スペースプレーン・レベル1

Last-modified: 2015-03-05 (木) 23:15:42

スペースプレーン、より正確にはスペースプレーンに代表される再使用型宇宙往還機(RLV)の利点はなにか?
異論のある方もおられるかもしれませんが、まぁ一般的には運用コストの安さだと思います。
0.24以降で資金要素が実装されたKSPのキャリアモードにおいてもこれは同様。
......なんですが、実際にKSPで費用削減を主目的としてスペースプレーンを使っている人はあまり多くないのではないでしょうか(いや、アンケートとか取った訳じゃないのであくまで筆者の推測ですが)。
理由はいくつか考えられますが

  • 作成可能になる時期が遅すぎる

のが大きいのではないかと思います。つまり(普通に)スペースプレーンを作るとなると技術ツリーの最上位に近いパーツが必要になる。
で、これを開放する頃には大半のツリー開放と施設のアップグレードを済ませていて、運用コストを削減したところで浮いた資金の使い道も無い...という事になりがちではないかと。

 

むしろ資金とサイエンスポイントは序盤であればあるほど節約したい。
というわけで出来るだけ早い時期から作成・使用できる機体、
具体的には技術ツリーの開放に直接影響し、また全施設中最大のアップグレード費用が必要な研究開発施設(Research and Development)の施設レベルを大まかな目安として、
今回はこれをレベル1のまま、言い換えれば必要サイエンスポイント100未満のパーツだけで作れるスペースプレーンを目指す...というのが機体(と本記事)のコンセプトになります。

 

なお、KSPのバージョンは0.90β(キャリアモード・難易度Normal)、作成に使用したMODは主に

  • Editor Extensions
  • Kerbal Engineer Redux
  • RCS Build Aid

の3つです。
機体テストおよびスクリーンショット撮影時には外すの面倒くさいし、なによりKERとTorajectoriesが無いと筆者の腕ではまともに機体を飛ばせないし他にも色々とMODが入ったままになっていますが、
MODパーツは使用していないので機体データ自体はバニラでも問題なく動作します。

 
 

目標

  1. 研究開発施設のアップグレード禁止
    • 最初に書いたとおりです。
      出来れば、他の施設のアップグレードと技術ツリーの開放も可能な限り行わない方向で。
       
  2. Kerbin周回軌道への到達およびKSCへの帰還が可能であること
     
  3. 機体を損傷させず着陸(または着水)が可能であること
    • この2つは「スペースプレーン」を名乗る以上は当然、ですよね?
       
  4. 機体を構成する全パーツを回収出来ること
    • 現実のスペースシャトルがそうであるように、ブースター等の使い捨てパーツがあっても(広義の)スペースプレーンとして成立しますが、今回はせっかくのキャリアモードですから、これも目指してみます。

1号機

まずは、どうせなら開始直後(初期パーツ・初期施設・初期資金)で作れないか試してみることにします。
......いやまぁ、初期パーツには羽が無いのでどう足掻いてもスペースプレーンの形にならないのは分かっているんですが。

splv1_101.jpg
普通に機体SSを貼っただけなのに「出落ち」にしか見えないこの見た目はいかがなものか、と自分でも思う

 
機体諸元と解説
パーツ数19
コスト8,523(7,247 + 1,276)*1
重量17.9t(4.0 + 13.9)
TWR(Kerbin)1.22 ~ 5.48
ΔV(真空中)5,445m/s

構成自体はわざわざ紹介記事にする必要も無いくらいで、コマンドポッド→FL-T200缶×14→LV-T30と繋げただけの単純なものです。
理屈の上ではこれだけで軌道投入と帰還に必要なおよそ5,000のΔVが確保できSSTOとして成立しますが、実際に試すまでもなくこれ、
着陸時に倒れて大破するので到底実用に耐えない...事は容易に想像できるかと思います。
そこでこの問題を、FL-T200缶を180°ずつ曲げて折り畳み強引に機体を小型化してクリアした点が、本機最大(というより唯一かも)の特徴となっております。

  • どうでもいい余談ですが。
    全パーツ回収に拘らずコマンドポッド(と緑)が無事なだけで良いならfileこんな方法もありますね
 

また、副産物として

  • 機体の小型化による姿勢制御能力の大幅な向上
  • 全ての燃料タンクがほぼ正確に機体の重心位置にあるため燃料消費による重心の移動がほとんど起きない

を実現しています。

 

羽がついてないこの機体はともかくとして、2号機以降「スペースプレーン」を作る際に重心移動を抑えられるのは便利なので今後も利用できそうな手法ですが、
「重なったパーツをクリックした時、どのパーツが選択されるか全く分からない」というデメリットのため、例えば燃料タンクを重ねて配置すると

  • 右クリックによる航行中のパーツ操作はまず無理。つまり燃料タンクの場合だと燃料移動(補給)が出来ない
  • 機体全体での値以外(個別)の燃料残量が分からない
  • 機体の改修・改造が難しい
  • テクスチャがちかちかしてて見た目キモイw

などの問題が発生する点には留意しておいた方がよさそうですね。

 

さて運用ですが、ごく普通のロケットと同じように打ち上げて、同じように軌道投入(通常の順行軌道の場合なら高度150kmくらいまで上がれると思います)、そして同じように帰還するだけなので特に書くこともない
......と言いたい所ですが少しだけ補足を。

  • 機体を壊さずに回収する為には、燃料を少し残して帰還し、着地寸前にエンジン噴射を併用する必要があります。
    (7m/s以下、大体スロットル計の2目盛りが目安)
    パラシュートだけで安全に着地する為には、この機体の場合Mk16が5個以上必要となり重量増加による性能低下が大きく、逆に0~1個では降下速度が速すぎて減速が難しいと判断しました。
  • KSCへの帰還が前提(なので傾斜のきつい場所への着陸は想定していません)の機体ですが、パラシュート降下を行うため発射台・滑走路への正確な着地(資金回収率100%)は至難です。
    「大体この辺」くらい適当にやっても回収率90%台後半は難しくありません。程々で妥協しましょう。
    まめ

    発射台・滑走路以外のKSC敷地内では回収率98%。
    KSCの外では...10km離れた時97.5%、旧飛行場(約30km)で96.5%だったので、推測になりますがだいたい20km/1%の割合で98%から低下...だと思われます(この計算で0%になる距離がKerbin半周とほぼ同じですし、単純比例と考えて問題なさそうです)。
    あともうひとつ更にどうでもいい小ネタですが、上記の例外としてKSC2の場合(KSC敷地内と同じ)回収率98%になります。

2号機

それでは次に、1号機を改修しスペースプレーン化する方向性で2号機を開発する訳ですが...っと、その前に。
そもそもスペースプレーンとは何か、言い換えれば「スペースプレーンの定義」が必要な気がしたんですが、どうも公式WikiとかWikipediaで軽く調べた限りではこれ、
特に厳密な定義がある訳ではなく文字通り「宇宙まで飛んでいける飛行機」くらいのアバウトな用語っぽいので、本記事でも(見た目と機能が)それっぽければ良しとする事にしますw

 

さておき、まずは当然ですが翼が必要。
最も早く開放可能な羽パーツは技術StabilityにあるAV-T1 Wingletですが、これだと見た目的にも揚力的にも小さ過ぎるのでもう少し上位のパーツが欲しいところです。
加えて、滑走路での滑空離着陸を行うためには車輪が必須。
以上より技術ツリーはこんな感じで開ける必要がありそうです。
splv1_201.jpg

なお、この時点では施設のレベルは初期のままで十分と判断したのですが、テスト時にTracking Stationがレベル1だとTrajectoriesが機能しない事が判明したためアップグレードを行っています。
(機体設計とは関係無いですから必須ではありませんが)

 
 

splv1_202.jpgsplv1_203.jpg
......1号機よりはマシになったけど、まだ飛行機というより「特攻兵器」に見えるな......w

 
機体諸元と解説
102RE102VSE
パーツ数2427
コスト13,583(12,344 + 1,239)15,940(14,724 + 1,216)
重量17.7t(4.2 + 13.5)18.0t(4.7 + 13.3)
TWR(Kerbin)1.24 ~ 5.201.22 ~ 4.65
ΔV(真空中)5,215m/s4,859m/s

機体構成は基本的に1号機と変わっておらず、タンクをFL-T400に変更してパーツ数を削減し翼や車輪を適当に付けただけです。

  • 当初は見た目がより飛行機らしくなるかなと思って低翼+上反角配置を試してみたのですが、同様に見た目の為に幅を縮めて配置しているためにおそらく上反角の効果が大部分相殺されてしまい
    「背面飛行で安定」という笑えない結果に終わったため、素直に中翼配置とし垂直尾翼をV字にして最低限のロール安定性を確保しています。
  • せっかく開放されたMystery GooとScience Jr.はポイント集めのために是非搭載したいのですが、2セット以上積むと重量増加のため周回軌道投入不可。
    1つずつならなんとか行けますが冗談抜きでギリギリなので標準装備とはせず、通常仕様(102RegularEdition:上図左)と実験機器搭載仕様(102VisualSurveysEdition:上図右)の2モデルを用意しました。
  • 同様に重量の問題でMk1 Cockpit非採用。使えれば翼以上に見た目飛行機っぽくなるんですが仕方ありません。
  • 102REに無人ポッドをつければ救出ミッションもこなせなくはないですが、現状開放済みのStayputnikはSAS稼働できず実用性に難があるので搭載は見送りました。
 

打ち上げ

設計時から想定していた訳では無いのですが、一応滑走路から水平に加速して離陸する事も可能です。
......出来なくは無いんですが燃料フル搭載(18t)時の場合、離床するためにはおよそ110m/sの対地速度が必要。
初期滑走路でこんなスピードを出すと高確率で事故ります(逆に起伏で跳ねた勢いで70m/sくらいであっさり離陸する場合もありますが)。
splv1_204.jpg
そんな危険を冒すより、素直に発射台に縦置きして垂直に離陸した方が楽です、はい。

 

で、いったん離陸した後は低空で水平速度や揚力を稼ぐ意味はまるで無いので、1号機と同様に普通のロケットと同じ方法で軌道投入を目指す事になります。
なお、102VSEをその名称通り調査ミッションに使用する時など軌道投入しない場合もありますが、
飛行機のように一定高度を水平に飛行させるにはロケットエンジンの燃費が悪すぎるので、弾道飛行で目的地に到達させるようにするのが基本です。

 

帰還

これも特別変わった手順が必要な訳ではなく、普通に減速してPeを下げ突入します。
Trajectoriesや(キャリアだとまだ使えませんが)MechJebのLanding Guidanceを使う場合、滑空のことを考えて若干手前を狙うといいでしょう。

splv1_205.jpg
このSS撮った後そのまま突入したら少し通り過ぎそうになったのでもっと手前でもいいかも(後でも修正できるのでそれほど細かく調整しなくてもいいですが)
ちなみに夜間、雲MODなどで分かりにくい時に備えてKSCには旗を立てておくのがセオリーですが、今回はなんとなくコマンドポッドで代用

 

高度が下がり機体が赤熱を始めるあたりになると空気抵抗により、102REは機首がほぼProgradeを向いた状態で安定します。
(Retrograde、つまり後ろ向きでも割と安定しますが意味が無いのでお勧めしませんw)
102VSEの場合は機首が15°くらい上向きで安定します。
SASと可動翼で制御できないような強い力は発生しませんし、なにより見た目それっぽいので調整していません。
splv1_206.jpg

 

更に高度が下がって大気濃度が上昇かつ十分に減速する(大体高度10km以下くらい)と可動翼によりまともに旋回できるようになるので、滑走路へのアプローチを開始します。
なお本機は「燃料がほぼ空の状態での滑空」を前提に設計と調整を行っています。
機首が大きく上を向いていない限り旋回などで失速することはまずありませんし、機首が水平より下向きであれば機体の進行方向と機首方向はほぼ一致します。なので

splv1_207.jpg
視点を真後ろに置いて滑走路に合わせると楽です。

 

反面、揚力を高く設定し過ぎたせいで普通の飛行機っぽく着陸態勢で機首を上げると高度が下がらなかったり、機体が軽いのもあって着地時にバウンドしたりすることもありますが対処不可能な問題ではなく
splv1_208.jpg
無事に帰還。
もし滑走路を外れていた場合は(燃料が残っていれば)地上走行して滑走路か発射台を目指しますが、着陸中などの高速走行時の転倒を防ぐため、初期状態ではステアリングはロックしたままになっています。
適宜手動(右クリック)で解除するようにしてください。

 

あと念のため補足しますが実質着水不可です。
理屈の上では機体を垂直に上に向けて失速させエンジンを吹かしてゆっくり降下させればいけるんでしょうが、到底実行可能な難易度とは思えないので。

 

102VSE・垂直着陸機構

基本的には2号機もKSC(滑走路)への帰還を想定した機体なのですが、102VSEは例外として

  • 最初期を除くPerform Visual Surveys(調査)ミッションにおける地上でのレポート
  • バイオーム毎に別個にある実験機器の地表レポート取得

などの運用も想定しているため短距離、出来れば垂直に着陸できる機能が必要です。
普通にVTOL機能を付加する(重量の)余裕はありませんから、ごく単純にパラシュートでこれを実現しています。
具体的な手順としては

  1. 着陸したい地点の上空(500m以内推奨)を通過するように滑空を行う
    また、燃料が残っている場合は出来るだけ減らしておく
  2. 車輪を出す。ブレーキもあらかじめ掛けておいた方が無難
  3. (スペースキーで)パラシュート展開
    splv1_209.jpg
    パラシュートの角度で分かるかと思いますが、完全に垂直降下出来る訳では無く水平速度0.3m/s程度前進します。
    (少し練習して)手前で展開するか、いっそ最初から垂直に降下するのもアリかも
  4. 着陸。降下速度は海面高度で12m/s前後、海抜5,000mくらいの高地では20m/s弱に達しますがSmall Gear Bayは問題なく耐えます。
    splv1_210.jpg
    あと102REでも同様ですがEVAを行う際には前輪を収納して機首を下げておくと、ジェットパック併用のジャンプで機体に戻ることができます。

試作3号機

KSP的にはKerbin周回の次の目標はMun往還ですよね?
って事でこれを目指した機体を現在作成中です。しばらくお待ちください。

......と言うかまぁ、機体は一応完成してるんですが

splv1_301.jpgsplv1_302.jpg

テスト飛行と調整、なにより記事作成が全然まだなものでして。

 

追記:ようやく完成しました。
   ...なのですが、予想よりかなり長くなったので主に余談が、別記事に分けました。
   こちらからどうぞ。

クラフトデータ

fileTSP-LV1.zip

  • 101、102RE、102VSEの3機パックです。

コメント

  • 3号機のブースターの形、この発想はなかった。 -- 2015-02-18 (水) 19:22:36

*1 括弧内は(機体本体+燃料&酸化剤)。以降の表でも同様