2019年オフに、当時楽天監督だった平石洋介が石井一久(当時楽天GM)のことを聞かれて放ったとされる台詞。転じて、楽天GM時代の石井の蔑称。
概要・経緯
楽天が最下位に終わった2018年オフ、監督代行・平石洋介の正式な監督就任と、石井一久のGM就任が発表される。
早速獲得してきた浅村栄斗やジャバリ・ブラッシュの大活躍もあり、2019年シーズンは3位にまで順位を上げたが、オフに平石の監督退任が発表される。そして石井は10月11日、報道陣に「イーグルスの現状の課題について平石体制では改善が望めないから」という文書を配布する。
これが「則本昂大・岸孝之のダブルエースを怪我で欠きながらもチームをAクラスに導いた監督の評価として適当でないのでは」「解任の理由を公開するのは異例だ」などと議論を呼ぶこととなった。
楽天 石井GMが異例「平石監督の退任経緯&ビジョン」文書で報道陣に説明 - スポニチ
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/10/11/kiji/20191011s00001173145000c.html
書き起こし(原文ママ)
まず、大前提としてイーグルスを中長期的に優勝を目指せるチームに作っていかないといけないと考えています。
その様なチームを作る時に昨年・今年と感じたことはバンドやスクイズなどの精度やサインミスなどの多さや走塁含め先の塁への意識改革が1年通して改善しきれなかったと感じました。
これは、今年起きた課題ではなく僕が見る中では長くイーグルスにある課題だと認識しています。
そこをどう改善していくのを考えた時に1軍の公式試合の中でもクオリティーを含めチームとして教育や意識改革を今のチームが徹底していかなければ隙のないチームの伝統をつくりあげられないのではないかと感じます。
今後5年・10年と選手やスタッフが変わってもチームカラーやプレーの伝統というものは受け継がれていきます。今のチームにはその改革やチームの伝統の基礎をうまく促進できる方にチームを預ける必要があるのではないかと考えています。
それを平石監督にできないから契約年数通り退任ということではなく、指導者にはそれぞれ得意分野があります。
細かい野球をする戦略家だったり
ダイナミックな野球で長所を伸ばす指導者だったり
チームの雰囲気をつくるモチベーション指導者など、その他にも色んな得意なカテゴリーが人それぞれ指導者にはあると思っているので、今回の長きにわたる課題に対しては、よりカテゴリーに合う方に来て頂くことが大事ではないかなと考えています。
ただ、平石監督とは昨年途中から意見交換をしっかりして戦ってきました。
僕の方から、若い選手の起用方法だったり、ブラッシュとかで言えば初年度と言うこともあり成績が出なくても150打席をバッファを持ってくれなど色々制約がある中お互い協力してやってきましたし平石監督の良い部分というものは多く見てきたつもりです。
それは、僕の中でも球団のデーターとしても平石監督の長所というものは保管できるものですし、僕は監督が最後の職という古い考え方は持っていません。
将来的にどんなポジションだろうとチームの組織で指導者として平石監督にやってほしいと思っています。そのために、今まで以上に広い視野を持っていただく場所をチームとしてオファーしました。
そして後任に自身がイーグルスに呼び寄せた三木肇*1二軍監督を所属2年目で抜擢。石井は関係ないもののこの年には応援歌一新騒動も起こっており、球団への不信感が高まる中「お友達チーム作りではないか」などの声が上がる事態となっていた。
そんな最中に報道されたのが以下の記事である。
該当記事
※現在は「あの」が削除されている。
【楽天】球団に退団を申し入れた平石前監督「今後は全く決まっていません。本当にさみしい」 - スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20191015-OHT1T50093.html
―今日、退団は石井一久GMに伝えたのか?
「あのGMには会ってないですね。安部井(統括本部長)さんと(立花)社長とは話はしました」
平石激怒?
【楽天】平石前監督、球団側から「2軍統括」新設ポストのオファーも退団 「それが全て」 - スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20191015-OHT1T50084.html
球団側との会談を終えた平石前監督は「退団させてもらうことを伝えました」と明言。退団を決断するに至った経緯について聞かれると「僕は仙台が好きですし、宮城県、東北が好きです。楽天に来て15年ですけど、選手、スタッフ、球団の職員の方、またファンのみなさん。本当に誰にも負けないくらいの思い入れは持ってます。そんな私でも退団する決心をした。それが全てですね」と声を絞り出し、無念さをにじませた。
平石には二軍統括という新設ポストが用意されるが、これを蹴って退団。育成総合コーチなどの職は他球団でもよく見られるものの、それまで楽天にはなかったため当時のファンからは「お飾りの職ではないか」と疑う声が上がった。なお結局当該職は「ファームディレクター」に名を改め、サブローこと大村三郎が就任。一軍との情報交換や調整計画の作成、新人選手へのサポートなどちゃんと内容のある仕事だった模様。
後述の通り「あの」の部分に関しては審議の余地があるが、こちらの発言から平石がブチギレているのは間違いないとされている。この後平石はソフトバンクからオファーを受けてコーチに就任している*2。
指摘されがちなあのGMの行動
- 平石についての一連の経緯
- 平石解任の直後、ミーティングで選手を鼓舞するためとはいえ「僕の中では3段階に分けたら(3位は)Bクラス」と独自のクラス分け。
- なお、この発言については監督を辞する際、「ラグビーで言えばティア1(世界トップ10クラスの強豪国)というのがあるように、(首位から)何ゲーム差も離されて3番目までに入ったからといって、同じ(上位)グループとして捉えるのか。それとも、もっと細分化して、そこに甘んじることなく、正確に自分たちに足りていない部分を感じることが大事という話。それを選手に話したんですけどね」と説明した。
- 2019~2023年のパ・リーグ優勝チームと楽天との最終的なゲーム差は以下の通りである。
年度 最終成績 監督 順位 ゲーム差 2019 3 7.5 平石洋介 2020 4 16.5 三木肇 2021 3 5.5 石井一久 2022 4 6.5 2023 4 17.0 - 2019年までのパ・リーグはソフトバンクと西武の2強状態であり、2017年(首位と15.5G差)・2019年の両年とも、Aクラス入りを果たしたものの優勝チームとは大きなゲーム差があった。
- この状況および本人の釈明からすると、石井の発言は「3位になりAクラス入りしたものの、ゲーム差をつけられた状態での3位に満足することなく、2強チームに立ち向かい優勝しなければならない」という意図であったと想像できる。
- 2021~2023年のパ・リーグは2強状態はすっかり解消され、特に2023年は早々にオリックスが優勝を決めたのに対してそれ以外のチームは団子状態であり、一時期パ・リーグの全ての貯金をオリックスが独占ペナントレース最終試合になるまで2~4位の順位が確定しない状況になった。石井の主張に則れば「2023年はオリックス以外全チームBクラス」となる。
- 結果として「3位はBクラス」という言葉のみが独り歩きし方方で引用されることとなった。無論石井本人の突飛で意図の汲みにくい発言であったことに違いはなく、自らが指揮したシーズンにおいて2位以上にはなれなかったが、主張全体を見れば無理のある発言とまでは言えないだろう。
- 球団の顔であった嶋基宏に減俸制限を超える減額を提示。最終的に嶋は自由契約を選択し、ヤクルトに入団した。
- もっとも同年の嶋は腰痛の影響もあって盗塁阻止率が1割を切るなど走られ放題で、二軍でも精彩を欠いていた。また減額とはいえ来季契約の提示はしており、自由契約はあくまで嶋側が行使した権利である。球団側はコーチの椅子を用意するなど功労者に配慮はしていたが、嶋が現役続行の上で戦力としての評価を希望していたための結果であり、どちらが悪いという話でもない。
- 一方で、嶋がいなくなると楽天の捕手陣でキャリアがある選手はプロ年数のわりに一軍出場数が少ない山下斐紹*3と外野手登録の期間が長かった岡島豪郎*4の2人のみで他はプロ年数5年以下の若手捕手という布陣になるため、編成面を不安視する声もあった。
- 2020年シーズンでは太田光・足立祐一の若手が躍動し安泰かと思われたものの、中盤に太田が左肩の負傷で今季絶望、足立も成績を落としたため、巨人から田中貴也を金銭トレードで獲得することとなった。
- 高卒2年目の西巻賢二に戦力外通告を行い、育成契約を打診。明かされていた理由が「チーム編成上の方針」という曖昧なものだったことも荒れる原因となった。
- GM職にあった4年間で9回もの交換トレードを敢行するも、獲得したほとんどの選手が1軍で活躍できず。
真相?
河北新報スポーツ部の記者が、「あのGM」という表現は誤りで、実際には「あのー、GM」だったと証言した。
https://twitter.com/yusaku_hazama05/status/1186066269587394561
ネットで話題の「あのGM」っていうのは「あのー、GM(には)」が正確なところです。会見の現場に居合わせましたし、周囲の記者とも見解は一致しています。当事者の名誉のためにご指摘しておきます。
はたして報知の記事が正しかったのか河北の記者が正しかったのか、真相は不明。
取材中は録音もしているはずなので公開すれば真偽ははっきりとするが、活字媒体のマスメディアは通常取材映像や音声の公開はしないため今後明らかになる可能性は低い。
その後
そして三木監督のもと迎えた2020年シーズン、楽天はスタートダッシュこそ成功するも徐々に失速。FA補強元の西武やロッテにも抜かれる体たらくで、「実質Bクラス」と放言した前年をさらに下回る本来の意味どおりのBクラスに転落。当然ながらネット上では三木と石井の更迭論が飛び交うことになる*5。その最中、楽天はオンライン会見にて一軍監督を務めた三木を二軍監督に戻すこと、石井自身が来季GM兼務で一軍監督に就任することを発表。あのGMはあの全権監督となった。
全権監督として迎えた2021年シーズンも、開幕直後こそ首位に立つものの最終順位は「実質Bクラス」の3位で、CSでも1stステージ敗退。2022年には、球団新記録の11連勝を記録し首位を独走するもののその後急失速し、またしても本来の意義通りのBクラス(4位)という結果に終わった。
同年オフ、球団は石井がGM職を降りて監督専任となることを発表。迎えた2023年は終盤に追い上げを見せるもBクラスの4位で終戦。このシーズンをもって石井は監督を退任したため、自身がGM・監督を勤めたシーズンにおいてチームの最終順位が3位を上回ることはついになかった。
監督辞任後、石井は球団シニアディレクターに就任したが1年後またGMに復帰することとなった。ただし2022年以前と同じ権限かどうかなどは不明である。