横浜DeNAベイスターズのキャンプのこと。用語自体は2021年開幕初期の大型連敗から使われていたが、ここでは2023年に行ったキャンプを指す。
元ネタはあfろ原作の漫画『ゆるキャン△』。
経緯
最下位に終わった2021年シーズンの翌年2022年のキャンプは、新コーチ陣のもと朝早くから夜遅くまで猛練習を行ったが、その反動でキャンプ中盤からシーズン序盤にかけてケガ人が続出。後半戦にハマスタ17連勝などもあり2位になったものの、肝心のところで勝てずヤクルトに連覇を許した。
その結果に対し、三浦大輔監督は「選手に自主性を与える」と、練習時間を大幅に短縮することを発表。全体練習後にどう過ごすかは選手に一任することとなった。
これ以前に2000年台前半までの広島が、キャンプで猛練習を課した結果、怪我人が続出してシーズン成績が低迷した実例がある。そのため、この方針が全くダメという訳ではなかったのだが…
記事
【独占激白】なぜ横浜DeNA三浦監督は沖縄キャンプで長時間“猛練習”を廃止したのか…「優勝したヤクルトとの8ゲーム差を埋めるために何が必要かを考えてきた」*1
「ゆるキャン」蔑称誕生
ところが、初の試合形式である紅白戦では森敬斗が頭部死球を受け退場する*2不穏な出だしで始まり、翌日から始まったヤクルト、ロッテとの練習試合では投手陣が軒並み打たれまくり、野手陣はエラーを連発。2試合連続10失点と、(練習試合とはいえ)「他の球団と仕上がりが全然違う」「本当にまじめに練習をしていたのか」と批判が飛び出すほどの酷い内容となった。その矢先に上述の記事が出たため、練習時間を減らした=「緩いキャンプ」にしたからこのような醜態になったのではないかと、2021年序盤の低迷期に一部ファンが叫んでいた「ゆるキャン」が瞬く間に蔑称となった。
その後も選手たちの仕上がりは一向に進まず、
対外試合では
- 投げては簡単にホームランを打たれる。
- 守りでは致命的エラーからの大量失点。
- 攻めても強い打球を打てず得点は相手のエラー絡みが大半。
…と、凄まじいほどの投壊・守乱・貧打ぶりを披露。予定されていた6つの練習試合で一度も勝てずキャンプを終える惨状となってしまった。
その後のオープン戦では初戦の中日戦でようやく勝利したものの
- ホームランわずか4本という絶望的貧打。
- 守りでは致命的エラーから決勝点を献上。
…と、野手陣の状態がなかなか上がらない。
一方、野手陣とは対照的に投手陣は一部を除き順調な仕上がりを見せたことで、最終的には11位と最下位こそ回避したが、貧打は最後まで改善することはなく開幕を迎えることとなった。
同じくゆるキャンだった2021年はオープン戦で全く勝てないままシーズンに突入し開幕大型連敗であっけなく終戦しているため、開幕前から早くも「2023年シーズンは終わった」「最下位確定」と悲観的な声があちこちから漏れていた。
練習試合の結果
日付 | スコア | 相手 | 被弾 | 失策 | 試合内容・備考 |
---|---|---|---|---|---|
2月12日 | 1-10 | ヤクルト | 1 | 2 | 投手陣が三浦銀二以外全員失点。攻めでも相手投手を全く捉えられず。 |
2月16日 | 7-10 | ロッテ | 2 | 1 | 1イニングに後逸・トンネル・捕逸と守備が崩壊し大量7失点。 相手の大量エラー*3で一時は7点差を追いつくも、最終回に三浦が3ランを打たれる。 |
2月18日 | 2-2 | 阪神 | 0 | 1 | 敗北寸前から蛯名の2点適時打で引き分けに持ち込むも、勝利ならず。 |
2月19日 | 1-3 | 広島 | 1 | 0 | 初回に平良が3ランを打たれ、その後もまともに反撃できず3連敗。 |
2月21日 | 5-11 | 楽天 | 3 | 1 | 初回に石田が2ランを打たれるなどHRの集中砲火を浴び、またしても2桁失点。 森がようやくチーム第1号HRを放つも時すでに遅し。4連敗。 |
2月22日 | 3-9 | ロッテ | 3 | 0 | 入江が1イニング2被弾するなど投手陣がまた大炎上。 打線も冷温停止し5回までノーノーに抑えられる。5連敗。 これにより、キャンプ中の練習試合は一度も勝てずに終わった。 |
オープン戦の結果
日付 | スコア | 相手 | 被弾 | 失策 | 試合内容・備考 |
---|---|---|---|---|---|
2月25日 | 7-5 | 中日 | 1 | 1 | 主力の活躍で7点リードしようやく今季初勝利。 が、主力が引っ込んだ終盤はお粗末なエラーを連発し追い上げられる。 |
2月26日 | 1-4 | 巨人 | 0 | 2 | 育成投手相手に抑え込まれ、相手のエラーで貰った1点しか取れず再び敗戦。 |
3月4日 | 1-4 | 西武 | 0 | 1 | |
3月5日 | 3-1 | 0 | 1 | ||
3月7日 | 1-0 | 楽天 | 0 | 0 | |
3月8日 | 4-5 | 2 | 0 | 2被弾で逆転負け。 | |
3月9日 | 2-3 | 0 | 0 | ||
3月11日 | 5-9 | 中日 | 0 | 0 | 小園が滅多打ち。その後も次々撃ち込まれ大敗。 |
3月12日 | 0-8 | 1 | 0 | 先発東が初回5失点と大炎上。中日投手陣に完封リレーを食らい4連敗。 | |
3月14日 | 6-11 | 阪神 | 1 | 0 | 先発濱口が初回4失点と大炎上。その後逆転するも宮城が大炎上し5連敗。 |
3月15日 | 0-2 | 0 | 0 | 阪神投手陣に完封リレーを食らい、わずか2安打に抑え込まれ6連敗。 横浜スタジアムでのオープン戦は6戦全敗という散々な結果で終わった。 | |
3月17日 | 3-4 | SB | 0 | 1 | 先発石田が援護点を吐き出し逆転負け。7連敗。 |
3月18日 | 5-2 | 1 | 0 | 0-2から6回に4点取り逆転。ようやく連敗をストップ。 | |
3月19日 | 2-4 | 0 | 2 | 森、柴田がエラーし逆転負け。 | |
3月21日 | 1-0 | 巨人 | 0 | 0 | |
3月22日 | 0-2 | ヤクルト | 0 | 0 | |
3月24日 | 1-4 | 西武 | 0 | 0 | |
3月25日 | 0-5 | 1 | 1 | ||
3月26日 | 2-3 | 0 | 1 | 6回にスクイズを決められ敗戦。 19試合で6勝13敗という散々な成績でオープン戦が終了。 |
他球団における「ゆるキャン」
他球団では阪神の練習が以前から緩いことで知られており、比較的厳しく練習を課した金本政権の反動からか特に矢野政権時代のキャンプで顕著だった。これを落合博満が東スポで批判した際の記事の見出しは「ゆるキャン批判」というものであった*4。
開幕後の成績
シーズン開幕後の成績は以下の通り。
月 | 勝 | 敗 | 分 |
---|---|---|---|
3・4月 | 16 | 7 | 0 |
5月 | 9 | 13 | 1 |
6月 | 13 | 10 | 0 |
7月 | 8 | 13 | 1 |
8月 | 13 | 12 | 1 |
9・10月 | 15 | 11 | 0 |
総計 | 74 | 66 | 3 |
4月終了時点でこの記事に反し首位を快走し、5月は首位を阪神に明け渡すものの、2位を維持して阪神を追走。
6月にはチーム初の交流戦優勝を飾り、一時は首位奪還に成功するも、7・8月に失速。
9月にはV逸が確定したが、巨人を蹴落としてAクラスを確保し、結果、3位でフィニッシュとなった*5。
前年より1つ順位は落ちたものの貯金を作りシーズン終了、Aクラス入りでCS進出となった。
オープン戦首位でシーズンも順当に首位のオリックスもいれば、オープン戦2位から一転シーズン最下位に低迷する日本ハムもいるなど、そもそもオープン戦とシーズン成績が一貫しないのは毎年恒例の光景であり、この「ゆるキャン」なる批判への慎重論も当時からあったのだが、全く聞く耳持たず「2023年シーズンは終わった」「最下位確定」などと勇み足で断定し、挙句大きく予想を外した当記事は典型的な正岡民ネタとなってしまった。