスなんて思う奴居ねぇだろ・・・)」
kou長「このポータルは、カ◯スエメラルドという特別な石の力を得て出来ている。試しに、そこのポータルの中に入ってみろ。学園の敷地内へと繋がっている」
 涼介は校長の説明が終わるよりも前に、ポータルへ突っ込んでいった。俺も負けじと突っ込んでみた。すると驚いた。景色は一瞬で学園の敷地内に変わっていた。そこに涼介もいた。
音哉「な…なんだこりゃあ!?す、すげぇ…」
涼介「まさかこんな物が現実であったとはね」
 二人はもう一度ポータルに入り、ゲーセンに戻った。
 すると校長は言った。
kou長「凄いだろう? だが、一つだけ約束して欲しい事があるんだ。」
音哉「約束???」
kou長「このようなポータルが存在する事、そして動力源であるカ◯スエメラルドの話は絶対に学園の外へ漏らしちゃいけないんだ。これは学園内だけの秘密なんだ」
 まあ、確かにそうだ。もしこんなポータルがあると世間に知れ渡っていたら、ニュースがこのポータルの事で埋め尽くされ、科学者によって買収され、この学園はめちゃくちゃになってしまう。
涼介「…分かりました。絶対に外部には漏らしません」
kou長「もちろん、家族に言っても駄目だからな」
音哉「分かってます」
kou長「…うん。それならよろしい。さあ、入学一日目なんだ、思いっきり遊ぶといい。今日なら学園の生徒はほとんどここに居るだろうし、友達を作るチャンスだ」
 そう言って、校長はポータルで学園へ戻っていった。

 

 

 さて、ポータルの話も終わったことだし、ゲーセンで遊ぶか。この機会に、ゲーセンにいる生徒には全員声をかけてしまおう。この楽しい雰囲気なら、教室で話すより何倍も気楽だ。

 

 俺たちが最初に声をかけたのは、同じクラスだという女子だ。
照美「私は政 照美(まさ てるみ)。どうやら同じクラスみたいね」
 ここは暗いイメージを持たれると後がめんどくさい!とびっきり明るい性格で振る舞おう。
音哉「よ!俺の名前は笛口 音哉だ!よろしくな!!」
照美「よろしく。私は貴方のような明るすぎる性格の人間は苦手なんだけどね」

 

ガーン! 音哉に精神的300ダメージ!!

 

 それに対し、涼介は……
涼介「僕の名前は桜庭 涼介。よろしく」
照美「よろしく。貴方のような落ち着いた性格の人間のほうが話しやすいかな」

 

ガーン! 音哉に精神的500ダメージ!! 音哉、中破状態!!

 

 ううう……明るければいいってもんじゃないんだな……
涼介「そこまで落ち込まなくたって…… 人によって苦手な性格はあるものさ」
音哉「で、でもあんなにはっきり言われたら落ち込むよ!!」

政 照美(まさ てるみ) あまり感情的な発言や行動をせず、結果を重視する取っ付きづらい性格だが、面倒見が良く、打ち解けた人には明るい一面を見せることもある。また、学園では「テルル」と呼ばれている。髪型は茶髪のセミロング。グレーの服をよく着る。

涼介「理解してあげなよ。彼女はきっと、物事をはっきりと言う性格なんだよ。そういうことを理解してこそのコミュニケーションじゃないか」
 ……涼介の言うことが正論すぎて反論できない。確かにそうである。こんなことで落ち込んでいたらこの先やっていけない!気を取り直してほかの生徒に話しかけてみよう。

 

枝川「俺は枝川 浩行(えだかわ ひろゆき)だ。ゲーム好きなんだ」

枝川 浩行(えだかわ ひろゆき) 比較的温厚、滅多に怒らない。極稀に怒るが怒っても怖くない。話しかけやすい。親の仕事の事情で実質一人暮らし。

音哉「俺の名前は笛口 音哉。よろしくな!」
涼介「僕は桜庭 涼介。よろしく」
この生徒も、俺らのクラスメイトらしい。温厚そうな性格で安心した。話しかけやすそうだ。

 

雪姫「想良 雪姫(そうら ゆき)と言います。よろしくお願いします」

想良 雪姫(そうら ゆき) 優しい反面、この後風紀委員になってからは身だしなみなどをかなり厳しくチェックなどするようになる。かなりのしっかり者。

この女子もクラスメート。この子も優しそうな印象だった。……はずなのだが、後で涼介に聞いてみると
涼介「僕の直感だけど、彼女、病んでる感じがするなぁ」
だそうだ。涼介の人間観察力は割とあったりする。だから怖い。

 

この女子は知っている。俺らのクラスにいたが、一人でずっと本を読んでいた。だから話しかけづらかったが……
菊池「私?菊地優白(きくち ましろ)よ。よろしく。」
なんとかお互いの自己紹介だけはすることはできた。

菊池 優白(きくち ましろ) 性格はクール。一人でいるときは大丈夫だが、他人と話すときは、毒舌になる。人と接することが苦手で、教室では、大抵一人で本を読んでいる。

涼介「君はやっぱり、本を読むのとかが好きなのかい?」
菊池「気安く話しかけないでください。私は、人間が苦手なの。」
涼介が話を振ろうとしたら、さえぎられてしまった。今まで俺だけドジを踏んできたから、少しスカッとした。
涼介「す、すまない。とにかくよろしく」
スカッとしたのもつかの間だった。涼介は失敗したときの振る舞い方も大人である。俺もこんなこと言えるようにならないと……いや別にわざと失敗してカッコつけるとかそういうやつじゃないけど。

 

クラスメイトじゃない人にも話しかけてみた。
城戸「城戸 太陽(しろと ひかり)。よろしく」
かなり無口な女子だ。さっきのような失敗はしたくないので、自己紹介だけはしてほかの話題は振らなかった。

城戸 太陽(しろと ひかり) 割と無口だが毒舌で、容姿はそこそこなのに全くモテない。口癖は「眠い」。恋愛には全く興味はないが人間関係にはかなり興味がある。学園内で知っている者はごくわずかだが、実は〇〇から来た人……

 
 

そして、俺たちをゲーセンに連れてきた張本人である、さっきの黒づくめの男ともしっかり話をした。
音哉「あ、あの?」
声をかけてみるも、こちらに気づいていないのか、何も返してくれない。
音哉「おーい」
………。
音哉「へーい」
………。
音哉「あふ?」
………。
音哉「Hey You?」
………。
音哉「おい聞いてんのかオイオイ」
………。仕方ないので肩を叩きながら声をかけた。
音哉「あの!!」

 

黒野「ん?今、俺に話しかけてる?」
「さっきから呼んでたんだけど……」
 性格もかなり癖がありそうだ。
黒野「まさか俺を呼んでるとは思わなかったな。驚いたよ、話しかけられたことなんて数年ぶり…いや、数年はないか」
数年!?
 引きこもりじゃあるまいし、数年はないだろう……
それにしても、この男、同級生っぽいが服装が妙に黒い。黒い長袖パーカー+黒い長ズボンを着ている。もちろん靴や靴下も、髪の色も黒。おまけにbagまで真っ黒だ。言っちゃ悪いかもしれないが、これでマスクなんかつけられたら完全に不審者だ。いや、今でも不審者っぽい雰囲気はあるが……
黒野「俺の名前は黒野 造目(くろの つくめ)。よろしくね」
話を聞いたところ、やはり高1で俺たちと同じだ。一年中この黒い服を着ているらしい。どうしてここまで黒い服しか着ないんだと聞いてみたら、
黒野「黒が好きだから…かな」
と帰ってきた。とんでもない趣味を持つ生徒もいるものだ。いい意味でも悪い意味でも、この学校は個性豊かすぎる。
 彼はその黒さゆえにいろいろな噂をかけられることがあるそうだ。「取引の現場を目撃したやつを殴って子供にする」だとか「いつもバッタ男にやられてる」とか……

黒野 造目 (くろの つくめ) いつも黒い長袖パーカー+黒い長ズボンを着ている。その怪しい見た目ゆえに、様々な弊害に苛まれている。近づく人がまずいないため、友達がほとんどできない。

 それよりも、さっき言っていた「数年ぶりに話した」というセリフが気になった。涼介が聞いてくれた。
「君、さっき、話すのは数年ぶりって言ってたけど、そんなに話さないのか?」
黒野「ああ、まず誰も俺に近づかないからね。人と話すなんてことはまずなかった。それなのに君たちは普通に話しかけてくるからびっくりしたよ」
普段はなにをやっているのか聞くと、人をおどかして遊んでいるらしい。涼介曰く、「あんなのは建前だ、こんなに黒い服装をしている生徒が人をおどかすことしかやってないとは思えない。彼、なにか隠してるよきっと」
さて、どこまでが本当なのだろうか。

 
 

優「私は宇都宮 優(うつのみや ゆう)!よろしく!」
この女子も同じクラスらしい。とっっっっっても明るい性格だった。自分が明るすぎて失敗したあの自己紹介も、この子としていればむしろ喜んでくれたんじゃないかと思うと、少し泣けてくる。

宇都宮 優(うつのみや ゆう) かわいい!元気!明るい!他人を疑わない純粋な性格。服は大体ピンク色。たまに制服も着る。ネットのネタをたまに使う。基本的に男女関係なく接せる。

 

もう一人、クラスメイトではない女子がいたが、話しかけても
『…。』
という感じだった。今までの生徒と違って、何も言わないんじゃ嫌われてるのかどうかすら判断できない。だから、何か話すまでは話しかけまくると心に決めた。
??「…」
??「…。」
??「…」
??「宮○賢治」
!?!? もうやめた。この子とは話せない。
後で聞いたが、名前は碓氷 悠(うすい ゆう)と言うらしい。

碓氷 悠(うすい ゆう) 後に科学部の部員として活躍。内気、嫌われるのが嫌で発言出来ない事がしばしば。反面、友達や家族、先生とはよく話す。

 

さて、同級生と言えばこのくらいだろうか。話せる相手とはすべて話した。……と思っていたが、そこにkou長が現れた。
kou長「あれ、もう自己紹介終わっちゃったのかい?」
音哉「ま、まあ、同じ学年の生徒とは一通り…」
kou長「んんんんん!?まさかほかの学年の生徒には話しかけない気なのか?」
音哉「い、いや、だって入学初日ですよ!?別学年の生徒に話しかけるのはハードルが高すぎますよ……」
kou長「そんなこと言ってたらいつまで経っても先輩後輩ができないぞーオラオラオラ」
 校長に押されつつ、俺らはゲーセンの真ん中に戻った。
kou長「今日のうちに先輩や後輩も作っておきなさい。そのほうが絶対に得だ」
音哉「え、えぇええええ…………」
 というわけで、自己紹介はまだまだ続く。

 

志熊「私は志熊 准(しぐま じゅん)。よろしく。」
話を聞いてみると、高2らしい。……が、そんな事よりも突っ込みどころがありすぎる。
まず、顔は可憐な少女~って感じの顔なのだが、確かに着ている制服はズボン……つまり男子の服なのである。
この人を初めて見た時は本当にびっくりした。これが噂に聞く「男の娘」ってやつなのか……と。
勇気を出して話を聞いてみると、本当は男らしい。顔は完全に女なのに……
志熊「これからは先輩って呼んでもいいからね。」
音哉「は、はい……ありがとうございます」
先輩ができたことは嬉しいが、かなり個性的で困っている。

志熊 准(しぐま じゅん)音哉の先輩。パッと見可憐な少女だが、立派な男性である。いわゆる男の娘である。学校では数少ない制服派である。本人曰く、「女の子に見間違われると何かと面倒だから」らしい。

 
 
 

雪那「私は襟川 雪那(えりかわ ゆきな)! ……えっ?先輩……? いいわよ、別に。」
女子の先輩もできた。性格がまともで安心した。

襟川 雪那(えりかわ ゆきな)  天文部副部長。とにかく明るいが、意外と友達は少ない。生徒の皆の事は基本下の名前で呼ぶことが多い。学園生活を楽しむが一番のモットー。

 
 
 

 そうそう、言い忘れていたが、この学園は中高一貫校である。俺たちが入った校舎の隣に、妙な石造りの建物があった。あれが中学棟らしい。今年から中1の俺の妹も、この学園に入学して中学棟で勉強をする。近いうちに中学棟にも行ってみよう。

 
 

田貫「田貫 瑞稀(たぬき みずき) ね~。そうだね~。」
音哉「……えっ?今のが君の名前?」
田貫「音ゲーとは~、とても奥深いのだ~。」
音哉「……あのー、会話聞いてますか?」
この女子とはうまく会話ができない。そのせいで学年も分からない。とりあえず名前だけは聞くことができた。

田貫 瑞稀(たぬき みずき) マイペースな性格で何を考えているのかよく分からない。ふわふわしてる。そこらへんをうろちょろしていることが多いので学園にあったことのない人はいない。突拍子もないことを突然言い出したりする。

 
 

鈴野「私?…鈴野(すずの) りこ…名前教えたんだから早くあっち行って頂戴…」
学年は教えてもらえなかったが、情報によるとチュウニ(ズム)らしい。

鈴野 りこ(すずの りこ)性格はダウナー系で、友達はあまり作りたくないらしい。髪は黒く長くて、目は茶色い。音ゲーがめちゃくちゃ好きで暇さえあれば音ゲーをやってる

 
 
 

…!! よし! これでゲーセンにいた生徒とは一通り話すことができた。
あとは…少し音ゲーでもやって帰るとするか。
涼介「ねえ音哉、僕は音ゲーをやったことがないんだ、そんなに楽しいものなのか?」
音哉「ああ!楽しいなんてもんじゃないさ。一旦始めたらやめられない、天国の沼とでも言っておこうか(何言ってるんだ俺)」
涼介「僕もこれを機に、音ゲーを始めてみようと思うんだ」
音哉「それはいいなぁ!じゃあ、とりあえず太鼓一緒にやろうぜ」
幸い、筐体は空いていた。安心の100円4曲設定である。
\カチャッ/
太鼓を叩いてスタート!
あぁあぁぁぁあああぁぁあぁ、このセリフ。いつ聞いてもゲーセンに来た感じがするなぁ。
さて、次郎勢学園最初の1曲だ。何を選曲しようか……
ここは無難なさいたま2000でいくとするか。
\むずかしさを選ぶドン!/
俺はもちろん「おに」。涼介は…どうだろう。
「良く分からないけど…ふつうでやってみよう」
\さあ、始まるドン!/

 

2分後

 

俺はさいたま2000をフルコンした!!可は85だ!
涼介もフルコンこそ逃したものの、不可は3に抑えられている!余裕のクリアだ。
「なんだよ涼介、もともと才能あるんじゃないのか?」
「そうなのか…な?」
続いて2曲目だが、どんな曲を選ぼう…全く頭に浮かばない。
音ゲーマーあるあるだ。お金を入れて選曲画面まで来たは良いが、何の曲をやるかが決まっていない。
悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。
「……???」
「選曲に困ってるみたいじゃないか。俺のおすすめはInfinite Rebellionだ、是非やってみるといいぞ」
後ろには見知らぬ学生が現れ、いきなりおすすめの楽曲を提供してきた。
「あ、ありがとうございます……」
誰なのか聞こうとしたが、楽曲を授けた男は既にどこかに消えていた。
「な、なんだったんだろ今の男……」
 …おっと危ない!残り40秒しかない。急いでInfinite Rebellionという曲を探す。なんとか見つかった。ほう。確かにこれはかっこよさそうな曲だ。あの男が勧めてきたのも分かる。★10だが、なんとかクリアできるだろう。
\さあ、始まるドン!/

2分後

なんだこの譜面は!!!!難しすぎる!!!!余裕でノルマクリア失敗だ!!!
難易度ふつうを選択していた涼介も、もちろんノルマ落ち。
太鼓界についてはそこそこ知識がついてきたと思っていたが、こんなに難しい譜面があるなんて知らなかった。しかし、それがむしろ俺に感動を与えてくれた。
「音ゲーの世界って…すげぇ!!!!」
人間離れができるゲーム。音楽ゲーム。俺はそんな音ゲーに憧れを持った。もっと上達をして、この曲もクリアしてやろう。
「俺はもっと強くなるぞ…!」
そう言った瞬間だった。
僕は、ゲーセンの一番奥の壁に、別の部屋へと続く入り口が見えた。その入り口がなんだか音哉を呼んでいるような、そんな気がした。
音哉は2曲目で終わってしまった太鼓を離れ、その入口へと向かっていく。
「ん?音哉、どこへ行くんだ?」
「ちょっと気になるものがあって」
入口に近づいて分かった。このゲーセン、さらに奥があったのだ。この入口の向こうには、凄まじいボタンの音やら、太鼓を叩く音やらが聞こえてくる。一体、何のために部屋を分けているのだろう。とにかく、気になったのでその先に行ってみることにした。
 短い通路を移動して、奥の部屋へ来た。そこは、今までいたゲーセンとは少し違う雰囲気。壁や床は暗い色でできていて、本格的な音ゲーコーナーという感じがする。
 近くにいた高3くらいの生徒に聞いてみた。
「こ、ここは何なんでしょうか…?」
「そうか。君は知らないようだね。ここは通称『上級者ゾーン』。音ゲーのガチ勢が集まり、本気でハイスコアを目指す場所なんだ。素人がここで遊ぶなんてことはできない。認められた『上級者』だけが遊べる場所なんだ」
 そういうことか。表にあったのは誰でも遊べる、言わば「エンジョイ勢」向けのゲーセン。そしてここは、腕を上げた者だけが遊べる「ガチ勢」向けのゲーセンということだ。ゲーセン全体の雰囲気も暗めだし、本当に音ゲーに特化している感じだった。まさにR○UND1のような場所だ。
「ここで遊ぶには、どのくらいの腕前が必要なんですか?」
「お前は何の音ゲーをやっている?」
「えっと…太鼓をやっています」
「太鼓なら…そうだな、最低でも十段は取っていないと門前払いだ」
「じゅ、十段!?!?!?」
俺にはまだ手が届かないような段位である。そんなに上手くならないと、この"上級者ゾーン"では遊べないのか…

 

「この学園で一番のゴリラ…音ゲーが上手いのは、湯ノ谷 光かな」
「やっぱりそういう人がいるんだ…」
そこへ、金髪の美少女が俺たちに気づき、声をかける。

 

「あたしはひかり!湯ノ谷 光よ!」
そう、その美少女こそが学園一の音ゲーマー…通称ゴリラなのだ。
もはや人間ではないと皆から恐れられているほどの存在だという。

湯ノ谷 光(ゆのだに ひかり)金髪碧眼で校内随一の美少女。めんどくさがりな性格で、とても大雑把。勉強はまあまあできる。外見とは裏腹に、重度の音ゲーゴリラ且つアニオタ。最近のブームは登校時にBrain Powerを熱唱すること。

 

その音ゲーの次元の違いに圧倒されていると、奥に戻っていた湯ノ谷先輩と誰かが話している。
 ふと、奥からこんな声が聞こえる。
「なに?あたしの胸を揉みたい?じゃあ混沌MASTERをAJしたら揉んでいいよ」
!?!?!?!?
!?!?!?!?!?
俺はその一言だけがはっきり聞こえた。そして頭の中に強く残った。
なんの音ゲーのことだか知らんが、とにかく上手くなればああいうことができるっちゅうことらしいなぁ()
俺の心の中で、言いようのない思いが燃え始めた。
さっきやったInfinite Rebellion、そして偶然聞いた今のセリフ…俺は今日から、ガチの音ゲーマー目指して頑張ることを決意した。
「涼介、俺、頑張って音ゲー上手くなる」
「あ、ああ。頑張れよ。」
涼介は少しキョトンとした様子だった。

 

……と、初日の放課後の出来事はこれで終わり。俺たちはポータルで学園に戻り、そこから家に帰る。
今日一日でいろいろなことがありすぎて、とても疲れた。でも、とても楽しかった。
こんな学園生活が毎日送れるかと思うと、明日も楽しみだ。

 

勉強。恋愛。音ゲー。どんな事も、全力で頑張ってやる!
音哉はその強い思いを心に強く刻んだ。