コナミデジタルエンタテインメントから発売されている野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』シリーズ・『パワプロクンポケット』シリーズ・『プロ野球スピリッツ』シリーズ(以下、パワプロ、パワポケ、プロスピ)における、阪神タイガース関連の選手査定のこと。
概要
実在選手を登場させるゲームではリアルの成績を元にゲームデータを作成することが多く、コナミの野球ゲームでも極力最新の成績を元にしている。しかし「阪神選手だけ明らかに能力がおかしい」という指摘が相次ぎ、ネット上を中心としてまことしやかに使われるようになった。
主な根拠としては「コナミの創業地が関西だから」「プロデューサーだった赤田勲が阪神ファンを公言しているから」などが挙げられやすい。
「暗黒時代」とも呼ばれていた1990年代後半から2000年代初頭の時期*1はゲーム内でも阪神の査定は12球団平均を下回っているものが多く、2001年発売の『実況パワフルプロ野球8』に至っては攻略本で「初期設定でペナントをやる場合、勝ちたいと思うなら選んではいけないチーム」と記述されるほどであった*2。そのため、この時期のプレイヤーからは「多少贔屓されている気もするが、救済処置もしくはゲームバランス維持のためなのでは」という擁護意見も出ていた。
しかし暗黒を脱し、度々Aクラス入りを果たすようになると、阪神の査定に対して疑問の声が湧き上がるようになった。
ただ阪神以外の選手でも優遇・不遇に関わらず査定への疑問点は多く(後述)、「ただ単に適当なだけでは?」と見る向きも強い。
また最新作『2024』では多数のOB選手が収録されたことから、後述する一部の引退済選手はここでの収録のために査定のやり直しが行われた。
参考:査定方法
パワプロの選手能力値どう決める…コナミ開発者を直撃 目指すは「選手データを見ただけでどの選手か分かる」(福井新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1535690
―選手能力(パワーなどの基本的な数値、特殊能力)はどのように決定していますか。
打率からミート、本塁打数からパワーなど、分かりやすい成績から選手データに落とし込むある程度の目安はあります。そこにセイバーメトリクスや、直近数年の傾向などを加味して能力値や特殊能力を提案する社内ツールもあります。最終的には「選手データを見ただけでどの選手か分かる」を目標に調整を入れていきます。
―シーズンでの活躍や不振による数値の上げ下げ幅の基準はありますか。特に、若手でブレイクした選手、タイトルホルダーの選手の上げ幅についてはどのように考慮していますか。
規定打席や規定投球回、直近数年の成績の加味などを行います。成績によって、選手本来の能力に近い成績に安定してくる打席数(対戦打者数)といったものがあります。セイバーメトリクスも用いますので、必ずしもぱっと見の成績に沿った査定にならないことも多いです。
また1年のみではなく、ペナントレースモードで長く遊んでいただくことも想定しているため、短いスパンの活躍や不振にまどわされず選手本来の実力を見極めて査定することも大切にしています。(中略)―制作チームはどのような体制で情報収集しているのでしょうか。
制作内に選手データグループという集団がいます。12球団にそれぞれ1人担当が就き、球団の動向を追っています。また、プロ野球中継の試合はほぼ全試合録画し、いつでも確認できるようにしています。詳細な成績データについては、Japan Baseball Data(株)様にご提供いただいており、これをもとに分析しています。
―初期のパワプロと現在とで情報収集や選手能力の決め方で変わった点はありますか。
情報収集については、初期はインターネットもありませんでしたので、全国のスポーツ紙を取り寄せたり、スポーツ雑誌、書籍、テレビ・ラジオ視聴、球場での観戦に頼っていました。当時はパ・リーグの情報が少なくて困りました。今はインターネットで情報も得やすくなり、全球団の試合放送を観ることもできますので本当にいい時代になったなと思います。
選手能力については、初期は担当2人で投打担当と守備走塁担当に分かれて12球団の選手査定をしておりました。1996年からは1球団1人の体制にして、担当メンバーは入れ替えながら現在に至ります。12球団の担当から上がってきた能力データは隊長に渡り、成績の分析データをもとに球団間のバランスなどをならして調整します。
「珍査定」との指摘が多いもの
パワフルプロ野球シリーズ
上記引用記事の通り、査定の基準がナンバリング時代と西暦時代でかなり変わっていることに留意されたし。
- 濱中治(実況パワフルプロ野球10)
2002年の本塁打は18本で、打数が少ないとはいえリーグの本塁打ランキングでは10位以内にも入っていない。パワーA(140)
この年(2003年)は5月中に10本塁打に到達しているが怪我で離脱。結局シーズンでは11本塁打にとどまる。
- 関本賢太郎(実況パワフルプロ野球11超決定版)
112安打、打率.316(規定未到達)。セ・リーグでアベレージヒッター持ちは関本と首位打者の嶋重宣(広島)(.337)のみ。ミートC アベレージヒッター
- 桜井広大(実況パワフルプロ野球11~13)
プロ3~5年目の期間は一軍出場なしで、初出場は翌6年目。一軍未出場の選手としてはかなり高パワーの部類に入る。また、3作品にわたって他の能力もほとんど変化がない*4。パワーC(98)
- 上園啓史(実況パワフルプロ野球14決定版)
ジャイロボールはストレートが独特な軌道を描き実際の球速よりも速く見えるという特殊能力で、パワプロではOBか極端に球速の遅いエース級投手にのみ付加される能力*5である。ジャイロボール
この年の新人王とはいえ、オーバースローで球速も140km/h以上を計測する上園に付与されるのは異例である。
当時は松坂大輔を中心としてジャイロボールが脚光を浴びており、上園も含め何名かが投げたと報道されたが、騒がれた選手のうち能力が付与されたのは上園のみ。
しかも上園自体の報道もオフシーズン恒例の飛ばし記事の一つでしかなく、翌シーズンでそれらしい球を投じたことはなかった。当時バッテリーを組んでいた野口寿浩によると上園のストレートはムービング系のボールだった回顧しており、パワプロの能力とは真逆であった*6。
- 小嶋達也(実況パワフルプロ野球14決定版)
登板5試合(うち先発登板5試合)で投球回25.0、防御率3.96。パッとしない成績ながらスタミナはあと1でBになる能力で、球持ち○は着弾点表示を遅らせる強力な能力である。スタミナC(109) 球持ち○
参考までに、同年投球回123.0の藤井秀悟(ヤクルト)がスタミナB(111)。
- 新井貴浩(実況パワフルプロ野球14決定版→15→2009)
9決定版から14決定版までずっとF(5)で「非成長*7」だったが、広島から阪神に移籍した途端に走力が上昇している。走力F(5)→E(7)→D(9) 走塁4
- 鳥谷敬(実況パワフルプロ野球15)
打率.273。特殊能力によりほぼ常時*8ミート+1.5のため、事実上ミートC(11.5)。ミートC(10) チャンスメーカー チャンス4
打率.343でリーグ2位だったアレックス・ラミレス(巨人)のミートC(11)より上。
- 野口寿浩(実況パワフルプロ野球15→2009)
阪神から横浜に移籍。この年の野口は出場試合数こそ減ったものの、打率・OPS・守備率などの指標は軒並み微増した。それなのにも関わらずステータスダウンの「逆珍査定」。ミートE(6)→G(3) パワーD(88)→E(71) 耐エラーD(8)→G(3)
- 原口文仁(実況パワフルプロ野球2016)
2012年に育成契約となり、前年まで一軍出場なし。シーズン途中に支配下登録、育成経験野手では史上初の月間MVPを獲得するなど、絶好調だったとはいえ途中加入選手にこれほど高い数値が付くことは異例。弾道4 ミートC→B パワーB
- 髙山俊(実況パワフルプロ野球2016)
大卒新人。基準が緩くなったとはいえ11の鳥谷をも上回る凄まじい高数値。ミートC 走力A 肩力B
さすがにやりすぎだと思ったのかアップデートで概ね妥当だと思われる数値に落ち着いたが、おかげで「新人王を取る活躍をしたのにパワー以外の5項目いずれも能力ダウン」というちぐはぐな修正となった。
プロ野球スピリッツシリーズ
- 梅野隆太郎(プロ野球スピリッツ2014(最終)~A(2017S1))
『プロ野球スピリッツ2014』発売時点でルーキーであり、最初のデータでは中弾道だったが、アップデートで弾道が上がっていき、シーズン終了時点でアーチストにまでなった。弾道アーチスト
しかしこの年の梅野の本塁打は7本であり、同じ捕手で梅野より多い10本塁打を記録した會澤翼は同アップデートで中弾道となっているため梅野の査定の不可解さが目立った。
このアーチスト査定はプロ野球スピリッツAの2017S1まで続き「アーチスト梅野」などという蔑称まで貰う有り様だったが、続くS2での低弾道への爆下げ*9を経て現在では中弾道に落ち着いた。
ちなみに、梅野がアーチストであった間に同じ査定を貰った選手は筒香嘉智や柳田悠岐といった一握りのホームランバッターのみであり、現役捕手に限ると梅野以外にアーチストは一人もいない。
- 大山悠輔(プロ野球スピリッツ2019)
これまでのAでの査定(高弾道)から一気にアーチストにジャンプアップ。弾道アーチスト
この年の大山の本塁打数は14本とそこまで多くなく、大山より多い16本塁打を放った西川龍馬(当時広島)は中弾道と(こちらはこちらで問題だが)大きな格差があった。
なおAでは2023年にアーチストを獲得している。
実況パワフルプロ野球10 超決定版
阪神が18年ぶりに優勝した2003年の作品。通常の決定版ではなく超決定版とし、2003メモリアルというサブタイトルが付いた。サブタイトル入りの作品は本作のみであり、「超決定版」のタイトルロゴも阪神タイガースロゴによく似たデザインである。
阪神以外のいい加減とされる例
- 新人投手陣(特に高卒)
回復FやスタミナFがよく付く。
特に回復Fは高卒1年目の選手にとりあえずという形で付きまくっており、スタミナや疲労の回復が遅くなる上にペナント内で矯正しづらいステータスのためペナント勢から不評を買っている。
- 若手捕手陣(特に高卒新人)
こちらもキャッチャーFがよく付く*10。投手のスタミナ消費やコントロールに影響するため、こちらもペナント勢から不評を買っている。
また栄冠ナインでは、プロ野球選手が(基本能力こそ下げられているが)特殊能力を据え置いて転生選手として入学してくることがあるが、彼らの場合キャッチャーFもそのままで入学してくるため(通常の捕手はキャッチャーDで入学)「転生プロとしてはもちろん、捕手としても大ハズレ」と非常に不評。
- 青木宣親(2011決など)
ヤクルトファンからも弱肩扱いされるのに肩力がB。
- 横浜(DeNA)ベイスターズの捕手(2011決など)
実際の成績と無関係にほぼ横並びの能力*11。
- 新垣渚(2014(Ver1.02))
100段階中の5。この年はわずか8.0回で与四死球7・暴投6とARAKAKI全開で一見真っ当な査定に見えるが実は問題はコントロールではなく新垣に付随しているおびただしい数の赤特の方。コントロールF(30)→G(5)
回復FやケガしにくさFを筆頭にペナントでの使い勝手も最悪。
そして最大の問題は一発が搭載されていること。
これは失投時にど真ん中にボールが行きやすくなる、つまり暴投が減る能力。
あまりにも多い暴投を再現するためにコントロールを下げたにも関わらず肝心の特殊能力が暴投を減らすというトンチンカンっぷりが話題となった*13。
- 柿田裕太(2016(Ver1.11))
Ver1.10から能力を大幅に下げられた上、どんな投手にも必ず存在する「◎」の適性、つまり本職が存在しない。この仕様の柿田はどの場面で登板しても少し能力が下がることになる。先発適性○・中継適性○・抑え適性-
適性が○だけの選手はパワプロ史で見ても現状唯一であり、オリジナル選手でも作ることは出来ない。
この年の二軍成績は5登板・防御率14.54・1勝0敗・4.1回・自責点7・WHIP3.23と能力ダウンは残当ではあるが、選手を馬鹿にしていると捉えられかねない査定である。
- 松山竜平(2018~)
最後に守ったのが2012年なのに、三塁手の守備適性がある(流石に本来守れる一塁・外野よりは守備力は低い)。10年たったパワプロ2022でもまさかの健在*14。さらにプロスピAの方では2019Series1から消滅していた三塁手適性が2022Series1でなぜか復活した。
- 一部の投手(プロ野球スピリッツシリーズ)
投げたことがない変化球が登録されている*16。
逆にテレビ中継放送などの表示にも出る持ち球が登録されていないこともしばしば*17。
パワプロにも同じ事が言えるのではないか、という意見もあるが、パワプロの変化球は「実際に投手がこれだと語ったりデータとして登録されている球種」よりも「実際の投球の軌道」を重視して球種を決めるきらいがあり、例としてシュート方向に落ちていくフォークやスプリット、縦方向に鋭く落ちるツーシームなどはシンカーで代用している*18。
- 打率の高い選手(パワプロ2019~2023)
何故かミートの査定だけ異常なまでに辛口であり、その分打率の高い選手はこの煽りを受けやすい。
2020年に打率.350で首位打者に輝いた吉田正尚でようやくA(80)でありしかも即座に没収。そしてとうとうパワプロ2023最終データでは同シーズンの投高打低もあって、ミートB以上の現役選手が0人になった*19。
KONAMIいわく「すべてCPU任せでペナントモードを1年行った場合、あまりにも史実以上に高い打率になることからシステム上下げざるを得なくなる」という理由もあったとのこと*20。
結局『2024』で宮崎敏郎がB(70)、頓宮裕真がC(63)と一定の上方修正が図られた。OB枠のロバート・ローズや横浜時代の内川聖一、イチローがS、ブーマー・ウェルズや糸井嘉男がA*21なのを考えるとこちらとの兼ね合い上あまり上げられない*22のが理由として存在したと思われる。