工藤忍とのメモリアル4

Last-modified: 2023-03-05 (日) 19:14:02

【事務所】

 

忍「いよいよ、明日だね。アタシの、初めてのステージ……。

  やっとここまで来た、来れたんだ……。」

忍「プロデューサーさん、アタシ、大丈夫かな……?

  何か、やり残したこととか、ないかな……?」

【歌とダンスはバッチリだね】

忍「うん……。

  いっぱいレッスンしたし、大丈夫、だと思う。」

【MCも覚えてるね】

忍「それも、ばっちり。

  なんあら、今からだって全部言えるよ。」

【立ち位置や段取りも覚えてるね】

忍「そっちも、オッケー。図を覚えちゃうくらい、何度も確認したよ。

  あんまり長い出番じゃないし、大丈夫。」

【なら、大丈夫】

P「あとは、明日に備えてゆっくり休むのが、

  最後の準備だ。」

忍「うん、そうだね。宣材写真の時みたいな失敗は、もうしないよ!

  お疲れさま!明日はよろしくね、プロデューサーさん!」

 

【暗転】

【着信音】

[電話……忍からだ……]

忍「あ、もしもし、プロデューサーさん……?」

【どうかした?】

忍「その…………えっと。

  あの、ね……………………。」

【暗転】

 

【公園】

 

忍「わざわざ来てもらっちゃって、ごめんなさい……。

  こんな時間に、迷惑だったよね……。」

忍「えっと、さ……なんだか、全然、眠れなくて……。

  明日はもうステージなんだってわかってるのに、実感なくて。

  なのに不安だけ、どんどん大きくなってくの……。」

忍「アタシ、本当にステージで、歌えるのかな……。」

【うまくいくよ だから安心して】

忍「本当に?

  本当に、プロデューサーさんは、そう思ってるの……?

  違う、でしょ……。うまくいく、なんて、さ。」

忍「そんなの、優しいだけの嘘でしょ……。

  アタシみたいな、ぽっと出の田舎娘にアイドルなんて……!

  現実が、そんなにうまくいくわけないじゃん……っ!」

忍「どうせ、ステージの上で失敗して、

  大恥かいて、みんなにも迷惑かけて、

  泣きながら田舎に帰ることになるんだよっ!」

【………】

忍「あ……。」

忍「その……ごめんなさい。……違うの。

  こんなことが言いたかったんじゃなくて……。

  これじゃアタシ、両親や周りの人と、同じ……。」

忍「………ホントはわかってたの。

  両親の言葉が正しいって。夢なんて叶わないって。

  だから、それに言い返せなくって……東京に逃げてきたの。」

忍「アイドルになりたくて来たんだって自分に言い聞かせてたけど、

  本当は、アイドルになれないことが怖かっただけ……。

  わかってるの、アタシの夢なんて……。」

【忍の夢が叶うって信じてるよ】

忍「……プロデューサーさんは、まだそう言ってくれるんだね……。

  ………………。」

【暗転】

【翌日】

忍「準備できたよ、プロデューサーさん。」

【大丈夫?】

忍「……もしかして、来ないかもって思った?

  ……うん、まぁ、そうだよね。でも、なんか、変なの。

  昨日はあの後、泣いて、疲れてそのまま眠っちゃってさ。」

忍「いっぱい泣いたからかな……。

  朝起きたら、なんだか、ちょっとは覚悟、決まったみたい。

  ここまで決まっちゃったら、どうしたってもう逃げられないもんね。」

忍「……ねぇ、プロデューサーさん。

  ひとつ、教えてほしいことがあるの。

  そうして、そんなにアタシの夢を信じてくれるの?」

【忍が夢に懸けた想いを知っているから】

忍「そっか……。

  ありがとね、プロデューサーさん。」

忍「アタシ……試してくるよ。

  アタシ自身と、アタシの夢を……!」