ムエンゴ

Last-modified: 2020-05-12 (火) 12:29:03

どんなに好投を続けても味方打線が点を取ってくれず勝ち星が増えない状態のこと。「負け運」とも呼ばれる。

勝ち星の多寡は(球団によって考え方に差があるとはいえ)少なからず年俸査定に影響を与えるため、ネタ抜きに投手にとっては死活問題にも直結しうるものと言ってよい。


概要

もともと「無援護」という言葉自体は存在しており、江夏豊の13回完投負けや、三浦大輔(2005年)や黒田博樹(2006年)が最優秀防御率を取りながら勝ち星に恵まれなかった時など、特に貧打のチームの好投手に対して使われていた。
また「チーム得点率は高いが、特定の投手の先発時のみ異様に援護点が少ない」場合にも使われていた。

用語「ムエンゴ」の誕生

2008年に抑えで炎上を繰り返したドミンゴ・グスマンは先発に再転向。しかし好投を続ける一方で無援護に悩まされ*1、登録名と語感が近いことから「ムエンゴ」が生まれ、「渡辺俊介ちゃんを救う会」の発足により定着した。

用語誕生以前の一例

黒田のムエンゴ

広島暗黒期はもちろん、渡米後はドジャースやヤンキースといった常勝球団に所属していようがシーズン中に移籍しようがムエンゴに悩まされ続ける。ドジャース時代は同僚のクレイトン・カーショウが20勝でサイヤング賞を獲得する一方で黒田は2桁勝利出来ないなど露骨なムエンゴに襲われ、アメリカでは黒田は援護の無さの訴訟を起こすべきなどとネタにされていた。ただしヤンキースはともかく、ドジャースや広島では打席に立つので、この2チーム所属時に勝てなかったのはあまりに打てないのも問題だと指摘されることもある。

伊藤智仁のムエンゴ

現役時代のムエンゴぶりが凄まじく、デビュー戦はジエンゴで初勝利、その後も黄金時代のヤクルト打線に援護されず12試合中7試合で1得点以下だった。
それでもルーキーイヤーには7勝2敗の結果を残したが、怪我から復帰した1998年は防御率2点台前半にも関わらず6勝11敗。しかもチームメイトの川崎憲次郎(元ヤクルト→中日)は防御率3点台で17勝を記録している。

ネット上での扱い

無援護投手は文字通り援護がないので最少失点で投げ切らないと負けてしまう。そのため、側から見ればQS達成の好投でも「6回3失点の炎上」と言われたり、援護が最小限のものでも「1点の大量援護」と言われたりするのがお約束である。

近年のムエンゴの動向

2009年

渡辺俊介の影に隠れていたが中日ドラゴンズ・チェン・ウェインも相当なムエンゴであり、援護率そのものは3.64と悪くなかったものの援護率詐欺の傾向があり、QS達成19回・防御率1.54を記録しながらQS勝利8回(QS勝率.421)により8勝4敗に留まっている。

2010年

横浜ベイスターズのルーキー・加賀繁が前述の渡辺を下回る援護率2.47を記録。防御率3.66(リーグ10位)ながら3勝12敗、勝率.200、QS勝率に至っては.111である。
なお加賀の勝率は「防御率10傑に入った投手の勝率」としてはプロ野球史上最低記録*2と、歴史に残るレベルのムエンゴを叩き出した。
なお5月30日には前述の渡辺との対決が実現。見事なまでにお互いムエンゴであり、11回に山口俊里崎智也にサヨナラホームランを打たれるまで両チーム無得点だった

 

広島・前田健太が援護率3.38という全体ワースト2位ながら15勝(8敗)を挙げ、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振の投手3冠、最優秀投手・沢村賞・ベストナインなど投手タイトル総なめの大活躍も印象的であり、先述の加賀とは対照的とも言える*3

2011年

この年は「飛距離が出ない」という「統一球」が導入され、記録的な投高打低ぶりから例年を上回るペースで完封試合が増加。さらに東日本大震災を受けて特別ルール(いわゆる「3時間半ルール」)が導入、引き分けが著しく増加したこともムエンゴの増加に拍車を掛けた。
その結果、援護率は登板試合5連続完封負けのプロ野球新記録を樹立した日本ハム・武田勝(2.43)を筆頭に、

  • 中日・マキシモ・ネルソン(2.29)
  • 中日・チェン・ウェイン(2.59)
  • 阪神・岩田稔(2.51)
  • 西武・牧田和久(2.07)(規定未到達)
  • 巨人・澤村拓一(2.81)
  • ソフトバンク・杉内俊哉(2.58)

とキャリアや所属球団リーグ不問で被害者が続出、各球団がムエンゴ対策に追われた。援護率の全体平均が1点以上低下する異常事態の中、横浜・高崎健太郎*45勝15敗、QS18回でQS勝利5回、援護率2.20を記録。3年連続でワースト記録を更新した。

2012年

同年もこの傾向が続き、広島・野村祐輔やブライアン・バリントン、オリックス・木佐貫洋らが2.5を下回る援護率を叩き出し、阪神・ジェイソン・スタンリッジに至っては驚愕の援護率1.98など超投高打低シーズンに。前述の野村は防御率1.98の好成績で新人王を獲得しながら9勝11敗で負け越してしまった。

なお、この年はノーヒッターが3人(広島・前田健太、巨人・杉内俊哉、オリックス・西勇輝)出ている。

 

後に前年の統一球ともども、反発係数が基準を下回っていた事が判明した。

2013年

悪名高き特別ルールが撤廃、さらに違反球判明からの再製造で異常なまでのムエンゴは改善すると思われたがスタンリッジと澤村は再びムエンゴ病を発症。特に澤村はチーム総得点が約600(チーム打率.262)ながら援護率2.78で、5勝10敗と大きく負け越してしまい9月からリリーフに転向した。
三浦も横浜が打撃好調*5にも関わらず援護率2.87と相変わらず、これが原因で2桁勝利を逃した上にセ・リーグ最多敗戦を喫している。
また、オリックス・金子千尋も15勝を記録も援護率はパ・リーグで最低の3.18で、防御率が2.01(リーグ2位)にも関わらず8敗している。その結果、受賞基準の全項目を満たしながら24勝0敗1S・防御率1.27だった楽天・田中将大に沢村賞を譲る形となった。(田中は完投数が基準を達していなかった)

2014年

巨人・内海哲也が深刻なムエンゴに。9試合連続で勝ち星なし、一時期は内海の援護点より投手の大竹寛の打点の方が多くなる有様だった。後半戦は援護を受けられたとはいえ、前年から防御率は良化しているにも関わらずほぼ半減の7勝止まりだった。

 

阪神・岩田も相変わらずムエンゴで、9勝8敗と勝ち越しこそしたが、防御率2点台の投手ではただ一人だけ二桁勝利を逃している。

岩田の同僚である能見篤史は総援護率こそ4.35と無難だが援護率詐欺と言えるところがあり、4月こそ4勝1敗と順調にスタートを切ったものの5~7月にかけて凄まじいムエンゴ病を発症*6。該当期間だけで1勝9敗と黒星を量産し、シーズン終了時にはリーグ最多敗戦を記録するハメになった。能見は以後も投打の噛み合わなさに悩まされ、実に2016年までの3年間全てで最多敗戦を記録することとなる。

 

なお、前年にムエンゴで悩まされた金子は逆に援護率1位だった模様。

2015年

阪神・メッセンジャー、楽天・則本昂大(メッセンジャー2.22、則本2.45)が代表的なムエンゴ投手に。メッセンジャーは9勝12敗(防御率2.97)、則本は10勝11敗(防御率3.02)で負け越し。巨人・菅野智之(援護率3.11)は防御率1.91ながら10勝11敗と負け越している
またDeNA・石田健大、ヤクルト・新垣渚、中日・ラウル・バルデスや山井大介もムエンゴ(石田1.70、新垣2.45、バルデス2.79、山井2.90)であり、特に石田は後半戦からのローテ定着で規定投球回未到達ながら2012年のスタンリッジの記録を更新してしまった。

2016年

同年はDeNAの新人・今永昇太のムエンゴが話題に。
開幕から5試合中4試合でQS達成、4月29日の阪神戦では6回2/3で14奪三振ながらも4連敗してしまう*7。しかしアレックス・ラミレス監督から大事に使われ持ち直し、5連勝するなど8勝9敗・防御率2.93でシーズンを終えた。

また、菅野はムエンゴが前年から深刻化(援護率2.88)。最優秀防御率・ゴールデングラブ賞を獲得したが、防御率2.01ながら9勝止まり。さらに打率.222・3打点と巨人の代打陣及びより高打率だったため、「ジエンゴ出来ないから悪い」という文句すら通用しない不運ぶりであった。

則本は援護率3.35だが、自責点に対して失点が非常に多く(自責点63に対して失点はリーグ最多の87)、3年連続で10敗。味方守備に苦しめられた。

石田は援護率4.44と前年から良化も「好投時に限ってムエンゴの援護詐欺」という不運から、同じく2桁勝利には届かなかった*8

なお新人時代に深刻なムエンゴだった野村は、菅野の倍近い援護(5.74)を受けた事からリーグ最多勝を獲得している。

2017年

この年は例年以上に各球団でのムエンゴ投手輩出が目立つ。

 

【中日】
投打が噛み合わなかった投手陣は、NPBワースト2位となる開幕から19試合連続先発投手未勝利*9など深刻なムエンゴに。特にバルデスは好投での降板後に中継ぎに勝ちを消されるなど不運も相まって「バルデスおじさんを救う会」が結成されたほど。

 

【オリックス】
ルーキー・山岡泰輔がムエンゴ病に。特に前半のムエンゴは凄まじいものがあり、4月終了時の援護率0.86という数字は数多の野球ファンの目を惹く。交流戦のDeNA戦では前年にムエンゴで悩まされた今永と対決し、珍しく援護を受けた日に限って雨天ノーゲームという、謎の化学反応を起こすレベルでの深刻なムエンゴが山岡を襲いかかった。
オールスター後は前半に比べて援護を貰えるようになったが、今度は山岡自身が調子を落とし失点のかさむ試合を少なからず量産*10してしまい、最終的には援護率3.10、防御率3.74ながら8勝11敗と負け越す結果になってしまった。

 

【DeNA】
シーズン後半こそ勝ち運に恵まれた新外国人のジョー・ウィーランドだったが、負けこそつかないものの序盤はムエンゴに悩まされていた。とはいえ彼のために打順を8番に置かれるほど打撃が得意で、登板時の得点の一部は自身で稼いだ援護点であり*11、後半戦の勝ち運も半分は自らの手で勝ち取ったものであるとも言える。

尚、前年にムエンゴだった今永昇太は順当に勝ち星を重ね、去年とほぼ同じ防御率2.98を記録し尚且つ11勝7敗と、勝ち越しおよび二桁勝利の達成に成功した。

 

余談だが、前年限りで現役を退いた三浦大輔は、主に横浜戦での解説者としてテレビ中継に出演。しかし解説を担当した試合での横浜は2勝8敗2分と、引退してなお暗黒エースぶりを発揮している模様。

 

【阪神】
ルーキー・小野泰己のムエンゴぶりが話題に。藤浪晋太郎の不振もあって一軍に抜擢されローテーション入りしたが未勝利のまま7連敗を喫し、新人投手の球団ワースト記録を51年ぶりに更新してしまった*12
序盤で炎上する事もあるが、好投してもムエンゴに加えて守備難にも悩まされており、失策が安打と記録される例*13も少なくないため援護も無ければ自責はつくという深刻な状況に陥り、規定投球回には到達せずも15度の先発で最終的に2勝7敗、援護率2.52、2017年のセパ規定到達者ワースト援護率を下回ることに。不運のピークと思われる6月28日の中日戦終了時には1.32という絶望的な数字を残していた。
そんな小野が全ウエスタンの先発を務めたフレッシュオールスターでは史上初のスコアレスドローが発生。登板した両チームの17投手全員がムエンゴという見方ができるため、やる俺達スレはある種の記念のような賑わいを見せた。
ちなみに小野のHQS勝率は0%(3戦0勝1敗)である。

2014年から3年連続で最多敗戦を記録していた能見は6勝6敗と無難な成績で終わり、ついに最多敗戦を回避。しかしQS達成時の勝率は36.3%と、依然として勝ち星の恵まれなさが目立った。

 

【ヤクルト】
主力選手が軒並みケガで離脱、シーズンを無事完走できた選手に関しても山田哲人が大不振に陥るなど全体的に精彩を欠き球団ワーストのシーズン96敗を記録。ローテーションを守った先発陣はデービッド・ブキャナン(援護率2.95、6勝13敗)、原樹理(同、3勝11敗)、石川雅規(同1.98、4勝14敗)とムエンゴの煽りを受けた。ブキャナンと原は防御率3点台を記録しながら二桁敗戦*14という成績で、なんJ民らの同情を誘った。なおブキャナンの援護率は2017年セリーグの規定投球回達成者でワースト(唯一の2点台)。

 

【ロッテ】
シーズン序盤から打線が低調、特に春先はチーム打率が1割台と投手陣を苦しめた。中でも若手の二木康太が初の規定投球回到達、防御率3.39ながら援護率が2017年ワーストの2.79で7勝9敗と負け越し。
ただし投手陣も低迷しており、これでも二木は勝利数・防御率でチーム内のトップ。規定投球回到達は他に涌井秀章だけだった。その涌井も援護率は2017年ワースト2の2.91。ちなみに二木とほぼ同じ防御率のオリックス・金子千尋と楽天・美馬学はそれぞれ二桁勝利を収めている。

 

【日本ハム】
上沢直之は15先発で防御率3.44・チームトップのQS率73.3%を記録するも、援護率2.11という深刻なムエンゴで4勝9敗と大きく負け越し。QS達成の試合だけでも4勝6敗、HQSを達成しても4試合中2試合は打線が完封されるなど、幾度と無く味方打線に見放される有様となった。

 

【巨人】
勝ち運投手だったマイルズ・マイコラスも、シーズン後半には一転してムエンゴに。最終6試合中5試合でHQSを達成しながら2勝3敗だった。
宮國椋丞は開幕当初から継続してムエンゴ化しており、先発登板では1勝6敗。一部では「菅野の負け運を宮國が全部引き受けた」とも。
一方、前年まで深刻すぎるムエンゴに悩まされた菅野は比較的援護に恵まれて前半戦だけで前年の勝ち数(9勝)に並び、17勝を挙げてキャリアハイを更新し最多勝のタイトルを獲得。
しかしその菅野も勝ち投手となった17試合全てで6投球回以上かつ1失点以内を記録*15しながら、2失点以上の試合は勝てなかった。つまり援護が増えたというのは菅野が0~1点に抑えている中で味方が4~5点取るという状況が増えたということであり「打線のおかげで勝ちが付いた試合」は存在しない。また、7~8回を3失点以内で好投しながら勝てなかった試合もあり完全にムエンゴが解消されたわけではないが、最多勝の獲得は負け運を自力で払拭したとも言える。

 

【楽天】
シーズン前半は首位だったがオールスター明け以降は主力野手の不振・故障離脱からロースコアでの敗戦が増え、特に8月15日から2勝16敗1分など大型連敗を喫してソフトバンク・西武に追い抜かれ3位へ転落、その貧打がチームの足を引っ張った。特にエース格の則本(防御率2.57)や岸孝之(同2.76)はHQSを達成しながら完投負けも記録。則本はこれが原因で最多勝投手のタイトルを逃している(15勝7敗、最多勝は16勝だった)。
岸は前半戦はQS率100%(13/13)・8勝3敗を記録するが後半はムエンゴが深刻化。80%台のQS率を保ちながら約3ヶ月もの間で勝ち星に見放され、7連敗を喫してシーズンを終えた*16
上記の阪神・小野とは同年の交流戦で対決が実現。小野が7回1失点、岸が8回無失点と両者好投の末に岸が勝利をもぎ取っている。見た目と投球スタイルから比較されることもある両者だが、皮肉にも岸本人が岸2世の「7連敗」記録をなぞってしまった。

2018年

NPBの場合

【阪神】
岩貞祐太は7月20日現在で防御率1.73ながら3勝4敗とムエンゴ。前年の不調から復活を遂げてはいたが、埼玉西武ライオンズ相手に8回2失点(完投)と好投しながら見殺し自責点0で敗戦投手になるなど、ありとあらゆる勝ち運のなさを経験する羽目になった。交流戦では防御率1.21で0勝1敗と凄まじいムエンゴを記録。また、8月28日のヤクルト戦では7回1失点に抑えながら7敗目を喫したり9月24日の巨人戦でも7回無失点ながら勝ち星が付かなかったりしている。結局、防御率3.48だが7勝10敗でシーズンを終えた*17。ちなみに、この年の岩貞の打率は、.000(34-0)である。
逆に、チームメイトで去年ムエンゴだった小野泰己は、防御率こそ良くないながらも*18前年よりは援護と運もあり7勝7敗でシーズンを終えた。
【中日】
2017年シーズン後半から1軍に合流し、2016年~17年前半戦の不振からの復活を遂げた山井大介が発症した。昨年度を大幅に上回るペースで登板*19していたものの黒星が先行。とりわけ巨人戦での被害が悲惨であった。

山井 VS 巨人
①8回を投げて3失点で纏めるも打線がヤングマン(今期初登板初先発)の前に単発3安打で完封負けしヤングマンに初勝利を献上。
②7回を投げて2失点で纏めるも対戦相手の山口俊にノーヒットノーラン*20を決められる*21
③7回を投げて2失点で纏めるも打線が今村信貴相手に6安打完封を喫し、今村にプロ初完投&初完封を献上。
④ついに耐え切れなくなったか3回もたず5失点、打線は菅野智之の前に2安打完封負け
以上、24 1/3回12失点 防御率4.44
0勝4敗 援護率0.00

そして、④で敗戦した結果森監督(当時・現シニアディレクター)により2軍に落とされ、そのまま幽閉されてシーズンを終了してしまう。最終戦績は10試合3勝6敗、防御率4.04だったため、巨人戦だけで大幅に成績を落としたことになる*22

MLBでは

ニューヨーク・メッツのジェイコブ・デグロムが凄まじいムエンゴを発症。レギュラーシーズンを30球団トップの防御率1.70で終えるも、10勝9敗と辛うじて勝ち越す程度に留まっている。自責点1点以下で12回勝ちを消されるなど異様なレベルでのムエンゴに悩まされた。
しかし、デグロムはリーグで最も活躍した投手に与えられるサイヤング賞を史上最少勝利数で受賞。これはQS(後述)や長いイニングを投げて抑えることが投手の能力として重要視され、勝ち星はただの結果に過ぎないため評価が低いという近年のMLBの考えが現れていると言える。

2019年

NPBの場合

【オリックス】
2019年のオリックスは貧打に喘いでおりチーム打率はリーグ最下位の.242だった。
その煽りで多くの投手陣*23がムエンゴに苦しんだが、最も打撃不振の煽りを被ったのが、2年ぶりに先発に再転向した山本由伸であった。
山本はシーズンを通して好投し、防御率1.95で最優秀防御率のタイトルを獲得したが、援護率は2.36。規定投球回到達者の中でも際立って低い数値であり、8勝(6敗)に終わった*24。援護がないのに、味方野手全員が束になって襲いかかると言われるほど守備にも悩まされた
勝ち投手の権利を持って降板した後、中継ぎや抑えが炎上して勝ち投手の権利を消された(7/19の西武*25が最たる例)なんてこともあった。
この凄まじいムエンゴでおかしくなったファンは「勝ちたかったら12回0封しろ」と要求し1失点でもすれば炎上扱いとするなど、ジョークを交えて敬意を持って彼を見守っている。
シーズンオフには11/17放送の『S-PARK』内での企画「プロ野球100人分の1位」においても何故か山本のムエンゴが取り上げられてしまった。

一方で昨年までムエンゴに悩まされていた山岡泰輔は、防御率は3点台半ばながらそれを上回る援護率により5月まで無敗、シーズン終了時には13勝(4敗)を挙げ最高勝率のタイトルを手にするなど過去のムエンゴ被害が一挙に報われる形となり、山本とは対照的であった。

同年シーズンオフ~2020年開幕前の各メディアによる取材ではしきりに「勝ちたい」「勝つと楽しい」とコメントしており、いかに彼が苦しんだかが見て取れる。

 

【ソフトバンク】
千賀滉大や高橋礼ら投手陣の活躍が光る影で大竹耕太郎が深刻なムエンゴを発症。
前半戦では殆どの試合でQSないしHQSの超好成績であり、支配下登録2年目にしてソフトバンク左のエースとして定着且つ侍ジャパン稲葉篤紀監督からも左強化の1人として見られていたにも関わらず打線の援護が絶望的(初勝利まで1ヶ月近く大竹登板試合で被先制、援護率が初めて2点を突破したのが5月最終登板という遅さ、etc...)なことが原因で絶望的に勝てていない事態に陥る。加えて一時パ・リーグ防御率トップだった事と、高橋礼と比べた時の異常なまでの格差、初勝利時に感極まって涙を流すシーンもありながら勝ちを消されると言う結末が相次いだ事から、ゾウの大竹大竹耕太郎ちゃんを救う会とネタにされるなど、ファンおろか対戦相手からも同情の声が多く、大本営西日本新聞にすら不運のヒーロー扱いされている始末である。
その後、交流戦になると野手陣が安定して援護点を出せるようになり援護率が若干上がったものの、疲労からか今度は大竹が失速。後半戦になると本格的に糸が切れてしまったの1勝も挙げられなくなってしまい8月1日に登録抹消、2軍でも炎上することが多くなったことで昇格を果たせず、そのままシーズンを終えることに。
最終成績は17試合5勝4敗、防御率3.82、援護率は山本をさらに下回る2.25となったが、オフには悲運査定で年俸アップを勝ち取っている

 

【余談】
4月3日は山本・大竹の両者が長いイニングを投げあう展開となったが、共に打線が完封され0-0の引き分け
4月25日の試合は、もともと大竹と山本のマッチアップにはならない予定だったが、ソフトバンクとオリックスの双方が大竹(山本)の負け運を払拭すべく直前に先発ローテを改変した結果、最悪な形でマッチアップが実現。試合は両者の降板まで1点も入らないムエンゴ対決の後延長戦に突入、延長10回裏に明石健志のサヨナラ3ランでソフトバンクが勝利している。
また、5月29日にもこの2人のマッチアップが実現しかけるもこの時はソフトバンクだけが先発ローテを改変したお陰で回避、この週は山本と大竹の両方に勝ちがつくという平和な結末となった。

 

【阪神】
得点が12球団ワーストなこともあり先発投手全般、特に高橋遥人は規定未到達ながら山本由伸よりもさらに低い援護率2.05であり、オネルキ・ガルシア(援護率3.00)共々先発登板では共に3勝しかできなかった。阪神の野手陣の惨状から勝ち星を積み重ねられない懸念はシーズン前からされていたが、案の定ムエンゴに苦しめられる事態になった。
しかし阪神先発陣はチーム防御率(前半戦3.40で12球団中1位)の割に不安定*26で踏ん張りどころで痛打されたり*27四死球などで自滅して試合を壊してしまうこともよくあったため先発陣が安定しているオリックス*28ほどムエンゴが目立たない。

MLBでは

前年からの不振を乗り越えたダルビッシュ有だが、今度は凄まじいムエンゴに悩まされる。
2ヶ月近く登板試合で勝ちがつかず、酷いときは中継ぎが9回に6点取られてサヨナラ負けして勝ちが消えるなど勝ちに見放されており、31登板で6勝8敗止まりとなってしまった。
デグロムもデグロムで前年よりマシだがムエンゴ気味であり、防御率リーグ2位ながら11勝8敗。さらに防御率3点台未満ながらデグロムと同じ11勝止まりの投手が他に3名*29と勝ち運に恵まれない投手の多いシーズンだった。


用語

援護率

英語ではRun Support per Nine Innings、大概の場合Run Supportと呼ばれる指標、計算式は以下の通り。

(味方の援護点数×9)÷攻撃イニング数(投手がマウンドにいる間に味方が攻撃したイニング数)
出典:外部サイト"Kazmix World -- Baseball Data"

9回完投時に期待できる味方打線の得点数」が援護率であり、この計算に基づいた援護率を算出するのが大前提。この数字が低いほどムエンゴに苦しんでいると言える。
特にDH制の場合は投手がジエンゴで操作できない数値であり、チーム内でも大きく差が出る場合がある。

援護率はチームの得点能力と運のみによって決まるわけではない。例えば、エース級の先発投手は相手チームのエースと投げ合う機会が多いためチーム内でも援護率が低い傾向がある。また采配方針である投手の登板時に守備重視のオーダーを組むような場合にもその投手の援護率は低くなりやすい(代わりに防御率などの投手成績は良くなりやすい)。とはいえ、これらの傾向を覆して異常な援護率を叩き出すケースも多々あり、運の要素が最も支配的といえる(運の典型例が上述の伊藤智仁やMLB時代の黒田博樹であろう)。

QS

「クオリティ・スタート」の略。
投球回6イニング以上かつ自責点3以下の先発登板試合に記録され「ある程度試合を作り先発投手としての役割を果たした」という評価になるもの。

QS率は全先発数に対するQSの割合で、先発投手の安定度を示す指標としてWHIP(1イニング当たりに走者を出す割合)とともに近年はアメリカで重要視され、日本でも定着しつつある*30
また、ムエンゴを見分ける上で有効な数値となるQS勝率(敗率)はQSを記録した登板における勝敗率を意味する。

 

なお、仮に登板全試合で6回3自責点のQSを達成した場合の防御率は4.50であり、シーズン通算では良い成績とは言えないため、イニングイーターとしての役割も求められるエース級の投手などに対してはHQS(ハイ・クオリティー・スタート、7イニング以上かつ2失点以内)が使われることもある*31。登板全試合で7回2失点(失点の全てが自責点)のHQSを達成した場合の防御率は2.57である。

 

また、NPBでその年最も優秀な先発完投型投手を選出するのが沢村賞であるが、近年は先発・救援の分業制がより進んでおり従来の基準を満たすことが難しい(特に10完投)ということで、2016年からはQSやWHIPを選考基準に導入、2018年からはNPBの環境*32に合わせた「投球回7イニング以上かつ自責点3以下」という独自のQSを考慮することとなった*33
この他、独自の基準を持つチームもあるようだ。

関連項目


関連サイト



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*1 2008年は防御率3.87・援護率3.00、2勝7敗・QS勝率.222
*2 それまでの記録は1944年に近畿日本軍・中本政夫(政野岩夫)が記録した.231(15登板・3勝10敗、防御率は2.16でリーグ6位)。当時は極端な投高打低で、さらに太平洋戦争の戦局悪化から1チーム35試合で打ち切りとなったことが重なった結果の記録。
*3 ちなみにNPB時代(8年間)の援護点中央値は2点だった。
*4 チームが相変わらず貧打、防御率3.45は規定投球回到達投手の16人中14位。
*5 チーム打率.262・132本塁打、特に本塁打は前年から約2倍増。
*6 期間別の援護率→5月2.08・6月2.25・7月1.17
*7 14奪三振での敗戦は史上4人目、しかも同試合までは援護率が0.5だった
*8 9勝4敗・防御率3.12。菅野と同様、中継ぎに何度か勝ちを消されている。
*9 1位は1953年広島の23試合連続。中日以外のワースト5はいずれも1950~1970年代の記録であり、2000年以降にランクインした例は同年の中日のみである。
*10 普段貰えなかった援護を貰いすぎて胃がビックリしたから失点を重ねたとネタにされた
*11 打率.229(48-11)・3本塁打・12打点・OPS.739。加えて得点圏では打率.263(19-5)・1本塁打・9打点と好成績だった。ちなみに本業は故障離脱もあって規定投球回に及ばなかったが、10勝2敗で球団史上初となる外国人の二桁勝利を達成。
*12 それ以前は久野剛志が喫した6連敗が最長。なお、プロ野球記録は成田啓二(元国鉄)と松崎伸吾(元楽天→阪神)が記録した11連敗。
*13 「遊撃手の大和と中堅手の糸井嘉男が衝突して落球、記録は二塁適時打」「遊撃手の糸原健斗二遊間のゴロを捕れずに中前適時打(しかもこれが決勝点)」など。
*14 特に原は先発19登板中でQS12回、しかも最終5試合は全てQS(うち2度はHQS)だった。
*15 ちなみに同年のHQSは15/17、6完投・4完封で防御率1.59だったが、勝ち投手となった試合に限れば防御率0.40とさらに圧倒的だった。
*16 ただしCSファーストステージ第2戦では古巣・西武と対決、6回1/3を3安打無失点で久々の勝利投手に。
*17 去年までの同僚の榎田大樹が11勝4敗(防御率3.32)の貯金7である。
*18 勝利投手になった試合は3失点以内だが、球数が増えてイニングを稼ぎにくい事が原因。ある意味去年の消された勝ちが戻ってきたとも言える。
*19 2017年はシーズン終盤に僅か2試合(ただしその2試合はどちらも勝利投手になっている。)→2018年は5月の初登板を皮切りに10試合。
*20 四球で大島洋平が出塁し3塁まで進むも、1死から平田良介のサードゴロの間に本塁強襲を仕掛け失敗。
*21 皮肉にも、セ・リーグで山口の前にノーノーを記録したのは他でもない山井本人であり、その相手は当時山口が所属していたDeNAであった。
*22 同年の中日先発陣は巨人相手に異様に弱かった。山井の他にも松坂大輔が記録された負け数4のうち3つを巨人戦で喫し、防御率2桁をマークしている。
*23 下記の山本以外では榊原翼やK-鈴木など。
*24 ワースト2の大瀬良大地(11勝9敗)、ジョンソン(11勝8敗)(共に広島)でさえ3.36。
*25 4点の援護を貰って山本は7回1失点(自責0)だったが9回にディクソンが金子侑司に同点3ランを浴び、11回に増井が中村剛也に通算400号本塁打を打たれてサヨナラ負け。
*26 特にシーズン序盤は先発陣の防御率は5点台以上だったがチーム防御率自体も12球団断トツ最下位だった。
*27 これは西・青柳・ガルシア・高橋・メッセンジャー・秋山ら先発陣全員に言えた。
*28 ただし阪神とは逆に投手陣の体たらくぷりがネタにされる西武以上に救援陣が悪い
*29 マックス・シャーザー(2.92)、ソニー・グレイ(2.87)ジャック・フラーティ(2.75)の3名
*30 QSは完全に先発投手専用の指標であるのに対し、WHIPはリリーフ投手寄りの評価に適した指標とされる。
*31 特に極端な投高打低となっていた違反球時代にはQSへのハードルが下がってしまい、代わりにHQS・HQS勝率が指標として使われることが多かったようである。
*32 主にローテーション投手は中4日が主流のMLBに対してNPBではほとんどの投手が中6日である点
*33 この場合の防御率は3.86。なおこの日本式QSが考案された2018年の沢村賞は菅野智之が全項目を達成したためそれを考慮するまでもなく全会一致で菅野が受賞した。