絶対的な正遊撃手が不在なチームがドラフトなどで遊撃手を見境なく集めること。
概要
野球において内野守備の要である遊撃手の重要性は今更語るまでもないが、そのポジションのレギュラーが固定されていないことはチームにとって問題である。
が、そのことに対する危機意識が過剰になってしまうのか、絶対的なレギュラー遊撃手が不在なチームがドラフトやトレードで遊撃手を過剰に獲得する事態がしばしば発生しており、近年はその事を「ショートガチャ」と揶揄するようになってきた。
問題点
ショートガチャの問題として、所属する選手のポジションが大きく偏ってしまうことが挙げられる。
これに対して時折「ショートを守れる選手は身体能力が高く俊足と強肩を兼ね備えているため、どのポジションも守れるからコンバートすればよい」という意見が出ることがある。
しかし守備面はともかく、打撃に関しては「長打力を備えた打てるショート」が非常に稀な存在であり*1*2、守備より打力が重要視される一塁、三塁、両翼への転向では求められる水準に満たないことが多い。
しかも、ショートガチャをするチームはドラフトで大社の即戦力ショートを複数人指名することが多いだけでなく、戦力外やトレードでもこうした選手を集めてくることがある。結果、年齢および選手としてのタイプ(守備、走力は高いが打撃が微妙)が似通った内野手がだぶついてしまうことが多々見られる。
実例
1990年代後半~2000年代後半の阪神
1997年オフに久慈照嘉を中日にトレードで放出*3して以降、鳥谷敬がレギュラーに定着するまで長期に渡り遊撃手を固定できなかった*4。
このためか、レギュラークラスになった選手では藤本敦士や鳥谷、控えレベルでも秀太や的場寛一、沖原佳典、前田忠節*5、藤原通、水田圭介、坂克彦、大和など、ドラフトやトレードで病的なまでに遊撃手を集めていた時期があった。
なお、鳥谷が絶対的なレギュラーとなった10年代以降は過度な遊撃手の乱獲は控えている*6。
2013年~2016年の西武
中島裕之のメジャー移籍以降、その後継者探しで遊撃手を乱獲していた。詳細は所沢遊撃隊を参照。
2010年代後半以降のサンディエゴ・パドレス
10年代後半からプロアマ問わずショートをかき集めた結果、2024年にはバッテリー以外全員ショート経験者でスタメンを組む*7というまさにショートガチャの極地とも言える領域に至った。
チームとしては守備力は総じて高いのだが、打力は他チームと比べてやや見劣りするとされている*8。
2023年~2024年の中日
2022年オフのドラフトで、中日は村松開人、田中幹也、濱将乃介*9、福永裕基の4人を指名するという二遊間*10に大きく偏った指名を展開。するとその後、内野のサブであった三ツ俣大樹を戦力外とするだけでなく、レギュラー級の二塁手・阿部寿樹と遊撃手・京田陽太をトレードで放出し、既存の二遊間をほぼ解体。さらに、新外国人としてユーティリティーのオルランド・カリステを獲得した。
これには立浪和義監督が世代交代を目指した側面があったと報じられており、特に京田は攻守に大不振であったこと、後継候補として(土田)龍空が出場機会を増やしていたことから、当時の反応は賛否両論であった。
しかし、迎えた2023年は若手二遊間が攻守ともに大きな課題に直面し、2年連続最下位の一因に。そしてこの年のドラフトでも大社出身の遊撃手である津田啓史、辻元倫太郎を指名。戦力外から獲得した山本泰寛と板山祐太郎、新外国人のクリスチャン・ロドリゲスも二遊間候補となる混沌は、ファンを大いに嘆かせることになった。
それでも、2024年シーズンでは村松が大きく成長してショートのレギュラーを獲得。シーズンが終わって立浪が監督を退任し、ドラフトでの遊撃手の指名は高卒の森駿太の一人に留まり、遊撃に限ればガチャ状態は脱しつつある。