セルフ戦力外

Last-modified: 2024-04-18 (木) 20:27:02

木村昇吾(当時広島)が2015年オフに行ったFA宣言の事。


経緯

2002年にドラフト11位で指名され横浜ベイスターズに入団。2008年からは広島東洋カープでプレー*1し、長年にわたり代走・守備要員としてチームを支え続けた木村は2015年シーズン終了後、スタメンでの出場機会を求めてFA権の行使を示唆。しかし微妙な通算成績の割りに推定4100万円とそこそこ年俸が高く、35歳という年齢や三塁手が固定できていない広島のチーム事情から

「獲得球団が現れるのか?」
「むしろ広島が一番出場機会があるのでは?」

と心配する声がなんJで挙がった。球団も慰留に乗り出したものの、結局11月10日にFA宣言。

広島は宣言残留に消極的*2で不利な状況での宣言と見られたため、事前にどこかの球団と話が付いているのではないかという予想もあった。

しかし木村を待っていたのは、契約どころか獲得意向の報道すらないという日々であった。木村本人からも「(連絡が)何もない」など悲壮なコメントが報じられるようになり、なんJでもストーブリーグの注目選手として台頭。23日になると、球団の慰留を断ってまで宣言した経緯や、FA後の言動がまるで戦力外通告を受けた選手のような状態であったことから「木村昇吾さん、史上初のセルフ戦力外へ」というスレが立てられ、木村の行く末やFA制度の問題点の議論等で数スレに渡って完走を繰り返した。
また、木村に興味を示す球団がなかなか現れないことから「木村昇吾球団興味」というネタスレも度々立てられている。

 

解説

FAのルールとして「FA宣言した年の翌々年の11月30日まで日本のプロ野球球団と契約を交わさなかった選手のうち、翌12月1日以降に日本プロ野球球団と選手契約を交わした場合は、補償対象選手であっても前球団への補償を必要としない」というものがある。FA宣言できる期間は日本シリーズ終了後から7日以内と定められているため、このルールを平たく言うと「Bランク以上の選手の場合、宣言してから2シーズンが終わるまでFA前に所属していた球団以外の国内球団に移籍すると補償が発生する」というものである。これは海外FAで外国の球団に移籍した場合でも適用される。
つまり、木村が仮にBランクだったとして契約してくれる球団がなかった場合2016年シーズンを浪人したところで補償のリスクは消えないため、2017年も2年連続で浪人する危険性が高いということである
もはや広島が再契約するか、他の11球団がリスク承知で木村を獲得しなければ木村の野球生命は終わったも同然の状態であった。

その後

FA選手としては史上初となる入団テストを経て、2016年2月5日に埼玉西武ライオンズへの入団が発表されたが……

  日付  出来事
6月22日練習中に右膝前十字靭帯断裂、再建手術で戦線離脱。
10月1日本当の戦力外通告を受ける
11月18日西武と育成で再契約*3

と、散々な1年となった。ちなみに2016年は古巣の広島が25年ぶりにセ・リーグ制覇、西武は3年連続Bクラスとなる4位という間の悪さも見られた。

 

このまま終わると多くのファンが思っていたが、2017年6月8日に支配下登録に復帰、その日の対巨人戦メットライフドーム)で即スタメン出場を果たしている*4。しかしながら10月にはまたも戦力外通告を受けることに。
トライアウトを受験するも、NPB12球団から声が掛かる事は無く、3年連続3回目の終了か…と思われた。しかし翌2018年1月18日に海外のプロクリケットリーグへ挑戦しクリケット選手に転身。当然ながら元NPB選手のクリケット選手への転身は史上初である。2018年3月にはクリケットの日本代表にも選抜された。
2021年には広島対巨人戦で初解説を務めており、ファンからの評判は良好だった模様。


似たような事例

  • 藤井秀悟
    当時は真相がわからなかったこともありなんJではあまり話題にならなかったが、2009年にFA宣言*5をした際、オファーを出す球団がなかなか現れなかった*6。所属していた日本ハムも再契約の意思を持っておらず選手会にも心配されたが、1ヶ月後に巨人が獲得に乗り出し*7事なきを得た。
  • 桧山進次郎
    なんJ設立以前の野球板時代だが、 2002年にFA宣言した際にはオファーがなく結局残留することになった*8*9。このため「この日までに桧山には他球団からの連絡はなかった」を縮めた「連絡」「連絡無し」というあだ名をつけられ、セカンドゴロ等と並ぶ桧山ネタの代表格となった。
  • 金城龍彦
    横浜時代の2010年にFA宣言した際、他球団から連絡がなく横浜に残留する。しかし2014年に再度FA宣言した時は巨人に移籍している。
  • 松永昂大
    ルーキーイヤーの2013年から2019年までの間、ずっと40試合以上登板を維持していたが、2019年9月に故障。その影響から2020年はわずか5試合の登板に終わってしまい、評価が下落する。同年オフにFA宣言するもやはり他球団からの連絡がなくロッテに残留。松永の場合はメディアからも一切情報がなく本気で木村の再来を危惧され、さらにその翌年は故障で一軍登板が0に終わると、戦力外通告の上育成契約に切り替えと本家の木村と同じ道を辿る。その後は2022年7月末に再度支配下選手登録されるも、一軍での登板は無く同年限りで現役引退。
  • 山下航汰*10
    育成出身ながら高卒1年目で支配下契約を勝ち取りファーム首位打者を獲得するなどトッププロスペクトとして期待されていたが、2020年5月に故障し2021年は再び育成契約となっていた。「支配下から降格した育成選手が次年度中に支配下復帰しない場合は自動的に自由契約となる」という規定に基づき2021年オフに自由契約となるも、当然ながら育成での再契約を巨人より打診される。しかし山下は、他球団との支配下契約を目論んでこれを拒否。巨人を退団した。
    その後は合同トライアウトに参加するも12球団からオファーはなく、結局社会人野球の三菱重工Eastに入団。残留の手筈が整えられていながら自らNPBから去ることになった。
    ただし2019年には、ソフトバンクから同様の経緯で自由契約となった白根尚貴が再契約を受けずトライアウトを受験した結果DeNAに支配下で獲得されたという前例もあった*11ため、期待の若手という見方も未だあった山下の退団は全く無謀だったというわけではない。
  • 筒香嘉智*12
    2023年は開幕からレンジャーズ傘下マイナーに所属していた筒香嘉智は、シーズン中に自らオプトアウト権を行使して6月23日に球団との契約を解除。この時点では「他のMLB球団とより有利な契約を結べる見込みがあった」「よりメジャー昇格チャンスのある球団への移籍を志向した」といった説があり、すぐに移籍の情報が出ると思われていた。しかしその後は1ヶ月以上も音沙汰がなく、最終的に独立リーグであるアトランティックリーグへ行く事となった。
    かねてよりメジャーへの夢を諦めずマイナーで孤軍奮闘する姿を称賛されることが多かった筒香ではあるが、この行動には呆れる者も多く、自己評価を勘違いしたと揶揄してセルフ戦力外扱いされることもあった。なお、独立リーグにて好成績を残したおかげか、8月22日にジャイアンツとマイナー契約を結んでいる。


FA宣言に伴うリスクとその事例

FA宣言は事前に他球団と内定済の者が行うのが当然であるという誤った認識に基づき木村らを嘲笑する者も一部に存在するが、木村や藤井らの前例からもわかる通り、決して当然のことではなく野球浪人になるリスクもある。

また、メジャーリーグ挑戦を伴う海外FA宣言を含めると、2001年オフに横浜からニューヨーク・メッツへ移籍した小宮山悟が実際に野球浪人を経験している。メジャーの壁に直面した小宮山は2002年オフに横浜復帰を画策したが、山下大輔監督(当時)には構想外と扱われ横浜への出戻りの道は絶たれた。加えて他の11球団にとっては前述のルールが適用され、「FA移籍から2年以内に横浜以外のNPB球団で復帰すると獲得球団が横浜へ1億7,500万円の補償金を支払わなければならない」という点が足枷となり、獲得に乗り出す球団はあったが実現しなかった。結局小宮山は1年間の野球浪人*13の末1999年オフにFA権を行使しようとした結果本当の戦力外通告を受けた古巣のロッテに移籍するという数奇な運命を辿っている*14

他方で、実際に戦力外通告を受けトライアウトを経てオファーが無くても現役続行を目指し野球浪人の身になる事例も当然起こりうるものである。

発祥スレ

木村昇吾さん、史上初のセルフ戦力外へ
http://orpheus.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448289376/

1 :風吹けば名無し@転載禁止:2015/11/23(月) 23:36:16.06 ID:53idoov2r
自爆とも言う

球団に興味スレ

【朗報】木村省吾がDeNAに興味
http://orpheus.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448267254/

1 :風吹けば名無し@転載禁止:2015/11/23(月) 17:27:34.62 ID:19qo0DWrd
楽天にも興味

【速報】木村昇吾が複数の球団に興味
http://orpheus.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448552681/

1 :風吹けば名無し@転載禁止:2015/11/27(金) 00:44:41.88 ID:sGf7AMyi0
@inkei_spots 広島からFA宣言をしていた木村昇吾が、在京の複数の球団に興味を示していることが判明。

2 :風吹けば名無し@転載禁止:2015/11/27(金) 00:45:14.00 ID:ORyi02G+0
球団は興味ないぞ

他にも「ヤクルトを獲得」「ソフトバンク*15と契約」といったスレも立てられた。
ちなみに、この手のスレの初出は2009年に立てられた『【速報】FA藤井が在京球団に興味を示す』というスレだと思われる。

コピペ

木村スレで学べるもの

・木村昇吾という選手について
・広島の内野手事情
・11球団のユーティリティープレイヤーについて
・4000万という年俸の価値とそれに近い額の選手
・FA制度の仕組み
・自動FAに改正した場合のメリットデメリットが何か
・桧山、塩崎、真中ら過去の「FA宣言→連絡なし」となった選手の経緯について
・川崎宗則の動向*16
・各球団フロントの補強方針について
・八王子ガイジ*17
・高級ビニール傘について

Q&A

木村スレQ&A ①

Q.ビニール傘って何?

A.木村の立ち位置が12球団にとって「あったら便利だけどお金出してまで買いたくはない」というちょっと高いビニール傘に似ていることから言われるようになりました。

Q.こんな悲劇を起こさないためには、やっぱり自動FAにルール改正したほうがいいよね?

A.全員が自動FAになることでむしろ木村のような選手が増える可能性が高まります。

Q.結局広島に出戻りするんじゃないの?

A.鈴木本部長は「(宣言して残留は)今までないし、宣言するとなれば、お互いに次のステップに進むということ」と発言しています。

ソース: http://www.hochi.co.jp/baseball/npb/20151110-OHT1T50235.html      http://www.sanspo.com/baseball/news/20151111/car15111105020001-n1.html

木村スレQ&A ②

Q.FA権を行使した選手に対して年俸を上げ下げするのはどんな規定があるの?

A.前年の年俸より上げてはいけません(複数年の場合はその限りでない)。下げる分にはいくら下げても問題ありません。

Q.国内FAじゃなくて海外FAだけど、これも木村の損になっているって本当?

A.本当です。このまま無職を続けると、来年は広島からの保留手当を貰うことができません。仮にBランクだった場合、広島は2017年11月までFA補償権を有することになります。

Q,そもそもなぜ木村はFAしちゃったの?

A.自己評価が高すぎる馬鹿だからです。今の自分は広島以外でなら定位置を確保できると思い込んでしまったのが運の尽きです。自業自得ですね。

マエケン「そうきたか…」で有名なgifは木村のプレーです。  08TNnBm.gif

進展

6/30(海外FA権取得)
「今は何も考えていない。試合に出ることでいっぱいいっぱいです。今は試合に出られるようにやるだけ」
10/30
「せっかくの権利。他球団がどう思っているのか、聞きたい気持ちがない訳でもない」
11/9
「時間もあるし、焦る必要はない。他球団の話を聞きたいという気持ちもないことはない」と権利の行使を視野に入れていた。
11/10
海外FA権行使。「他のチームの話を聞きたい。難しい決断でした。どうなるか自分自身、不安です」
11/12
「野球をしたい。それだけなんです」
11/22
進展は「何もない」と話した。

木村昇吾の取扱説明書

長所
・Cランク*18で補償不要。
・一応内野はどこでも守れる。
・外野も守ったことがある。
・足は結構速い。
・肩もなかなか強い。
・打率はまずまずで、たまに長打を打つ。
 
短所
Bランク*19かもしれない
・致命的なエラーが多い。
・三振も多い。
・選球眼が悪く、四球が少ない。
・盗塁が下手。
・バントも下手。
・チャンスに弱い*20
・来年36歳。


関連項目


*1 岸本秀樹とともに小山田保裕との2:1交換トレードで移籍。
*2 以前は再契約に伴う年俸高騰が球団経営に影響を及ぼすなどの恐れから「宣言残留は例外なく認めない」という方針だったが、金本知憲がFA再契約を求めながら認めなかったことで流出されたことへの反省や、近年の新球場効果やカープ女子ブームなどで球団経営が好調なこともあり、現在は「宣言残留は基本的には認めない」と軟化している。実際に木村退団後、2018年オフに丸佳浩がFA宣言した時は宣言残留を認めるとして残留交渉に及んだ。尤も丸は2年連続MVPでチームの柱であるからこその例外であり、木村とは大きく事情が異なる。
*3 ただし西武はケガが治れば戦力になると考えており、育成契約は治療・リハビリへの配慮と思われていた。
*4 支配下復帰直後のためユニフォームが間に合わず本来の背番号0ではなく育成時代の121番を背負っての出場となった
*5 その素行や言動が球団内で問題視されたことで実質構想外となっており、FA宣言は彼のイメージを悪くしないための球団の配慮であったとされる。
*6 広島が多少調査を行った程度。実力はともかく藤井の素行や交友関係などが他球団も獲得に二の足を踏んだ理由とされる。
*7 藤井のFA宣言は国内FA権によるものであり、仮にこのまま契約意思のある国内球団が現れない、あるいは選手が交渉に応じる気がない場合について想定されておらず、そうなった場合の藤井の扱いについてどうなるかが不明となってしまう。こうなると海外FA宣言を利用せずとも取得期間の短い国内FA権のルール上の盲点を突いてMLB球団などへの海外移籍を企図する選手が現れることによりFA制度の崩壊につながると危惧した巨人による事実上の救済措置ともいわれている。また2014年にはオリックス・金子千尋の国内FA宣言の行使の際、一時期どの球団との交渉にも応じる気が全く無く、この制度の欠陥を突こうとしているのではないかとも囁かれ、「宣言残留してポスティングを行いメジャー挑戦」とも報道された。最終的には交渉締め切り直前にオリックスとの契約に応じ残留した。
*8 この年の桧山は終盤に左肩亜脱臼で離脱したとはいえ規定打席に到達し打率2割9分3厘を記録しているため、決して悪い成績ではなかった。
*9 後に当時監督だった星野仙一が著書にて、フロントに頼まれて間に入った事を明かしている。
*10 FA宣言ではないが、自分の意志で所属球団への残留を断った結果本当に戦力外となりNPBを去る例となったためここに記載する。
*11 もっともこれはレアケースで、本来は亀澤恭平(ソフトバンク育成→中日支配下)や長谷川宙輝(ソフトバンク育成→ヤクルト支配下)など元所属球団との契約禁止期間中に他球団からのオファーがあったことを前提に退団するのが普通である。
*12 前述の山下同様にFA宣言ではないが、シーズン中ながら自分の意志で所属球団との契約を切った上で、MLBやNPBからのオファーがなかったためここに記載する。
*13 トレーニングの傍ら元メッツ・現役投手の肩書で野球評論家として活動した。
*14 1999年オフの顛末は「同一リーグに移籍しないことを条件に、球団からFA補償のかからない自由契約を提案された」「小宮山側が一方的に自由契約を宣言してケンカ別れした」などの様々な憶測があるが、いずれにせよこの時小宮山本人は「(一度戦力外通告を受けた以上)ロッテからのオファーはあり得ないと思っていた。奇跡に近いものを感じたので、重光オーナー代行から連絡を受けた時に即決した」と驚きを持って受け止めている。
*15 ホークス球団のことではなく本業(携帯電話)の方
*16 2015年オフに川崎はトロント・ブルージェイズをFAとなった。その後2016年1月にシカゴ・カブスとマイナー契約を結んでいる。
*17 2015年9月に八王子の知的障害児が行方不明となった事件が起き、なんJでも木村同様進展が無かろうがスレが立てられていた由来が極めて不謹慎なため、安易な気持ちでネタにしてはならない。
*18 移籍前の球団内における年俸順位が11位以下の選手。その後木村はCランクに当たっていたことが明らかになっている。
*19 同じく年俸順位が4位~10位の選手。年俸に比例した割合の金銭補償に加え、移籍元の球団が要求した場合は人的補償が発生(ただし人的補償ありの場合、金銭補償は減額される)。
*20 ちなみに2016年は得点圏打率.100(20-2)。