あと一球

Last-modified: 2024-07-17 (水) 21:10:59

あと1球で試合終了になる状況でリードしているチームのファンが行うコールのこと。
ここでは甲子園球場での試合で阪神ファンが行っているコールと、それに関係する試合・ペナントレースでの出来事について解説する。


解説

阪神ファンが勝利目前のタイミングで伝統的に行うコールとして定着しており、2アウトを取ると「あと一人」、そこから2ストライクを取ると「あと一球」とコールする。
甲子園球場のオーロラビジョンでも「あと1人」画面が導入されるなど名物となっている一方、スポーツマンシップの考え方が広まった現代では「相手チームへのリスペクトを疎かにしている」「味方投手へのプレッシャーになる」と批判の声もあり、アウトコール同様快く思われていないのが現状である。

また、2020年以降の3年間はコロナ禍による声出し禁止により、このコールは事実上禁止されていたが、それでもあとアウト1つとなったところでメガホンを叩くばかりか、一部の阪神ファンは大声で「あと一人」コールを行い問題となっていた*1


2022年4月6日の「あと一球」コール

この年のシーズン開幕から9連敗した阪神は、4月5日のDeNA戦で連敗を止め、その勢いのまま翌日の同カードも1-0と接戦ながら伊藤将司*2が9回2アウトまで無失点と、2試合連続完封勝利が目前に迫っていた。2死二塁で勝利を確信した一部の阪神ファンが「あと一人」コールを開始。
迎えた4番・牧秀悟を2ストライクまで追い込むと、「あと一球」コールになりTV中継でもはっきりと声が聞こえるようになる。しかし、コロナ禍の真っただ中で声出しをするというマナー違反ぶりに、対戦するDeNAファンを中心に他球団ファンから苦情が相次いだ。

すると、牧はフルカウントから右中間にヒット性の当たりを放つ。中堅手・近本光司がダイビングキャッチを敢行するも紙一重で及ばず同点タイムリーツーベースとなり、あと1球まで迫っていた伊藤の完封勝利が消滅。甲子園を包んでいた「あと一球」コールは悲鳴の後に静寂へと変わった。その後も再三のサヨナラのチャンスを生かせず、延長12回に登板した齋藤友貴哉が1アウトも取れず勝ち越しを許すと、そのままDeNA打線の打者一巡の猛攻で一挙5失点。この点差を覆せるはずもなく阪神の大逆転負けとなった

この試合では阪神ファンの鬱憤が爆発し、

  • 12回裏には多数の阪神ファンがスマホライトをグラウンドに向けて照射*3
  • 試合進行を妨害したため審判と場内放送から注意を受ける事態に
  • 果ては警察・救急車が出動する程の喧嘩騒ぎ

などで荒れに荒れ、なんGでは「あと一球」コールをやり玉に上げ晒し上げるスレが乱立した。

この逆転負けをきっかけに阪神は再び大型連敗に突入し、勝利目前の「あと一球」から何時間経っても勝てない有様に、「「あと一球」からXX時間(XX球)が経過www」というネタスレが立てられるようなり、「あと一球」は予祝と合わせ2022年の阪神を象徴する蔑称の一つとなった。

ちなみに伊藤はこの後、コロナウイルスの陽性判定を受けて一旦登録抹消となったが、5月22日の対巨人戦(甲子園)で復帰。この試合で、あと一球コールから46日目にして正真正銘のプロ初完封勝利(無四球)を挙げた。


「あと一球」からの経過時間・投球数(連敗が止まるまで)

日付経過時間打者数投球数スコア相手出来事
4月6日-0人0球1-0DeNA2アウト、カウント2-2。完封目前。
2分1人3球1-1牧が適時打。同点に追いつかれる。
1時間18人66球1-612回表、大和が勝ち越し適時打。
そのまま5失点し逆転負け。
4月7日24時間(試合中止)DeNAにコロナ陽性者が続出し、急遽試合中止に。
4月8日50時間69人285球3-3広島同点に追いつくも勝ち越せず、引き分け。
4月9日68時間114人458球1-9相手先発・森下暢仁に適時打を打たれる。2連敗。
4月10日91時間144人565球0-1逆転サヨナラのチャンスを逃す。3連敗。
4月11日120時間(移動日)「あと一球」から120時間が経過wwwスレが立つ。
4月12日144時間180人698球1-2中日西勇が再び力投するも2番手・湯浅京己*4が打たれ逆転負け。4連敗。
4月13日168時間217人823球0-1x伊藤将のコロナ感染により先発が小川一平に急遽変更。
延長10回、大島洋平にサヨナラ適時打を打たれ5連敗。
勝率のNPB史上最低記録(1勝以上)を更新(.067)。
4月14日192時間255人963球1-46連敗。勝率の最低記録をさらに更新(.063)。
4月15日216時間288人1075球4-1巨人あと一球から1075球でようやく勝利。
矢野監督、試合後の取材中に色紙を出す


2023年6月17日の「あと一球」コール

岡田監督が就任した2023年、阪神は完璧なスタートダッシュを決め、5月末の時点で2位のDeNAに6ゲーム差をつける圧倒的な勢いで首位を独走していた。しかし交流戦に入ると打線が下り坂となった上に投手陣も抑えの湯浅京己を筆頭に調子を落とし*5失速。
交流戦最終カードのソフトバンク戦は6月16日の初戦を白星で飾り、17日の試合(阪神甲子園球場)でも勢いに乗り4点を先制した阪神であったが、後半で追い上げられ、4-3の1点リードで9回のマウンドに守護神・岩崎優が登板。昨年9月20日と同じ2アウト一二塁という状況で、岩崎は打者中村晃を2ストライクに追い込み、例のごとく阪神ファンの中から「あと一球」コールが始まった。しかしここで中村にタイムリーツーベースヒットを打たれて2点を失い逆転されてしまう*6。2点目のホームインについて阪神側からリクエストが要求されるも覆らず、ソフトバンクの攻撃は続き、岩崎から交代した石井大智も追加点を許してしまった。「あと一球」から一挙3点を失い、9回裏の阪神打線も抑えのオスナに三者凡退で抑えられ、あっけなく4-6で試合終了。2位DeNAとは3ゲーム差となってしまった。
なお、この日の先発は前年に現役ドラフトで相手チームのソフトバンクから移籍してきた大竹耕太郎であり、この試合で12球団勝利にリーチがかかっていたが呆気なく消えてしまった*7

この試合後阪神はさらに失速し、残りのソフトバンク戦も敗戦すると、交流戦後のDeNAとの首位争奪戦カードでも連敗。「あと一球」から一向に勝ち星を挙げられないまま、6月25日に今シーズン初の5連敗、3タテを喫するとともに首位陥落した

翌26日は試合が無かったものの、「あと1球」からの経過時間が2022年4月の時を越えた。ちなみにこの日は、週刊ベースボールの「首位快走!岡田タイガースを徹底分析 猛虎が勝つ理由。」と題した15年前を彷彿とさせる阪神特集号の発行日であった。

その後、阪神は27日の中日戦を11-3で快勝。連敗を5で止めた他、首位のDeNAが敗れたためわずか一試合で首位を奪還した。交流戦後の大型連休を挟んでいるため実際に要した試合数は少ないものの、昨年4月の連敗をも上回る、「あと一球」コールから243時間53分を経た勝利となった。ちなみにこの試合も甲子園球場であったが、九回一死で大島洋平が二ゴロ併殺に倒れてゲームセットとなったため、「あと一球」コールどころか「あと一人」コールさえ無い終幕だった。

画像

Mouko20230626.jpg

「あと一球」からの経過時間・投球数(2023年版)

日付経過時間打者数投球数スコア相手出来事
6月17日-0人0球4-3ソフトバンク1・2塁のピンチも野村勇を三振に打ち取り2アウト。
続く中村晃に対して4球で2ストライクを奪い、ここからコール開始。
3分1人3球4-5中村晃に7球目で適時二塁打を浴び逆転される。
30分5人25球4-6その後、今宮にも打たれこの回3失点。
裏の攻撃は相手守護神・オスナに完璧に抑えられ敗戦。
6月18日24時間54人247球0-9終盤に投手陣が次々打ち込まれ9失点大敗。
この日勝利したDeNAに2ゲーム差まで迫られる。
6月19日48時間(試合なし)*8DeNAが敗れ2.5ゲーム差に広がる。*9
6月20日72時間
6月21日96時間
6月22日120時間岡田監督「(横浜スタジアムの)イベントが長い」発言。
6月23日147時間90人387球1-3DeNA9回に大山が意地のソロHRを放つも、相手先発・今永に完投され3連敗。
1.5ゲーム差に。
6月24日168時間123人505球0-2相手先発・東に無四球完封され4連敗。0.5ゲーム差に。
岡田監督「(22日の発言についての)イベントの記事からおかしなった」発言
6月25日192時間161人640球3-5佐藤輝を2軍に落とす大ナタを振るうが5連敗。ついに首位陥落
6月26日216時間(試合なし)昨年の216時間越えが確定。
6月27日243時間53分198人757球11-3中日12安打11得点の快勝で連敗ストップ、首位奪還
大島の二ゴロ併殺打で試合が終了したため、あと一人コールもあと一球コールも発動しなかった。


関連項目



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*1 NHKの実況アナウンサーが「声を出してはいけないはずですが、『あと一人』という声が聞こえてきます」と苦笑するほどである。
*2 なおこの1点はジエンゴによるものなので文字通り孤軍奮闘である。
*3 この年照明をLEDに変えた甲子園では、阪神勝利時のヒーローインタビューにて場内を暗転、選手をライトアップする演出が始まり、スタンドからもスマホライトで演出を補助するようになった。
*4 この年は45HPで最優秀中継ぎと新人特別賞を受賞。失点はこの日(2失点)と6月19日DeNA戦(3失点)と7月1日中日戦(2失点)のみである。
*5 特に湯浅は「あと一人」から楽天・小深田大翔に逆転サヨナラ3ランを打たれるなど短期間で3度も炎上してしまい、ソフトバンク戦前に2軍落ち。同年の日本シリーズ第4戦で復帰するまで長期の離脱となった。
*6 岩崎の自責失点は4月2日に3連投したDeNA戦以来2度目。前回と同じく3連投目だった。
*7 ちなみにこの試合で達成していれば、育成出身初・現役ドラフト移籍選手初・史上最年少・史上最速のプロ6年目での達成・史上最少の17勝目での達成、さらに4日前のオリックス戦で西勇輝が達成していたことから、1週間で2人の12球団勝利達成という記録づくめの快挙となっていた(ちなみに翌2024年シーズンの大竹はソフトバンク戦での登板機会が無く、12球団勝利達成は2025年シーズン以降に持ち越しとなっている)。岩崎は大竹が先発した同年10月4日のヤクルト戦(神宮球場)でもセーブ失敗を喫してしまい、大竹の最高勝率タイトルを消してしまっている(DeNA・東克樹がタイトル獲得)。
*8 交流戦の予備日であったが阪神はこの間振り替えの試合は組まれなかった。
*9 なおDeNAは交流戦を優勝した。