シンカー投げおじさん

Last-modified: 2023-09-20 (水) 15:12:55

かつてニューヨーク・ヤンキースに所属しWBC台湾代表だった王建民(ワン・チェンミン)(おうけんみん)のこと。
「シンカー投げお兄ちゃん」とも呼ばれる。
また、カッター投げおじさんとカーブ投げおじさんについても併せて解説する。

概要

王はヤンキースで先発として活躍。2006年は19勝*16敗・防御率3.63で最多勝、翌年も19勝7敗・防御率3.70と好成績を残した、台湾を代表するレジェンド投手である。
2013年頃は故障で低迷していた時期だったが第3回WBC台湾代表入り。3月2日の1次ラウンド初戦・オーストラリア戦では、65球の球数制限がありながら6回無失点と好投、3月8日の2次ラウンド初戦も同じく6回無失点の好投で、日本を敗北寸前にまで追い詰めた

 

そのシンカーしか投げていないのに打てない様子が、大会前まで彼をオワコン扱いしていた(あるいは彼の投球スタイルを知らなかった)なんJ民に衝撃を与えた。そもそも王はMAX157㎞/hをマークした高速シンカーを中心に試合を組み立てる典型的グラウンドボールピッチャーである反面、奪三振は非常に少ない。*2このため「ツーシーム投げ猫」風の「シンカー投げおじさん」というあまりに安直な名が生まれることとなった。

日本のシンカーとMLBのシンカー

日本では「右打者内角に食い込みながら大きく落ちる変化球」のイメージであり下手(横手)投手の山田久志・高津臣吾らが得意にしていた。また左投手の場合はスクリューとも言われ、こちらは山本昌高橋尚成らが得意にしていた*3
しかしMLBでは「シンキングファストボール」つまり「沈む速球」*4のこととされており、日本で言うシンカーはチェンジアップとして扱われる。
当時の日本ではあまり見慣れない球種*5であったが、この試合をきっかけに日本でも知られるようになった。


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「カッター投げおじさん」

元ヤンキースのクローザー、マリアノ・リベラのこと。
史上最多の通算652セーブ、また「カット・ファスト・ボール(カットボール)」すなわち「カッター」一本で成功した大投手で、投球比率の80%以上を占めている。
リベラのカッターは4つのコーナーに投げ分けられる制球力を備えつつ「95マイル(約153km/h)で8インチ(約20cm)落ちる」「バットをへし折る電動ノコギリ*6」と恐れられ、特に左打者に取っては難攻不落そのものだった。
こちらも典型的なグラウンドボールピッチャーとしても知られ、通算被本塁打率は0.50(18イニング投げて一発)と破格の値である。このためか、彼が左打者からサヨナラ本塁打を打たれたのは19年の現役生活でたったの2回*7である。
2013年3月に同年限りでの引退*8を表明。元々レジェンドであった上に予め引退を表明しているのが悔やまれる程にカッター一本で驚異的な投球を続けていることへの驚嘆と称賛から、「カッター投げおじさん」という名称が広まった。
その後、米殿堂入り投票で投票率100%という史上初の満票殿堂入りを果たした。

 

また、ほぼ他の選手が追いつけないレベルで通算最多のセーブ数を稼いでいるにもかかわらず、セーブ機会以上にリードが広がることを嫌悪する「畜生キャラ」としてもネタにされており、味方が点差を4点以上に広げないよう凡退を願う・実際にリードを広げた場合その選手を腐す・味方の救援投手が失点するように願うといった言動を見せつけていたという。
味方の攻撃によって点差が開き、セーブ機会を失った場合「リベライライラでワロタwww」「リベラの顔wwww」となんJ民に煽られるのがお約束である。

 

ちなみに現在MLB全球団で永久欠番となっている背番号「42」を現役で付けていた最後の選手である*9

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「カーブ投げおじさん」

ブラジルリーグに所属する投手で、2013年のWBCブラジル代表の一員として侍ジャパン打線と対戦したエルネスト・ノリス・チャコーンのこと。キューバ出身、ブラジル国籍で当時40歳だった。
19歳の時にキューバ国内リーグのレオネス・デ・インダストリアレスに入団して30歳までプレーしていたが、親族が政治犯として投獄され、自身も関与を疑われたためやむを得ずブラジルへ亡命。その後はブラジルリーグでプレーしつつ、キューバ政府に親族の解放を訴えかけている。

 

2013年WBCにおいて、日本にとって初戦となるブラジル戦の8回表途中から登板し、そのだらしない体格、一見適当そうなフォームから繰り出される変化の大きいカーブで1回1/3を完璧に抑え、日本中の野球ファンの度肝を抜いたことでその存在を知られるようになった。
その後母国であり因縁の相手であるキューバ戦の5回表にも登板。結果は投球回1/3の被安打1、暴投1だった。

 

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関連項目


*1 アジア人投手の単年勝利数歴代1位。2位は松坂大輔と朴賛浩の18勝。
*2 最多勝を獲得した2006年は218イニングに対して76奪三振で、これは同年の規定投球回到達者ではワースト2位であった。2年連続で19勝を挙げた翌2007年もキャリア唯一ではあるがギリギリ3桁の104奪三振となっている。
*3 正確に言うと、スクリューボールは「利き腕の方向に曲がるカーブ回転の変化球」であり、回転数を減らして落差を付けるシンカーとは全く別の変化球である。つまり、右投手であってもスクリューを投げることは可能。当然シンカーとスクリューの両方を投げられる投手も存在する。「スクリュー=左投手のシンカー」という誤った認識が広まったのは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』において、左投手のシンカーが全てスクリューとして扱われていたのが大きな原因。シンカーとスクリューが別の変化球だと知られるようになった現在でもパワプロ・プロスピいずれも右投手シンカー、左投手スクリューという変化球設定はほぼ変わっておらず、左投手でシンカーを投げるのはプロスピAの宮西尚生くらいである。
*4 黒田博樹など握りや変化を改良した例もあるが、ダルビッシュ有も述べているように基本的には「ツーシーム」とほぼ同じボールであり、日本では便宜上「ツーシーム」と呼ばれていた。
*5 日本では藤川球児に代表されるフォーシームが好まれる傾向があるため。
*6 2013年には同年で引退するリベラにミネソタ・ツインズより「折られたバットで作られた椅子」が贈られた。
*7 1本はシアトルマリナーズ時代のイチローによるもの。また右打者を含めた通算でもたったの5本しか打たれていない。
*8 元々は前年限りを示唆していたが膝の故障で「このまま引退できない」と1年延ばした。なおその現役最終年も43歳で44セーブと引退する選手とは思えない成績を残した。
*9 黒人選手第1号のジャッキー・ロビンソンを顕彰し1997年に制定されたが、それ以前から付けていた選手は特例として付けられた。他の選手は移籍や引退で外れていった中でリベラは現役生活の長さゆえに42を付けた最後の選手となった。引退後ヤンキースの「42」はロビンソンとリベラの永久欠番と扱われている。